第1話
〈side 葵〉
「あ、あった、5組かー、知ってる人いないなー。」
仙陽高校の校舎はコの字型をしており、生徒達の教室は全て同じ棟にある。1年生の教室は2階にあり学年が増えるごとに階が上がっている。クラスは40人1クラスの8クラスある。
私は友達がいない事にがっかりしながらも自分の教室へ向かった。
教室中へ入ると、
「お、あの子可愛くねー?あとで声かけてみようぜ。」
「お前チャラ男かよ。」
「ち、ちげーよ、てか、この学校可愛い子多くない?」
「確かに、この学校当たりだよなっ!」
(はぁー、やだなー、声かけられたら愛想笑いですませようかな。)
自分で言うのもなんだが顔は可愛い方に入ると思う。自分で思ったわけではなくそう言われてきたからだ、でも男の子と話すのはあんまり得意ではないので大抵の場合愛想笑いで済ましてきた。その結果中学時代では男友達が少なく、彼氏なんているわけもない、学校生活を過ごしていたので、私は高校では中学にできなかったことを楽しもうと決めている。
(やっぱり、ちょっと怖いけど話してみよっかなー。だって、ちょっとカッコ良いんだもん。)
そんな事を考えながら自分の席に座ると、
「ねぇ、私隣の席の篠原早苗って言うのこれからよろしくね。」
(びっくりした〜)
「よ、よろしくお願いします。」
「ごめん、びっくりしちゃった?敬語じゃなくていいよ私のことは早苗ってよんでね。え、えーと…」
「あ、桐山葵です。これからよろしく早苗ちゃん。」
「うん!よろしくね葵。」
早苗さんは髪は少し脱色していて長さはは肩までかかっている。とても明るい人だった。
(高校初めての友達って思っていいよね。可愛い人だな。)
ガラガラッ
「おーい、お前ら席につけー」
そう言いながら入ってきたのはこのクラスの担任である上田先生だ。
「いまから入学式で、体育館に行くから、廊下にでろよー。」
「葵、一緒に行こっ。」
「うん、いいよー。」
私は早苗と話しながから体育館へ向かった。
入学式は校長の話や来賓の人の話とかだったので正直あんまり聞いていない。多分他のみんなもそうだろう。教室に戻ってから先生が学校生活やクラブの話を終わると、今日はもう解散らしい。
入学式って楽だな(笑)
「葵ー、クラブ活動とかってもう決めた?」
「ううん、まだだけど、早苗ちゃんは?」
「うーんとねー、私もまだ決めてないんだー。まっ、いくつか候補はあるけどね。決めてないんだったら一緒に見学しに行かない?」
「うん、いいよ。早苗ちゃんが一緒だと楽しそうだしね。」
「おーい、篠原。」
そう声がする方を見るとさっきの男の子たちだった。3人ぐらいいてしかも背が高い。
(ちょっと、怖いかも)
「えーっと、いきなり何?」
「あ、ごめんごめん。俺の名前は速川悠人そんでこいつらは、まっ、あとでいいや。俺たちさハンド部に入ってるんだけどさ、マネージャー探してんだよね。よかったらやってくれない?」
「ハンド部かー、一応私の候補にあったんだよね。見学してから考えてもいい?」
「あ、そうなんだ、今日も部活あるからこれから来てよ。」
「いいけど、葵も一緒でいい?一緒に行く約束してたんだけど。」
「桐山?全然いいよ!桐山にも頼もうと思ってたんだよ、ナイス!」
「いいよね、葵っ」
「別にいいけど、速川くんたちもう入部してるの?」
私がそう言うと速川くんは待ってましたとばかりに勢いよく話し出した。
「あ、俺?まあ俺たち推薦だからねー。一応中学では兵庫選抜なんだよ。だからもう入部済みってわけ。」
「えー!速川くんすごっ!」
「え、そうかなー?」
速川くんは少し顔が赤くなっていた。
(早苗ちゃん速川くんの思うツボだな〜)
「おいっ、悠人早く行くぞ!」
「あー、わーったよ。それじゃあ早苗ちゃんと葵ちゃん後でね〜」
速川くんはニッコリしながらそう言うと走って行った。
「ねぇねぇ、葵、速川くんたちいい感じじゃな〜い?選抜ってすごいよね?」
「うん、そうだね。でもハンドボールってどんなスポーツなんだろう?」
「それ私も思った、まあ、行けば分かるんじゃない?それよりもハンド部ってイケメン多いらしいよ、だから私候補に入れてたんだー。」
「そ、そうなんだ。」
そんな話をしながら体育館へ向かっていた。
早苗ちゃんのイケメンが多いって言葉に私は少し不安になりながらもドキドキしていた。多分男の子と話して浮かれているのだろう。まあでもハンドボールを見るのは少し楽しみなんだけど。
私の高校はハンド部は強いらしく県大会ではベスト4には必ず入り、全国大会にも何度か出場しているらしい。なのでハンド部専用の体育館がある。
そんな事を早苗ちゃんと話しながら歩いているといつのまにか体育館に着いていた。ドアが閉まっていても聞こえるくらい大きな声が聞こえる。ドアを開けるとさらに大きく聞こえ私はその声や熱気、みんなの視線に圧倒された。
「部活の見学に来ましたー!」
早苗ちゃんがそう言うと、マネージャーらしき人と男の人が近づいてきた。
「マネージャーの見学だよね?俺は三年でキャプテンの五十嵐、俺はもう練習に戻るけどマネージャーについてはこの2人に話してもらうからよろしく。」
そう言うと五十嵐先輩は走って戻って行った。
「はいはーい、マネージャーについては私たちが説明するからよく聞いてね、って言ってもそんなに話すことないけど。」
2人からマネージャーの仕事について説明してもらったがどれも簡単な仕事ばかりだったので質問することはとくになかった。多分どこの部活のマネージャーも同じなのだろう。
「まっ、説明はこんだけだけど、あとはゆくっり見学してってー、あと流れ玉に気を付けてね。」
「早苗ちゃんどうする?」
「せっかくだしハンドボール見てみようよ。っていうかあの人カッコよくない?」
早苗ちゃんの視線の先の方を見ると私でもカッコいいと口に出してしまうぐらいのイケメンがいた。
「あー、あの人ねあの人は桜木くんだよ確かに2年生の中では1番カッコいいと言っても過言ではないくらいイケメンだけど彼女いるからねー」
そう言ったのはさっき説明してくれたマネージャーだ。今の言葉を聞く限りこの人も2年生なのだろう。
しかもかなり美人である。
「なーんだ、彼女持ちかー、でも他にもイケメン多いよね、私ハンド部のマネージャーになろっかなー。葵はどうする?」
「私も早苗ちゃんが入るならハンド部にしようと思う。さっきの人たちも優しかったし仕事も大変じゃなさそうだったからいいかなーって思ったよ。でもちょっと大きい人が多くて怖いけどね。」
「そっか、じゃあハンド部にしよっか。これから回るのも面倒だしねー。それに体育館だから日焼けしないし。」
「うん、そうだね。」
私たちはハンド部に入ることを決め、少し練習を見てから帰った。練習では多分試合形式でやってたと思うんだけどルールがよく分からないかったので試合なのかどうかも分からなかった。意外とハンドボールって激しくてケガとか心配だけど見ていてカッコいいなとか思っちゃったり。明日から楽しみだな。そんな事を帰りながら早苗ちゃんと話していた。
早苗ちゃんは私と同じで電車で通学しているけど、学校までは私の駅よりも4駅ほど近い。
「バイバーイ、葵また明日。」
「うん、また明日。」
早苗ちゃんと駅で別れて家に帰った。
「ただいまー」
私は家に帰るとすぐに自分の部屋に戻りベッドに飛び込んだ。
「ふー、今日疲れたなー。でも友達も出来たし、部活も決めたから明日から頑張ろー。」