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想いを口に


怪我をした翌日


父さんは病院の先生達に昨日話していたことを伝えたらしく僕のリハビリは中止となってしまった。


僕は後悔している。何故あそこで怪我をしてしまったのか。もっとしっかり立てなかったのかと。


あの時しっかりと立てていればこんな事にはなっていなかった。情けない。僕は、男の子なのに…




足のリハビリをやっている期間で僕は足以外の機能をある程度取り戻していた。

腕に筋力もついてきたし食事も自分で食べられる様になった。

トイレも足が動かなくても腕を使って便座の上に座ることができるまでになっていた。


正直中身が赤ちゃんのはずな僕がここまでして不自然なはず。にもかかわらず母さん達や先生は僕に何も言ってこなかった。

きっと僕の知らないところで僕について何回も話し合われたんだと思う。

今まではあくまでそうなんだろうなという想定だったが昨日の母さん達の会話で確信に変わった。


僕は正常でないと判断されているんだろう。

目を覚ましてから一言も喋らず、赤ちゃんとして異常なほど泣かず、落ち着いており感情を表さない。

脳に障害を持っていると判断されたんだろう。そうでなければ母さん達が僕に対して態度を変えない理由がなかった。



僕は、それがとても許せなかった。その判断をした先生にではない。こんな判断をさせてしまった僕自信に。


何とかしてはやく普通の生活に戻らないといけない。そして母さん達を安心させないと。それが僕のしなきゃいけないこと。男の子として絶対に…



父さんはリハビリが無くなったといってお見舞いに来ないわけじゃない。今も病室で僕にテレビを見せながら画面に映る色々な物や言葉、人物や音を説明してくれている。


トレーナーさんとリハビリが出来なくなったからと言って僕一人でリハビリできないわけじゃない。病室のベッドの上でだってリハビリできる。


ベッドの柵に手をついて立ち上がる練習だってできるんだ。そう、僕は父さんが目の前にいようと立てるようにならないといけない。おかしな行動だと思われても立ち上がって、健康だと証明して安心させてあげないと。


僕はテレビを見ながら説明している父さんを横目にベッドの柵に手を掛ける。

ググッと力を入れて足をベッドの外に出し、立ち上がろうと手に力を入れた時だった。


「蒼空くんっ!なにしてるんだっ!」


父さんが僕の行動に気づき、止めに入る。


「蒼空くん!もう歩く練習しなくていいんだよ?…歩けなくても車椅子がある。父さんや母さんがちゃんと面倒みてあげるから…」


そう言って僕に声をかける父さんを僕は腕で払う。

こんなにも良くしてくれている父さんに払うなんてことして申し訳ないと思うが僕にはそれ以上に安心してもらいたいという気持ちがあった。


手で振り払いまた柵に手をかけ立ち上がろうとする。すると


「…っ!蒼空!いい加減にしなさいっ!」

病室にこだまする声。

僕は生まれてから初めて父さんの怒りの声を聞いた。


「もうしなくていいんだ!やめなさい蒼空!」


いつものように君付けではなく名前のみで呼ばれる僕。

初めて晒される怒りの声に僕は竦んで手を離してしまう。


すると、父さんは僕を抱き寄せる。


「…もう、頑張らなくていいんだよ……お願いだから、これ以上辛い目に合わないでくれ…楽をしていいんだ。甘えたっていいんだ。俺は、蒼空が生きていてくれればそれで…っ」


その声には悲しみや苦しみ、辛い感情などの声が含まれていた。悲願するように、頼むからと。そんな言葉を生み出す一番の気持ちは愛情だと、それを向けられている僕には痛いほど理解できた。


でも、だからこそ、僕は……


「……………お……とう…さん…」


「っ?!蒼空?!」


「おとう…さん…ぼく、あるけるよう……になりたい…」


「蒼空っ?!お前、話せて…っ!」


僕は自ら定めたルールを破ってしまった。言葉を話さないと。父さん達に自然に思われるまで言葉を口にしないと決めたルールを破った。

随分話す練習をしていなかったからまだ途切れ途切れでしか話せない。けど、それでも伝えないといけなかった。


「おとうさん…僕.あるけるよう…になって…とうさんたちを…あんしんさせ…たい」


「蒼空…」


「とうさんたち…といっしょに、あるけるように…なりたい!」


僕は思っていることを伝えた。父さん達を安心させてあげたと。そして、一緒に歩きたいと。


「とうさんは…ぼくとあるきたく…ない?」


「そんな…そんなことあるもんかっ!一緒にっ!歩きたいってずっと…っ!」


「うん…ぼくも…あるきたい、から…リハビリ…させて、ください…」


そう言って僕は泣いている父さんに頭を下げる。

父さんは涙でぐしゃぐしゃになりながらまた僕を抱きしめる。


「ごめんっ!蒼空くんごめんな…っ!父さん、お前を信じてあげられてなかった…!無理だって、諦めてたっ!ごめん!ごめんな……」


父さんは抱きしめながら僕にあやまる。そして…


「一緒に、リハビリ頑張ろうっ…また、一緒に頑張って!家族四人で並んで歩こうっ!」


僕は父さんに抱きしめられながら、その大きな愛情に涙しながら感謝していた。


(ありがとう、父さん…)



今日はここまで書きたかった!

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― 新着の感想 ―
[一言] 泣けました。 これからも応援しています。
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