第30話
〈side 燐〉
テスト前の土曜日
燐はさつきの家で勉強中
うーん。この公式がこうで、
ここを変形するから、あれ?
違うな。どうなってんだ?
くそっ、全然分からん!
燐は机に項垂れる。
さつきも横で勉強している。
なんか先輩の真剣な顔って初めて見た。
綺麗な顔してるよなあ〜。
燐はジッとさつきを見つめ、横顔に酔い痴れそうになる。
少しして、2人は目が合う。
「ん?どうかした?」
破顔し、首を傾げる。
「あ、いや、この問題が分からなくて。」
「もう、また〜。どれ見せてみ。」
さつきは燐に距離を詰める。
うわ、近っ。
ほのかに香る、さつきからの甘い香りは燐を刺激する。
なんかいい匂いがする。
「ちょっと、聞いてる?」
「え、あぁ、いや…」
「集中切れてるね、ちょっと休憩しよっか。」
「はい。」
燐ははぁっと息をもらし、壁にもたれる。
勉強教えて貰えるのはいいけど、集中できん。
さつき先輩と部屋で2人きりって今までなかったけど、意外と緊張するな。
「ねぇ、」
さつきはそう言ってこちらを見る。
「ん?」
「さっき私のことずっと見てたでしょ。」
「え、そんなことは…」
「ごまかさなくていいよ。私気づいてたから。」
「まじっすか。」
まじか。バレてたのかよ。
なんか恥ずかしい。
「君は私の事、どう思ってるのかな?」
「普通に、いい先輩かなって。」
「そう、君は私の気持ち知りたい?」
「え?それはどういう…ことすか…」
さつきは壁際の燐に近づき始める。
うわっ、まじ?
この状況なんかやばくね。
なんかドキドキしてきた。
「君が悪いんだよ。」
「俺すか?」
そう言いながら、さつきはどんどん距離を詰めていく。
夕陽に反射し、塵がチラチラと光る。
そこに立つ姿は幻想的にみえる。
「そう、君が。」
え?なんで?俺なんかした?
もー誰か助けてー。
2人は手を伸ばせば届く距離に。
「2人きりなのに何も無いと思った?」
「!!!」
いや、それ絶対立場逆!
普通俺が言うくね?
彼女は、ただ、じっと俺を見つめ
ゆっくりと、少しずつ距離を詰めていく。
俺を見つめる目の奥にある
曇りのない瞳は、俺の感覚を鈍らせ、
その強くて、真剣な眼差しは揺るぎない。
さつきの手はそっと燐の頰を触れる。
その手は優しく、這うように頰を撫でる。
その瞬間、思考が止まる。
そして、
顔面に血液が集中し、鼓動は早くなる。
俺は唾を飲み込み、ただ、
「せん、ぱ…い…?」
そう呟く。
その言葉に応えるように
彼女はふわりと、微笑う。
その可憐な笑顔は、俺を惑わせる。
彼女の顔が少しずつ迫ってくる。
2人のそれが触れ合う距離にまで近づいたときに
燐は今から起きることを理解したのか、そっと瞼を落とす。
触れ合うまでの永遠にも感じるほどの長い無音に、ひどい恐怖を感じ、
燐は耐えきれずに目を開けた。
目の前にまだ彼女はいる。
先輩はあまりにも綺麗で、その真っ直ぐな眼差しに見つめられると、身動きひとつとれない。
「私は君の事が…」
また頰を撫でる。
心臓が跳ねる。
締め付けられるような感覚、
胸が苦しい。
さつきがまた微笑んだかと思うと、
「どう?ドキッとした?」
そう言うと立ち上がる。
「え?」
驚きのあまり、息をするのを忘れていた。
何が起きたのか、理解が出来ない。
夢から覚めたような感覚に安堵を覚える。
「これは…どういう…」
「へへっ、ドキッとしたでしょ?昨日見たドラマの真似してみたんだ。ごめんね。」
舌をチロッ出して謝るその姿に怒りを覚える者はいないだろう。
「からかわないでくださいよ。」
まだ鼓動が早い。
「ごめんごめん、少しは期待した?」
さつきが顔を少し近づけて言う。
燐の顔はカーッと赤くなり、顔を背ける。
「それは、まあ…すこしは。」
「そっか、でも、そういうのは普通は君からだろ。」
ニヤリとするさつき
「誘ってるんですか。」
「さあね〜。」
本気で分かんねぇ。
どこまで本気なんだよ。
燐は俯いて少し寂しげな表情をする。
「まっ、気にするな。」
そう言って燐の髪をくしゃくしゃし、
「お店でケーキでも食べよっか?」
「うん。」
燐はさつきの後を歩き、2人はケーキ屋へ向かった。
めっちゃ難しい。
表現が変かもしれません、ごめんなさい。
キスはまだしてません。




