下校
このクラスには蒼空の他に2人の男の子がいた。
そのうちのひとり、杉田正人。彼は男の子の中でも美人に分類される人だった。
その為学校では女の子達に王子様のように甘やかされてきた。
しかし、彼が今目の前にしているのは自分以外の男の子が注目されているという許し難い現実だった。
彼の性格までは、王子様のそれとは違うものだった………
1学期初日ということで授業はすぐに終わり、下校の時間になった。
僕は帰ろうと思い席を立つと、クラスメイトが休み時間の時のように押し寄せる。
「ねぇ?一緒に帰ろうよ」
「そうだよ。男の子一人じゃあぶないよ?」
「家まで送ってあげるから」
「このあと一緒に遊ぼう?」
話しかけてくる女の子達の目はギラついていた。なんか怖い…
またもや固まっている僕に手を差し伸べたのは舞桜ちゃんだった。
「みんな?蒼空くんは私が送ってあげる約束だから。ね?」
「え?!……う、うんっ…」
舞桜ちゃんに話を合わせるような目線を送られ、とっさに返す僕。
クラスメイトは各々不満をつぶやきながら散らばっていった。
「っ!っつぅ…」
ドンっと背中に何かがぶつかった。
僕は後ろを振り返るが、後ろにはもう誰もいたなかった。
「どうかしたの?蒼空くん?」
後ろを確認していた僕に舞桜ちゃんが話しかけてきた。
「い、いや…なんでもないよ。」
僕はすれ違いざまに誰かの腕が当たってしまっただけだろうと思い、気にしないことにした。
「それじゃあ、帰ろっか?」
舞桜ちゃんはそう言って僕の手をつかみ歩き出した。
「ね…ねぇ舞桜ちゃん?……好きってほんとなの?」
「ん?うん。本当だよ?信じてない?」
「い、いや!そんなわけじゃないけど……理由、まだ聞いてなかったから。」
僕は気になっていたことを聞く。
2年前、病室できいた時は僕だからというよく分からない事を言われただけだった。
「前にも言ったけど、蒼空くんが蒼空くんだからだよ?」
「えっと…僕だからってどういうこと?僕、舞桜ちゃんになにかした……かな?」
「うん。したよ。とってもとっても素敵なこと。覚えてない?」
「うん…ごめん。……教えて、くれるかな?」
「んーん。だめ。これは、蒼空くんに思い出してもらいたいから。だから、秘密!」
そう言って舞桜ちゃんは笑顔を僕に向ける。
何故だろう。舞桜ちゃんの笑顔を見ると、すこし恥ずかしくなる。
そしてどこか、心のどこかがギュッと締め付けられるような感覚。
「ここら辺でいいかな……おーい、蒼海ちゃん?いるんでしょー?出ておいでよー。」
学校の校門を出たあと、人通りが少なくなったところで舞桜ちゃんがそう言ってた立ち止まった。
「え?蒼海ちゃんなんてどこに………あっ」
いた。僕たちの後ろの電柱の影から蒼海ちゃんがひょこっと顔を出していた。
その表情はなにかに怯えているようで、目には涙をためて手は微かに震えていた。
「怖がらなくてもいいよ蒼海ちゃん。何かしたりなんてしないから。それよりもほら、蒼空くんと一緒に帰ってあげて?」
「え?」
「私帰る方向逆だから。ごめんね?蒼空くん。また明日ね?」
舞桜ちゃんはそう言うと来た道を戻っていった。
取り残された僕と蒼海ちゃん。
舞桜ちゃんの後ろ姿が見えなくなったところで、蒼海ちゃんが僕に抱きついてきた。
「ごめんなさいっ!ごめんなさい、ごめんなさい!!」
「ど、どうしたの蒼海ちゃん?!大丈夫?!」
蒼海ちゃんは僕に抱きつくとすぐに謝ってきた。
声は震えていて、涙を流しながら僕の腕をギュッと握り締めて謝っていた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
「だ、大丈夫だから…ね?どうしたのか、教えて?蒼海ちゃん。」
僕は蒼海ちゃんの頭を撫でながらそう優しく聞いた。
少しすると蒼海ちゃんは泣き止み、話始めた。
「…ごめんなさい…お兄ちゃん。わたし、お兄ちゃんを守らないといけないのに…あの人が怖くて…逃げちゃって…お兄ちゃん1人にして…」
「怖いって舞桜ちゃんが?………なにか、されたの?」
「……ううん。されてないよ。でも……怖いの。」
そう言う蒼海ちゃんの手はまだ強く僕の腕を握っていた。
「………大丈夫だよ。舞桜ちゃんは蒼海ちゃんになんかしたりしないか。それに、ここにはもう僕しかいないから。ね?」
蒼海ちゃんをあやすようにそう言葉をかける。
前世での精神年齢の分、僕は優しく接する事ができた。
「……ごめんなさい、お兄ちゃん。ありがとう…ございます…」
「そんな堅苦しい言葉じゃなくていいよ?僕たちは兄妹なんだから。大切な妹が怖がってるんだもの。お兄ちゃんとしてはほっとけないよ。」
そう笑顔で蒼海ちゃんに語りかける。
すると、蒼海ちゃんの手から力が抜けていくのがわかる。
蒼海ちゃんは涙を拭きながら僕を見つめる。
その表情はなんとも言えない幸福そうな、そんな表情だった。
「ありがとうお兄ちゃん。わたし、お兄ちゃんの妹でよかった。……かえろ?お兄ちゃん。」
そう言って今度は腕ではなく手を握る蒼海ちゃん。
「うん。帰ろう。父さんがご飯作って待ってるかも!」
「うん!楽しみだねお兄ちゃんっ!」
いつの間にか蒼海ちゃんは笑顔になっていた。
やっぱり、蒼海ちゃんには笑顔が似合うと思った。
「ねぇ?お兄ちゃん?……これからも、あの人と帰ったりするの……?」
「舞桜ちゃんと?………うーん。家の方向が逆って言ってたし…蒼海ちゃんと帰りたいかな、僕は。」
舞桜ちゃんといると嫌ではないが、なんだか落ち着かない。
それよりも妹の蒼海ちゃんと帰ったほうが僕的には良かった。
「ほんと?!じゃ、じゃあ明日から毎日教室に迎に行くから!!絶対!絶対だから!」
「う、うん…よろしくね?蒼海ちゃん。」
「うん!」
蒼海ちゃんはやった!と言いながらガッツポーズをしていた。
元気いっぱいな蒼海ちゃんを見て、可愛いなと思う。
手を繋ぎながらの帰り道。
家の前まで来ると、そこには今か今かと帰りを待ちわびていた父さんと母さんが手を振って待っていた。
なんで蒼海が舞桜のこと怖がってるかーとか
どうして蒼海が蒼空のこと崇拝してるのかーとか
舞桜が蒼空のこと好きな理由とか
徐々に出していかなきゃいけないのはわかるけど、思いっきり全部ぶちまけたい感も出てしまう作者です。
魔法ものの作品は夏コミ前には投稿始めたいなーって思ってます。
投稿始めても多分こっちがメインだから更新遅めだとはおもうんですけどね(´・ω・`)




