第13話
〈side 葵〉
高校生になってからの初めての土曜日。
今日は部活が休みだ。
一週間に一回は休暇を取るんだって。
毎日やったら、そりゃあ疲れるよね。
多分筋トレの後に休まないといけないのとおんなじ感じなんだと思う。
急に休みって言われたから、何にも予定がないんだ。寂しよね。
あー、暇だなぁ。
あれから立花くんとは、あんまり話せていない。
というかまったく会話していない。
だって恥ずかしいんだもん。笑っちゃうよね。
あーー、休みの日まで立花くんのこと考えちゃってる、これって恋?まだ分かんないかな?
だってね、最近部活の人に話しかけられた時でもドキドキしちゃんだもん。
速川くんとか、白馬くんとか、赤井さんはちょっと怖いけど、優しいし。
でも松原くんと話すときが1番落ち着くんだよね。
私って誰が好きなんだろう?
散歩してたら、立花くんにあえるかな?
ちょっと散歩してみよ、暇だしね。うふふっ。
葵は玄関へ向かう。
「あ、葵ー」
「なあに?お母さん?」
「ちょっと、どこか出かけるんだったら、ケーキ買ってきてちょうだい。ほらすぐそこのお店の。」
「うん、わかった。」
「あんまり遅くならなようにね。」
「わかってるよぅ。」
散歩ついでにお使い頼まれちゃった。
あそこのケーキ美味しいんだよね。行ったこと無いけど、お母さんがいっつも買ってくるケーキがとっても美味しいの。
最初にちょっとよっていこうかな?
葵はケーキ屋へ向かう。
ケーキ屋にて
さつきが店番をしていた。
「今日人少なっ!」
さつきのケーキ屋はケーキ屋兼カフェのような店になっている。
カランカラン
「お、沙織、来たんだ。」
「うん、多分後からお母さんくると思うよ。それにしても、今日意外と人少ないね。」
「四月だからみんな忙しいのかも、まっ、私は楽でいいけどね。」
「そんなこと言わないの、じゃあ、紅茶とさつきのオススメ下さい。」
「はいよー。ちょっと待ってて。」
カランカラン
客が来たようだ。
「いらっしゃーい、あれ?君は確か〜」
さつきは顎に指を当てて考える。
「あ、思い出した!葵ちゃんだねっ?」
「は、はい。さつき先輩。先日はどうも。」
「今日はどうしたの?」
「ケーキを買うのにお店を覗いたら、さつき先輩がいたので、入ってみようかなって」
「そうなんだ、まっ、ゆっくりしてってよ。」
「さつき?知り合い?」
「あー、沙織は知らなかったね。高校の後輩だよ。ハンド部のマネージャーなんだって。」
「へぇー、そうなんだ、葵ちゃん?だっけ?よかったら一緒にどう?」
「あ、じゃあ、お願いします。」
「ふふっ、そんなに賢まらなくていいのよ、私は2年の立花沙織。生徒会副会長してるから、知ってるかな?」
「は、はい。もちろんです!わ、私は1年5組のき、桐山葵でしゅ!ハンド部のマネージャーしてましっ、よろしくお願いしまっふ。」
さつきと沙織はクスクスと笑ってしまう。
葵は恥ずかしくなり、顔を赤くし俯いてしまう。
「わらって、ごめんね。あんまり可愛いから、ふふっ」
「葵ちゃん、私の時はそんなに緊張してなかったのに、どうしてかな〜?」
「そ、それは!」
葵は言葉がでない。
言えないよ〜。
立花くんのお姉さんだからなんて絶対言えないよ。
「さつき、からかわないの。」
「だって、ちょっと悔しいじゃん。」
さつきは膨れている。
「ところで、葵ちゃん、家この辺なの?」
「あ、はい。ここから歩いて3分くらいのところです。」
「あら、意外と近いのね。」
「えーー、そうなの!?よかったじゃん、葵ちゃん。」
さつきが言う。
「え、さつき、どうしてよかったの?」
(やばっ!余計なこと言っちゃったかなぁ?)
「うーん、まあこっちの話?」
「そう、」
「さ、沙織先輩って彼氏とかいるんですか?あっいきなりすいません。学校でそういう噂を聞いたことあったので。」
「ふふっ、いるわよ、知りたい?」
「え、いいんですか?」
「葵ちゃんも、知ってる人だと思うから。クイズにしよっか。」
「私の知ってる人ですか?」
「葵ちゃんもよーく知ってるはずだよっ。」
さつきが言う。
「ヒントは〜、すっごくカッコよくて、優しいひとかな?」
「それって、ヒントですかぁ?」
「ふふっ、そうよ、よーく考えてね。」
うーん、すごくカッコいい人かぁ。
1年生じゃないはずだから、私の知ってる人って限られたるしなぁ、あっ、ハンド部とか?
じゃああの人かな?
「えーっと、桜木先輩です…か?」
「「ピンポーン!だいせーかい!」」
「よく分かったね。」
「私が知っていてカッコいい先輩は、桜木先輩しか思いつきませんでしたよ。」
「一馬くんカッコいいよね!よね?」
沙織はそう言いながら葵に迫る。
「は、はい」
「こーらっ、沙織、葵ちゃん驚いてるからやめなさい。ごめんね、葵ちゃんこの子、彼氏の事となると人が変わるから。」
「沙織先輩の意外な一面が見えて、よかったです。」
沙織は何故か納得していない。
頰を膨らましている。
「むむむぅ…一馬くんは彼氏じゃありません!旦那さんですぅ!」
「「ははは」」
さつきと葵は苦笑いする。
「沙織いつから?」
「この前、一生ついて行く宣言したの。」
沙織は顔を真っ赤にして頰に両手をあてて、顔をふるふるしている。
「か、かわいい」
葵は思わず呟いてしまう。
カランカラン
「あ、お母さん!」
「沙織どうしたの?顔真っ赤よ。」
「へ、何でもないよ!」
「そう? さつきちゃん、お母さんいる?」
「あ、今呼んできますね」
さつきは母のところへ駆けていった。
「沙織、お友達と一緒だったの?」
「え、まあ、友達っていうか、さっき会ったばっかりなんだけど、後輩だよ。」
「ずいぶん可愛い子がいると思ったら、沙織の後輩だったのね。こんにちは、」
「桐山葵です。こんにちは、」
(沙織先輩のお母さんかぁ、綺麗な人だなあ、可愛いって言われちゃった、へへっ)
葵は自然と笑顔になる。
「綾ちゃん、久しぶりー。」
「つかさちゃん、久しぶりだね。」
まるで学生のような挨拶を交わす2人。
あらら…名前出ちゃったね、あくまで参考ですからね。
「もう今日店閉めちゃおっか。3人はゆっくりしていっていいからね、じゃあ綾ちゃん、行こっ」
「うん。」
さつきの母はそう言うと沙織の母と家に行ってしまった。
先輩たちもあんな風に仲が良いのかなぁ?
あんな風に歳をとれたらいいなぁ
「ところで葵ちゃん、」
「はい?」
「沙織に聞きたいことあるんじゃな〜い?」
さつきは机に肘をつきながら言う。
「そうなの葵ちゃん?何でも聞いてくれて構わないわよ。」
「え、まあ、今思えば、そんな大した事でもないかなぁーって。」
葵が頭を掻きながらそう言うと、
「じゃあ、葵ちゃん、私が代わりに聞いてあげるよ。沙織のおと「あーー!自分で聞きます!」」
「私の音?」
「あのですね、その、沙織先輩って1年生に弟さんとかいたりするんですか?」
「あー、おとうとね、うん、いるよ。それがどうしたの?」
「いえ、それだけです。」
これ以上は恥ずかしくて聞けないなあ。
さつきが頬杖をついてニヤリと笑いながら、葵を見つめ、
「葵ちゃん、それだけぇ〜?チャンスなんだよぉ〜?」
(くっ、さつき先輩のいじわるっ。)
でもいろいろ聞くチャンスなのは確かだよね。
「弟さんって、ハンド部ですよね?部活に出てこないのはどうしてなんですか?」
「あー、燐出てないんだったね、これあんまり言っちゃいけないことだと思うから私からは言えないかな?でもそのうちわかると思うよ。」
「そうなんですか、いっつも走ってて不思議に思ってたんです。」
「そうそう、それでね葵ちゃんがいっつも水持ってきてるんだよ。そん時初めて会ったんだ。」
「そう。いつもありがとね、燐の代わりにお礼するわ。これからも弟をよろしくね。」
「ひぇっ、いえ、マネージャーなので当然と言いますか、なんと言うか、あまり話したこともないものでして。」
「ふふっ、燐にも伝えとくわ。」
(え、何を伝えるんですか!?)
「よかったね、葵ちゃん。」
(よかったの?)
「ところで、葵ちゃん好きな人とかいないの?」
沙織先輩わざとかなぁ?でもそうな風に見えないしな?
「今はまだ、分からないと言うかなんて言うか。」
「はっきりしなよ、葵ちゃん、」
「さつき、こう言うのは、急ぐもんじゃないんだよ。じゃあ葵ちゃん、出来たら教えてね。手伝ってあげれるかもしれないから、ね?」
沙織はそう言うと微笑む。
絶対わざとだ!
この先輩たちわざとやってるよー!
「わ、分かりました。前向きに考えます。」
「ふふっ、いい返事待ってるわ。」
これが大人のよゆーってやつなのか!?
ちょっと悔しいな。
私もあれぐらい余裕が持てたらいいのに…
「今日はありがとうございました。」
「いつでも、きなよっ。それから、頑張れ!葵!」
さつきは親指を立てて言う。
「は、はい。」
葵は先に家に帰って行った。
「沙織、あんた、わざとでしょ?」
「ふん、さあね?どうでしょ」
「沙織も大概よね。」
「葵ちゃん、可愛いからね、ちょっと、からかいたくなっちゃった。」
「ほどほどにしなよ。燐も困るんだからね。」
「そうね、けどさつきはどうなのよ?」
「な、何が?」
「燐のことよ。」
「私はべっつにぃ〜、何もないよ。」
「あっそ、」
沙織はフフッと笑う。
「なによぉ〜。」
「なにも」
家に帰った葵ちゃん。
明日は日曜日だから、明後日かな。
話しかけてみようかな。
ちょっと怖いけど、大丈夫だよね。
沙織先輩も言ってくれたし。
むーー…。あーー、緊張してきたー。
葵はベッドの上でクッションを抱きしめてゴロゴロ転がっている。
頑張れ、葵ちゃん!




