靄
ママ目線続くよー
私の響。私だけの響。それをわからせてあげないと…
あの日以降私の響への束縛は激しくなった。
今まででは一緒にいて抑えられていた嫉妬や束縛が離れた事によって爆発したのだ。
響が他の女達と喋っているときは怒りでおかしくなりそうだった。
本当なら響と話しているのは私のはずなのに。
自然と拳に力が入っていて、血が滲む程だった。
連絡先を教えろ?ふざけるな。それを聞いて何になるというんだ。まさか遊びに誘うつもりじゃないか?そんなこと許せるわけ無い。響と遊ぶのは私の役目なんだから。
自分でも酷い嫉妬だと思う。
高校時代には考えもしなかったコトだろう。
「束縛?しないわよそんなこと。そもそも一緒にいるのに束縛なんてする筈ないじゃない」なんて私は言ってたっけ。
確かにそうね。一緒にいたら束縛はしなかったんだと思う。状況が変わってしまっただけなんだ。
そんな自分の嫉妬に気付かされてからは響を縛ることしか考えてなかった。
渡さない。絶対にと。
子供が宝物を大事に抱きしめるように。動物が自らの食料を隠しておくように。出来る限り女達から響を遠ざけようとした。
連絡をこまめに送るようにお願いした。
連絡が返ってこなければすぐさま電話をした。
電話にも出てくれなかったら私は一目散に響のキャンパスまで出向いた。
キャンパスへ向かっている時の私は必死だった。
響が取られちゃう。私の元から居なくなってしまう。
そんなありもしないことを本気で焦り必死にキャンパスへ向かっていた。
そんな生活をしていると響に話があると言われた。
もちろん束縛について。
「渚。どうして俺を信じてくれないの?」
「違う。響が信じられないんじゃないの。他の女達が信じられないのよ。ねぇ?わかってる?響は美人さんで男なのよ?…あんな大学にいる飢えた野獣のような女達に響が敵うわけない…だから、私が守らないと――」
「違うよ渚。そうじゃないでしょ?………渚はね、寂しいだけなんだよ。」
響はそう言ってきた。寂しい?
「寂しいって…もちろんそれもあるわ。だけど―――」
「ううん。それだけだよ。ずっと一緒にいたからね。俺にはわかるよ。寂しくて不安になって、それでマイナスのことばかり考えちゃう。ちがう?」
「ち、ちが…ほかの女たちが……ひ、響がとられちゃ―――」
そう言いかけた時、ギュッと響に抱きしめられた。
「ごめんね。気付いてあげられなくて。でも安心して。俺は絶対に渚から離れないから。渚以外を好きになったりしないから。」
そうか―――私は、寂しかったんだ。取られるとかそんなのは言い訳で。ただただ寂しかったんだと気付かされる。
それと同時にここ最近してきた事が異常だったと振り返る。
私はなんてことを響にしてきたんだと。謝らないと。
だが既に涙を流している私は上手く言葉を口にできない。
「ご、ごめなひゃっ…わ、わたしひびきになんてことっ…」
「いいんだよ渚。大丈夫だから。気付いてくれたのならそれでよかった。」
「ひ、響ぃぃ………」
そんな響の言葉に私は恥ずかしげもなく大声で泣き始めた。
ずっと寂しかった。一緒にいたかったのにそばにいなかった。そんな思いがどんどん涙となって外へ出ていった。
しばらく泣いたあと、落ち着いた私に響が話しかけてくる。
「ねぇ渚?このままの生活を送っていたら俺達2人とも大学生活送れなくなっちゃうよね?」
「うん…うん。」
「それでね、俺今入ってるサークルをやめようと思うんだ。」
「え?」
「えっとね。まぁ今でも行ってなかったんだけどさ、別なところに入ろうと思って。渚の大学のサークルに参加しようかなって」
「ど、どうして?」
「ほら、それなら大学終わった後一緒にいられるだろ?お互いおんなじ場所で楽しめる。これなら、渚も寂しくない。」
「そ、そうだけど…響はいいの?」
「うん。大丈夫だよ。それに今のサークル、苦手なんだ。女の子がうるさくて…それに、渚もいないし。」
「響…」
「あとね。女の子との連絡先も交換しないよ俺。大学行ってみてわかったけど、俺は渚以外の女の子苦手だなってわかったよ。俺達同じだね」
そう、響は笑ってくる。
あんな酷い嫉妬をぶつけてきた私に。息も詰まるほどの束縛をしてきた私に響は笑いながら同じだねと。
「だからね、渚。あんなこまめに連絡しなくてもいいんだ。渚も俺もちゃんと講義に集中しないと。二人の将来のために、ね。」
「うん…うん。」
「ありがとうわかってくれて。大好きだよ渚。」
「私も…私も響が大好き。ずっと好き…絶対離さない。」
「うん…離さないでね、渚」
こうして響のおかげで大学時代は何とか過ごしていけた。
就職の時も同じような事があったけど、その時はちゃんと理由を説明できて響にも納得してもらえた。
お互い支え合う形でいるために家庭に入って欲しいと。
わかってくれた。そう思っていたのに………
仕事のことは何とか納得したが、日が経つにつれて靄が大きくなっていった。
毎日響は仕事に行く。休みなく、だ。
姉さんが忙しいのは前々から知っていた。ベストセラーを書いている作家だ。当然だろう。
それでも毎日なんておかしい。ましてや入ったばかりのアシスタントなのに。
もう一つ靄を大きくする原因があった。
この前病院で響と話した時だ。
響は嘘をつくとすぐわかる。癖が出るから。
ただ、嘘をつくときはそれなりに理由があったしすぐに話してくれていた。
まぁその嘘と言ってもデートに遅刻してきた時とか弁当を作り忘れてきた時だとかの笑って流せる程度の嘘だった。
でも今回は違った。まず何について嘘をついているのかわからない。
待っていてもその事について触れても来なかった。
今まで一緒に生きてきて初めてのこと。
その二つのことで私の中の靄は日に日に大きく濃くなっていった。世界を見えなくするように……
完全に世界が見えなくなった私は行動にでる。
響のあとをつけよう。
それが間違った事だとは知らずに。
靄です。
変換使わないと私には読めなかったので晒しときます。
そしてブクマ35件突破しました!
ありがとうございます!!




