野営
岩猪の血に塗れたエルに、フローネは盛大に顔を顰めた。
「川で洗おうぜ」
女の子二人に睨まれたエルは、ローレイを水浴びに誘う。
血抜き処理の際、うっかりと血を付けてしまったエルほどではないが、ローレイも少なからずいろいろ汚れていたし、自身は鼻が慣れてしまっているが、フローネ達曰く、かなり血臭がするそうだ。
「お前はどうする?」
汚れた手は、水球で用意した水で洗ったのだが、ルディはもともと二人ほど汚れていないし、血臭もそれ程しない。血抜きをした後の処理で、ナイフの使い方が巧かったのと、風楯の応用で自身をシールドする癖が付いていたせいだ。
「水は冷たいし」
そろそろ日も落ちてくるから、小川で裸になる水浴びは危ないとルディは難色を示す。
「けどな、これはちょっとな」
着替えはあるが、身体に付いた血は落とさないとまずいだろうというエルに、ルディは風呂の提案をする。
土魔法で野営地の隅に簡単な四角い風呂を作り、水球で出した水に、火球を投げ入れ、適当な温度にすれば、即席の風呂の準備ができた。
「済まないね。君には世話をかける」
「今回の僕の役割は後援だから」
申し訳ないというローレイに、ルディは気にしないようにという。
「君の居ることに慣れてしまうのも問題だと思うが、今回はありがたく甘えさせて貰うよ」
それからローレイは、エルの頭上に水球を作り出す。
「どわっ‥‥‥冷めてぇ!ローレイ、てめぇ」
「血を流してから入った方がいい。君が入ったら、湯を変えるからね。僕が水球を出すから、火球を頼むよ」
「わーった」
ローレイは風と水、エルは火と土が使えるのだ。ルディの手を煩わせずとも、湯の準備はできるだろう。
結界を張った野営地の中とはいえ、裸という無防備な状態になるのだ。交代で見張りをしながら、身体を洗うのは当然だった。
焚き火の上の釣り鍋の中身を味見して、こんなものかとルディは頷いた。
野営ということで、ルディが手早く下ごしらえをした岩猪の肉に、切った馬鈴薯と玉葱が入れられたスープだ。
何故ここに馬鈴薯と玉葱だけとはいえ、スープの具になるものがあるかといえば、携行食と一緒に持ってきたからだ。
ルディの提案で、保存が利き、様々な調理法があるこれらと、塩とスパイス、乾燥ハーブを用意した。
塩やスパイスや乾燥ハーブはかさばる物ではないし、馬鈴薯や玉葱も二、三個あればスープの具には十分だ。この時期、野外での食事は温かい汁物がありがたい。獲物が狩れなくても、干し肉やベーコンで簡単なスープを作るつもりだった。
「こっちも焼けたぞ」
エルが焼き網から良い匂いのする骨付き肉を大皿に移す。塩とスパイスをすり込んだバラ肉を、焚き火で豪快に炙り焼きにしたのだ。
他の肉も切って、塩を主に味を付けて焼いただけの、料理ともいえないものだが、野営の食事としては十分なご馳走だ。獲物がなければ、携行食を囓るしかなかったのだから。
「うめぇ!こーゆーのって、狩りの醍醐味だよな」
自分で狩った獲物の肉を焼いて食べる。単純だが、これ以上ない美味い食事だとエルは思う。
「ああ、美味いね。このスープも肉の臭みがほとんどない。単純な料理ほど、奥が深いとうちの料理長が良く言っていたよ」
美食家ではないが、侯爵家の子息としてきちんとした料理を食べ付けているローレイである。
「でしょ。ルディの料理って美味しいんだよ。これだって、下ごしらえとか、あく取りとか、ちゃんとしてるんだから」
ルディの料理を褒められて、フローネは顔を輝かせた。
「そうだろうね。味付けもスパイスの使い方が気が利いている。ハーブも、良いものじゃないのかい」
「スパイスとかハーブは、お隣のお姉さんが詳しくて、調合したものとか、よく分けてもらっているんだ」
「お隣の?」
「お姉さんって、お前?」
フローネとエルが隣のと言われて思いつくのは、怪しげな薬草に埋もれた老薬師の研究室だ。
「ひょっとして、あのバーサンか?」
「お姉さんって呼ぶようにって、先生に言われたんだ」
「女性に対する礼儀だろう。黒の魔術師殿にしては賢明な指導だ」
うええと、エルが妙な顔をしたのに、ローレイが自身の内心を見せずに、平然と言ってのける。
「大層腕の良い薬師だと、評判は聞いている。回復薬の製作者だろう?」
「うん。薬学や料理を教えてもらってるんだ。僕の料理の基礎は、お祖母ちゃんと翠の草原亭の大女将さんに習ったんだけど」
二人ともすでに故人だ。祖母、アルハー・シエロの妻であった女性は、ルディが九歳の時に、翠の草原亭の大女将はルディがリュレと出会う少し前に亡くなっている。彼女達は、生前はルディのことをとても気にかけてくれていた。
「美味しい物をお腹いっぱい食べれば、誰だってご機嫌になるわ」
料理上手で有名だった大女将の口癖だ。
ルディの祖母と親しかった彼女は、家で魔力のない出来損ない扱いされていたルディを案じて、料理を教えてくれたのだ。
一生懸命料理を習うルディを、それは可愛がってくれた。
大女将が、どうして魔力がないだけで、冷たくするのかねと、よく憤っていたのは、フローネやエルもよく耳にしていた。ルディにとっての恩人の一人だった。
「ああ、あそこの料理、美味かったよな」
言っちゃなんだけど、大女将が亡くなって、翠の草原亭も味が落ちたと、エルは良い人だったと、しみじみと述懐する。
「うん。大女将さんもルディは料理の才能があるって褒めてたもん」
フローネも大女将とは親しくしていたし、ルディのことではよく相談にのってもらったものだ。
エルもフローネもリュシュワールの訃報をローレイから聞いていた。ルディに気を付けて欲しいという意味で、ローレイは二人に話したのだ。
それもあり、二人は故郷の話題が出たが、ルディの家族から反らす形で話を振る。
「フローネ達が、ルディシアール君のお料理が美味しいって言っていたの、良くわかったわ」
こんな野外で、限られた材料でもって、貴族の自分でも美味しいと思う料理を作れるのだ。確かに腕が良いと、ネルフィルもしみじみ実感した。胃袋に訴えられるのが、一番利く。
「基本をきちんと守ることが大事なんだって、良く言われたから」
やはり褒められるのは嬉しいものだ。ルディが謙遜しつつも、笑顔になる。
「どうかしら、ルディシアール君、わたしのためにお料理を作ってもらえないかしら」
その前か後に、「一生」とつけば、立派なプロポーズである。‥‥‥一般的には、男性から女性にであるが。
「だめっ!フィー、ずるい」
先程と言っていることが違うと、フローネが思わず叫ぶ。
「駄目、駄目だからね。ルディ、わたしだって大好きなんだから」
「‥‥‥あ‥‥うん‥フローネ、僕の料理美味いって、いつも言ってくれるよね」
もちろんフローネのためにも、ちゃんと料理作るからと、ルディは罪のない顔で曰った。
その反応に、つい喉を鳴らしてしまうローレイと、小さく「ボケ」と呟いたエルトリードである。
夕食の時に、妙な空気が流れたが、ネルフィルの冗談の一言で一応収まった。
その代わり、何故かルディがエルにボケと散々言われたが、本人がわかっていないのはいつものことだ。
夜警は二人一組でフローネとエル、ネルフィルとローレイ、ルディとローレイだ。ローレイは早めに睡眠を取ってもらうことになっていた。
野営地にはルディが魔石を使って結界を張っている。探知と防御を兼ねた結界だ。
それでも、人の目による見張りは野営では必須である。
「眠いかい?」
起き出してきたルディが目を擦っているのに、ローレイが眠気覚ましの濃く入れた茶を差し出す。
カップを受け取って、焚き火の前に座るローレイの横に、ルディも腰掛ける。
ルディの寝起きの悪さを知っているローレイは、よく起きれたなくらいは思っているのだろう。
両手でカップを持ち、パチパチと、さほど大きくない焚き火の炎を直接見詰めないようにして、ルディは三脚に吊された鍋の熱湯から上がる湯気の揺らめきを、何となく目で追った。
「ローレイ君こそ、大丈夫?」
余分に負担をかけてしまっているから、なんだったら休んでもらってもいいとルディは言うが、ローレイは首を横に振った。
「君の結界も探知能力も信用しているが、性分でね。いざという時、寝起きで動きが鈍るのは避けたい」
建物に重ねて張る結界に比べ、屋外で張られた簡易結界はどうしても維持と強度が劣る。
ルディが作った魔石を四方に使った結界でも、不意打ちの一撃を防ぎ、敵襲を知らせる以上の期待はできないが、普通はそれで十分なのだ。
「危ないと思う?」
「もう少しすれば夜明け前、闇が最も深くなる時間だ」
一晩警戒していれば疲れも出てくるし、日が昇り始める頃は気が緩む時間帯でもある。襲撃があるとすれば、最も危険な時間だ。
「逃亡を考慮するなら真夜中、ことが発覚する前に闇に紛れ、時間と距離を稼ぐ。しかし、襲撃自体を成功させるなら、黄昏時と夜明けは狙い目だと僕は思うよ」
だからこそルディをこの時間帯に配置したのだ。寝起きの悪いことでは定評のあるルディが、完全に覚醒した状態でことに当たれるようにとの意味もある。
「そうだね」
「実際のところ、襲撃の確率は半々だと思う。人員の確保は置いておくとして、ここで僕達を襲撃するということは、王国そのものに喧嘩を売る行為だ。裏にいるのが国であるなら、宣戦布告に値する」
「ここが王国の国土で、魔法学校の生徒は魔導騎士や魔導士の卵だってことだよね。ましてローレイ君のように、偉い貴族の子息もいるんだから」
「それだけのリスクを負っても、君という存在を排除したいと思う輩もいるってことだ。今のうちならそれができると思い込んで、自分達まで手が届かないと、高を括っている馬鹿共がね」
「先生に迎え撃つなら、殲滅しろって言われた」
「当然だな。やってもらうよ」
できるかとは聞かない。その力がなければ、黒の魔術師はルディにそれを命じないからだ。
こくりと、ルディは濃いお茶を口に含む。
「苦い」
「少し出過ぎたかな」
「出過ぎっていうか、舌に柔らかくない」
ローレイもカップに口を付けた。
「ああ、それは仕方ないさ。いれ方もだけど、これはそんなに良い茶葉でもないからね」
わざわざポットを持ってくることはしていないため、茶も鍋でいれるやり方だ。加えて、実のところ普段ルディが研究室で飲んでいるのは、かなりの高級品だ。舌がそれに慣れてしまっているので、余計に苦みが雑に感じられるのだろう。
「眠気覚ましには丁度良いかも」
もう一口飲んで、ルディは飲めないほどではない苦さだと呟いた。
ゆっくりと飲んでいたお茶を飲み干し、カップを地面に置いた。
「僕が参加しない方が良かった?」
「それなら止めている。僕の前に、父か黒の魔術師殿がね」
おかわりはいらないと首を振ったルディに、ローレイは自分の分のお茶を入れるのに、小鍋を手に取った。
「我が国は大国だ。だが、領土拡大を望んでいない方針は、諸国にも知られている。そのせいかな、喧嘩を売れば火傷くらいじゃ済まないことを忘れている馬鹿がいるんだ。さっき言った馬鹿共がね」
「つまり、僕って」
「そう餌だ」
「大体、国が護ると宣言した対象を刺客に襲われること自体が問題だと思わないかい。しかも王都、おまけに魔法学校の中までだ。君に傷一つついていたら、こちらの面目が丸つぶれだよ」
「でもそれは相手が悪いって」
「ルディ君、三大国では財力はユエ、軍事力はマルドナークといわれ、我が国は一番の穀倉地を抱えていることが強みでもある。それでも騎士と魔法の国といわれている最大の理由は、魔物を討伐する機会が断トツに多いからだ」
「うん。天地の壁に続く荒野を抱えているし、迷宮も多いから、だったよね」
「魔物と戦うことで騎士や魔導士が鍛えられ、討伐した魔物の魔石や素材は大きな財源でもある。兵士だけでなく、傭兵や狩人、迷宮探索者も含めれば戦力となる国民の地力は高い。それでもマルドナークが軍事力で勝るといわれているのは」
「戦がないから。この国は大戦以来、大きな侵略を受けず、領土拡大の戦を仕掛けることもない」
「そのとおりだ。魔物と人間相手は違う。戦い方だけではなく、その運用の仕方がね。南方面の領土を欲して、軍事力の強化を国の第一政策としているマルドナークに対して、及ばないのは当然のことだ。国の政策の違いだから、それが悪いというわけじゃないが、少し危機感が薄れているのは確かだと思う」
「だから僕が餌、なんだ」
「そういうことだね。国に侵食している裏の触手をあぶり出し、断ち切るのと、王宮の寝ぼけた連中の目を覚まさせる。‥‥‥黒の魔術師殿を軍に復帰させたのも、その一案だと思うよ」
「え?でも、先生の力は」
「そう、黒の魔法殺しの存在自体が、国の大きな楯だ。だけど、現実にその力は、国の剣として他国に対し振るわれるべきじゃない。一旦他国に向かって抜かれれば、国の均衡が崩れるだろう。そういう意味では、抜かれるべきではない剣だ」
そのくらい、異名持ちの力というのは強大であるのだ。ましてブランの「魔法殺し」は、固有魔法の特性であると同時に、異名持ちを斃したゆえでもある。
「ねえルディ君、こんな話ができる相手は限られている。正直、学校では君くらいのものだよ」
「僕に事情を教えてくれているからってこと?」
「打ち明けられる相手を選ぶ話でもあるし、理解できる頭のない輩とは話すだけ無駄どころか、気分が悪くなるからね」
優等生であるローレイは、表立って差別するようなことはしないが、その実馬鹿は嫌いだと、ときにルディには毒舌を披露している。
頭の回転という意味では特にフローネなどを評価しているが、今の時点では彼女は一般生徒と変わらない。あまり突っ込んだ話はできないため、やはりルディくらいしかいないのだという。
「君に話すことで僕も頭の整理をしている感じかな。僕の祖父、先代の軍務卿が、黒の魔術師殿にはよく愚痴を聞いてもらっていたと言っていた。つまり、君の先生は名実共に軍務卿の参謀が務まる才の持ち主だってことだ」
政治上の謀略には向かないが、用兵については一軍を任せるに足るとまでいっていたほどだ。残念ながらローレイの父、今の軍務卿とは性格的に合わないようだが、それを差し引いても重用する価値を認めているのである。
魔法に剣、おまけに用兵までとは、黒の魔術師はまったくどういう怪物だと、つくづくローレイでも思うくらいだ。規格外にも程がある。
結果的には盲信する師を賞賛されたルディは、もちろん機嫌が良くなるとともに、ブランへの尊敬の念をさらに高めることになった。
それにローレイは、ルディの存在を肯定しているのだ。気にしすぎることはないと、言ってくれている。
「ありがとう、ローレイ君。少し気が楽になった」
「物事は一面だけで捉えるものじゃないってことだ。もちろん、当事者としては何事もないのが一番だけどね」
「そうだね」
「ところで、ルディ君。君はフロアリュネ君のことをどう思っているのかな?」
「え‥‥フローネ?」
「そう。彼女が君を好きだということは、いくら鈍い君でもわかっているだろう?」
今まで真正面からルディにその問いをぶつけた者はいなかった。彼自身の交遊関係から、それができる者が限られていることもある。
ブランを始めとする年上の男性陣は成り行き任せで口に出さずに見守っているだけだし、デューレイアは敵に塩を贈る気はないので、これもあえて触れないでいる。
同年代の女性陣は、基本的にフローネの味方だったが、フローネ自身が他人の助力を頼むようなことは望まないし、部外者がとやかく言うには、ルディの立場が複雑すぎた。
男子では、ルディとそのような会話ができるのは、それこそローレイかエルしかいないのだ。サルーディなどは、下手なことをすればフローネや、クラスの女子が怖いので、これも部外者の立場を貫いているし、とばっちりがこないようにナイルカリアスを牽制することも忘れていない。
「‥‥‥う‥ん‥‥フローネは好きだし、大事だよ。でも、今はそれ以上は考えられない」
エルのように大人のお姉さんにドキドキするとかはともかく、女の子に興味を持ち始める年頃であるのは確かだ。
けれど、デューレイアがいうように、まだまだルディは初心であり、女の子とどうこうということは考えられないというのが正直なところだった。
あるいは無意識に抑えてしまっているのかもしれない。
「そうか、変なことを聞いて悪かった。人それぞれだしね、君が慎重すぎるのは当然かもしれない。ただ、君の場合女性との付き合いは気を付けた方が良い」
「でも僕はそんなもてるわけじゃないし、フローネはともかく、姉さんだってからかってるだけだし‥‥‥」
やっぱりわかっていない友人に、ローレイは野暮でも忠告の必要を実感した。いくらなんでも、本人に危機感を持ってもらわなくてはどうにもならないことだ。
遅すぎなかったのは幸いだと、ここで話を切り出して良かったと思う。
いくら師である黒の魔術師が、自他共に認める朴念仁であるにせよ‥‥‥いや、あの人だから仕方ないかと、ローレイは納得してしまう。
「対象が男であるなら、女性を使って取り込むのは、貴族じゃなくても常套手段だということだよ。女に押し倒されて好きでもないのに既成事実を作られたら、嫌だろう」
「え‥えええっ‥‥」
赤裸々に言われ、ルディは赤くなるやら青くなるやら、思わず声を上げてしまった。
「君はまだ未成年だからマシだが、将来的には噂だけでもやっかいな事態を招きかねないからね」
そういうローレイも同い年なのだが、貫禄といおうか、学年でも頭一つ分以上飛び抜けた印象がある。
「それって、先生のように?」
「黒の魔術師殿の醜聞、失礼、巻き込まれたことを知っているなら話が早い。君の場合、火のないところに放火されかねないから気を付けろと言っている。わかるだろう」
「い‥言いたいことは‥‥多分」
「フロアリュネ君なら良いが、他国の女の子とは距離を取ることも考えて欲しい。そうだな、女の子と二人きりになるようなことがないようにした方が良いだろう」
「そこまで‥‥」
「極端にいえばね」
たじろいでしまうルディに苦笑する。彼は自身の価値に対する自覚を、もう少し上方修正するべきだろう。
女性の恐さや強かさについてもだ。
「君はもう少し‥‥」
「ローレイ君」
表情を消したルディに、ローレイも即座に意識を切り替える。
「頼む」
ルディが頷くのに、ローレイは足音を殺して天幕に走り寄り、入り口に立って、皆をたたき起こす。
「起床!」
抑えられながらも鋭い気配を纏った一言が、全員の意識を叩いた。
「敵襲?」
目を覚ましたフローネが、枕元のレイピアを手に持ち、真っ先に飛び起きる。
「うわっ」
一呼吸遅れてエルが毛布を跳ね上げて身体を起こし、ネルフィルも弾けるように起き上がった。
「おそらく。ルディ君の邪魔をしないように」
結界が破られた甲高い音が、警報のように耳に響いた。四方の魔石の一つを壊されたのだろう。
とにかく、自分の身を護ることが第一優先だ。
全員がすぐさま剣と杖を装備して、ローレイの後を追い、天幕から飛び出す。




