第28話
〈side 燐〉
今日は部活が休み、だから、久々にゆっくり過ごせるはずだった…
珍しく早く起きた、今日の朝。
俺は、家族全員で朝食を食べている。
今日のメニューは和食だ。
味噌汁や玉子焼き、焼き魚など、いたって普通の献立。
「燐、来週ぐらいに来るから。ちゃんと準備しときなよ。」
俺は姉ちゃんのその言葉に、固まり、箸からご飯を落としてしまう。
そうだ…、あいつが来る。
忘れていた…。もうすぐあいつがやって来る…。
俺はあいつが大嫌いだ。
あいつは突然やって来ることもあれば、連絡してから来ることもある。
だが、どの場合でも俺に絶望を与えて帰っていく。
俺は朝からそんな憂鬱な気分になりながらも学校へ向かう。
今日は朝練が無いため、行き道には人も多く、知り合いにも会う。
「立花くん、おはよう。」
「ああ…、おはよう。」
「どうしたの?元気ないね。」
「うん…もうすぐあいつがくるからな、あはは」
「そうなんだ…」
葵は苦笑いをする。
「おーっす。燐くん、」
さつきは燐の肩を叩いてそう言う。
「おはようございます。さつき先輩。」
燐は生気の無い声でこたえる。
「げっ、葵ちゃん。何これ?」
「今日会った時からずっとこんな調子なんです。」
「珍しいね。」
「はい、私もそう思います。」
学校に着いても燐は机に伏したまま動かずボソボソと呟いている。
「あいつがくる…もうすぐあいつがくる…」
「だから、何がくんだよ。」
「朝から同じことしか言ってないぞ、お前。」
相葉と夏目が呆れている。
「だから、あいつだよ!テストだよ!」
そう、あいつとはテストのことだ。
それは、学生にとっては最大の敵であり、超えなくてはならない壁なのだ。
ここ、仙陽高校ではもうすぐ中間テストが始まる。
一応進学校なのでテストの難易度はやや難しい。
推薦入学の者は一般入学の者とは少し待遇が違うので、気楽なのだ。
燐は入試には奇跡的に合格したが、
もともとは馬鹿でその上
授業中は寝たりしていたため、馬鹿に拍車がかかっている。
みんなは授業はちゃんと受けようね。
やばいな。初めのテストは大事だって言うし、
これで失敗して、その後も赤点連発。
そして留年、ははは。
笑い事じゃねぇー!!
これは誰かにお教えを乞うしかない。
やはり、ここは生徒会副会長の姉に頼るしかないようだな。
「嫌よ。」
沙織は椅子に座ってこちら側にクルッと椅子ごと振り返り言う。
「は?今何とおっしゃいましたか?」
「だから、嫌よ。なんで私が弟に勉強教えないあげないといけないのよ。」
「それは…俺が可愛い弟だから?」
「はいはい、それでも嫌なものは嫌。第一私はテスト週間は一馬くんと、過ごすの。あんたに邪魔されるなんてたまったもんじゃないわ。他を当たって頂戴。」
「じゃあさ、誰か紹介してくれよ、頼むからさ、可愛い姉ちゃん。」
燐は膝をついて、手を合わせ祈るように懇願する。
「ったく、しゃうがないわね。それならさつきに頼みなさいよ。」
おっしゃ、単純。
「は?あの人賢いの?阿保そうじゃね?」
「あんた、失礼ね。さつきはあれでも学年No.2よ。私の次に頭良いんだから。」
「まじ?」
「本当よ」
嘘だろ?あの人そんな賢いのかよ。
「じゃあそうするよ!」
これは心強い。これで俺の学生生活も安泰だ。
さっそくライン送ろ。
「さつき先輩突然すみません。もうすぐテストなので勉強教えてください。」
『ほーい、いいよー(^◇^)』
軽っ。まあ教えてくれるから全然いいけど。
「ありがとうございます。お願いします。」
『いいけど、その代わりテスト終わったら私の言う事一つだけ聞いてね。( ̄ー ̄)』
やっぱり、ただじゃなかったんだ。
まあ、どうせケーキ奢れとかだろうし、いいか。
「おっけーっす。その代わりちゃんと教えて下さいよ。」
『はいはーい、私にまっかせなっさーい(^O^☆♪』
「じゃあ明後日からお願いします。」
『ほーい、じゃあね〜(^O^)』
これで、テストは一安心だな。




