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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

流るる星に

作者: yukikaze[BST]

~1945年8月15日午後2時頃・米空母~


ブィーン・・ブォーン・・・


『誉』独特のエンジン音が響く。


「おい!!カミカゼだ!!カミカゼだぞ!!」


ある整備員が叫ぶ。しかし、


「おい、どこだ!?カミカゼの野郎!?」

「いねぇぞ!?」


と、上を見るものや海面を探すもの、はたまた浅い角度で来ているのではないかと斜め上を凝視するものなど、沢山のものがいた。


ーーーカミカゼのエンジン音だけが不気味に響いていた。


~4時間前~


「ついに俺達にも来たのか…」


飛行帽を被り、黒板の前に座り込んでいる男がつぶやく。黒板には、

『  第一次彗星隊

   宇垣纒中将、中津留達雄 大尉   遠藤秋章  飛曹長

   伊東幸彦 中尉        大木正夫  上飛曹

   山川代夫 上飛曹      北見武雄  中尉

   池田武徳  中尉        山田勇夫  上飛曹

   渡辺操   上飛曹      内海進   中尉 

   後藤高男  上飛曹      磯村堅   少尉 

   松永茂男  二飛曹      中島英雄  一飛曹

   藤崎孝良  一飛曹      吉田利   一飛曹

   前田又男  一飛曹      川野良介  中尉  

   川野和一  一飛曹      日高保   一飛曹

   二村治和  一飛曹      栗原浩一  二飛曹 』

との文字と、その横に小さく書いてある


『  第二次流星隊

   佐藤和正  中尉      山河正一  上飛曹

   山田亮太  一飛曹     日野和男  二飛曹 』

という文字だった。


「佐藤中尉、そりゃきますよーーいつかは絶対に」

「山河…お前達観してんなぁ」


そう返しながら佐藤が苦笑する。

つられて山河も笑う。

平和な光景だった。戦時中として、戦前、戦後も含め、非常に平和な光景だった。ーーとても死を宣告されたものとは思えないほどに。そしてそれ(命令)がもうすぐそこまで迫っている若者とは思えない程に。


『今回出撃する搭乗員は第二滑走路前に集合せよ、繰り返す、今回出撃する搭乗員は直ちに第二滑走路前に集合せよ』


~佐藤和正中尉side~


訓示が終わり、機体に乗り込む。いよいよ出撃ということで例え必ず死ぬのだとしても気分が高ぶってくる。こんな高ぶりはいつぶりだろうか。あ号作戦以来ではなかろうか?程よい緊張とうるさいほどの心臓の音。心臓の音に比例して冴えわたる勘、同時に機体を自分の手足のように感じる。


「山河…お前とは大鳳に配属されてからの仲だったな。ーーーこれで最後になるが、背中を頼んだぞ」


不意に銃手の山河にそんな言葉を投げかける。椅子が背中合わせのようになっていて顔は見えないが山河には聞こえたようで、


「っ!!--えぇ、勿論です」


と力強い返事が返ってくる。その言葉が返ってくるとともに操縦のみに集中する。『栄』と似ているがまた少し違った音を奏でる『誉』のエンジン音を聞きつつ、スロットルを開き速度を上げていく。速度が約100km/h程になると、一気に操縦桿を引き上げて機体を浮かせる。少し重いが、まあ問題ないだろう。


~午後12時頃~

しばらくすると、海が見えてきた。もともと空母搭乗員で見慣れていた海だが、少し感慨深い。

少しずつ高度を落としていく。徐々に海面が近づいてくると、高度計を確認しながら操縦桿を細かく動かし、機体の高度や進路を調整する。

上では護衛の戦闘機隊が空戦を始める。ゼロ戦が火を吹いて落ちていくところを見て不覚にも美しいと思ってしまい、首を振ってその思いを飛ばす。幸いにも敵はこちらには気づいていない。今のうちにすたこらと進むとしましょうか。


~午後2時頃~

ようやく空母が見えてきた。エセックス級空母か…必ず沈める。覚悟を改め家内から貰ったお守りを握りしめる。山河が電信を打ち出し、電信独特の音が聞こえだす。


その瞬間、音が消えた。エンジンの音も、電信のピーっという音も、すべて。家内と娘の顔が頭に浮かぶ。頬を水が伝うのがわかる。黒い塊がどんどん近づいてきて、次の瞬間


ーーーーーーすべてが、紅く染まった。


~午後2時頃・エセックス級4番艦オキナワ~


ブィーン・・ブォーン・・・


音が聞こえる。プロペラ機独特のエンジン音。はぐれ戦闘機のご帰還かな?と約8643㎡もある広い甲板から艦の後部を見上げる。しかし、機影は見えない。それに、よく聞くとジャップの航空機のエンジン音にも聞こえる。周りを見回すとほかの奴も周りを見回していた。


「おい!!カミカゼだ!!カミカゼだぞ!!」


思わず叫ぶ。しかし、誰もカミカゼを見つけられない。


「いたぞ!!」


艦橋側にいた整備員から叫び声が聞こえる。そちらに向かう。急いで対空砲火が飛ぶがもう遅いのが見えた。そして、次の瞬間


ーーーー艦全体が揺れた。


そこからはよく覚えていない。ただ、カミカゼの爆弾によってオキナワ全体が揺れ、赤くなり、気づいたら海に放り出されていた。オキナワは自沈処分となり、歴史からも消された。また、戦後同期のやつに聞いてみると、弾薬が誘爆しオキナワが炎上した。必死のダメージコントロールにもかかわらず、艦全体が赤くなり、革製の底の厚いはずのブーツの底が少しずつではあるが溶けた程熱くなったそうだ。そう、まるでジャップのAKAGIの様に。


そして機関室からはアメリカ国歌がいつまでもきこえていたという。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

一応、補足を入れておきたいと思います。

この作品にオキナワという空母が出てきますが、実際に房総沖にいたのはCVー10ヨークタウンです。

オキナワという空母は本来護衛空母のみですが、命名基準としては間違っていないと思い命名させていただきました。

本編内では、オキナワの存在は隠蔽されたということにしてあります。

宇垣特攻で流星隊は実際には存在しません。

海洋迷彩の流星は存在しません


これが今年最後の作品となります。ご迷惑をおかけして申し訳ありません

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