第32話
「起きろーーーっ!」
なんだ、奈津か?
燐は布団の中でモゾモゾと動きながら
「冬休みくらいもっと寝かせてくれよ。」
「もうっ、しょうがないなあ。てあ!」
バフッ
「グハッ!」
うつ伏せになって寝ている燐の上に飛び乗った
「重いぞ奈津、今日は寒いし、まだ寝たいんだって、頼む。」
「燐?」
燐?
あいつそんな呼び方だったか?
それに、声も少し違う気がするし
燐は肩に乗っかっている顔を確かめようと、少し顔を動かし目を開けると、目があった
「・・・・ ・ ・ ・ ・ ・は!!!?」
「あ、葵!?」
葵はニコリと笑うと跳ね起き、燐は身体を翻し、立ってる葵の方を見つめると、
腕を組んで仁王立ちし、燐を見下ろしていた
「彼女の声忘れちゃったのかな?」
「いや違う!寝起きだからだって!」
少しむすっとした表情を浮かべている葵に焦ったのか燐は慌てて弁解した
「ふぅーん、ま、そういう事にしといてあげる。」
「んで、今日勉強は?」
「あれ?分かんない?」
「うん、全く」
きょとんとした表情を浮かべる燐に対して、葵は少し怒った表情を見せてから
「では、ここで問題です!今日はなーんの日だ。シンキングタイムスタート!」
「は?ちょっと待て!」
チッチッチッチッチッと言う音を立てる葵に対して燐は頭を抱えながらうずくまっている
そして、バッと頭を上げて
「分かった!クリスマス!」
自信満々の表情でこたえた燐に対して、葵はニコッと笑い
「ピンポーン、あったりー。さっ、早く着替えて、準備して!」
「ちょい待ち、勉強はいいのか?」
「何言ってるの?クリスマスよ、デートしなきゃ!」
「そ、そうか?」
「そうよ、さっ、早く。今日はデートなんだから。」
「うし!」
張り切る燐に対してふふっと笑うと部屋を出て行った
身支度を済ませてリビングに行くと沙織がこたつに項垂れていた
「姉ちゃん?何してんの?」
沙織は顔上げて燐の方を見ると、涙を浮かべながら
「うぅ…、クリスマスなのに、クリスマスなのに!一馬くんがいない…」
あー、そういうことね…
「電話でもしたら?」
「私は直接会いたいの!」
「いや、無理だろ。ドア発明しろ、そういうのあったろ。」
「燐、冷た〜〜〜〜〜い。」
めんどくせ!
「お待たせ〜、え?沙織先輩!?」
「あ、葵ちゃ〜ん、今からデート?いいよね〜。」
葵を見つめる目は死んでいる
落ち込む沙織を尻目に燐は葵を早く出るように促し、2人は家の外へ
「沙織先輩どうしたんだろう?」
「姉ちゃんは今旦那がいなくて御乱心だ、そのうち戻る。気にすんな。」
「そうなんだ、私には今旦那がいるから安心だね。」
そう言って葵は燐の腕にしがみついついて、ニコリと笑うと、燐は照れ臭そうに返事を返した。
「今日はどこ行くんだ?」
「そうだな〜、仙陽駅にでも行こっか?」
「りょうかーい。」
─────
───
「あいっかわらず、人多いなーー。」
「うん、祝日だし、それに今日はクリスマスだからね。」
「んじゃ、まず何すんだ?」
「とりあえずブラブラしようよ、」
「おう、」
燐は葵の手を握って歩きだすが、葵は立ち止まり、
「ん?どうした?」
「んー、こっちがいい!」
そう言って葵は燐の腕にしがみつき、顔をスリスリと燐の身体に擦り付ける
「ったく、しょうがないな〜。」
「さっすが!」
バッカプルじゃねえか。
2人が歩くのは服や雑貨、アクセサリーの店が立ち並ぶ通り
「おわぁ〜、これ綺麗だね!」
「こっちも、可愛い。」
「これなんか燐に似合ってる気がする。」
「これどう?」
女の子の買い物ってこんな激しいのか!?
これはかなり大変だ。
燐は葵に連れ回されて、かなりぐったりしている。
「燐?どうかした?」
「え、いや、別に。葵は何も買わないのか?」
「うーん、高いからな〜。ごめん、ちょっとここで待ってて!」
「ん?どうした?」
「紳士なら女の子にそれを訊かないほうがいいよ。」
あ、そういうことね
葵は立ち去る
んーー、何か買ってやりたい気もするが、なにがいいんやら。
あっ、そう言えばさっき…
─────
───
「ごめーん、お待たせ。ん?それ何?」
「え?あーー、いやこれは…、そのあれだよ、奈津に頼まれてたやつ!」
「ふぅーん、そうなんだ。」
あやしいなぁ
燐は手に持っていた包みを慌ててポケットにしまい込んだ。
ふぅー、何とか誤魔化せたぞ。
「今からどうする?」
「お昼食べてから、映画でも観に行こう。」
「いいね、」
─────
───
外はすっかり暗くなり、綺麗に電飾の施された木などが光り輝き夜の街を彩っている。
「映画意外と面白かったね。」
「え、ああ、そうだな。」
ん?なんかずっとそわそわしてるんだけど、どうしたんだろう
「ねえ、どうかしたの?ずっとそわそわしてるよ?」
「あー、そうかな?それより、あれ見てよ、すっげえ綺麗じゃね?」
燐の示す方向には大きなクリスマスツリーが
「うん…、綺麗だけど…」
楽しくなかったのかな?
葵は少し暗い表情をしてうつむく、横顔が光に照らされて、赤や青に光っている
「葵?」
「燐、今日楽しくなかった?」
「え、そ、そんなわけないだろ!?」
燐は葵の問いに一瞬怯んだが、すぐに慌てて否定した
「でも、ずっと変なんだもん。」
「あー、ごめん、それはさ…はい、」
「ん?これは…?」
燐が顔を背けて、差し出した手の上には綺麗にラッピングされた包みが
「いやさ、ずっといつ渡そっかなって考えててさごめん、早く渡せば良かった。」
「そうなんだ…、開けていい?」
「おう、」
「あっ、これは!」
包みの中にはシンプルなハートのペンダントが
「ずっと欲しそうに見てだろ。」
燐が照れ臭そうに頬を赤く染め口を尖らせながら言うと、葵の顔はパァっと明るくなり、
「うれしい!ありがとう燐!」
そう言って首のところに手を回して抱きついた
「喜んでくれたなら良かった、これはあれだ、いつも勉強頑張ってるからなご褒美だ。」
「そこはクリスマスプレゼントでいいんだけどなー。」
「まあ、両方ってことで、」
「うん、」
「じゃあさ、ケーキ食べに行こうぜ、」
「そうだね。」
2人は駅の方へ歩き出す
─────
───
今日意外と空いているんだな
カランカラン
「いらっしゃーい、今日はクリスマスデートですかい?」
いつも通り出迎える金色の美女
「そうですね。」
「いいなぁ〜〜、私なんか1人だよ。」
席に座っていた沙織がこちらを向いて口を尖らせている
まだ言ってんのかよ。
「燐、あそこ座ろ、」
「おう、」
ドーンッ
直後に横から衝撃が
は?なんだ!?
「あ〜〜ん、ダ〜〜リン♡、会いに来てくれたの〜」
「は!?つばさ!?何でいんだよ!?」
「え〜〜、ここにいたら会えると思って。」
「は〜〜〜?やめろ、まちぶせ…うわっ!」
つばさが腕の力を強めて、頬をスリスリしている
燐は葵がすぐ横でむすっとした表情を見せているのでかなり焦り、
「おい!やめろって、離れろ!」
「やーーー、もっと。」
「つばさ〜〜〜?怒るよ?」
「ひゃぁ!痛いィィィィ!!」
つばさは怒った葵にほっぺを思いっきり引っ張られて、無理やり離された
「燐!早く!」
燐は葵に腕を引っ張られて席に座る。
「つばさ、葵ちゃん怒らせると怖いよ?」
「今思い知りました。」
さつきに言われたつばさはつねられて赤くなったところを撫りながらこたえた
「今日は何がいい?」
「じゃあ、さつき先輩の特製ケーキでお願いします。」
「ほう、それは高くつくよ?」
「お願いします。」
「おっけー、」
さつきは身を翻すと不敵な笑みを浮かべて調理場へ去って行った
「どんなケーキがくんのかな?」
「楽しみだね。」
「おう、」
2人の甘い雰囲気を遠くから負のオーラ全開でつばさと沙織が見ていた
「はい、お待ち〜。」
そう言ってさつきがケーキを持ってきた
「おい、さつき美味そうなんだけど…、この棒はなんだ…?」
ケーキには通常よりも短いポッ◯ーが大量に刺さっていた
「へ?そちらはカップル限定のポッ◯ーゲーム専用の棒でございますが。何か不都合でも?」
セリフを読むような口調でそう言うと、さつきは何食わぬ顔で燐と葵を見る
「まじか…?ここで?強制?」
「いいえ強制ではありませんがもししなかった場合…」
そう言って燐にさつきが迫り、
燐は唾を飲み込んでから
「しなかった場合…?」
「金額10倍になりま〜す。」
「ほとんど強制じゃねえか!」
「あら、出来ませんか?恋人なのに?」
「いや、それは…」
そう言って、燐があおいの方を見ると、葵は膝の上で手を握り締めて顔を耳まで真っ赤に染めていた
「もちろん、で・き・ま・す・よ・ね?」
「いや、ここではさすがに…」
「で・き・ま・す・よ・ね?」
「はい…出来ます。」
さつきはショーケースのところへ去って行く
「葵…?無理しなくていいからな?」
葵は下をうつむいたままだ
燐はそれを咥えて待つ体制に
葵は顔を上げ燐を見るとすぐに顔を逸らす
「あ〜〜、葵先輩がしないなら、私がしまーーす。」
「は?ちょっと待て!」
「いいですよね、さつき先輩?」
「はい、もちろんです。」
「おい!勝手に許可すんな!」
「じゃあ、もらっちゃいまーす。」
「やめろ!くんな!」
燐に近付くつばさを葵はキッと睨んで、制止させ、
そのまま燐の口元へ
チュッ、
「「「「……!!!!」」」」
葵以外の全員の目がこれでもかと言うほど開き、
顔が離れると葵は唇を指でなぞりながら、
「美味しかった…」
そう言ってニコリと笑い、2人は顔を両手で抑え
「「恥ずか死ぬ……」」
「葵ちゃん…、大胆…」
「先輩…、うわぁーーーん。」
「私も一馬くんとーーーー!!」
外では鈴の音が夜空に鳴り響いている
大胆な葵ちゃん




