第8話
〈side 燐〉
放課後、燐は一馬と沙織と帰っていた。
「おい、どういうことだよ!一馬くん、なんで俺を騙したんだよ!」
「いやぁー、燐ってああでも言わないと走らないでしょ?」
「ま、それはそうだけど。」
「それにこれは監督の命令だから、一週間はボール触れないと思うぞ。だから大人しく走っとくんだな。」
「別にいいけど、その代わり騙した罰としてキャッチボールぐらいは付き合えよな。」
「こらっ、燐、体なまってるのは事実なんだから我が儘言わないのっ」
「はぁー、ったく、しゃーねぇなー。キャッチボールだけだぞ。」
「ちょっ一馬くん、沙織とも遊んでよ。」
「ごめんなー、沙織、俺も悪いし燐は即戦力だから手伝ってやれって監督にも言われてるんだよ。練習終わったら、いくらでも遊んでやるから、な?」
一馬はそう言うと沙織の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「むぅー、仕方ないなー。一馬くんがそう言うなら。」
沙織は頰を膨らまして抗議していたが、頭を撫でられると顔がぱぁっと明るくなった。
うっわー、姉ちゃん扱いやすすぎんだろ。ちょっとは俺の言うことも聞けよな。
「そういえば、推薦で入部した奴ってどんなのがいんだ?」
「あー、まだ言ってなかったっけ?」
「おう、そんな話全然聞いてない。」
「そうだなー、結構粒揃いだけど、お前より上手い奴はいないじゃないか?」
「へー、全中出た奴とか選抜とかいんの?」
「何人かいるぞ、と言っても優勝経験がある奴はいないらしい。まっ、んなこと気にすんなよ。俺とお前がいりぁ中学ん時みたいに全国制覇はよゆーだ。」
「だなっ。」
「「わはははっ」」
「燐って随分買われてんのね。確かに中学のときはすごかったけど、あれから一年経ってるしなー。」
沙織が疑うような目でジッと燐を見つめる。
「な、し、失礼だな。俺だって向こうで遊んでたわけじゃないんだぜ。一年前より確実にレベルアップしてるし!」
「ほんとぉにぃ〜?」
「沙織、本当だと思うぞ。プロのチームと契約したんだろ?燐」
「ああ、まあな。」
「ブフォ!!」
「ちょっと汚いわよ!燐」
燐は飲んでいた水筒のお茶を吐き出す。
「って何で知ってんだよ!これ極秘なんだぞ、他に知ってる人いんの?」
「極秘なことぐらい知ってるよ。お前の親から聞いたぞ。良かったじゃないか。」
「まあ、そうだけど。知ってるの数人なんだから、学校では言うなよ。」
(あんのバカ夫婦がぁー!)
「え、ちょっと燐!プロになるの!?そんな大事なことなんでもっと早く言わないのよー!」
「あれ姉ちゃん聞いてなかったの?母さんは家族には伝えるって言ってたけど。」
「ぜんっぜん!聞いてません!っていうかあんた意外とやることやってんのね。一馬くんより先なんて。」
「あれ?姉ちゃん。一馬くんから聞いてないの?一馬くんも契約済みだよ?」
「え、え、うっそーん!知らないの私だけ?」
「まあ、そういう事になるな。」
「ひどいじゃない、一馬くん言ってよ〜。」
沙織は一馬をポカポカ叩いている。
「沙織を脅かそうと思ってたんだけどね。俺の事も極秘だから言ったらダメだよ?」
「うーん、言いふらしたいけど。黙っとく。」
(本当に黙るのか?この姉ちゃん。)
燐はため息を零す。
「ま、チームは違うけどリーグは同じだから、燐とは対戦する事になるけどね。」
「ちょっと、一馬くん海外行くの?」
「ああ、沙織も来るか?」
「貴方に一生ついて行きます!」
2人の周りに花が咲いているように見える。
(なにこれ?)
「姉ちゃんどっち応援すんの?」
「もっちろん、一馬くんよ!」
「即答かよ、少しは悩めよ。」
「ありがとう、沙織。」
沙織は目を閉じ、ジッと見つめ合う、そして2人の顔は近づいていく。
「おーーいっ!!こんなところでそんなことすんな!早く帰るぞ!!」
2人はハッとし顔を赤めて、燐の後をついて行く。
はぁー、これから毎日こんな感じか。マジで勘弁してくれよ。




