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第21話

〈side 燐〉


なんであんなこと言うんだよ。

くそっ、


胸が締め付けられる。

俺はまだ桐山のことが…


会場から出ると、日はもう傾きかけている。

オレンジ色の光が燐を照らす。


眩しいな。


ん?


目の前には柱に寄り添うようにして立つ人影。


「せーんぱい。」

「つばさか、まだ残ってたのか。」

「せんぱいのこと待ってたんですよ。」


逆光で顔がよく見えない。


「そうか、待たせたな。すまん。」

「いいんですよ別に、葵先輩は大丈夫なんですか?」

「ああ、問題ない。姉ちゃん達がいるからな。」

「そっ、じゃあ帰りましょうよ。」


顔が見える、笑っていた。


「ああ、」


2人は駅まで歩く。


「なんかありました?」

「ん?いや、別に。」


燐は少しうつむいた。


「絶対うそですよね?」

「本当だって。」


つばさは立ち止まり、下を向いて、


「せんぱい、私にも話して下さいよ。」


つばさはうつむいたままだ。

燐は振り返り、


「話すって、別に俺は何も…」


つばさは顔を上げ、


「私はせんぱいのこともっと知りたいんですよ!」


夕日に照らされて、つばさの顔は赤く染まっている。

その瞳は涙だろうか、少しうるんでいる。


吸い込まれそうな瞳。

切なそうな訴えるような眼差し。


燐は固まって動けない。


2つの長い陰の距離が少しずつ縮まる。


つばさは燐の腰に両手を回した。


「せんぱい、私にもせんぱいの弱い所見せて下さいよ。私だって心配してるんですよ。」


つばさは顔を燐に埋めたまま言った。


「つばさ…、ありがとう…」


燐もつばさの背中に手を回す。


つばさなら俺の中の桐山を消してくれるかもしれない。


「せんぱい、今日は私について来てください。」

「ああ、分かったよ。」


2人は並んで歩き出す。


「手繋いでください。」


つばさは甘えたねだるような目つきで言う。


そんな顔されたら断れないだろ。


「ああ、」


そう言って燐はつばさの手を握った。


「ひゃっ、ありがとうございます。せんぱい。」


花が咲いたように微笑んだ。


「おう。」


燐は頬を赤めて、顔を逸らした。



俺の最寄り駅よりも三駅離れた駅で降りた。


「ここです、せんぱい。」


そう言ってつばさが差した方向を見ると、

そこにはこれといった特徴の無い普通の二階建ての家がある。


「ここって…」

「そうです、私の家です。さ、上がってください。」


そういうことか


燐は何かを覚悟したような面持ちで家の中へと足を踏み入れた。


2人はつばさの部屋に入り、


「私着替えるんで、この辺で座ってて下さい。」


つばさはそう言って自分の服に手をかけた。


おい、ちょっと待て。


「は?ここで着替えんの?」

「そうですけど、何か?」


つばさは当たり前のように言う。


「おい、俺がいるんだぞ。」

「私は構いませんけど。なんなら裸でいましょうか?」


何食わぬ顔をしている。


ほう、あのナイスバディを見れるのか。

それはなかなかに…


いや、ダメだろ!


「やめろ、ここでいいからさっさと着替えろ。」

「なーんだ、つまんないの。」


つばさは口を尖らせて言う。


「はやく!」


燐はそう言って自分の目を手で覆った。


「せんぱいってやっぱり可愛いですね。」


服の擦れる音がする


ファサッ、


今俺の前には下着姿の女子高生が…

ダメだ、耐えろー、耐えるんだ俺。


「せんぱーい、もういいですよー。」


燐は手をどけて、目を少しずつ開ける。


上はグレーの半袖のパーカーを着ている。

うん、胸の膨らみが強調されていてエロい。


下は…


「おい!ズボン履け!」

「え〜、私家ではいっつもこの服装ですもん。いいじゃないですか〜。」


誘うよな声で言う


ピンク色のパンツを履いていた、エロい…


燐は顔を真っ赤にしている


「ったく、しょうがないな。」

「よし!」


これはラッキースケベという事にしておこう

とりあえず下を見ないようにしなくては


2人はベッドを背もたれにして座った


「せんぱい、何があったんですか?」


つばさはやわらかい声で訊いてきた。


「桐山と喧嘩したんだ。」

「葵先輩とですか?意外です。」

「まあ、前にも何度かしてるんだけどな。」


林間のときか


つばさは少しうつむいてから

しずかな口調で、


「もしかして、先輩がフラれたのって…」

「ああ、桐山だ。」

「そうなんですか…」

「つばさが気にすることじゃない。」

「でも…」


燐はニコッと笑って、


「心配すんなって、な?」


頭をくしゃくしゃと撫でた。


つばさは目を細めて、頬を赤く染めた。


「せんぱい…」


甘えた声で言い、酔ったように赤いうっとりした表情で燐を見つめ、ふわりと笑った。


心臓が強く跳ねた。


そんな顔で見つめたら、俺は酔い痴れそうになる。


つばさは真っ直ぐと燐を見つめる。

その無警戒で正直な瞳は気持ちを高ぶらせる。


高鳴る心臓の音がはっきりと自分で聞き取れる。


目まいのような陶酔感


ぷっくりと膨らみ美しい色をした唇に

突然の衝動に駆られる。


心臓の音が聞かれそうだ。


多分つばさも同じ気持ちなんだろう、


つばさは目を閉じた。


そして燐はゆっくりと顔を近付ける。


───立花くん……


燐の脳裏を何かがよぎった。


え?


燐は静止する。


今、桐山の顔が浮かんだ…

ダメだ…

やっぱりまだ出来ない。


燐はつばさの肩を掴んで、


「ごめん、俺には出来ない…」


つばさは空白な表情をして、


「え?」

「ごめん…つばさ。」

「いいですよ。私はいつでも待ってますから。せんぱいのタイミングで来てください。」


つばさは微笑うが寂しげだ。


「今日はもう帰るわ、ありがとう。」

「はい…」


つばさは最後に満面の笑みを見せた。


(いつか、来てくれますよね…)


燐はつばさの家を出て、駅まで歩く。


やっぱり俺は桐山のことがまだ好きなんだ…


ごめんつばさ…





家に帰ると、さつきと姉ちゃんがリビングで、お茶を啜っていた


「ただいま、あれ、2人だけ?」

「遅かったわね、お母さんは書斎、奈津は健の部屋でゲームでもしてるんじゃない?」


時計の針はもう9時を過ぎていた


「そうか。ちょっと色々あってな。」

「燐くん…、大丈夫?」

「え?」


さつきが心配そうな様子でこちらを見ていた


「何が?普通だけど…」

「うそ、顔色悪いよ?」


そんなはずは…


燐は見え透いた作り笑いを浮かべて、


「ちょっと疲れてんのかな?公式戦なんて久しぶりだったから。」

「そうなの?」

「うん、ちょっと緊張したし。」


沙織は揺れるような細い声で、


「燐…」


燐を見つめる目には艶がある


姉ちゃん、そんな顔すんなよ…


「ごめん…、もう休むわ。」


燐はうつむき、身を翻す

その瞬間目から光るものが零れた


そのまま自分の部屋へと向かった



「はぁー、」


沙織は頬杖をつきながらため息を漏らす。


「かなり、へこんでたね。」

「そうねぇ、やっぱり葵ちゃんのことがまだ…」

「みたいね。」

「つばさとは何も無かったのかな?」

「あの様子だと、無かったんじゃない?」

「ならいいんだけど。」

「ここからは、2人の問題だから…」

「そうね。」



燐は部屋に入ると、そのままベッドへと倒れ込んだ。


俺はどうすればいいんだ

桐山にはもう、彼氏がいるのに


第一俺はもうフラれてる

なのに、どうしてまだ好きなんだよ…


それにこの違和感はなんなんだ?

分からない、

あの日から

何かがずっと引っかかっている

なんなんだ…


納得いってないのか?

フラれたのに?

分からない…

つばさは意外と好きです。

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