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練兵場の模擬戦

 研究室でも時間があれば、教科書とノートにかじりつくルディの姿に、デューレイアは苦笑する。

 「これも、もう恒例ね」

 試験前の、まいどのルディの姿だ。

 「こういうとこ、真面目っていうか、融通が利かないっていうか。今更じたばたしても仕方ないでしょ」

 赤点さえとらなければいいじゃないかというのが、デューレイアのいうところだった。実際、彼女はそれでやってきたものだ。

 「コイツの知識は偏ってるところがあるからな。まあ、無駄になるものでもないし、しっかり勉強しておけ」

 知識はあって無駄にはならない。学べる機会は生かすべきだと、ブランはルディの試験勉強を見守っていた。

 今は一人で机にかじりついているが、ローレイ、フローネ、エル、ネルフィルとも一緒に勉強会を開いていたりする。

 ブランとしても、同年代の友人達との交流を今更止めるつもりはない。ルディと共にいることの危険性を理解し、それでも付き合っていくことを望んだ友人達なのだ。




 王宮の執務室の机上に並べられた食材。具体的には蜂蜜の入った瓶が数本と香辛料、蒸留酒(ブランデー)とリキュールが数本。

 これらが出てきたのは、カレーズ侯の付き人が持つ魔法鞄からである。

 「我が家の賄い方が手配した物だ。昼食の礼代わりにと思ってな」

 まるで、こちらの文句を封じるような絶妙のタイミングだった。

 示されたリストとラベルに目を通せば、その価値にはブランも呆れてしまった。

 ブランデーは有名な最高級品で、リキュールも高級な物ばかり。香辛料には、かなり手に入りにくい稀少品も混ざっているし、蜂蜜も貴重な逸品揃いである。

 一品一品の詳しい価値はともかく、昼食の代価としては高すぎる代物だということくらいは、一見してわかる代物だ。

 「ありがたいですが、いささか気前がよすぎるのではありませんか」

 「今までのわたしの礼と、先日のジルレール殿下が訪ねられたときの迷惑料だと思ってもらえれば良い」

 軍務卿が部下に昼食をタダでタカっていたというのも、外聞が悪い。また、それ以上に、ルディシアールの料理は口にあった。これからも機会があれば、相伴したいと思うほどだ。それを思えば、礼はしておかねばなるまい。

 それに、ジルレール王子がルディシアールに無理を言ったのは、侯爵が彼の料理を褒めたのが原因だった。その詫びも兼ねていた。

 機先を制される形となり、何となく腹立たしい気分ではあったが、受け取らないという選択肢はない。ルディに対する謝礼として、しかも、金銭ではなく、食品を持ってくるあたりが、うまいやり方だった。

 なにしろ、ルディが喜ぶ顔が目に浮かんでしまうのだ。

 「金銭よりはルディは喜ぶでしょう。ルディシアールに成り代わり、御礼を申し上げます。しかし、殿下にはあのようなことはお控えいただけるよう申し上げていただけないでしょうか」

 王子だけでなく、侯爵にも言いたいが、あえて名をださない。言っても無駄だからである。

 「言っても良いが、殿下には随分と気に入られたようだ。知っているだろう、ジルレール殿下のご趣味を」

 「噂は聞いております。恋愛対象は男女を問わないと」

 「ご自身の婚姻の話を潰すためと、わたしは思っているが、後腐れがない男に手を出されることが多い」

 わりと歯に衣を着せぬ言い方を、侯爵は選んだ。

 自身の性癖を隠さないことで、婚姻する気がないことを、周囲に知らしめるつもりだろうと、カレーズ侯を含めた首脳陣は捉えていた。

 「ルディを気に入られたと?」

 「そなたも、だろうな」

 予想はできたが、ブランは露骨に嫌悪を露わにした。

 他人の性癖をとやかく言う気はないが、自身が男からその手の欲望の対象とされるのは気分の良いものではない。まだ、実害がなければ放置しておくにせよ、だ。

 その様子に、侯爵(エイリック)黒の魔法殺し(ブラン)銀の雛(ルディシアール)に関する噂をあえて口にすることはしなかった。二人に単なる師弟と言い切れない特別な繋がりがあることは理解していても、それを他人がどう見るかまでは、それこそどうしようもないことだからだ。

 「殿下のなされようにも、いろいろ理由がおありだろう。なにより、殿下はまだお若い」

 そもそも王族の婚姻は政略的なものである。

 そのなかで、ジルレール王子は結婚しないという意思を、そのような形で表明しているようなものだ。

 若さゆえというそれを、周囲は苦笑いを浮かべてはいるが、王子に無理強いするような情勢ではないため、黙認しているのだとエイリックは言う。

 「ところで、先日、魔法学校で殿下の護衛隊長、アウデイルが第二師団の女兵士に、手合わせを望まれたそうだが。それで、アウデイルも少々思うところがあったようだな。早朝に王宮の練兵場で、ほぼ毎日配下と手合わせをしているようだ」

 王宮の練兵場といえば、主に近衛が訓練を行っているものだ。

 ブランは過去を含め、そこにはほとんど足を踏み入れることはなかった。王宮に隣接する第三師団の訓練場になら、かつては幾度か足を運んでいたが。

 何故エイリックがそんなことを言い出したかは、察するまでもないことだ。

 あからさまに自分から矛先を逸らそうという姑息とも言えるそれに、ブランが乗るしかないことをエイリックは見越していた。




 ルディと違い、朝には強いブランだが、王宮勤務の日もあまり早朝に登城することはない。

 閣下と呼ばれる立場の上司が、必要もなく早すぎる時間に出てこられては、部下が困るからだ。

 とはいえ、今回は用事があってのことである。


 練兵場に思わぬ人物が顔を出したのに、早朝訓練をしていた近衛騎士や兵士は怪訝な顔をしていた。

 もちろん、主に王城を勤務地としている彼等が、あからさまに迷惑そうな態度をするものでもなかったものの、意外そうな顔をするのは無理のないことだ。

 ブランは、王国軍を取り仕切る軍務卿の直属であるから、広義では上司にはなるが、ある意味第三師団でも特別扱いとなる近衛連隊は、彼の直接の管轄下にはない。

 むしろオリディアナの件があったから、どちらかというと互いに敬遠気味なところがあるくらいだ。

 「おはようございます、アルダシール閣下」

 練兵場の管理者を始め、この場にいる騎士や兵士達の視線を受け、アウデイルが率先してブランに声をかけた。

 この場にいる者の中で、最も高位であり、ブランと面識がある自分がその役目を負うのは仕方のないことだと、アウデイルは了解している。

 「おはよう。アウデイル殿、カレーズ侯から貴殿がここにいると聞いた。この間はデューレイアの無理を聞いてもらったから、礼を言うついでに、近衛の訓練を覗かせてもらいに来た」

 「閣下が気になされることでもありません。わたしも第二の女兵士に、王宮のお飾り扱いされるわけには参りませぬゆえ」

 実のところ、近衛連隊と第二師団はあまり仲が良いとは言えない間柄だ。相性が悪いと言っても良いだろう。

 近衛連隊は、貴族出身者が多くを占めている。国の中枢たる王宮に勤め、王家の警護に当たるのだ。王国への忠誠心はもちろん、否応なく王族に対する礼儀や、儀式典礼における知識が求められる。

 それらを備えた貴族出身者が多くなるのは、ある意味当然のことだった。

 そして、第二師団は遊軍としての位置づけが強い。

 機動力を備え、強襲を得手とするのは第一師団も等しいが、王国の切り札たる魔導騎士を主力の軸とした第一師団と違い、第二師団の主力は剣士、槍士、魔導士など多岐にわたる。

 つまるところ、強ければ良いというのが第二師団と言って良い。それだけに、腕自慢の荒っぽい連中が多く、接点が少ないこともあり、お上品な近衛を一方的に嫌っている者も少なくないのだ。

 同様に、近衛の方も、礼儀知らずを全面的に否定できないような第二師団の荒っぽさに眉を顰める者は珍しくない。

 そのような確執もあり、近衛のプライドにかけて、挑戦から逃げ、強さを疑われるようなことはアウデイルにはできなかった。

 それを読んで、立ち合いの相手に自分を指名したデューレイアの配慮は、むしろありがたいものだったのだ。

 正直にいって、あのネリーネという女兵士は侮れない腕前であった。

 自分であったから余裕をみせて勝つことができたが、立ちあったのが部下であったら危なかっただろう。

 だからこそ、少々厳しく部下を鍛えようと早朝訓練に励んでいるのだ。

 「貴殿にそう言ってもらえるのは、こちらもありがたい。実は貴殿とはすこし話をしておきたくて、訪ねさせてもらった」

 「やはり、そうでしたか。正直なところ、わたしも殿下の侍従から相談を受けておりまして。その件で近々、閣下とお話しできる機会を持ちたいと思っておったところです」

 閣下の方から足を運んでいただいて、恐縮であるといい、アウデイルは場所を変えることを提案する。

 ここは少々、ブランと話をするには都合が悪いところだと、アウデイルは配慮しようとしたのだが、少しばかり遅かったようだ。

 「ごきげんよう、ブラン・アルダシール。いいえ、アルダシール閣下。ごきげんよう、アウデイル殿」

 後宮勤務の近衛騎士である彼女、オリディアナがここに来るのはおかしなことではない。彼女にも、騎士であることのプライドがある。今となっては、騎士である誇りが彼女に残された支えだ。だからこそ鍛錬は欠かさない。

 「おはよう、オリディアナ殿」

 「おはようございます」

 何気ない様子で挨拶を交わすブランとオリディアナだったが、一緒に挨拶を返したアウデイルの表情はわずかに緊張していた。

 同様に、居合わせた事情を知る者は、さりげなく興味深げな視線を向けたり、別の方向を向いて苦い顔をしたり、素知らぬ振りをするなど、密かにそれぞれの反応を返す。

 オリディアナは、アウデイルにも挨拶しつつも、その意識がブランにのみ向けられているのは、明確であった。

 アウデイルとしては、すぐにでもブランと場所を移動したいところであったが、残念ながらオリディアナの様子では難しいと思わざるをえない。

 彼女にとって、ブランとこのようなところで顔をあわせるなど、予想外なことだっただろう。

 しかし、そこで彼を避けるという選択は、オリディアナにはない。それは彼女のなかでは逃げるということで、意地と矜持が許さないのだ。

 自分でも可愛げがないとは思っても、なかなか変われるものではなかった。

 「閣下に、このようなところでお会いできるとは思いませんでした。いかがでしょう、一手お相手をお願いしたい」

 こんなのは未練だ。

 周りもそう解釈するだろうし、自分でもそう思う。

 それでもオリディアナは、ブランに自分を見てもらいたかった。せめて、騎士としてでも。

 「オリディアナ殿、閣下はわたしに会いに来られたのだ」

 アウデイルが、オリディアナの嫌忌に触れかねないのに構わず、申し出を断ったのも、むしろ彼女を思いやってのことだ。

 「わたしに割く時間はないと言われるか。騎士としての修練を望むのみで、他意はないと言っても駄目と?」

 この時間に練兵場に来ると言うことは、剣、あるいは槍の修練をするということである。下位の者が上位の者に挑むことも認められ、またそれにかなう限り応えるのは、上の者の度量を示すものであった。

 「むろん、閣下は魔術師であられるゆえ、剣を使えないと言われればやむを得ない」

 「オリディアナ殿」

 アウデイルが渋い顔をするのも無理はない。女の申し出を断れば、ブランの面目がたたない。彼が魔術師であることを差し引いてもだ。

 オリディアナがブランを挑発しているのは明らかだが、あまり褒められた言い方ではなかった。

 「貴女の意気は買うが、俺の剣は騎士の剣ではない。貴女のためにはならぬだろう」

 それはブランの正直な気持ちである。

 「わたしの腕では不服とおっしゃるか」

 「オリディアナ殿、少し落ち着かれよ。貴女が閣下との立ち合いを望まれるのはわかった。しかし閣下も故無く断られておられる訳ではないのだろう。いかがか、ここはひとまず、わたしに譲っていただけないだろうか」

 むしろ嗾けるように、間に入ったアウデイルは口の端を引き上げる。

 「アルダシール閣下、一手お相手を願いたい」

 アウデイルは近くの騎士に、模擬戦用の剣を持ってくるように求めた。

 「わたしの知り合いに第一師団の中隊長をやっている奴がいましてな。飲んだ時に、わたしに仇を取って欲しいと頼まれていたのです。幸い、噂の薬師殿はいないようで、ちょうどよい機会と思いましてな。いかがでしょう、わたしと模擬戦をしてもらえませんか」

 そういえば、過去にデューレイアに計られ、剣を交える羽目になった中隊長がいたと、ブランは思い出した。それ以降も、模擬戦を挑まれた、第一師団の騎士達をことごとく返り討ちにしてきたブランである。

 もれなくリリータイアの作った激烈にまずい回復薬を飲むという、罰則付きだというのに、懲りもせず挑んでくる騎士達には、正直呆れたものだ。

 中隊長達も幾人か混じっていたから、アウデイルの言うのは、最初に相手をした二人のどちらかか、相手をしたうちの一人なのだろう。

 酒の席の話なのだから、相手も冗談半分だろうし、ひょっとして負けたお仲間を増やしたいとでも思ったのかもしれない。

 いずれにせよ、アウデイルはブランの剣の腕を知っていて、模擬戦を申し込んでいるのだ。

 「いいだろう。貴殿にはデューアの件でやっかいをかけたことだしな」

 オリディアナの申し出を退け、アウデイルを相手に選ぶのだから、ブランの剣の腕を知らない騎士達は何ともいえない視線を向けていた。

 「よろしいのですか?」

 刃をつぶした模擬戦用の剣を用意した騎士が、アウデイルに小声で問いかける。

 「何がだ?」

 「いえ、その‥‥‥アウデイル隊長は第三でも五本の指に数えられる使い手ですし‥‥‥」

 その彼と魔術師であるブランが剣による模擬戦をするというのだ。いいのかと思うものが大半だろう。

 もちろん、いろいろな意味でオリディアナとブランを立ち合わせるのは、望ましくないのは、多くの者が理解している。

 剣とはいえ、ブランがオリディアナに後れを取るのは望ましくない。

 しかし、彼女をブランがたたきのめしても、とやかく言う輩がでるのは目に見えていた。

 そういった事情を察し、なかには、相手がアウデイル隊長なら、閣下が勝てずとも仕方ないということだから、アウデイルがそれを狙ったのだと考える者もいた。負けても、恥とはならないということだ。

 「わたしより強い奴などいくらでもいる、とまでは言わないが、珍しいわけでもないさ」

 実際、アウデイルは楽しみだった。

 彼に話をした中隊長も、結構な腕前であったはずだ。

 その彼を、簡単にあしらえるような剣士と対峙できるなど、ぞくぞくする。

 まったく、話通りの腕であることを願うばかりだ。

 つまるところ、彼とて最初から負ける気で模擬戦を申し込んだわけではないのだった。


 脱いだ上着を空間魔法の収納具に仕舞い、ブランは籠手と胸当てだけを取り出して装着した。

 アウデイルも愛用の鎖鎧を着ている。

 二人とも用意された模擬戦用の鉄剣のなかから片手剣を選び、素振りをして感覚を覚え、練兵場の中央で対峙した。

 騎士達は皆、訓練の手を止め、取り巻くようにして二人を見ていた。


 彼を前にして、アウデイルは伝え聞いたブランの腕前に誇張がないことを察した。

 いや、話以上だった。

 息の詰まるような緊張感の中、先に動いたのはブランだ。

 「はっ」

 剣の打ち合う音が二度響く。

 一度剣を引き、互いに間合いを計るかのような一呼吸。

 すさまじい威力と速さでの攻防は、見ている者の目には刹那でしかなかった。

 アウデイルの喉元に、ブランの剣先が突きつけられた形で、決着はつく。

  「参りました」

 恐ろしい剣の冴えだと、アウデイルは戦慄を抑えきれない。

 ブランが自身で言っていた意味が実感としてわかった。

 これは実戦の剣、敵を殺すための剣だ。

 少なくとも、オリディアナが己の腕を高めるために、修練の相手として対するような剣ではない。

 「第一師団の手練れ相手に負けなしとは伺っていましたが、これでは無理もありませんな」

 「剣ではな」

 「槍とて、ディケドクルス殿以外で、閣下に勝った者はいないと聞いています」

 二人から鉄剣を受け取った騎士が、その話に目を丸くする。

 ここにいる騎士達で、具体的にブランの腕を知っていた者は、アウデイル始めほんのわずかだった。

 アウデイルとて、彼に話をした中隊長に「化け物」という評価は聞いていたが、まさかここまで事実であったとは、さすがに思っていなかったのだ。

 「ご覧の通りだ、オリディアナ殿。貴女の腕では、閣下の相手はつとまるまい」

 アウデイルは決して、オリディアナの腕を見下していったのではなく、ただ事実を述べただけである。

 今の立ち合いで、アウデイルが手加減していたなどという声は出なかった。それがわからないような腕の持ち主は、さすがにここにはいない。

 「よい経験をさせていただきました」

 「いや。こちらこそ、貴殿には気を遣わせてしまったようだ」

 なんだかんだいっても、腕自慢の騎士、兵士達は、強い者にはそれだけで従う傾向がある。

 魔法で最強といわれる異名持ちであることがわかっていても、剣の腕を目の前で示されれば、話はまた別だ。

 実際、ここにいる騎士や兵士達のブランを見る目があからさまに変わっていた。

 アウデイルは、オリディアナに対する以外に、おそらくそこまで考えて、模擬戦をしたのだ。だからブランは気を遣わせたと、言ったのだった。

 無論、アウデイル自身に、強者に挑んで勝つ気が皆無であったとは言わないが。




 オリディアナは、アウデイルを伴ったブランを半ば呆然と見送った。

 剣の腕を示すことで、ブランは彼女との距離を示したのだと、オリディアナは思う。

 不用意に近づくなと、言葉ではなくオリディアナを拒絶するそれは、オリディアナに対する、彼なりの配慮でもあるのだろう。

 わかっているのだ。オリディアナにも。

 今のようなやり方は、ブランの立場をまずくする以上に、オリディアナ自身を傷つける。

 他人から見れば難しい話ではない。ブランの懐に彼女の入る余地はないと、オリディアナが認めればいいだけだ。

 実際には、ブランとしてはそこまでオリディアナを邪険にしたいわけではない。

 単に、面倒をかけずにいてくれれば構わなかった。

 それこそ、彼女が割り切れさえするなら、友人としてのつきあいだってできるだろう。ブランの側に、恋愛感情は皆無であるからだ。

 だが、それをオリディアナの心が認めることは、まだできないでいた。

 愚かだと、オリディアナが自らを詰る。

 自分はこんなにも馬鹿だったのだろうかと、何度も思う。

 頭を冷やし、この想いに区切りをつけ、ブランとの新たな位置を定める機会を、オリディアナこそが求めていたのだ。


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