第10話
〈side 燐〉
あれから3日後の放課後、燐は一馬に監督のところへ呼ばれていた。
ガラガラッ
「失礼します。1年7組の立花ですが、相楽先生はいらっしゃいますか?」
「君が立花くんかい?よく来てくれたね。さあこっちへきたまえ。」
監督って意外と若い先生なんだな。もっといかつくて竹刀持ってると思ってたぜ。
燐は相楽に相談室へと連れていかれた。
そこには一馬と五十嵐がいた。
「おー、燐遅いぞお前先輩を待たせるなんてまだまだだな。」
「うるせー、掃除が長引いいたんだよ。」
「お、おい、ここでは敬語って言ったろ?」
(あ、しまった。監督と先輩いるし。やべぇー)
「ははっ、いいんだよ、気にしないでくれ。君たちの関係は良く知っているからね。だが、部活中では気をつけてくれ。」
そう答えたのは五十嵐だ。
「は、はい!」
(よかったー。いい人だ。あれ?この人誰?)
「一馬くん、こちらの方はー?一体?」
「おいっ、お前阿保か、キャプテンだよ。それぐらい覚えとけ。」
「はっ、し、失礼しました!」
「いいよ。別に気にしてないからね。まあ会ったことないんだし、仕方ないんじゃないかな。一馬も気にしないでくれ。そうだね、取り敢えず自己紹介だけはしておこう。僕はキャプテンの五十嵐短い間だけどよろしく。」
「立花燐です。こちらこそよろしくお願いします。」
「おーい、挨拶はもう済んだか?」
そう言ったのは相楽だ。
「はい。」
「よし、じゃあ本題に入るんだが、その前に、立花、走らせてばかりで悪いな。もう調子は戻ってきたか?」
「あ、はい!大分戻ってきました。自分もなまっていたんでちょうど良かったです。」
「そうか、ならいいんだしかし、一週間は続けてくれ。」
「分かりました。」
(なんだ結局一週間やるのか)
「本題なんだが、立花を次の公式戦からスタメンで出そうと思うんだが、2人はどうだ?」
「僕はいいと思います。まあまだ実力があんまり分からないんですけど。」
「俺もいいっすよ。久しぶりにこいつとやってみたいんで。」
「あのー、すいません。試合に出れるのは嬉しいんですけど、いきなり大丈夫なんでしょうか?俺が留学してたのってほとんどの人が知らないんですよね?しかも、去年の日本での実績が無いんで、他の人が反対するんじゃないですか?」
「別にそれくらい大丈夫じゃないっすか?」
「いやでも、多分みんな自分に自信がある人ばかりだからいきなりのポッと出に試合に出られたら、誰だって不満を持つと思うんですけど。」
「それなら全部言ってやったらいいだろ?」
「それは無理!恥ずいし、あんま言いたくない。」
4人とも黙り込んでしまう。
「まあ、とりあえずそういう事だから立花は準備しといてくれ、他の人ことはまあなんとかなるだろう。」
「分かりました。」
(おいおい、監督こんな調子で大丈夫なのか?)
「「「失礼しました。」」」
「一馬くん、俺ランメニューに戻るから、また後で!」
「おう、後でな」
燐は走って行った。
「一馬、あいつ本当に上手いんだよな?」
「その辺は大丈夫っすよ。」
「お前が言うなら心配ないんだが。」
やったー、試合に出れる。けど他の人納得すんのかな?とりあえず体力戻すためにも走るか。
「おーい、そこの少年!」
は?少年って(笑)誰だよ。あーあの人か。
「さつき先輩こんなとこで何やってんですか?って少年って。」
「今日沙織と帰る約束してて、暇だから君を待ってた。」
「待ってたって、別に俺も暇じゃないんすよ。先輩部活とかやってないんですか?」
「私は帰宅部だからね。早く走ってきなよ。終わったら暇だろ?」
「まぁ、そうですけど。」
「待ってるから。」
そう言われ燐の顔は赤くなる。
「あー、分かりましたよ、でも、そんなすぐ終わらないっすよ。」
「あはっ、いーの、いーの、走ってるの見てるだけでも楽しいから、ほら早く行ってきな。」
そう言ってさつきは燐のおでこを指でツンと付く。
燐は焦って両手でおでこを抑える。
その後、顔が真っ赤になり、それ見られないために、振り返りすぐさま走り出した。
くっそー、なんだよあの余裕、でもちょっと可愛かったなあ。早く終わらせよ。
燐は少しニヤける。
「はぁ、はぁ、終わった。」
燐はさつきの方へ歩いて行く。
まだ走り終わったばかりなので肩で息をしている。
「さつき先輩、はぁ…、はぁ、終わりました。」
「あ、やっと終わった、もう、おっそーい!」
「だから、最初に言ったじゃないですか。それに今日は監督に呼ばれてたんで予定より遅くなったんですよ。」
「言い訳したね、5点減点!」
さつきは右手を腰に手をあて、左手の人差し指を立てて言う。
(なんの点数だよ!)
「遅くなったのは謝ります。もうすぐ部活終わる思うんで、姉ちゃんくると思いますよ。とりあえず俺着替えてきます。」
「いーよ、急いで着替えてきてね。もう待たすなよ。」
燐は走って行った。
五分後
「さつき先輩、着替え終わりましたよ。姉ちゃんまだ来てないんですか?」
「今度は早かったね、よろしい。もうすぐくるんじゃないかな?それよりも、お願いがあるんだけど。」
さつきは上目遣いで燐をじっと見つめる
うわ、めっちゃ可愛いんだけど、ドキドキしてきた。お願いってなんだろ?ろくなことじゃないような気がする。
燐は唾を飲み込んで、こたえる。
「お、お願いですか?俺も先輩待たせてしまったんで、出来る範囲でなら構いませんよ。」
「本当に!?約束だぞ?後で言うね。」
さつきの顔がぱあっと明るくなる。
「や、約束します。」
「あんたたちなにしてんの?」
その声に燐とさつきはハッとして声の方を向く。
「ね、姉ちゃん!いきなり、脅かすなよ。」
「いやー、なんか弟と親友がいい雰囲気だったからね、つい。何もしてないよね?さつき、」
「え、うん、まあ何もしてない、かな?」
さつきは焦ってるようで、かなり汗をかいている。
「そっ、ならいいんだけど、燐もやるならお姉ちゃんに隠れてしないように、ね?」
「べ、別に何もしねぇーよ。」
なんなんだー、姉ちゃんなんか怒ってる?意味わかんねーよ。とりあえず笑顔が怖い。
「沙織何してんだよ、帰るぞ。おっ、燐と、西野?何々2人いつの間に仲良くなったの?燐もなかなかやるじゃないか。」
「別にそんなんじゃないからな、たまたま会っただけだ、たまたま。」
「ほー、たまたまねぇー。」
一馬は顎を触りながら疑うように言う。
「燐の言うとおりたまたまだって!」
「西野も燐とか言っちゃてー。」
「そ、それは、沙織が…」
さつきは悔しそうに黙り込んでしまった。
うわー、絶対この2人に勝てない。タイミング最悪すぎんだろ。
「ほら、一馬くん、2人をからかってはいけませんよ。気まずくなるじゃないこれからなのに。これでも大事な弟なんだよ。」
「ははっ、そうだな。」
「だから、そんなんじゃないーい!!」
さつきが反応する。
カオスすぎる。早く帰りたい。
「もう、姉ちゃんもいいから、早く帰ろーぜ。」
「そうね。」
4人は歩き出す。
一馬と沙織が並び、その後ろを燐とさつきが歩く。
(ねぇねぇ、燐。)
(なんすか、先輩)
(マネージャーの事どう思う?)
(いきなりなんの話すか?まー、よく働いてるなって思いますよ。)
さつきは思ってた答えが返ってこなかったのか、ため息を吐く。
(ま、そんな事どうでもいいんだけど)
(じゃあ、なんで聞いたんすかっ)
(えー、なんとなく。それよりも約束覚えてる?)
(え、あ、まあ、そんな事言ったような言ってないような?)
(お・ぼ・え・て・る・よ・ね?)
うわ怖、女の人って笑いながらでも脅すことできるよなあ。ほんとせこい。
(はぁー、覚えてますよ。何するんですか。)
(今日の帰りに、ケーキ奢って欲しいな。)
(仕方ないですね。今日だけですからね。)
(さっすが、燐くん。優しいね。)
「そういうとこいいと思うよ。」
さつきは耳元で囁く。
「!!!」
「ちょっからかわないでくださいよ。」
さつきはケタケタ笑っている。
「おふたりさんはお楽しみの時間かな?」
「「ゲッ!」」
沙織に言われ、さつきと燐は真顔になる。
「げっ!って何よ。別にこそこそ話さなくてもケーキ屋に行きたないなら、言えばいいのに。」
「姉ちゃん聞いてたの!?」
「ちょっとね」
そう言うと沙織はふふっと笑う
「そういう事だから4人で行きましょ、場所はケーキだったらさつきの家でいいよね?」
「え、先輩ん家ってケーキ屋なんですか?」
「ま、まあね、お母さんがパティシエだからね、バイトは家出してんの。」
あえてさつきの両親の名前は伏せておこう。
「先輩ん家ってどこにあるんですか?」
「燐、知らないのか?」
「なんで、一馬くんが知ってるんだよ、ハッ、もしかし浮気した?」
「んなわけねーだろ、阿保か。沙織と行ったことあんだよ。俺らの家のけっこう近くだぞ。」
「チッ、姉ちゃん浮気されときゃいいのに。」
「あんたそれ本気で言ってんの?」
「え、嘘です嘘です、そんなわけないじゃないですかー。」
「そうよねぇ?」
「うん!」
あっぶねー、姉ちゃんに殺されるところだった。
セーフ!
「へぇー、家近かったんすね知らなかった。」
「まあね、高1のとき引っ越して来たから、君は知らなくて当然だよ。」
「そーすね、でも、登下校で一回も会ってないって不思議ですね。」
「まだ入学して4日くらいだからね、それに私は沙織と一緒に学校に行ってるから。」
「なるほど、俺が遅いと。」
「「そーゆこと!」」
さつきと沙織が言う。
「さつき先輩の店のケーキって美味しいすか?」
「すっごく美味しいよ。」
「姉ちゃんイチオシか、あやしいな。」
「それ、どういうことよ、燐!」
「ま、美味かったら奈津たちにも買ってくか」
「話そらすなー!」
4人はそんな話をして笑いながらケーキ屋の中へ入っていく。




