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復帰予定

 食べかけの朝食を睨み付け、難しい顔をして腕を組んでいるエルにどうしたのかと、先に食べ終わったルディは、食器を片付けた通りがかりに声をかけた。

 「お前、最近ちゃんと起きれてるよな」

 寝起きの悪いルディに手を焼かされていたエルが、顔を上げて感心したように口にする。毎日、ローレイと連れだって時間内に朝食に来るようになったルディだ。過去を思い出して、成長したものだと兄貴分を自負するエルとしては、やればできるじゃねぇかと言いたかった。

 「そりゃあ、デューア姉さんに起こされるのはごめんだし」

 「へっ‥‥デューレイアさん?って、男子寮だぞ」

 「あの人には問題ないようだよ」

 苦笑いするローレイは、ルディがデューレイアの襲撃怖さに、意地で起きるようになった経緯を知っていた。

 うっかり寝過ごしたときに、部屋に突撃してきたデューレイアに、布団を剥がれたらしい。もちろんそれだけでは済まなくて、のしかかられて耳元で甘い言葉を囁かれるというオマケ付きだ。

 「うふふ‥‥‥このまま寝ててもいいのよ」

 お姉さんも一緒に寝ちゃうからとの言葉に、馬鹿でかい警鐘がルディの頭の中で鳴った。

 このまま一緒に寝るは、もちろん冗談だろうが、理由はわからなかったもののその時のルディは、何故か身の危険を感じ一気に覚醒したのだ。

 「姉さん、警護のためとか言って、寮監さんに鍵貰ってきたんだ」

 その時には部屋の結界も、除外対象になっていたデューレイアである。

 「ばっお前、もったい‥‥‥っとと」

 泡食って転移でデューレイアの下から逃れたというルディに、エルはもったいないと言いかけ、両手で口を押さえた。エルの目は、朝食を持ってこちらに来る癖毛の金髪の少女を見ていたりする。

 「あっぶねー‥‥‥は‥ははは‥‥」

 理由はおいておいて、起きれるようになったんならいいかと、エルは危ない話を打ち切ることにする。

 「あ‥フローネ、僕、先に教室行くから」

 「うん。後でね」

 少し遅くなっちゃったと、エルの隣に来たフローネは、ルディに笑顔で挨拶をして、急いで食べ始める。

 少し離れた所でサーニファは、同じクラスの女友達と話しに興じていた。

 「今度のお休み、買い物行くでしょう」

 野外訓練の買い出しもしなければならないしと、サーニファがカップを置いてマリナレティに聞いた。

 「もちろん。そういえば、あれ、一組のフロアリュネ達、いつの間にか仲直りしてるわよね」

 派手な喧嘩をした彼等が、試験が終わった頃から、よりを戻したのか、普通に会話をするのを、よく見かけるようになった。何しろ彼等は目立つから、マリナレティも気にはなっていたのだ。

 「そーね」

 興味なさそうに、投げやりな返事をしたサーニファに、彼女は首を傾げた。

 ルディシアールが空魔法を使うとわかるまでは、サーニファも彼等と親しく付き合っていたことを知っていたからだ。

 「それね、わたし聞いちゃった。フロアリュネがルディシアールに体当たりで迫ったんだって。きゅうって抱き付いて、離さないって、すごかったって」

 隣りで食べていたレリーが、勢い込んで話し始めた。すでに少し古い噂であるが、どうも友人の耳には入っていなかったようだ。

 「じゃ告白したんだ」

 マリナレティが興味津々に乗り出してくる。

 「フロアリュネがルディシアール好きなの有名だったもんね。‥あ‥ごめんサーニャ。その、面白くなかった?」

 レリーがハッと、友人が話しに乗ってこず、食べるのに専念し始めたのに、まずったと思った。

 サーニファはルディシアールのことを気にしていたし、もしかしたらと、思い当たったのだ。

 「別に。フロアリュネの気持ちは知ってたし、ルディが気がついてなかっただけでしょ。鈍いから」

 食べたものを飲み込み、サーニファは別にどうも思ってないと、幾分ぶっきらぼうな口調で言う。他人事だと言わんばかりに。

 「そうなの?」

 サーニファの顔色を気にしながらも、好奇心が勝ったレリーが聞くのに、サーニファは自分には関係ないという。

 「ルディは去年は同じクラスだったし、フロアリュネはいいライバルだと思うけど、それだけ」

 「ほら、わたしもサーニャも皇国の留学生だもの」

 こちらはいろいろと気がついたマリナレティが、察しろと口を挟む。

 「まあ、ルディシアールはわたし達でも、近寄りがたいものね」

 ルディシアールが空魔法を使うとわかってからは、彼に近づける者が限られているということは、今更であった。

 「でしょ」

 ましてサーニファは他国の人間だ。付き合わなくなったのも、当たり前であったと思い、その話は気分が悪いだろうと、レリーも話題を変えることにする。

 「わたしも買い物一緒に行こうかな。ねえ、美味しい携行食ってないかしら」




 王宮の軍務卿の執務室に珍しい人物が訪ねてきていた。

 そもそも対応した警備の兵士、王宮の門番が緊張で顔色を変えたほどだ。

 「これは珍しいこともあるものだ」

 兵士に案内されてきた黒の魔術師を見て、署名した書類を側近に渡した軍務卿カレーズ侯爵エイリックはそのまま人払いを命じた。

 「わたしが訪ねてくることを、閣下に予測できなかったとは思えませんが」

 上位者に対する礼を失しないブランの慇懃な態度は、エイリックとの一歩離れた距離を表している。

 仮に内心で「わざとらしい態度とりやがって、この腹黒野郎」と思っていたとしても、態度に出さなければわからない距離だ。

 「わたしは其方に好かれておらぬからな」

 自嘲するでもなく、エイリックは自身の感情を抜きに事実を口にした。

 自覚していても、問題にしない彼にしてみたら、本当に事実確認でしかないだろうに、黙っているが「何を今更」と、ブランは思っているかもしれなかった。

 正直な話、ブランが距離を取りたいのは何もエイリックだけではない。王宮との煩わしいあれこれをこそ忌避したいのだ。そして、それをエイリックも知っている。

 「だが、腹を割ってとは言わぬが、確認しておかねば今後に支障がでよう」

 「まさかわたしを呼びつけるために、あれを外に出す許可を与えたわけではありますまい」

 もとより王に次ぐ地位と権力を持つエイリックだ。呼び出そうと思えばブランを一方的に召喚することができる。

 それをせず、故意にブランから足を運ばせる真似をしたのは、その意思を行動で確認したにすぎない。

 「其方に我が真意が読めぬとは思わぬよ」

 だから来たのだろうと言われれば、ブランは不機嫌さを隠したくもなくなるというものだ。

 もとより権謀術数ではこの男に軍配が上がる。戦術ならともかく、政略ではブランはエイリックと張り合う気もない。

 これはもう年齢でも埋められない、地位に伴う経験と才覚によるものだ。

 「買いかぶりではないですか。わたしには閣下の腹を読み切ることなどできません」

 「そうかな」

 エイリックは口元に浮かべた笑みを深いものにする。

 「さて、『銀の雛』とは良く言ったものだと思わぬか」

 「本人はあまり気に入ってはいないようですが」

 すっかり定着したその呼び名を、ルディ本人は文句を言っても仕方ないため甘受しているが、本音は気に入らないようだ。


 「雛って、ガキってことですよね。そりゃあ実際未熟者だけど、そう面と向かって言われるのも、あんまり気分いいもんじゃないです」

 将来は異名持ちになる、特別な子供。ルディを直接知らない多くの者はそんなような意味合いで言い、その並外れた力と才能を知っている者は、すでに普通とは言い難いという意味でも言っているのだろう。しかし、ルディにとっては雛とは単純に未熟者という意味になる。

 「生意気いってんじゃないの。ガキなのは事実でしょう」

 ルディの額を軽く指で小突いて、デューレイアは笑った。時々この子はズレたことを言うと思いながら。

 自惚れろとは言わないが、卑屈になるのも考えものだからである。


 「事実、まだまだ子供です。だからこそ狙われる」

 「雛である今のうちならと、考える愚か者の多いことだ。だが、手の中に囲い込んでおく気はないのだろう?」

 この先もずっと黒の魔術師が庇護下におくというのなら、話は別だった。

 しかし、この男はそんなことは望まない。鳥籠に飼われた雛は、空を飛べなくなるからだ。

 だからこそ、今回「危険」を承知で外に出すことに同意している。

 そして、その危険のありかを同様に予想しながら、エイリックは許可を与えた。

 「回りくどい話は抜きで結構です。王宮の条件をお伺いしたい」

 そのために自分を呼んだのだろうと、答えを予想しつつ、ブランは間怠っこしいことは抜きで聞く。

 ルディシアールを外に出すことで危険を被ることになるのは、本人だけではない。むしろ問題はその周囲だ。

 ルディシアール一人ならば、それこそ異名持ちが出てこなければ、戦うにせよ逃げるにせよ切り抜けられるだろう。そのようにブランはルディを鍛えた。

 だが、周りを庇うとなれば危険は増大する。

 自分の身を護ることを最優先とし、万一の時には見捨てろ。

 それがルディに与えられる命令だ。

 ルディの翼を奪うことなく、なおかつ起こり得る損害を許容する。しかも、今回想定される最悪の事態で喪われるのは、将来の王国の剣となる魔導騎士の候補達だ。その中には、エイリックの息子を含め、有力貴族の子弟もいる。

 それだけのリスクを、代償無しに王宮が受け入れる理由がない。

 「ルディシアール・クリシスが異名持ちの雛でなければ、成り立たぬ話だ。予測はしてきたのではないか?」

 本当に、彼が唯のというのもおかしいが、空魔法の使い手であるだけなら、王宮は力尽くででも籠に入れた。それで話は済む。

 だが、異名持ちの雛を籠に入れれば、いずれ籠そのものを破ってしまうだろう。何より他の同類達(リュレとブラン)がそれを許さない。

 ならば、最低限の枷を付けるしかない。ルディシアールの翼を奪わないことが、王宮側の譲歩だ。

 「必要なのはブラン・アルダシール、黒の魔法殺しの剣だ」

 その剣を王に捧げよと、エイリックは言う。

 ブランは宮廷魔術師であり、魔術師としての杖は王に捧げてある。だからこれは別の意味での命令だった。

 もとよりブランに拒絶できないし、するつもりはない。ルディと合わせて管理するように、考えていたのはブランも同じである。そのための枷は、甘んじて受け入れるつもりだった。

 少しばかりエイリックのやり方に容赦がなかっただけだが、互いに共存する妥協点は見極めている。

 それでも、気に喰わない相手であることに変わりはない。少しばかり性急なやり方に、文句の一つも言ってみた。

 「猶予はいただけないのですか?」

 「オリディアナ姫を口実に随分と引きこもっていたのだ。十分だろう」

 その件を今更蒸し返す者もおるまいが、問題になるなら潰せば良い。今なら必要な措置を取る気になるだろうと、逆手にとってブランを唆すあたりで、エイリックは心底を見せつけた。

 「復職には陛下の承認を受けねばならないが、近々ルディシアール・クリシスの伯爵家継嗣の承認に伴う謁見がある。その場でよかろう」

 一旦退いた高位武官の地位に、宮廷魔術師が復帰するのだから、王の承認無しには進められない人事だ。

 それを、金の魔術師の息子であるルディの謁見と、同時に行うというのだ。

 「‥‥‥見世物だな‥」

 嫌そうに独りごちたブランの言葉が聞こえたエイリックは、愉しそうな笑みを浮かべて見せた。

 「当たり前だ。金と黒、将来の銀、さぞ見栄えがするだろう」

 内外に対する示威行為であるとエイリックは認め、それはブランも承知している。

 異名持ちが揃って王の前に膝を付く。それにより、王国が異名持ちを掌握していることを、世に知らしめるのだ。

 「当面は名目だけで構わぬ。少なくともルディシアールが卒業するまでは、学校を出ろとは言わぬよ」

 ルディシアールの師として、実際は今まで通り魔法学校の講師も兼任する。だが形式上、ブランはかつての役職、軍務卿の参謀として、王国軍の籍に戻ることになった。




 居住棟の一室、談話室や応接室などの空いている部屋を借りて、ローレイ主催の儀礼教室が開かれていた。時間があるときには少しでもと、暇を見つけては継続して行われている。

 教えるのはローレイであるが、伝統ある王立の魔法学校であるから、他にも人材がいる。ルディの補修の名目で、魔導士養成コースなどで講義をする王宮儀礼に詳しい教師の協力も頼んでいた。

間違いのないように、ローレイも事前に見直しを頼み、手の空いているときにはこうして直接助言をしてくれる。

 「きっつーい」

 ルディと一緒だからと、やると言ったのは自分だけどと、厳しい指導にフローネはげっそりしていた。

 「フロアリュネさん、落ち着いてもう一度お願いします」

 ローレイの助手として、主にフローネに貴族の子女としての作法を指導しているのは、伯爵家令嬢のネルフィルである。

 そのネルフィルは、まさに生き生きとした顔で指導していた。

 「教えるというのは、わたし自身の勉強になりますわね」

 図書館で儀礼に関する本を借りて、自らの知識を見直すことをしたネルフィルは、本当に教師に向いた性質をしているのだろう。

 ただ、それは張り切っているというにしても、実に厳しい指摘の飛ぶ、気を抜くことができない指導の仕方だった。

 将来魔導騎士になったときに役に立つからと言われて頷いたのは自分だから、フローネも泣き言は言いたくない。しかし、慣れないものはどうにも精神的に疲れるのである。

 「騎士学校では作法も指導されますから、今覚えておくと余裕ができますよ」

 指導者として呼ばれた教師の言うことは正しい。

 平民の出である自分達は、貴族の子弟である生徒と違って、正式な宮廷儀礼を学ぶ機会はなかった。王宮騎士ともなれば、最低限の身につけなくてはならない作法は、いずれ学ばなくてはならないのだ。

 「でも、これは貴族の側の作法でしょ」

 伯爵令息であり、将来子爵に叙爵されるであろうルディならともかく、騎士になる自分にここまでのものが必要になるとは思えなかった。どうしてと、フローネは言いたい。

 「ルディシアール君の相手役に名乗りを上げたのは貴女よ」

 女性をエスコートするのに、わたしがやるより、一緒に頑張る貴女が相手役の方が、ルディシアール君もやる気が出るでしょう。それに、他の女にやらせていいの?と、フローネを口説いた(ひっかけた)ネルフィルが愉しそうに微笑む。

 教師になりたい彼女は、教える立場に立てることでことさら張り切っているが、ローレイも同様に、指導に遠慮がない。

 「それに、君は竜騎士志望だろう。女性の竜騎士は近衛に配属される確率が高い。数が少ないからね。王族や高位貴族の女性の警護を任せられたとき、警護対象の動きを知っておくことは大切だと思うよ」

 理屈でローレイに太刀打ちできるはずもない。言いくるめられて、フローネは口ごもった。やる気はあるが、愚痴くらい言いたかったのだ。

 「わかってる。ルディ、頑張ろ」

 「う‥うん」

 ルディも覚えの早い良い生徒だが、フローネも運動神経が並ではないため、普段から身のこなしが綺麗であり、習得が早い。

 「はい。今のを忘れずに。常に意識していると違いますから」

 指導する教師の及第点をもらえ、ほっとしたところで、ローレイの次の声がとぶ。

 「それではもう一度、謁見の作法の復習をしておこうか」

 継嗣の承認の謁見は非公式という建前ではあるが、披露目という意味合いがある。特にルディは空魔法の使い手であり、将来の異名持ちということで、貴族達の注目度は大貴族の場合に劣らぬほど高い。

 貴族の子弟達には、付け焼き刃だと冷たい目を向ける者もいたが、そんなものに構っている暇はない。付け焼き刃だろうが、必要であるのだ。学ばなくては始まらない。

 リュレに恥をかかせるわけにはいかないと、熱心に取り組むルディの態度は、教える側からも好ましいものだった。

 だから習得も早いし、何しろルディは見場が良い。本人の自覚はともかく、それは有利に働くものだ。

 実践も近いことだし、ここは繰り返し徹底的にやっておこうと、ローレイの指導にも熱が入っていた。




 今日の昼食であるトマトスープとサンドイッチ、ポテトサラダをルディが机に出しているところに、デューレイアが入ってきた。

 「こんにちは、姉さん。白身魚のフライあるけど、夕食でいい?」

 「そうね。タルタルソースにしてくれる‥‥‥じゃない、ブラン!」

 いくつかの短剣を机に並べて、手入れをしている黒髪の魔術師を見て、デューレイアはつかつかと歩み寄った。

 「貴方軍務に復帰するってホントなの?」

 「なんだ、もう知っているのか」

 「いつの間にそんな話になったわけ?」

 厳しい表情で問い詰めるデューレイアに、ブランはそんなに驚くようなことじゃないと、短剣を空間収納の魔法具でもって片付け、立ち上がる。食事の前には手を洗いましょう、だ。

 「先日な。いつまでも引きこもっているなと、カレーズ侯に言われた」

 タオルで手を拭きながら席に戻ったブランに、落ち着けと、窘められたデューレイアは、はっと気がついてルディに視線を向けた。そこに不安そうな表情をした少年を見て、しまったと、彼女は己の軽挙に顔を顰める。

 「あの、軍務に戻るって」

 「俺はもとは軍務卿付きの参謀をやっていた。サボっていたら、いい加減にしろと言われただけだ」

 「でも、あの」

 「お前の指導をやめろとは言われていない。お前が卒業するまでは、復帰は名目だけで今まで通りだ」

 それを聞いて幾分ほっとしたものの、ルディの表情は暗かった。

 「僕のため‥‥‥ですか?」

 「公的に軍を動かせる立場にある方が、やりやすいことも多い」

 ブランはあえて否定しなかった。隠さない方が良いこともある。

 「だが、まあ丁度良い機会だということだ。引きこもりもいい加減長いからな。ちょっと前にも、ババアにも何時までもサボっているなと怒られたことだし、そんなところだ」

 「そりゃそうよね。最強の看板背負ってる貴方が、こんなとこに引っ込んでいるなんて、あの軍務卿閣下がいままでよく見逃してくれていたもんだわ」

 非常に納得出来ることを、あえてデューレイアは軽い調子で口にした。

 それにと、ブランはルディを見ながら、手を伸ばしてサンドイッチを取る。

 「最近はお前の相手で少しは動いているが、サボりすぎて腕がなまるのもまずいからな」

 鳥肉のサンドイッチだ。塩加減と辛子がちょうどいい。美味いと言いつつ、次はどれにしようかと思うブランに張り合うように、デューレイアが猛然と食べ始める。

 「お前が気にすることじゃない」

 いい加減表に出ないと、存在自体が薄くなりすぎる。黒の魔法殺しが健在なことを見せるのは、この国の安全にもつながるのだ。まして、今は銀の雛(こいつ)のことがある。

 二個目のサンドイッチを手に、俺のことを気にするなど十年早いと、ブランは言った。

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