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新しい友達

 なんで、ウサギが火を吐くんだと、ルディは思わず叫んだ。

 研究室に居るのと同じゴーレムウサギが二羽、ルディの周りを跳ねている。こいつらを潰してみせろとブランは言ったが、ウサギは無論狩られるだけのただのウサギではなかった。跳ねて、逃げまわり、反撃してきた。

 咄嗟に飛んできた小さな火球に、火球をぶつけて迎撃する。

 「そっちは雷撃をかますからな。当たったら痛いぞ」

 その隙を狙ってもう一羽の小さな雷球を吐くウサギが、死角を付いて攻撃してくるのに、ルディはまだ覚えて間もない風楯でそれらを弾いて身を躱す。だが、相手はすばしっこいウサギ型のゴーレムだ。小さな身体で跳ね回ってはルディの攻撃を避け、逃げたと思ったら反撃してきた。お返しとばかりに交互に繰り返し攻撃を仕掛けてくる二羽のウサギから、今度は必死になって身を護る。

 「目でばかり見てるからだ。風見も使って、魔力を感じて動け」

 <風見>は風を媒介にした遠視の一種だ。達人は鳥瞰的な視覚を得ることすら出来るというが、教えられたばかりでそんなことを言われても、実戦さながらの訓練中に簡単に出来るものではない。いくら魔法の才能には不自由していないルディシアールでも、息つく間もなく風楯や風球を連続で使いながら更にと言われても無理ですと叫んでしまう。無論、それで許してくれるような魔法の先生ではない。

 足に雷球を喰らって、転んだ直ぐ横を火球が掠めるように飛んでいく。痺れて動けない身体に治癒魔法をかけ、そのまま地を横に転がった。風球を地面に撃ってウサギを牽制しつつ立ち上がって、視界に入ったウサギが放った火球をギリギリ風楯で防ぐ。可愛いくせに凶暴なこれらのウサギは、ブラン作の特製ゴーレムだ。

 普段研究室内に放しているのは、主に風鞭や雷球を使うのと、地縛を使うウサギで、セキュリティ代わりになっている。ブランの許した者以外が結界を破り研究室に入ると、即座に雷球が飛んでくる。強さをかなり絞ってあるので当たっても死ぬことはないが、電気ショックで身体が動かなくなる。要はスタンガンを喰らったようなもので、それを地縛で捕らえておくというのが標準的な手順だ。

 侵入者を殺さないのは、死体にすると後始末などがいろいろ面倒だからで、甘いからというワケではない。それが通じなければ、容赦なく致命的な攻撃魔法を使うウサギの出番となる。火や水を使うウサギもいるが、これらは屋外の警備役で、時たま壁のまわりで魔物の撃退もしている。

 なるほど、以前デューレイアがこの研究室に泥棒が入らないと言ったのも納得だ。結界に加えてこんな物騒なセキュリティがあるところ、知っていれば入らないし、知らずに入れば捕まって終わりとなる。

 「二羽相手に手間取ってどうする」

 風楯複数枚で牽制し、風球を圧縮した<風弾>を連発して何とか潰したものの、先生の評価は不可に近い。練習用のウサギは火球も雷球も大きさと威力は最低限に絞ってあるし、動きもこれでかなりゆっくり目にしてある。それにもかかわらずウサギ二羽に翻弄されてこれでは、とても合格点はやれないとブランは厳しい評価を下した。更に次は地縛使うのも入れるかというのに、ルディは泣きたくなった。動きながら魔法を使うのは、思った以上に大変だ。しかも、発動に手間取っていたらあっという間にやられてしまう。手加減されていてもなお、ゴーレムウサギは今のルディには十分強敵だった。

 「ハーイ、頑張ってるわね。可愛い弟くんに、お姉さんからプレゼントよ」

 デューレイアのプレゼントは、新品の練習着が五枚だ。

 「これだけあれば、当分は大丈夫でしょ。ダメになったらまた買ってあげるから、いっくら怪我しても良いわよ」

 あんまり嬉しくない。いや練習着をくれるのは奨学金で生活している身ではとてもありがたいが、怪我させるのが前提であるのが丸分かりだ。何しろルディが練習着を貰うのはこれで二度目になる。最初に剣でやられて駄目にした翌日、デューレイアは新しい練習着を三枚と、革鎧の胸当てをくれた。それから十日と経っていないのに、そのうち二着が既にボロと化している。今度はどれくらい持つだろうと思うと、厳しい訓練の予告のようなそれに、ついげんなりとしてしまう。

 ルディの思いとは別に、ブランは困ったヤツだといった視線をデューレイアに送った。

 よく男が女に服を贈るのは、贈った服を脱がせるためだというが、逆もありだろう。練習着を駄目にしては新しい物を贈るデューレイアは、まさにそれのような気がする。子供相手のお遊びとも取れるが、デューレイアの下心はかなり本気混じりじゃないかと、ブランには思えてならなかった。もっとも、いくらなんでもこんな子供に手を出すような節操なしでもないことは信用の範疇だ。だから、今は育てる楽しみというやつだと思うにしても、こんなことはとても教え子に言えなかった。




 入学から一月余りが過ぎ、魔法学校の生活にも慣れた授業のない休日、ルディ、エル、フローネの幼馴染み三人組は学生街に買い物に来ていた。

 「ね、ルディそれ美味しい?」

 「うん。甘酸っぱいソースが意外と合ってていけるよ」

 薄いパン生地で肉と野菜を巻いた軽食のような物だが、三人はそれぞれ違うソースを選んだ。フローネは塩とビネガーのさっぱり風味、ルディはフルーツを加えた甘酸っぱいというソースでエルの物には真っ赤な刺激的なソースがかかっていた。

 「これ、すっげ辛い。美味いけどよ」

 育ち盛りとくれば、つい屋台で買い食いをしてしまうのもお約束だ。

 「そーだ、後でそこの服屋寄ってくれねーか。練習着の新しいの買えって、兄貴経由で金貰ったから」

 エルが筋向かいにある店、スワイラズ服飾店を指す。

 「えーもう?」

 練習着の買い替えには早くないかと言った声を出すフローネに、そっとルディは自分の胸を押さえた。すでに五枚ダメになったとは言えない気がする。

 「この間火球を失敗してちょっと焦がしちまって」

 エルは火と土属性に適性があるのだが、まずは攻撃力の強い火属性を集中して練習している。習い始めて一月ちょっとでは基礎の火球を未だに気を抜くとしくじってしまうのだ。それでも一月で火球を形にできたエルは、かなり習得が早い方に属している。

 「あれ、危ないよね。僕も最初に習ったとき、ボンってバラバラになっちゃってびっくりした」

 最初の授業で、一番始めに撃ってみろと言われたときのことだ。ちなみにルディが火球を失敗したのはあれが最初で最後である。二度目からは無詠唱でなんとか形にしていた。

 「だよなーって、あれ、ルディも火属性か?」

 「えーっ、わたしは風と水だから、エルずるい」

 「ずるいって、それどうしようもないだろ」

 何故か拗ねたフローネに、火属性仲間といって盛り上がるエル。

 「ねールディってほんとに火属性なの?」

 「えっと、風も使えるけど。どっちかといえば風魔法のが得意」

 フローネに迫られてついそう答える。というか、ブランは四元素属性を満遍なくルディに教えているが、それでもわりと風を中心におく傾向がある。風魔法はブラン自身が最も得意としているが、それは使い勝手が良いせいであり、ルディも相性が良く習得しておいて損は無いということらしい。

 「やった!それならわたしと一緒だ」

 一転してご機嫌になったフローネは、食べ終わったルディの両手を握ってにこにこ顔だ。おかげでタイミングを逃し、ルディは四元素全部使えると言い損なってしまった。

 「ちっ、まあいいか。ってことはオレ等みんな複数属性使えるってことか。お互い教え合えるよな」

 「うん。ルディも個人指導から戻って来れたら、一緒に頑張ろうね」

 フローネ達は、ルディの個人指導は魔力制御の治療のための一時的なものだと思っていた。だから、今でも治癒科生徒も混ざって受けている実技授業を、そのうちルディとも一緒に受けられると楽しみにしていたのだ。

 「こんにちは」

 「はい、いらっしゃい」

 スワイラズ服飾店は、学校の休日とあって買い物の生徒が結構来ていた。

 「兄貴にこの店が良いって聞いてきたんだ。練習着はっと」

 エルは、愛想の良い店長に練習着が欲しい事を告げる。

 「坊主のサイズなら、その棚のあたりだ。こっちの坊主は」

 「僕はいいです」

 店長がルディの方を見るのに、慌てて断った。

 「このくらいかな。なあ、これとこれ、どっちの色のが良いと思う?」

 二枚の練習着を持ってきて、エルは広げて幼馴染み達に聞いた。

 「どっちでもあんまり変わんないと思うよ」

 「うん、どっちでも良いと思う」

 頼りにならない幼馴染みである。興味なさげなフローネと、ルディは素直にどっちもエルには合うと思っていた。こういうとき、相手が女性なら適当でも良いから何か言わないと痛い目を見るのだが、所詮相手は男である。

 「当てにならねぇ‥‥‥まあ、いいや。うん、どっちでも」

 キラリと光った気がするフローネの視線に、エルは慌てて言い直す。

 「なあルディは本当に良いのか。せっかく来たんだし、見るだけ見てったらどうだ。次買うときの参考になるし」

 勧めておいて、エルはこそりと袖を引いて小声になった。

 「金ないとかじゃ」

 「ううん、それは大丈夫。奨学金十分貰ってるから余裕あるし」

 実家からの仕送りはないが、学校内では食費も免除されているし、生活には困らないくらいの奨学金を貰っている。それに、練習着はデューレイアに貰った物があるから、買う必要はないのだ。

 客は他にもいるが、女の子がいることもあり、見栄えの良い三人組は店内で目立っていた。店主は最近お得意さんになった美女が買っていくサイズと同じ体格のルディを見て、銀髪だし、あの姉ちゃんの好みってこんな子かなと考えていた。




 入学から間もなく四ヶ月、治癒科のクラスに属するルディは、午前中の座学である授業はきちんと教室で受けていた。そこまで面倒見切れるかと、講義で済むものは教えて貰えとブランはある意味手を抜いた。

 魔法に関しては理論をレクチャーして実践させれば、大抵のものはクリアしてしまうルディの才能ありきの指導だ。なまじ自身がそうであったために、ブランはそれがどれだけぶっ飛ばした教育であるのか自覚が無く、他者からしたら目も当てられないその方針を改める機会がないまま突き進んでいた。師弟ともに、普通という言葉を彼方に置き忘れた魔法の才を持つが故の、ある意味での弊害だったりする。

 「ほら、顔だけは良いから女ってさ」

 彼女がルディの容姿を褒めたのが気に喰わないクラスメイトが、友人に愚痴った。

 「幾ら見た目が良くっても、魔術師としてダメだろ」

 「金の魔術師様が贔屓してるってのも、やっぱ顔で取り入ったのかな」

 リュレ様を尊敬してたのにがっかりだと、これ見よがしに呟いたのは、学園街に家を持つ通学組のライディスという男子生徒だ。

 「さすがに半年試験で退学になるんじゃないの」

 女友達との会話でそう言ったのは、ちょっと名の知られた魔術師の娘であるマリナリアだ。ちょっと可愛い容姿の女の子だが、それだけに実力がないくせに綺麗すぎる男の子というのは認められないらしい。

 ルディが個人での実技指導を受けているため、その実力を知るものは教師達ですらなく、まして生徒達にはレベルの欠片すら知り得ない。ゆえに、噂がイヤな形で蔓延してしまったのを学校側が認識したときには、それは事実であるかのように皆に受け止められていた。曰く、合格レベルの魔力がないのに、コネで不正に入学した。まともに魔法が使えないから、クラスの実技授業を受けられない。そんな噂が、クラスのみならず学年をも越えて囁かれるようになったのは、一つはルディの兄の言動が原因だろう。リュシュワールは噂を肯定するような言葉を、一度ならず人前で吐いていた。

 「あーもう、空気が悪いわ」

 机をバンと叩いて立ち上がったのは、治癒科の優等生でありながら、四元素属性魔法も普通クラスの生徒並みに習得し、剣も得意であるというサーニファ・モニカだ。マルドナーク皇国の国費留学生である彼女は、治癒科では少々異質といった気風を纏っている。

 「大体、貴方も黙っているから悪いのよ。少しは反論したらどう」

 サーニファは、灰色の瞳にいらだちを浮かべて、ルディの机に勢いよく手を置いた。

 「うーん、でも」

 「でも、何よ。事実不正入学したとでも言うつもり?」

 「それはないけど。でも、半年くらい前なら、僕は魔法学校に入学なんて考えられなかったから」

 「事故の後遺症って先生が言っていたこと?」

 「うん。家は魔石の専門店で、結界が張ってあったんだけど、その結界石の基礎になる大きな魔石があって‥‥‥曽祖父が結界張ったときからの凄く大きな魔石なんだ。それで、僕が小さいときに何かあったらしくて、魔力が魔石に吸われていて、それでずっと僕、魔力が全然ないってことになっていて」

 「それ、間抜けな話ね」

 身もふたもない言い方だが、サーニファの本音だ。言われてみれば間抜けな話なのかもしれないが、流石に今まで面と向かってルディにそう言った人はいなかった。

 「‥‥‥うん。でね、リュレ様に助けて貰ったときに、それが分かったんだけど。だから、仕方ないかなって。ずっと魔力ないっていわれていたから、いきなりあるって言われても、信じられないって思われても仕方ないよ」

 ふわりと、どこか諦めたように言うルディの顔に、サーニファの脳裏で叔母のよく似た微笑が重なった。仕方ないわと言って、誰かを責めようとはしない叔母と、ルディは何処か似た感じがするのだ。クラスの雰囲気の悪さに憤慨したのは確かだったが、こうしてルディに声をかけたのは、なんとなく彼と叔母が重なるように感じたからだったのに、サーニファは気がついた。

 「仕方ないわ、あの人たちにとってわたしは道具なのね。つまり、わたしにとってあの人達はその程度の存在なの。分かるかしら」

 そう思っていれば腹も立たないと言った叔母に、自分は頷いたけど、やっぱり気分はどこか晴れなかった。自衛と諦めが混じった達観したともいえる考え方は、叔母のような立場に置かれれば、仕方ないのだとも、鏡のように相手を映す叔母が間違っているとはとてもいえないけれど、自分なら理解して欲しいと望んでしまう。少なくとも、サーニファなら望む相手くらいには、理解してもらう努力はしたい。

 「貴方ね、自分は良くても見ててすっごく腹立つのよ。事情も知らずに勝手なこと言ってる周りが馬鹿みたいじゃない。って、そうなんだけど‥‥‥ああっ‥‥もうっ」

 テンションが高くなっているサーニファに、きょとんと首を傾げるルディ。その表情がなんていうか、滅茶苦茶、本当に自分をわかってないんじゃないかと、サーニファは何故か一気に混乱してしまう。そもそもルディは見た目が普通じゃない。毛先だけわずかにウェーブしている陽を弾いて輝くミスリルのような白銀の髪、澄んだ淡い青の瞳、顔立ちは繊細だが凛として綺麗に整っている。細身であるが、手足が長くバランスが良い肢体といい、どんなに反感を持っていても、文句をつけられない容姿だ。これは反則だろうと、サーニファはつくづく思う。

 サーニファの中で突き抜けてしまった何かが、突然口をついて出た。

 「女の子より綺麗な男なんて最低」

 自分でも訳の分からないことを口走った自覚はある。落ち着けと、サーニファは自分に言い聞かせた。とりあえず、自分は他の連中のように、彼のことを知らないまま勝手な評価を押し付ける愚かなことをしたくなかったのだと、思考を無理やり元々の考えに立ち返らせる。

 「あの?」

 「サーニファ・モニカよ。サーニャって呼んで良いわ。えっと、ルディ?」

 「うん」

 「ルディって呼ぶわね。それじゃ授業始まるから」

 無茶苦茶なサーニファのアタックだが、それでもクラスでずっと孤立しているルディに新しい友達ができたということだろう。




 昼の食堂で女の火花が散ったと、エルは体を強張らせ、そっと席を後ろにずらせた。

 ルディと一緒に食堂に入ってきた赤茶の髪をした少女、サーニファの姿を認めると同時に、フローネは勢い良く席を立って早足で歩み寄り、ぐいっとルディの腕を掴んで引っ張った。

 「えっと?フローネ、サーニャさんも一緒でいいかな」

 「いいけど‥‥サーニファさんだったよね?」

 いつから愛称で呼ばせているのかと、牽制を込めてフローネはルディに見えない角度から鋭い視線をサーニファに向けた。

 「ええ、フロアリュネさん。よろしく」

 受けて立つとばかりに、艶やかに笑って見せたサーニファだが、間に挟まれたルディだけが、水面下での第一戦に気づかなかった。

 「あれ、サーニャさんもフローネ達を知ってるんだ?」

 「実技の授業でちょっと」

 互いに名前を知っている程度の間柄だとサーニファは言った。

 「わりと魔法学校って、剣は得意か下手かのどっちかが多いよね。サーニファさんはあのマルドナーク皇国の出身だけあって、結構強かったのよ」

 強者の余裕といった言い方で、フローネは剣の指導でサーニファと一緒になったのだとルディに教えた。

 「皇国出身というので色眼鏡で見る人も多いんだけど、剣は普通に使えるわ」

 これでも下級とはいえ貴族階級の出身だ。実力なしで貴族を名乗れるような国ではないと、サーニファは胸を張って言う。

 「そうね、治癒科の中では一番じゃないかな」

 治癒科は剣が苦手って人が多いけどとフローネは言いつつ、一応サーニファの腕は認めているらしい。

 「へー凄いなぁ」

 僕は剣はホント下手だからと、ルディが言う。

 「別にルディのこと言ったわけじゃないって。確かに弱いけどね」

 悪気がないのがわかっているから、フローネに本当のことを言われても、落ち込んだりはしない。ちょっとは悔しいけど、事実だから仕様がない。

 「わたしは元々治癒師になるつもりはない。あって困るものではないから、治癒魔法はきちんと学ぶが、来年からは戦闘科に移るつもりだ」

 「やっぱり軍事国家のマルドナーク人よね」

 サーニファの宣言は、一般的な認識からして納得だとフローネは思った。多少、マルドナークでは軍事方面への偏りが大きいのは、サーニファも肯定するところだが、彼女はそれを踏まえて言った。

 「認められたければ、実力をつけなくてはならないのは、どこの国でも同じではないのか」

 「うん。そういう考え方は嫌いじゃないかな」

 一見フワフワした愛らしい美少女と、キリッとしたキツイ感じの凛々しい少女と、外見はともかく、中身は結構近いものがあるかもしれない。ただし、それはそれ、譲れないものは別の話だ。敵認定のフローネと、ルディに対する気持ちはさておき、女の意地で売られたケンカは買ってあげましょうとのサーニファは、一見仲良く、その実相手の出方を探り合いながら、ルディを挟んで会話を交わしていた。だが、当の本人は極め付きに鈍かった。

 「ごめんね、僕先に行くから」

 食事そっちのけで話に夢中になっている女子二人に、何と無く疎外感を感じつつ、さっさと食べ終わったルディは、急がないと間に合わないからと席を立つ。何しろ魔窟までは距離があるのだ。

 「おーい、ルディ‥‥」

 なんでお前気づかないんだよと、エルは天然マイペースな幼馴染の後を慌てて追い食器を片付けに行く。危険地帯に一人取り残されるのは勘弁して欲しい。


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