第15話
〈side 葵〉
日曜日
キュッ、キッ、キュッ、
「はいっ、そこ!マークしっかり!」
「声ないぞ!元気出せ!」
葵は体育館にいる。
おわぁ〜、みんな顔が真剣だな。
なんかカッコいい。
「じゃあ、10分休憩!」
その掛け声と共に、休憩をし始める。
外に出て風にあたりに行く者もいれば、窓の近くへ行き、座り込む者もいる。
中には、よほど疲れたのか、倒れ込む者もいる。
「おい、1年!受験で体力落ちてるのかも知れないが、寝転がるな。」
そう言われ、怠そうに身体を起こすのは、一般入部の者達だ。
葵たちマネージャーは、休憩の時にモップを掛けたり、部員に水を届けたりするのが主な仕事だ。
試合や、合宿などでこの他にも仕事が増えたりするが、学校で練習の日の仕事はだいたい同じだ。
今、葵はボトルの入ったカゴを持って、うろちょろしている。
「葵ちゃ〜ん。水ちょうだい。」
部員の中にはこのようにマネージャーに甘える者もいる。
「速川くん、はいどうぞ。」
「いつもありがとね〜」
「いえ、これぐらいしか出来ないので。」
「おいっ、悠人、お前マネージャーに甘えるのはいいが、練習には集中しろっ!」
「チッ、なんだよ隼人。俺はちゃんとやってんの。シュートだって決めてんだから、文句言うな。」
「あのな、点取りゃいいってもんじゃないだろ!ディフェンスしっかりやれや!」
「俺はディフェンス苦手なんだよ、その代わりに点とってやってんだからな。お前が俺の代わりに点取れんのか?あぁ?」
「あぅ、あぅ、」
ケンカしちゃったよ、どうしよ〜
葵は2人の顔を交互に見比べ、泣きそうな顔をしている。
「おい、お前ら、喧嘩するのはいいが、マネージャーを困らせるな。」
悠人と隼人はその声にハッし葵を見る。
「2人とも、落ち着いて話し合おうよ、ね?」
「「お、おう」」
「葵ちゃん、ごめんね、こういう時は、俺の事呼んでくれていいから。」
「は、はい。そうします。」
桜木先輩優しいなぁ〜。
「ごめん、葵ちゃん。」
「悪い。」
「2人とも、もう大丈夫ですから、気にしないで下さい。」
葵はニッコリと微笑む。
「おい、速川、赤井の言ってる事は間違ってないからな。お前はもっとディフェンスをしろ。」
「はい。すいません。」
桜木先輩カッコいいな、さすが副キャプテンだ。
「葵ちゃん、今日も水持って行ってもらっても構わないかな?」
「あ、はい。大丈夫です。」
「じゃあ、頼む。ありがとう。」
立花くんのこと知ってるのって、桜木先輩だけなのかな?
葵は、燐のもとへ向かう。
「お水持ってきました。」
「ああ、サンキュー。」
燐は、喉を鳴らして水を飲む。
やっぱり今日話しかけようかなぁ?
なんでいつも走っているのか気になるし。
葵がそんな事を考えていると、
「なぁ。」
「ひゃ、ひゃい。」
びっくりした〜、あれ、今話しかけられた?
どうしよ、まだ心の準備が〜。
やばいやばい、平常心だ。
「お前、昨日姉ちゃんに会った?」
「沙織さんですか?会いましたけど…」
「チッ、お前だったんだな。」
え、舌打ちされた?何かあったのかな?
えー、沙織先輩何したの〜?
また、嫌われちゃったぁ。
うぇーん。
「ま、いいわ。」
燐はボトルを葵に押し付けるように渡すと、走っていった。
今度こそ嫌われたよね?
立花くん絶対怒ってるなあ。
沙織先輩に何したのか今度聞かなきゃ。
部活が終わり、葵は部員たちと駅へ向かって歩いている。
「はぁ〜。」
「あんた、さっきからため息ばっかりで、うざい!」
え、うざい?
とうとう早苗ちゃんにも言われちゃった。
そうだよね、私ってうざいよね。
葵はあの後からずっとこの調子なのだ。
「葵ちゃん、元気だしてよ。葵ちゃん落ち込んでたら、俺も悲しいからさ。」
「うん…」
速川くん、優しいなあ。
いっつも私のこと気にしてくれるし。
いい人だなあ。
「今度さ、この6人にさ西平入れて、ご飯でも食べに行かない?」
「お、悠人いいこと言うわね。私は賛成するわ。傑くんもいいよね?」
「え、ああもちろんだよ。」
傑が早苗に微笑みかけると、早苗はそれに卒倒しかけ、
「はぁ〜、傑さま。」
静かにそう呟いた。
「なぁ〜、お前らもいいだろ?」
「しょうがねぇ〜な。」
「葵も行くのだろう?」
旭が問いかける。
「え、私は…「葵も行くって!」」
早苗が強引に決める。
(ちょっと、早苗ちゃん。)
(なによ?悠人が気を利かせくれたんだから、来なさいよ。ほら、いつまでもしょんぼりしてないで元気出す。)
(うん。)
「葵ちゃん。来れる?」
「うん、大丈夫。」
「そっか、じゃあ来週の土曜日ぐらいでいいよな?」
全員が賛成する。
速川くんが気を利かせてくれたんだよね。
私も元気出さないと。
葵は悠人の服をチョンチョンっと摘んで振り向かせ、
「ありがとう…」
悠人にだけ聞こえる声でそう呟き、笑顔を見せた。
どきんっ
やっべぇ〜。今の可愛い。
やっぱ葵ちゃん最高。
悠人は心の中でガッツポーズをする。
「どういたしまして、葵ちゃんも元気だしてね。」
「速川くんは、優しいね。」
「葵ちゃんだからね。」
「え?」
「あ、ごめんごめん、気にしないで。」
そんな事言われても、気にしちゃうなあ。
ちょっと今ドキッとしちゃったし。
葵の顔が紅潮する。




