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接触


…………ねぇ蒼空くん。蒼空くんは将来何になりたいの?


誰かが僕に問いかける


…………私はね!蒼空くんの夢を叶える人になりたい!


僕は将来何になりたかったんだろう


…………えへへ。大丈夫!蒼空くんの夢は私が絶対叶えてあげるから!


そして僕は何になれないまま死んでしまったんだろう


…………安心して蒼空くん。今度こそ叶えてあげるから。


…………ありがとう舞桜ちゃん………












ハっと目を覚ます僕。

夢を見てたような気がするけどうまく思い出せない

うーんと思い出そうとしていると昨日とは違う看護士さんが来た


「お、蒼空くん起きたんだね。おしめは大丈夫かなー?ちょっと見せてね」

そう言うとおもむろに僕の着ている乳児用の服を脱がしていく


前世では16歳になっていた分、他人に見られるのはかなり恥ずかしい…のだがそれ以上に服を脱がされたことによる寒さとオムツのテープを剥がしたビリビリっという音にビックリして泣きそうになってしまう。


赤ちゃんになるとこんなにも涙もろくなるのか……そんなことを考えながら前世でのプライドを守るため必死に泣くのを我慢した。

多分目尻に涙が溜まってるんだろうけど致し方ない。思いっきり泣くよりかはましだ

そう自分に言い聞かせているところに


ガラガラガラ!と、扉を開ける音がする


あ、駄目だ泣く。そう僕が心の中で思うと同時に僕の身体が全力で泣き出した。

ごめんなさい看護士さん……本能には逆らえなかったよ……


「あー!ごめんね蒼空ちゃんびっくりさせちゃったわね。ほーら、ママですよー?」

そう言うと扉から入ってきた母が僕を抱き抱える


「野上さんこんにちは。今ちょうど蒼空くんが起きたのでオムツを変えていたところなんですよ。」


「あ、そうだったんですか…ごめんなさい私ったらそんなこと知らずにいきなり入ってきちゃって……」


「いえいえ、大丈夫ですよ。自分のお子さんには一秒でも早く会いたいですもんね」


「そうなんですよー仕事に復帰したら夫に育児取られちゃうから少しでも多くと思って。」


「お母さんのほとんどはそうですねー先日産まれた岡部さんのお母様も付きっきりで娘さんを観てるんですよ?」


「良かったぁ私だけじゃないんですね。ほら、こんな我が子にベタベタしてると女らしくない!って周りから言われちゃうかなーとか思ってたんですけど大丈夫そうですね」


「やっぱりいくら女性でも我が子には甘くなっちゃいますよね。それにほら、蒼空くん泣き止んでニッコリしてる。蒼空くんもお母さんが好きなんだねー?」


二人の会話を聞いているうちに僕は自然と泣き止んでいた。むしろ母に抱っこされているという幸福感から思わず顔が綻んでいるらしい……マザコンと言われるかもしれないが今は赤ちゃんだからセーフだよね?


「もー蒼空ちゃんほんと可愛い!ママのこと大好きなの?!ママも蒼空ちゃんのこと大しゅきだぞー!」徐々に母の喋り方が父っぽくなっているような気がするが深く考えないでおこう


まぁ愛されてるって小さい身ながらも十分伝わってくる。

前世では乳児の置き去りや赤ちゃんポストなんてのもあったせいか、愛されてるってだけでもかなり幸せなんだなと思う。


「今日は旦那さんは御一緒ではないんですか?」


「ええ、ひび…夫は乳腺マッサージと授乳講習を受けてまして。多分午後には来ると思います。」


「あ、そうですね今日でもう4日になりますもんね。」


そんな会話を聞きながら僕は思考を巡らせる。

やっぱり育児は世間一般的に父親がやる世界なんだな…

乳腺マッサージって事は父の胸をだよな?………絵図面的にどうなのかと思うがそれがこの世界なのだから受け容れるしかないよな。


そもそも胸の膨らみが少ない男性からなぜ乳が出るのかさっぱり僕には理解できない。もう少し大きくなってある程度自由に行動できるようになったら調べてみよう……。


「そうだ!蒼空ちゃん、岡部さんの所に挨拶しに行こうか?誕生日も1日違いだし岡部さんとは御近所だものね。蒼空ちゃんの幼馴染みになるかもだし一緒に行こうねー?」


そう母が僕に優しく話しかけてくる。

なんだろう…ただ話し掛けられてるだけなのに母の優しい顔を見ているだけで笑顔になってしまう。

これも赤ちゃんの本能なのか…それとも母の偉大さなのか


コンコン

「失礼します。何時もお世話になってます野上です。今お時間大丈夫ですか?」

母は隣の病室…岡部さんの所に入っていく。


「あ、野上さん。大丈夫ですよ。わざわざすいません…私も挨拶しに行こうかと思っていたんですけど娘が泣きやまなくて…」


「いえいえお気ずかいなく……うちの子は大人しめなので何とか挨拶行けるという感じなので…岡部さんのお子さんは女の子なんですか?」


「ありがとうございます。えぇ、名前は舞桜っていうんです。泣いてばかりのじゃじゃ馬ですけど女の子だから元気なのはいいかなって」


「舞桜ちゃんっていうんですか。綺麗な名前ですね!……あら?舞桜ちゃん急に泣きやみましたね?」


「え?……あらほんとだ…さっきまで泣いてたのに急にどうしたのかしら…」


母達がそんな会話をしている中、僕は抱かれている女の子を見ていた。

赤ちゃんなのではっきりとはわからないが多分、綺麗な顔立ちをしているとおもう。

今は同じ赤ちゃんである僕が言っても意味ないけどねと自傷していると泣いていた女の子と目が合った。

すると途端に女の子は泣きやみ僕の方をジーッと見てきたのだ。

なんだろう?赤ちゃん同士物珍しいってとはないし……僕の服が気になったとか?

いやいや、赤ちゃんだぞそんな深い意味は無いんだろう。


ンッ……ンッ……

「あら、どうしたの舞桜?腕あげて……野上さんの赤ちゃん……ええと……」


「あ、申し遅れました。うちの息子、野上蒼空っていいます。よろしくねー舞桜ちゃん?」


「蒼空くん。野上さんのお子さんもとても綺麗な名前じゃないですか!……舞桜?蒼空くんが気になるの?」


ンー!ンー!

赤ちゃん……舞桜ちゃんは僕の方を見ながら腕を動かし声にならない声を出している

……僕何かしたのかな?赤ちゃんマナー違反した?……あるわけないか



「舞桜ちゃん蒼空のこと気になる?ちょっと触ってみる?」


「いいんですか?…ほら、舞桜。蒼空くんと握手しようねー?」


お互いの赤ちゃんを触れ合わせる……まぁよくある光景なんだろうなと思いつつ僕は腕を動かし舞桜ちゃんの方へ差し出す。このくらいなら今の僕でも動かせるのだ

母を困らせないようできる限りの行動しないとね


そうしていると舞桜ちゃんも腕をこちらへ向けてきた。

手と手が触れ合う。


ガシッ

触れ合った瞬間、舞桜ちゃんは僕の手を握り締めた。

もちろん赤ちゃんなので力なんてあるはずないのだが、それでも握り締めたという表現が正しいだろう

そのくらいしっかりと僕の手を握ってきたのだ


「あら、二人共握手できるのー?!すごいねー!」

「ほんとほんと!相性いいのかもしれないわねこの二人!」


母達はそんな事を言いながら盛り上がっているが僕はそれどころじゃなかった。


痛い

そう、痛いのだ。赤ちゃんの力のない握手であるはずなのだが舞桜ちゃんはしっかり握ってきている。

女の子だぞ?!それに赤ちゃんなのにどうして僕より強い力で握れているんだ?!

正直テンパっていた。

訳がわからない。

それにさっきから痛みを何とかしようと腕を引き離そうとしているのだがビクともしない。

同じ赤ちゃん…それも女の子で僕より1日後に生まれてるはずなのにどうして……

そして一番僕を焦らせているのは舞桜ちゃんの表情だ


僕の事を見つめながら笑っているのだ。

目は僕のことをじっと見つめて離さない。

そして口は赤ちゃんの笑顔を作っているのだ。

正直こわくてたまらない。


……………限界だ、怖いし痛いしでもう泣いてしまう。いや、既に泣き始めてる


僕が泣き始めると母達はびっくりしたように離れた


「蒼空くん大丈夫?!ごめんなさいうちの舞桜が何かしたのかしら」


「いえ、大丈夫ですよ。きっと初めて他の子と触れて蒼空がびっくりしちゃっただけですから。それじゃあ私たち隣に戻りますね?これからもよろしくお願いします」


「こちらこそご丁寧にありがとうございました。娘共々よろしくねお願いします」


挨拶を済ませ母は病室に帰っていった


「蒼空ちゃん大丈夫?……あら?もう泣きやんでる……ほんとにびっくりしちゃっただけだったのかな?」

母は不思議そうに僕を覗いてくる。

一方僕は何とか泣き止んだものの未だにドキドキしている。

あの子は一体なんだったんだろう?

正直次会った時に泣いてしまわないか自分自身が心配だ……


ガラガラガラ

「蒼空ちゃんー!パパ検診終わったよー!ミルク飲みましょうねー?!ねんねこしましょうねー?!」

数時間ぶりに息子に会ったからか、はたまた嫁より後に来た悔しさからなのかわからないがテンションの高い父がやってきた

はぁ…多分前世だったらこんな父親嫌だったんだろうけど……今この身体は父のそんな声を聞いて凄くリラックスしていたのであった。

「はいはい、授乳の時間ですよー。渚は外で待っててね。」


「えっ?!どうしてよ?!夫婦なんだし問題ないでしょ?!」


「夫婦だからこそ問題なんだよ!……正直に言ってみ?渚我慢できる?俺の胸見て」


「ごめんなさい我慢できません私にも吸わせてくださいお願いします」


「却下だ。即撤収!蒼空ちゃん待ってるんだから早くな!」


「響の鬼!悪魔!……まぁ蒼空ちゃんのために我慢するしかないわねぇ……じゃあね蒼空ちゃん。また後でね」ガラガラピシャン


「全く……蒼空ちゃんの前ではエロ禁止だって言ったのに…ほんと女って野獣なんだなぁ。……さ、蒼空ちゃん!ミルク飲みまちょうねー?」


そんな仲良し夫婦のやりとりを聞きながら僕はミルクを飲み眠くなっていく…

眠りに落ちる寸前、ふと気になったことがあった



……舞桜って名前、どっかで聞いたことあるな………

どこで聞いたのか

それを考える間に僕は完全に眠りについた。

舞桜という名前が気になったということも忘れてしまうように……








「あら?どうしたの舞桜?そんなに指しゃぶって……もうおしゃぶり欲しいのかしら?」


岡部舞桜の母親、岡部正美は気づいていない……我が子が今必死におしゃぶりをしている手が先程までもう一人の赤ちゃん……野上蒼空の手を握り締めていた手だということを。




(えへへ。蒼空くん、しっかり覚えたからね?前みたいに離したりなんてしないんだから…)



ヤンデレ成分とあべこべ成分を入れるって難しい……アドバイスよろしくお願いします

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