転生考〜転生の利点他についてのちょっとした小考察
異世界転生や二次創作における作品世界への転生などといった転生・憑依などの利点について少し、大まかに3点にまとめ考えてみた。
ここで扱う「転生」はあくまで「我々が今暮らしている現代日本もしくはそれに極めて類似した世界から別の世界(今までの自分の生きてきた世界と異なる世界であると認識される世界)に『自己連続性を保ったまま(もしくは意識の引き継ぎや記憶の引き継ぎなどもあるかもしれないがあくまで転生前の自分と転生後の自分というものが同一であると認識した状態で)』生まれ変わった」場合の転生という事象に対しての考察にとどまる。つまりこの条件から外れた状態たとえば自分の過去への転生(というかこれ実質逆行と変わらん気がする)やファンタジー世界の現地人への現代人の記憶だけの移植(その記憶と自分自身は別のものであると認識できている)などの場合は当て嵌まらない場合がある。
またこの考察はあくまで「読者側から見たという態で」書いている。そのため「書き手側の視点」、転生ものを書くことによる執筆者側への影響」の考察など意図的に省いた部分もある。
それと所により文体が激しく異なるのは書いた時間軸が異なる部分があるからでありできればそこはつっこまないでいてくれると嬉しい。
まず1つは二次創作や乙女ゲー転生、歴史転生に多いけど「原作知識の所持」(この場合の原作知識はその小説の原作である作品についての知識だけでなく歴史転生におけるその時代の知識や歴史上の人物がTSした世界のその時代の本来の世界の知識なども含む。また乙女ゲームものはその性質上作品内にしか原作が登場し得ない)である。本来この世界が辿ったであろう|道筋(物語)を既に知っているのだ。限定的な未来視とも言えるかもしれない。そしてまたその道筋を自由に(とはいかない場合も多いが)改変することが出来るようになる。また「本来知り得ない知識をもとにした行動」をするということもできるようになる。またこれにより自分に有利になるように動くこともできる。極論を言えばハーレム系の主人公のフラグを全て奪えば自分がハーレムを築ける。そのような作品はあまり見受けられないが。なお悪役令嬢に転生し攻略メンバー全員に対し自身の破滅につながる過去未来全てのフラグやフラグの芽をぶっ潰そうとしたら惚れられた、という作品は存在する。まぁそういった原作知識を持つがゆえの勘違いや原作と異なることに慌てふためく主人公も私は嫌いではないのだが。また読者側からすると(これは二次創作や歴史転生に多いのだが)原作のストーリーと主人公の介入により変貌した道筋を辿るストーリーの差異を楽しむということもできる。
もう一つ、これはファンタジー世界へ転生の時に多いが「われわれの常識でもって物事を計ることができる」ということ。私たちの常識は現代日本という場にて培われてきたもの。他の地域・他の時間やはたまた他の世界では異なる常識が存在するということは当たり前のことなのだ。常識だけでなく知識・認識・感覚・倫理観・人生観なども異なる場合が多い。無論宗教なども。けれど現代日本もしくは類似した世界からの転生主人公は我々と同じ、もしくは極めて近い常識を保有していることがほとんどである。そのため私たちにとってはおかしいと感じられるかもしれないその世界の常識に主人公が我々の常識に即した反応が返せるのだ。だから私たちが主人公を理解しやすくなり感情移入に繋がりやすくなり、またその世界の理解がしやすくなる。例えば異世界で奴隷を見た時の反応とか。その世界では奴隷は一般的なことであり使役するのになんら抵抗のないものだとしても主人公が日本的、我々の常識にそれほど反さない反応、例えば嫌悪、不快、義憤などに駆られればその主人公に感情移入することでその主人公の視点でもってその世界を眺めるということができる。しかしその主人公が奴隷に賛成としても「我々の常識の上に成り立った思考の上での賛成意見の選択」という経過を経ることで主人公を理解させる、という風変わりな手法も存在する。
そしてもう一つ。これは先のものに類似しているが「その世界のものとは別の視点・知識を導入できる」。これはNAISEIものや一部の武力チート(魔法の現代的解釈による強力化)なんかがそうかな。違いとしては先の「我々の常識(略)」は私たち、現代日本に存在する読者という存在に向けてのもの。対してこちらは「作中の異世界及び異世界人に対して」のもの。例えば別の人と話していて今までの自分が思いついたことのなかったような全く新しいことを思いついたということはありませんか?あれは「異なる視点」があることで物事を自分自身の常識で凝り固まった認識を打破し見ることができるようになったのです。これは現代日本というほぼ同一の常識の土壌の上での話です。ですが異世界人にとって|自分の(この世界の)常識とは全く違う常識を持つ主人公という存在が相手だったらどうでしょう。常識が異なるということはつまり物事に対しての認識が全く違うということにも繋がるのです。
ちなみに私が小説家になろうで好んで転生ものを読む主な理由は2つ目と3つ目。あとテンプレなものも多く(展開とかが)読みやすいってのもあったり。それでいて細かな差異があったり。