授乳
僕が生まれ変わってから1日経った。
そう、生まれ変わったのだ。
生まれ変わってすぐは何がなんだが分からなかった。
生まれ変わった時のことを思い出すと出産ってすごいと考える
生まれてすぐ分娩室の明かりで目をくらまされ、冷たい外気に晒されたと思ったら母親との管を切断される。
人生で2回目……いや、今の人生では一回目なのだが生まれ変わったのだから2回目とする。
その前世の経験というアドバンテージがあったのにも関わらずただ泣く事しかできなかったのだから出産とは大変なことなんだなと思う。
そして泣きつかれで眠ってしまったあと、まぁ翌日になるのだがようやくしっかりと考えられる様になっていた。
あぁ僕は生まれ変わったんだなと。
前世での最後の記憶はお腹に鋭い痛みを感じて意識が遠のいていったこと。
そして何かを守れなかったということと「待っててね」という声
それ以外のことはあまり思い出せない。
いや、前世でどの様な生活をしていたとか、常識や知識などは覚えているのだが死ぬまでの数日…もしくは数年間が思い出せないのだ。
死ぬ寸前以外での一番新しい記憶は高校二年生の文化祭。
確か誰かに一緒に回ろうと声をかけたところまでは覚えているのだがその先が思い出せない。次の記憶ではすでにもうお腹に鋭い痛みを感じていた。
生まれ変わったことで頭が多少混乱しているのだろう。と、僕は徐々に思い出していけばいいと記憶について考えるのは止めた。
さて次はと頭の中を整理していると僕……産まれたばかりの赤ちゃんのもとに一人の男性が近寄って来た。
「おぉー目が覚めたんでちゅねー?わかるかなぁパパでちゅよー?」
そう赤ちゃん言葉で話しかけてくるのはきっと僕の父なのだろうと感じた。感じたというのは今だ目がうまく開けられずしっかりと視認できないからだ
だがその男性の声を聞くと自然と安心できたのできっと本能でもこの声の主が父だとわかったのだろう。
「さぁ、昨日は寝ちゃってダメだったから今からパパのミルク飲みまちょうねぇ〜?」
男性……父は慈愛に満ちたにこやかな声でそう言っている。
………………………おかしい、普通は母親ではないのか。
パパのミルク?ママじゃなく?
そう考えているうちに父に抱き抱えられる。
「お腹空いてるかなぁ?いっぱい飲んでいいでちゅからねぇ?」
そういうと僕の口に柔らかいグミのようなものが当てられた。
本能とは怖いもので、前世の記憶……常識としてパパのミルクというのに強烈な違和感を感じたものの口に当てられた食感に思わず吸い付いてしまう。
チュパチュパと音が出てしまうが止まらない。
たまらなく身体が求めるのだ。
空腹だったからなのか、赤ちゃんの本能のまま僕は吸い続けていた。
しばらくすると僕はお腹いっぱいになり口を離す。
満腹だ…眠い…
そう、これもまた赤ちゃんの本能
ミルクを飲んだらすぐ寝てしまう。
眠ってしまう寸前に父の声が聞こえてくる
「お寝んねしましょうねー蒼空ちゃん。目が覚める時はママも一緒でちゅからねー」
あぁ次は母も来るのか……そう思ったところで僕の意識はまた眠りについていった
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