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公開練習試合二年次 前編

 馬の首の代わりに人の上半身を持ったゴーレムは、その巨体ゆえに歩む音も普通の馬とは比べものにならないほどに大きな音を立ててしまう。

 けれど、滑稽なほど慎重な足取りで歩むゴーレムの足音は、数日前よりははるかに控えめだった。

 「お姉さん、そんなに沢山注文したんだ」

 夕食のお裾分けにきたルディが、リリータイアの研究室に山積みになった薬草を見て、唖然とする。

 一昨日、そろそろ新しい薬草が欲しいようなことを言っていたが、これはちょっと多いだろう。

 「これはオズワードが置いて行ったのよ」

 「オズワード?」

 「オズワード・ヨルゲン、この間来たでしょう。ゴーレム研究の講師よ」

 姓名を聞いて、ようやくルディにもわかった。異形のゴーレムに乗って、怒鳴り込んできた迷惑な人だ。

 「そういえば、しばらく顔を見なかったわね。前は、迷惑かけたからって、ときどき薬草を持って謝りに来てたのよ」

 言われてみれば納得だ。ブランも魔法の練習で爆音を立てるからと、たまに薬草を差し入れて、リリータイアの機嫌をとっていた。

 それにしても、これ程ではなかったと思う。

 「保管庫があって良かったわ。せっかくの薬草を無駄にしたらもったいないもの。オズワードも、もう少し考えれば良いのに」

 生の薬草だってあるし、古くなっては効果も落ちる。一度にこんなに貰っても、使いきれないというものだ。

 いくらリリータイアの怒りを買って怯えていたとはいえ、これは量が多すぎだろう。物には適量、あるいは限度というものがある。

 「これ、仕舞っておきますね」

 王宮の許可を取って、リリータイアの研究室には収納魔法の保管庫を贈っていた。回復薬の製作者で、優秀な薬師であるリリータイアだ。王宮も二つ返事どころか、是非ともそうしてくれ、直ぐにでも作って欲しいと、ルディに頼み込む勢いだった。

 別に彼女の実験台になる恐れから、ご機嫌を取っておこうと、魔導士長を筆頭にした王宮魔導士達が考えたわけでもないだろうが、多分。

 そんなわけで、研究室の一角に鎮座している保管庫の中へ、ルディは薬草の山を転送した。

 「そうだ、お姉さん。明日は騎士学校で公開練習試合があるので、僕も先生も朝から出かけます」

 「まあそうなの。頑張ってね」

 「いえ、僕は学校の手伝いで、試合には出ないので」

 手伝いと聞いて、リリータイアは良いことを思いついたと手を叩く。

 「そうだわ、ルディちゃん、なんなら回復薬持って行く?」

 臨床試験にもなるしと、リリータイアが両手を合わせて目を輝かせたのに、ルディは一生懸命断りの言葉を考えた。

 効能はともかくまずいと、誰もが口を揃えて訴える回復薬である。もしかしたらフローネも飲まなくてはならなくなるかもと考えれば、さすがに可哀想だと思ってのことだった。



 初めて騎士養成学校に足を踏み入れたルディは、物珍しさに周囲をキョロキョロと見回しつつ歩く。

 当然、その歩みは遅くなり、同行のデューレイア達はその様を微笑ましく見ていた。

 ちなみに、顔ぶれはルディ、ブラン、デューレイア、リステイルの四人で、魔法学校の生徒達とは別行動である。


 魔法学校と騎士養成学校は学生街と呼ばれる王都の一角に隣り合って存在していた。

 この二校は、ほぼ同時期に設立された。しかし、魔法学校が、魔術師という才能を持った人材を育成するという目的上、入学に身分を問わなかったのに比べ、騎士養成学校は当初は貴族、あるいは騎士の子弟しか入学試験を受けることができなかった。

 それでも抜け道はあり、養子という形の後見を得れば、才能ある平民の子供でもその門戸を叩くことを許されたものだ。しかし、現在のように王国民として身元が確かでさえあれば平民でも受験できるようになったのは、大戦時に戦死者の穴を埋める実力ある騎士が必要とされたからである。

 卒業すれば王国の騎士候補となり、見習いから最短で正騎士への道が開かれる現在の騎士養成学校は、厳正な入学試験と、厳しい訓練が課せられ、将来の王国軍の中枢を担う人材を育成するエリート校だ。

 「敷地的には魔法学校の方が大きいわよ。なにせ、人数が違うものね」

 ルディの護衛を兼ねるようになる前は、騎士学校でも後輩の指導に当たっていたデューレイアである。

 「そりゃあそうですよ。魔法学校からの編入者を入れても、学年で五十人程度ですから」

 そこから厳しい試験を経て、卒業までに更に人数が絞られるのだ。

 デューレイアとは違い、卒業以来ほとんど来る用事のなかったリステイルは、まだ何年も経っていないが既に懐かしいように校舎などを見ていた。

 訓練に明け暮れた日々を思い出していたのだろう。

 魔法学校と騎士養成学校の敷地には、デューレイアのいうように格段の差がある。最終的には絞られるとはいえ、入学時に千人を数える魔法学校とは生徒の数からして桁が違う。当然職員数もそれに応じたものになるが、加えて魔法学校は魔法の研究室もある。それを考えれば、校内で迷うほど広く入り組んだ魔法学校と、学舎としての騎士養成学校の規模を比べても仕方ないだろう。

 また、騎士養成学校は王国軍の管理下にある。入学時に生徒は軍に仮入隊することになっていた。

 そして、騎士養成学校を出ること以外にも騎士への道は存在する。むしろ、そちらの方が普通だ。

 単純に功績を立てるなどで、叙勲の栄誉を得ること。また、貴族家の抱える騎士から、引き抜かれたり推挙される場合もある。

 あとは、推薦、志願など、方法は多々あるが、従士の見習いから入り、下積みを経て、従騎士、そして正騎士に昇格、叙任されることなどが一般的であった。

 ただ、前者は余程優れた能力と運を必要とし、後者は見習いとして受け入れて貰うために、どうしても血筋や縁故などが必要になる。

 それでも、現在のエール=シオンにおいては、実力次第で平民が騎士となることも可能であった。

 もっとも、騎士となれば腕が立つだけでなく、知識や礼儀、人を指揮する能力が求められ、実際問題として幼い頃から高い教育を受けることのできる貴族や騎士の子弟が有利であることは、当然のことでもある。

 そういう意味では、魔法学校から騎士養成学校へ入り、魔導騎士となったデューレイア、リステイル、カウルスは正統派のエリートであった。

 「だから、アンタの幼馴染み達はとんでもなく優秀なのよ」

 デューレイアの目で見ても、フローネもエルも順当にいけば騎士養成学校への編入試験に受かる逸材である。

 騎士としての武芸の腕はもちろん、同時に魔法の才能も求められる魔導騎士は、強力な戦力であり、騎士と魔法の国といわれるエール=シオンにおいても、限られた存在であった。

 傭兵などから転職したり、現場からの叩き上げの魔導騎士も皆無ではないが、滅多には存在しない。

 そして、魔法学校から騎士学校へ編入できる生徒も、その年次に十人いれば上等といわれるくらいだ。

 「アンタの年次は優秀なの多いわね」

 軍務卿の息子にルディの幼馴染み、伯爵令嬢、雷魔法命と火魔法至上主義、デューレイアの知る範囲では、このあたりはまず編入試験に合格できるだろうと思っている。

 もしウェリンやサーニファが王国民であれば受かっただろうが、さすがに騎士養成学校へは入れない。だが、その他にも有望な生徒は片手に余る。稀にみる大豊作の年次であると、学校側は評価していた。

 「特にアンタの幼馴染みの彼女ね」

 これは覚えておきなさいと、デューレイアが真剣な目をして声を落とした。

 「平民だけど優秀な魔術師の家系出身。魔力の高い血筋は、貴族の血とは違った意味で貴重。これはわかるわね?」

 魔法の属性は遺伝しないが、高い魔力は血で引き継がれる。

 だから、貴族もこぞって魔術師の血を家系に取り入れた。今でも、優秀な魔術師は、平民であっても貴族との縁組みが認められるのだ。

 「あと、魔力が高くても、魔法を使う才能は別。貴族でも魔術師になれない者は多い。そうね、例えばカレーズ侯爵家なんかが典型ね。あの家は、武術が先に来る家風もそうなんだけど、体質というか性質的に魔術師に向いていないといわれているわ。だから、アンタのルームメイトはカレーズ家じゃ変わり種なのよ」

 というか、あの三男は頭脳もとんでもない。まったく将来が恐いと、デューレイアをして思う。

 それはさておき、実際、魔法を使う才能というのはある種先天的なものだといわれている。

 訓練である程度はなんとかなるが、それは基礎までだ。暴発させないという最低限と言って良い。

 攻撃魔法、防御魔法も、戦闘に耐えうる精度や威力を構成して発現できる才がいる。

 たとえれば、水源である溜め池と水路だとかつてスレインが言っていた。

 溜め池にあるのは魔力で、水路を通し魔法として外に流すと考える。魔法として構成する能力が水門だ。水門が構造上上手く動かなければ、魔法としての形ができず、水が滞り、また、水路が狭くては必要な魔力が放出できない。

 水門や水路もまた、水源と同じく生まれつきのもので、訓練である程度は改造できるが、それも限度がある。だから、人によっては魔力があっても、魔法が上手く使えないのだという。

 「で、アンタの幼馴染みだけど、高い魔力と魔法の才能、頭も良いし武術の才まである綺麗な女の子」

 べた褒めだが、否定する要素がない。ルディも素直に頷く。

 「嫁に欲しいなんていう貴族は、将来山ほどでるわね」

 「‥‥そう‥ですか?」

 「平民でも実家は魔法ギルドの重鎮につながる家系よ。親戚には魔導士もいたらしいわね。これで魔導騎士、まして竜騎士になれば、かなり高位貴族家にでも嫁ぐことができるわよ」

 自身が実績となる保証された魔術師の血だ。

 魔術師の才を求める家にとっては、彼女は価値のある存在だろう。ことに武門の家柄なら尚更だ。

 子孫に魔術師の才を授けたいと願わない貴族の方が少ない。家門を継げない子弟でも、魔術師となれば、自ら生計を立てるにも、婚姻においても、将来の選択肢は明るくなるのだから当然だ。

 「なら、デューア姉さんもですか?」

 美人で腕の立つ魔導騎士。しかも、名門伯爵家の出だ。

 「わたしは男を選ぶ側よ。自分の納得できる男じゃなければ、相手にしないわ」

 実は奔放すぎて、実家の両親も両手を挙げてしまったデューレイアである。見合い話も来るのだが、片っ端から蹴飛ばしているらしい。

 ヴェーア伯爵家はエール=シオンでも指折りの名家である。しかもデューレイアを贔屓するリュレという存在がいるため、デューレイアの意思で政略結婚を蹴飛ばすような真似ができるのだ。半分はデューレイアのぶっ飛んだ評判のせいもあるが。さらに、兄弟がいるので跡継ぎには困らないときている。

 「わたしのことはともかく、あの子のことはアンタの頭には入れておきなさい」

 ルディの幼馴染みであるという立場もあるのだからと、デューレイアは釘を刺した。

 別に二人の関係に口出しするつもりではなかった。それはお節介であり、現在の状況ではデューレイアはフローネにとって、ルディを挟んでライバルに近い関係だ。

 ただ、それは別として、フローネのことはデューレイアも認めており、同じ女としても気にせずにはいられなかった。


 貴賓席の中心にいるのは妙齢の二人の男女。しかし恋人やましてや夫婦というわけではなく、血の繋がった兄妹だ。二十一歳の第二王子ジルレールと、十七歳の第二王女にして末っ子のフランシアである。

 「第二王女殿下までいらっしゃるなんて聞いてないわ」

 闘技場の来賓席からみて向かい側に立てられた天幕、審判などの係のいるなかで、デューレイアがリステイアに向かって愚痴を言う。

 「そういわれても」

 自分に当たられても困ると、リステイルは周囲に目を向けるが、詰めている騎士や教師は忙しいとばかりに、まるっと無視してくれた。

 有名人たるデューレイアである。誰も自分に矛先を向けられたくないのだ。

 本当を言えば、問題なのは第二王女ではなく、その護衛としてついてきた女騎士、つまりオリディアナだった。

 なんでよりにもよって彼女が来るのかと、デューレイアは顔を顰めた。

 「ご挨拶には伺わないの?」

 問いかけたのは平然としているブランにだ。

 「今回オレは魔法学校の講師としてきている。一係員が顔を出すところじゃないだろう」

 この男、思いっきり知らんぷりするつもりだと、デューレイアは納得しつつ、それに乗っかった。

 「それもそうね。呼ばれたわけじゃないし、校長先生達がお守りしてくれるわよね」

 うんうんとこちらも無関係を決め込むことにしたデューレイアである。

 周囲はそんな彼女達の回りをさけて、開会前の準備にことさら手を割いていた。

 ブランも講師だといいながらも、場所が騎士学校であり、王族の参観もあるということで、一応軍の徽章をつけている。

 当然ながら、准将軍は天幕内で最高位でもあった。ちなみにブランが准将軍位なのは、彼が一応参謀職であるからだ。

 将軍位を持つのは王国に八つある師団の長である。その上は大将軍となるが、これは常設された位ではなく、名誉職の意味合いが強い。

 あくまで王国軍を統べるのは国王であり、王の下に軍務卿がいるということになっているのだ。

 ただブランは軍務卿の下で参謀職を勤めているが、王の剣でもある黒の魔術師である。ある意味別格だ。

 ゆえにそれを知る騎士達は敬意を払いつつ、自然遠巻きにしていた。


 今回も昨年同様、ブランが試合場と観客席を隔てる壁をつくり、ルディが選手の防御を担当することになっている。

 もちろん王族を始めとする来賓の護衛はそれぞれいるし、魔導士や騎士も安全確保のために動員されている。また治癒士など救護の担当者も、ここに詰めていた。

 「今年は騎士学校の種目の方が多いんですね」

 一年おきに魔法学校と騎士養成学校で交互に開催されている合同行事である。

 「会場校の出場者の見せ場が多くなるのは、まあ、仕方ないわね」

 プログラムを改めて見ていたルディに、デューレイアがひょいと、リステイアの手からプログラムを取り上げた。

 ブランのもとには、両校の職員と王国軍の関係者で構成された実行委員会から計画表もあげられており、一応デューレイアとカウルスも目を通していたから、その時点で予定される種目も出場者も把握はしている

 「うん、よしよし。ちゃんと考慮してくれたようね」

 ピンッと、デューレイアは右の人差し指でプログラムを弾いてみせた。

 「あー、フローネちゃんの相手ですか」

 いつの間にか、気軽にフローネを愛称で呼ぶようになっていたリステイアである。遊び人というわけではないのだが、軽い雰囲気のリステイアは、ルディの幼馴染み達に対して、気さくな先輩といったお兄さん的な立ち位置を確保していた。

 「フローネの相手って、何かあったんですか?」

 ルディが気になって問いかければ、デューレイアは別に大したことじゃないと、話してくれた。

 「あの子とカレーズ侯の息子の相手、変更してもらったのよ。練習試合だからって、軍でも若手が相手してるんだけど、そこそこ実力差がないと、加減がきかないしね」

 魔法学校の剣の師範であるレムトが、「一方的にボコられる」と言っていたが、そうなるような相手を当てているのだ。

 生徒に実力差を自覚させ、謙虚さと向上心を持たせることが目的の一つであるからだ。

 「どうせなら、あの子の実力みせて、ついでに糧になる相手でなくちゃ」

 ふふふっと、どこか危険な笑みを浮かべたデューレイアに、ルディはそこはかとない不安を抱く。

 この頼りになる姉のような人が、困ったいじめっ子気質を、特に気に入った相手には存分に発揮することも、ルディはよく知っているからだった。

 「えー‥‥‥でも、この方でいいんですか?」

 少し思うところがあるようなリステイルに、ルディは首を傾げた。

 「腕は問題ないわ。ただ、ちょっと‥‥‥」

 素行に問題があると、言いよどむデューレイアに、リステイアが突っ込む。

 「男女問わずって評判ですが」

 「大丈夫よ。靡かない相手にしつこく言い寄るような男じゃないから」

 「フローネちゃん、しっかりしてますからね」

 「‥‥‥姉さん?」

 じっと見詰める弟分に、デューレイアは当たり障りのない説明をする。

 「伯爵家の次男で、腕は立つし、顔もまあまあだから、もてるわけ。で、気に入った相手はすかさず口説くから、色恋沙汰が絶えないのよね」

 「でも、さすがに十近くも年下の女の子を口説くことはないだろうし‥‥‥ええっと」

 そこで、リステイアはついデューレイアを見てしまい、思いっきり睨まれ、気まずい表情で顔を背けた。

 ちなみに、話題の彼とデューレイアとは、ほぼ同じ年代で、つまり、ルディと彼女の年の差が丁度そのくらいということだ。

 「心配いらないわ。節操ないと言っても、誰彼構わずじゃないし、しつこい男でもないから」

 そこで何故かこそりとブランに目線を流し、デューレイアは、コホンとせきばらいをしてみせ、強引に話の流れを戻した。

 「カレーズ侯の息子もね、ほんとならカウルスあたりにやらせたら面白かったんだけど」

 さすがに今の時点では実力差がありすぎるが、カウルスの指導者としての腕を、デューレイアもかなり買っている。得手も同じ槍だ。

 ただ、竜騎士(カウルス)は今回警備担当で、会場の上を飛んでいた。

 決して、昨年の審判をやった苦い経験から、試合担当から逃げたわけではないだろうが。




 最上位の来賓席の二人、この国の王子と王女は傍らに座る騎士養成学校の校長から、時折、競技や出場者についての説明を受けながら、仲良く観戦をしていた。

 「今の生徒は、随分と素直といおうか、もう少し搦め手を覚える必要がありますな」

 真正面からぶつかっていったナイルカリアスの試合を評した騎士学校校長に、ジルレール王子は頷きながらも、面白かったと言う。

 「あれは二年次火魔法のトップだな。正攻法で立ち向かっていったのは、気持ちが良かったぞ」

 父王譲りの濃い紫色の瞳に好意的な色を映した第二王子の感想に、フランシア王女もにこやかに賛同を示す。

 「ええ、迫力がありましたわ。火魔法はわたくしでもよく見えますもの」

 「フランシアはもっと派手な撃ち合いが見たいのだろう?」

 「あら、お兄様も魔法が見たくはないかと、わたくしを誘ってくださいましたわ」

 見ていて、対戦にドキドキするし、説明を受ければなんとなく理解はできるものの、護られる立場である王女は最低限の護身術くらいしか使えず、剣技や戦法に詳しいわけではなかった。

 自身が女性であり、まして向いていない武技を、身につける必要もなかったからだ。

 もちろん自身を含む王家を、この国を護る剣であり楯でもある現役、あるいは将来の騎士達である。

 その腕を見る場であるからには、真剣に観戦していた。しかし、派手な魔法を見たいという気持ちは少なからずある。

 「そうだったかな。いや、その前の雷魔法の生徒もだが、今年の魔法学校の二年次は面白いな」

 「殿下もそう思われましたか。魔法学校の二年次、三年次でも、とかく威力の高い魔法にこだわって、そこをつかれて自滅する展開がほとんどなのですが、初級魔法をここまで使いこなすとは、良い指導者に恵まれたようですな」

 実のところ、彼等の相手をした魔導騎士もかなり驚くとともに、思った以上に手こずりはしたのだ。侮った気持ちがなかったとは言えない彼等にも、良い経験となったのは確かだった。

 同時に校長は第二王子の試合の要を見ぬいた目にも感心していた。

 外交や内政に優れた手腕を振るいつつあるという文官肌の王太子に比べ、軍事方面に興味を持っているという評判のある第二王子だが、成る程と思わされるものがある。


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