睡魔
頭の中で声が響く
……男の子なんだから……
知っている声だ
……男の子なんだから……
そう、この声は
……男の子なんだから……
僕の声だ。
※
目が覚める。眠ってからどれくらい時間がたったのか。
いや、それ以前に僕は自分が何年間眠り続けていたのか未だにわかっていなかった。
(どうしてあんなに眠かったんだろう…)
我慢出来ないほどの睡魔。抗う事が出来ずに気がつけば深く眠りについていた。
寝ている時に聞こえてきた声。あれは間違いなく僕の声だった。
男の子なんだから……
それは生前、前世での僕の口癖だった。
どうして今思いだしたんだろう……いや、なぜ今まで忘れてたんだ僕は。
前世ではよく口にしていた言葉。自分を勇気づけるために。自分を追い込むために。そして…あの子の為に…
(あの子…思い出せないな。)
そんなことを考えながら周りを見渡す。朝日が登っており病室に光が差し込んでいる。
寝る前は夕方だったから大体半日くらい寝てたのかな?と思う。
病室の中には誰もいない。一人ぼっちだった。
(どうしよう……ナースコール押そうかな)
そんなことを思うが出来ない。腕が動かなかった。
(はぁ…全然動かないや。赤ちゃんの時の方がうごかせてたんだけどなぁ…)
足にも力を入れようとするがうまく入らない。例えるならば何時間も正座をした後みたいな…痺れているのかすらわからない。
動かせるのは顔だけ。……といっても口はまだ開けたり閉じたりできない。
せいぜい瞬きをしたり、首を少し横に向けるくらいなものだ。喋ろうとしても喉が吊りそうになってダメだった。
身体をどれくらい動かせるか確認したあと、今度は身体を見ようとするが布団がかけられていて上手く見えない。
何もできないと悟った僕は失意に暮れる。
(なんにもできないじゃないか……せめて声だけでも出せたらな……よしっ)
僕は覚悟を決めて声を出してみることにした。喉が吊ってでもいいから何もできない現状を何とかしたかった。
「……こひゅー……こひゅー………」
口から発せられたのは空気が漏れるような音だけだった。
(ははっ……吊らなかったのはよかったけど、これじゃあ会話なんてまだまだできないや……)
僕は先ほどよりも落胆していた。
赤ちゃんの時の方が確実に話せていた。いや、話せていたというより音を出せていたと思う。
(……あれ?また眠く……)
僕はそう思うとすぐに眠ってしまった。病室のドアの開く音がしたが、意識は既に眠り始めていた。
※
パチッと目が覚める。
今度はどれくらい眠っていたのだろうか。周りを見渡そうとするが、それより先に声がかけられた。
「あっ!お兄ちゃんおきた!おはよ!お兄ちゃん!」
女の子の声だ。声の方へ視線を向けると、この前見た女の子が僕のベッドの横に座りながら僕を見つめていた。
(たしか………うみちゃんだっけ?妹…なんだよな?)
あまり自信がなかった。しっかりと覚える前に眠ってしまっていたから。
「こら、蒼海ちゃん?そんなに声出したらお兄ちゃんビックリするでしょ?」
続いて女の人の声。
この声は知っている。僕の母さんだ。赤ちゃんの時に散々聞いたから声だけでそうだとわかる。
そちらの方を向くと、頭の中の母さんと少し違う女性がいた。
(やっぱり、すこし老けたよなぁ。まだまだ綺麗だけど。)
失礼な事考えているなと思ったがそう感じてしまったのだからしょうがない。
「それじゃ、蒼空くんも起きたし身体を拭きましょうか!」
そう言って母さんは僕にかかっている布団を剥がした。
布団の下には、まさに骨のような身体が入っていた。
ブクマ110件突破してた!
嬉しい悲鳴だよ! ありがとうございます!




