第11話:超能力者vs目玉
捜索も3度目、残り最後の分岐を進んでいた。
マックスは俺を気に入ったのか良く喋りかけてくる、気緩んでないか何度か注意したが探索自体は慎重に進んでいた。
マックスはエルフのお姫様と恋に落ちてエルフ語を覚えたとか、「どれだけ厨二病なんだか、ぷっぷっ。」と笑ってやったらかなり本気で怒っていたそれが厨二なんだって。
「なあここが最後だから敵が出るんだよな。」
「ん、4体。」
「なんでわざわざ最後にしたんだ。」
「ん、一番被害が少ないと予想。」
そうか、被害が出る可能性が高いのか気を引き締めて進まないとやばいな。
どれくらい道を進んだのか分からないくらい進んで、T字路にたどり着くと待ち伏せに気が付く。
T字路の向こう側で待っている、細い道の方に1体、太い道に3体いるので挟み撃ちを狙っている。
3体のうち1体は3mの球形だ、大きいのでこいつがボスだろう。
残りの者は2m弱の球形だ、こいつらは従者だな。
マックス達に耳打ちをする、念動力で鼓膜をそっと振動させた。
「敵左3、右1」
マックス達はビックとするが理解したと手を挙げる。
右を無視して左へ曲がり進む、その間に油瓶を3つジャグリングする。
念動力で油瓶を弾く、割れた音が合図でアカネが矢に火をつけるとドワーフとエルフが矢を放つ。
マックスと俺は走り出すと、棒の先の明かりが消える、魔法無効化の視線ってやつだな。
なんだこの感じは悪寒がする、気がつくと壁から白い腕がマックスに伸びる。
「マックス危ない。」
突き飛ばすと、白い腕が俺に絡んでくる。
「カンザキ逃げろ、生命を吸い取られるぞ。」
ヤバイ完全に取り付かれた。
マックスは怨霊に剣を振るうが空を切る。
「くそアンチマジックフィールドで、魔法の効果が無くなり怨霊を切れない。」
怨霊は俺に組み付きしきりに口から何かを吸い取ろうとしている。
あれ、おかしいな俺なんとも無いけどね、正確には悪寒がするので何かの攻撃を受けてはいる。
これ日本で受けた事がある、呪いだ、超能力とは全く違う方法で人を殺す呪術者と敵対関係に成ったときに呪殺されそうになったことがある。
ああこれは間違いなく明日から熱が出て寝込むな。
「ん、カンザキ未来予知が変わったの急いで。」
「分かった。」
ヒイロは、銃を取り出し右の通路に3発後に撃った、「ギッギ、ギャ」きっと右通路の目玉にヒットしたのだろう、俺も急ぐ事にした。
怨霊の襲撃中に気がついた事がある、念動力がアンチマジックフィールドでも使える事と、この世界に来たときに俺の能力の幅が増えている事。
つまりこんな感じだ、『ガッ』音は無いがあればこんな音がしただろう怨霊を掴み引きはがす、チャンネルを調整すれば幽霊にでも干渉できる。
エーテル体を掴まれて普段は恐ろしい顔をしている怨霊が驚愕の表情を浮かべる、そのまま壁に叩きつけるが壁をすり抜けて拳が痛い。
再度壁に叩きつける今回は壁の表面に念動力の薄い膜を作ったのでダメージがあったようだ。
普段物理ダメージを受けないからだろう、明らかに錯乱している俺の腕にしがみ付いている、そのまま壁に顔をガリガリと擦りながら走る。
マックスはあまりの非常識ぶりに遅れるが俺は無視して目玉の化け物に突っ込む、後の明かりの光量が増えたのでアンチマジックの効果を解除したようだ。
目玉の化け物の小さな触手が一斉にこちらを向く。
「やらせはせんよ。クローバーの矢」
トランプのクローバーのカードを取り出し左右の従者達に飛ばす。
触手の先の小さな目玉に突き刺さる、素早く通り抜ける時にナイフを中心の巨大目玉に突き刺して通り過ぎた。
ボス目玉は触手をこちらに向け光線を発射する、腕にしがみ付いた怨霊を投げる「大リーグ怨霊玉1号」怨霊玉は光線に当たり輝き霧のように消えた。
残りの光線も急ぎ過ぎているのか照準が甘いステップでかわす。
「光線の放つ方向が分かり易いんだよ。」
中心の巨大目玉を掴みヤクザキックをする。
『ブチブチ』
目玉が取れる。
「ギャァー、☆▲♂待て□◎」
「スペードの剣、俺はエルフ語しか分からん。」
トランプのスペードを13枚取り出し剣を作り巨大目玉を真っ二つにする。
残りの2体はマックスとドワーフが止めを刺していた。
遠くでは1体のボールが燃えているアカネが燃やしたのだろう。
マックスが息を切らせてこちらに来る。
「恐ろしいほど強いな。」
「そうか、それほど強くない。」
「カンザキお前の事だよ。」
アカネ達もやってくる。
「アンチマジックフィールド私には効かなかったわ。」
「そうだな。」
「ん、怨霊を予知できなかった。」
「今なら怨霊探知ができる。コツを掴んだので今度教える。」
戦闘から少し時間が経過して今は少し離れた所で休憩をしている。
「魔法のアイテムとか、宝石を手に入れたようね。」
アカネの報告だった、報酬の5倍以上の金額を手に入れたようだ。
アカネは驚いているようだが、化物でも貴族クラスの身分ならそれなりに金銭を持っているだろう。
マックスは光線を簡単に避けているのに驚いたようだが、視線の方向にしか発射できない光線など見ていれば交わせると言ったが信じられないようだった。
日本に居た時は銃の向きで弾丸の軌道を予測して避ける訓練をしていたのでそれよりも簡単だった。
マックスは自分の剣の上達のアドバイスを求めてきたが、何もかも駄目だと駄目出ししたら落ち込んで床にのの字を書いている。
まず敵の弱点を突く精度が悪すぎる、今回は大小の目玉が敵の主な武器だ、ならばそこを攻撃する必要があるのに攻撃していなかった。
「動く目標を当てるのが難しい。」と言っていたが、当然敵は防御するし攻撃もしてくるそこを予測して攻撃する必要がある「何言ってんだアホか。」で切り捨てる。
次に攻撃の威力が弱すぎる、触手を切り付ける時に思ったが敵の外皮に刃が負けている、外皮を切ってもダメージを与えていない。
「皮膚が厚すぎる。」と言っていたが、なら重い剣を使うか瞬間的に体重を乗せるかするべきだ、それが出来ないなら薄い所を的確に狙う必要がある「俺はトランプのカードで真っ二つにしたけどな。」とカードを見せた、念動力で強化してあるといってもそれだけで切れる訳が無い。
俺は、切る瞬間に体重と念動力を乗せて一気にを引き切ったからだ、まあ、細かい事を言うとミクロ単位でのこぎり状にした先端とか、のこぎり状の先端を2枚交互に高速移動してハサミのように裁断しているなど念動力の調整をしているがこれは俺しかできないので関係の無い話だ。
「まあ、日々精進だな。」
「師匠と呼んでもいいですか。」
「俺は超能力者しか弟子に取らない。」
ガーンと音が聞こえそうなほどの顔をする、そんな顔するなよ。
「友人でいいんじゃないか。」
「ありがとう、カンザキ。」
マックスの肩をポンポンと叩く。
「それよりヒイロ、予知が変わったが調子が悪いのか。」
「ん、ノン、でも怨霊が出現してから予測が変わった、ドワーフ死ぬとこだった。」
首を傾げるヒイロを見ながら考える。
そうか、何となくヒイロの欠点が見えてきた。
「昔俺が呪殺されそうになった事覚えているか。」
「ん、霊媒師を手配した。」
「その時も攻撃を予知できてない、でも呪殺者の特定はできた。自分の知覚できないものは予知できないんじゃないかな。」
「ん、困った。」
「いや、逆に能力を向上させる練習にはこの世界は俺達に都合がいい。エーテル体の知覚方法も目処が立っているし。」
「ん、カンザキ凄い、流石。」
戻ったら練習だな。
段々調子が悪くなってきた早く戻ろう。
地下を戻っていると前方から人の気配がする。
「ん、大丈夫。」
ヒイロの言葉にホットする、出来れば今の状態で戦闘はごめんだ。
サウザンドとサロック達だった、ザナドゥまでいるじゃないか、安心したら寒気と吐き気で立っていられなくなった。
「ちょっと、大丈夫。ねえ・・」
アカネの慌てる声が地下での最後の記憶だった。