第11話
〈side 葵〉
燐が監督に呼び出された日と同じ日。
「早苗ちゃん、あの人誰?」
「あー、あれね、旭だよ。練習中に眼鏡かけるのは危ないから、コンタクトにしてるんだって。」
「へー、それにしても別人だね。」
「そう?あんたちゃんと人の顔みてる?」
「み、見てるよ!」
「ふーん、そう、どうせ立花燐の顔しか覚えてないんでしょ?」
「そ、そんなことなーい!立花くん以外の顔も覚えてるもんっ。早苗ちゃん変な勘違いしないでよ。」
「あらそう?まあいいわ。それにしても今日は五十嵐先輩と桜木先輩おそいわね。」
「それならなんか監督と話し合いみたいな事言ってたよ。」
「あんたよく知ってたわね。」
「だってここにくる前に、桜木先輩に会って、言われたもん。あっ、そうだ水渡しに行かなきゃ。」
「忘れてたの?きっと今頃喉が渇いてるわよ。早くいてきなさいよ。」
「うん、」
葵は体育館を走って出て行った。
忘れてた。大変だ、急がなきゃ。立花くんが死んじゃう。でも怒られたらどうしよう。また嫌われちゃうなー。
あ、立花くんいた。あれっ、誰かと一緒にいる。
誰だろう?えっ、女の人だ。
見たことないし、先輩かな?金髪ですごく綺麗な人だな。
なんだかとっても親しそう、もしかして、彼女とか?だったらどうしよう〜。
今行くと迷惑だよね。
わぁ、今、おでこツンってしたよね。
立花くんもなんだか照れてるし。
私もああいうのして見たいなあ。
なんだろう、すっごく胸チクチクするなぁ、嫌だなぁ。これって嫉妬なのかなぁ。
まだ気になるってだけなのに、好きになったわけじゃないのに。
立花くんは私の事どう思ってるんだろう?
水くれる人?マネージャー?嫌な奴?
これだったら嫌だなぁ。
こんな時どうしたらいいんだろう?
葵はしゃがんで俯いている。
あっ、立花くんいなくなった。
でもあの人まだいるなぁ。待ってるのかなぁ。
水渡しに行くだけだし行ってもいいよね。
葵はさつきのほうへ歩いていく。
「ねぇ、君。」
「ひゃい!」
(びっくりした〜、話しかけられらと思わなかったなあ。)
「もしかして、マネージャー?さっきの見てた?」
葵は申し訳なさそうにコクコクと頷く。
「そっか、今見たこと他の人には内緒にしてね?」
「ど、どうしてですか?」
「まあー、いろいろあるんだよ。」
(本当は沙織にバレるのがめんどくさいんだよね。)
「もしかして、立花くんと付き合ってるとかですか?」
「え、ち、違うよ。そんなんじゃないから。」
「でも、すごく親しそうだったから…」
葵は悲しそうな表情をする。
(あちゃー、そう思われたか。)
「ううん、ただの友達だよ。まあちょっと色々あるけどね。君は?燐くんとは仲いいの?」
(燐くんかぁ〜、下の名前だし、やっぱり何か特別な感じがする。)
「い、いえ、私はそんなに話したことも無いですし、それに、多分嫌われてると思うから。」
「え、そうなの?どうしてそう思うの?」
「それは…」
葵はこの前燐が怒った様に見えたことを簡潔に話した。
「多分、それは君の勘違いじゃないかな?彼そんな事で起こったりしないと思うよ。」
「ほ、ほんとですか?」
「うん、保証するよ。」
その言葉を聞き、泣きそうだった、
葵の表情はぱぁっと明るくなる。
(良かった〜。この人が言っているからなんだか信用できるなあ。)
「ねぇ、君は燐のこと好きなの?」
「ひぇっ、あ、いや、その、まだ、分からないといいますか。いや、違います!」
葵は顔を真っ赤にしながら手を振り否定する。
(そんなのまだ分からないよ〜。)
「あははっ、君、分かりやすね。安心して、私と燐くんは君の思っている様な関係じゃないよ。」
「は、はい」
「ところで、自己紹介まだだったね、私は2年の西野さつき、さつきって呼んでいいよ。」
「あ、やっぱり2年生だったんですね。私は1年の桐山葵です。よろしくお願いします。さつき先輩。」
「うん、よろしくね葵ちゃん。」
「さつき先輩はどうして立花くんと、知り合ったんですか?」
「あー、それがね、葵ちゃん、燐くんのお姉さんって知ってるかな?」
「え、お姉さんですか?知りません、いることも知りませんでした。」
「そうなんだ、でも葵ちゃんも知ってる人だと思うよ。立花っていう苗字で思いつかない?」
立花さん、えーと、うーんと、あっ!
「もしかして、沙織さんですか?副会長の。」
「そっ!せいかーい。その人と私が友達でそれで知り合ったってわけ。」
「そーだったんですね。なんか納得しました。」
(そーいうことかぁ。だから親しかったんだね。)
「どう?安心した?」
「あ、はい。いやっ、元から心配してません!」
葵は右手を前にしてこたえる。
「葵ちゃんって、ほんと分かりやすくて可愛いよね。よく言われない?」
「残念ながらよく言われます。」
「だよね?そろそろ帰らないとみんな心配しちゃうんじゃない?」
「そうですね。そろそろ戻ります。ありがとうございました。」
「葵ちゃんの事も聞いといてあげるよ。」
「だ、大丈夫です!」
「あはは。じゃあね。」
話してて楽しい人だったなあ。しかも遠くで見るよりすっごく美人だし。
ちょっと悔しいかも。
でも、立花くんが怒ってないこと分かったらからいいか。
副会長が立花くんのお姉さんって知らなかったな。どうりで聞いたことある苗字だったんだ。しかも、お姉さんも美人だから何だか納得いくよね。
「葵ー、遅いじゃない、どこ行ってたの?心配したじゃない?ってなんでそんな嬉しそうなの?」
葵はスキップしていて顔が明るい。
「えへへっ、そうかなー。別にさっきと変わってないよ。ふふっ」
だめだ、笑いが止まらない。
「まあ、落ち込んでるよりはマシだけど、今度は何かいいことあったの?」
「え、いや、特になにも。」
「まーた、ごまかすんだ、ふぅーん。」
やばい、早苗ちゃん怒っちゃう。
「そ、それがねぇ、西野さつきさんっていう2年生のすっごく美人な人と友達になったんだよ。だからじゃないかなぁー。」
「そう?良かったじゃない。で、きっかけは?」
「それは、長くなるからまた今度にしよっ、ね?」
「ふぅーん、まあいいけど。今回は本当っぽいしね。」
早苗ちゃんって嘘発見機かなにかなのかな?




