第28話
ある日の放課後
燐と葵は横に並んで帰っている
「はぁー、受験イヤだなあ」
「そういえば、そんな行事あったな。」
「忘れてたの?そんなんで大丈夫?」
「んあー、大丈夫だろ、俺大学行かねえし、」
「え?行かないの…?」
「おう、正確には日本のか。」
「どういうこと?」
「まあ、色々あんだよ、ケーキ食いながら話そうぜ。」
「うん…」
そうだ私まだ燐のことで知らないことがあるんだ
カランカラン
「いらっしゃいませー、あっ、りんにぃ!」
ウエイトレス姿の奈津が燐を見つけてそう言うと、燐は奈津を見る視線を上から下へとゆっくり移動させ、
「は!?奈津、お前こんなとこで何やってんだよ、」
燐の言葉に対して奈津は自分の服を摘みながら
「えー、見て分からない?」
「いや、そういうことじゃなくって、お前まだ小4だろ?」
奈津は少しムッとした表情をして、
「なぁに?小4はバイトしたらダメなの?」
「ダメっていうか…」
そう言えばダメなのか?
固まる燐をよそに奈津は葵に駆け寄り、その場でくるりと一回転して、
「どう?似合うかな?」
「うん、とっても似合ってるよ。」
「YES!」
騒いでいる奈津の声が聞こえたのか、調理場からさつきが顔をひょこっと出して
「なっちゃん、誰が来たのー?おっ?これはこれは、おふたりさん放課後デートですかい?くぅー!羨ましいねっ、」
燐がピクッと反応して、葵の肩を抱いて、
「ああ、そうだデートだ!羨ましだろ?さつきにはもう出来んからな。」
「ちょっ、燐、そんなこと言ったら…」
さつきはムッとして、
「はいはい、誰かさんのせいで私の高校での恋は儚く散りましたよー、燐くんだけ今日金額2倍ね。」
あ、やっちまった。
「ごめん、さつき!そんなこと思ってないから許して、ね?」
「いやーー、」
そう言って舌を べーっと出した。
「燐が悪いね。」
「そうそう、女心ってもんが分かってないよりんにぃは。」
「はい、反省します。」
さつきと葵はクスクスと笑った。
「ぷはー、やっぱりさつきのケーキは美味いな。」
「そんなこと言っても2倍だからね。」
「ちぇ〜。」
「ねぇ、燐、さっきの話の続きをしてよ」
葵が真剣な顔をしてそう言うと、さつきの顔色が曇った。
燐は葵の表情とは裏腹に軽い口調で、
「ああ、そうだな〜、どっから話すかな。」
─────
───
燐は海外に行く理由を話した
さつきは話の内容が分かり、安心した表情を浮かべ、奈津は誇らしげに葵を見ていた
「そうなんだ…、」
「どう?驚いた?」
「うん…」
葵はうつむいて、難しい顔をした後、
立ち上がって、
「決めた!」
「へ?何を?まさかついてくるとか?」
「ううん、そんなことしても迷惑でしょ?それに大学は出たいから。」
「じゃあ何を決めたんだ?」
「志望校、」
「どこにすんの?」
「帝国大学!」
葵ほ拳を握り締めそう言うと、
一瞬の沈黙の後、
「「えぇぇぇぇぇぇえええ!!!」
さつきと燐が絶叫し、奈津は訳が分からない顔をしていた。
「おい、それって、日本最高峰のあれか?」
「葵ちゃん本気?」
「うん、本気!」
「確かに葵は頭良いけど大丈夫なのか?」
「なぁに?私が心配なの?」
「そりゃまあ…」
「燐!よーく考えて、身近にいない?帝大生。」
燐は腕を組んで、顔をしかめる。
カランカラン
「たっだいまーー!」
1人の女性が入ってきた、
「あ、あ!あーーーー!」
何かに気が付いたさつきがその女性を指差して叫んだ。
「ん?何だよさつき、お、姉ちゃんじゃん。帰ってきたの?」
「うん、さっきね、一馬くん元気だったよ、あれ?さつきどうしたの?」
「燐くん!沙織の大学は?」
「えーと、姉ちゃんの大学は確か……、んあっ!!!」
沙織は訳がわからない様子で2人を交互に見て、
「なに?なんなの?」
「燐、やっと分かった?」
燐は大きく何度も頷き、
「姉ちゃんのことか!!」
葵は両手を大きく広げて、
「そ、せいかーい!」
そう言うと葵は沙織のもとへと駆け寄り、手を取って
「先輩!私に勉強を教えて下さい!」
「え?別にいいけど。急にどうしたの?」
「私、帝大目指します!」
「そうなの?分かったわ、義妹の頼みとあらば私にドンと任せなさい!」
「はい!義姉さん!」
おいおい、まだ結婚してないっつーの
沙織と葵は席に着き、
そこにさつきも加わった
「で、葵ちゃん。何で急に帝大を目指そうってなったの?」
「そうだよ、別に帝大じゃなくたっていいんじゃないのか?」
「ダメなの!帝大じゃなきゃダメなの。」
「は?なんで?」
「私のプライドが許さない。」
「なんだよそれ。」
「旦那さんがこんなに凄い人なのに奥さんが般大なんてイヤなの…」
「葵ちゃん、旦那って、沙織に似てきたね。」
さつきが呆れたように肩をすくませて言うと、沙織が葵の手を取って
「葵ちゃん!いいえ、義妹の葵!私もその気持ち分かるわ!」
「やっぱり義姉さんなら分かってくれると思いました!これからも立花葵をよろしくお願いします。」
「ええ、歓迎するわ!」
「奈津もーーー!」
2人は完全に意気投合して、別世界に飛んでいる。
さつきと燐は顔を合わせて、
「葵ちゃんってこんな感じだったっけ?」
「いや、多分違うと思うんだけど…」
2人は苦笑いしてその様子を見つめるしか出来なかった。




