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兄妹の思惑

 図書館の前を歩いていたとき、アリアルーナの前にいた上級生のカップルが急に足を止めた。危うくぶつかりそうになったアリアルーナは、危ないじゃないのと軽く心の中で文句を言う。

 もちろん制服の襟に刺繍された学年を示す杖が四本という先輩に、衝突を回避出来たのに文句を言えるはずもない。

 「おい、あの右側の銀髪、例の空魔法の二年だぜ。ルディシアール・クリシス」

 その言葉にアリアルーナは足を止め、思わずその上級生の視線の先である図書館に目を向けた。ルディと濃い灰色の髪をした少年が二人で図書館から出てくるところだった。

 「へえ、噂通り滅茶苦茶綺麗な子ねぇ」

 カップルの先輩達の会話が、自然にアリアルーナの耳に入る。

 「ねえ、一緒にいるの誰か知ってる?」

 「確か、カレーズ侯爵様の子息だったと思うぜ。そんくらいでないと、近づけないって話だし」

 「そりゃそうか。王宮が目を光らせてるものね」

 「あー、しまったよな。金の魔術師様のお気に入りって、こういうことだって気がついてればなぁ」

 「贔屓するはずよね。誰、将来の愛人候補とかバカ言ってたの」

 うるさいと、口の中で呟き、アリアルーナは早足でカップルの横を通り抜けた。

 「何が金の魔術師様よ。最低」

 吐き捨てるように呟き、寮へと向かう。

 先程のクラスメイト達にも苛つく。

 親切ごかしに声をかけてきて、裏では何を言っているかわかったものではない。

 二年次戦闘科一組も、あんな顔だけの出来損ないに負けたなど情けないにも程があると、アリアルーナは腹立たしい。

 あれが空魔法を使うというのも、異名持ちになると噂されているのも、アリアルーナには信じられなかった。

 ルディに魔力がなかったことは事実で、金の魔術師が贔屓したあげくに、何らかの作為が行われているのだと、アリアルーナは思い込んでいた。

 まして、ルディのせいで自分が非難されるなど、許せることではない。

 ルディのせいで自分が不当な評価を受けていると、彼女はずっと思っていたのだ。

 あんな出来損ないと違い、自分には昔から力があった。入学してから更に魔力は伸びてきている。

 治癒科のクラスメイトの四元素属性魔法は、ようやく楯が形に出来るくらいなのに、自分は風楯と雷球が使えるのだ。特に雷球は普通科にも負けないくらいの威力だと言われているのに、先生達の評価が低い気がして、アリアルーナはどこか気分が悪く、むしゃくしゃしていた。

 それもこれも、ルディシアールの妹ということが影響しているのだと思う。先生達の言動に、どこかルディの影が感じられるのだ。

 足早に歩くアリアルーナは、いつの間にか男子寮の前に来ていた。

 「ルナ」

 「リュー兄さん、あたしもう我慢できない」

 寮に在室していた上の兄、いや今は兄は一人しかいないから上のをつける必要はないのだ、兄のリュシュワールを呼び出してもらった。

 少し離れた人目につかない建物の裏にリュシュワールを引っ張ってきて、アリアルーナは噛みつくように訴える。

 「アイツのせいで、あたし達がなんて言われているか知ってる?」

 影ではもちろん、面と向かって、何故ルディシアールのことで嘘を言っていたのだと、責める者までいる。

 口癖のようにアリアルーナはルディのことを、顔だけの無能だと言いふらしていた。

 ルディが魔力なしなのも、金の魔術師の贔屓で入学したのも、彼女にとっては事実だと思っていたから、嘘を言っていたつもりはなかったのだ。しかし、周囲はそんなことを信じてはくれない。

 空魔法はともかく、出来が良いというレベルどころか、異名持ちになるという魔力の持ち主を、無能と評価し、冷たく当たってきた者などは、特に顔色を変えていた。

 ルディの性格を知らないこともあり、これからどのように接すれば良いか、自分の行為を棚に上げ、八つ当たりのようにアリアルーナ達に文句を言ってくる者も多い。

 「ああ。俺たちだけじゃない。トゥルダスで家が酷いことになっていた」

 子供を売ったと、陰口を叩かれていたことを、アリアルーナに教える。自分では誇張したつもりはなかったが、被害者意識から実際より悪意を強く感じ取った結果、アリアルーナにはより悪く伝わってしまった。

 そして、もともとアリアルーナはルディを嫌っていたから、それを当たり前のように鵜呑みにしてしまう。

 「なによ、それ酷い。元はルディが金の魔術師に取り入ったせいでも、養子の話だって向こうから言ってきたんでしょ。なんで家が悪く言われてるのよ」

 アリアルーナにしてみれば、理不尽でしかない。金の魔術師から支度金を貰ったのも、魔石の優先買い入れ枠を得たのも事実だが、すべてあちらから言ってきて、家が要求したわけではないというのに。

 支度金については別に珍しい話ではないが、今回は金額が大きかったとの噂と、普通ならあり得ないギルドの優先買い入れ枠までついたおかげで、特に同業者からやっかみで流されたのだ。

 それに加えて、ルディが家の出来損ないとして有名だったのと、その容姿が並外れて優れていたこと、金の魔術師のネームバリューが噂に拍車をかけた。とかく、世間はそういう噂が大好きなのだ。

 そして、彼らはその噂が自分達を護ることになるのに気づいていない。

 金で子供を売った。だからルディはシエロ家とは完全に縁が切れていると、世間が認識するように仕向けられていた。リュレはその噂と引き替えに、シエロ家を見逃すつもりだったのだ。

 「まったくだ。あの疫病神、家からいなくなってからまで迷惑かけやがる」

 「ほんとよね。今だって空魔法とか眉唾ものの話してるし、鬱陶しいったらないわ」

 家族で一人だけ魔力がなくて、皆が出来損ないとして扱っていたから、自然にアリアルーナもそういう目で見るようになっていた。

 なにより、男のくせに、家中で一番綺麗だというのが気に入らない。

 どんな人でも、容姿においては、ルディを貶す人はいなかった。アリアルーナも良く綺麗だと言われたが、ルディと比較すると「女の子だから」と言葉を濁す人が大部分だった。

 ルディは線が細いが、その美貌も嫋やかな女性的なものでなく、少年としての凛とした美しさがあったためだ。

 そのルディが金の魔術師に養子に貰われていくことになり、支度金として先に貰ったお金で、お店も助かって、アリアルーナも魔法学校に行けることになった。

 あれでも少しだけ役に立ったと、父親が言っていたし、彼女は厄介者がいなくなることを聞いて良かったと思った。

 だけど忘れもしない、入学式の時上級生らしい人から、あれが噂の金の魔術師に贔屓されてる奴の妹だと言われたときには、アリアルーナは恥ずかしさと怒りで目の前が真っ赤になった。

 魔法学校に入ってから、ルディなんていなければ良かったと、彼女は何度思ったかしれない。

 つい最近、ようやくもう家族ではない赤の他人になったと聞いて、目障りな次兄と縁を切れたことを、アリアルーナは心底喜んだのだ。

 「あたし、ルディに文句言ってやる。アンタのおかげでこっちがどんなに迷惑してるか教えてやるわ」

 ホントはあんなヤツと口も利きたくないけど、黙っていられないと激昂したアリアルーナは、今すぐルディのところに怒鳴り込んでいきそうな勢いだ。

 「ルナ」

 「なによ、止めないで」

 「そうじゃない。アイツの周りには王宮の目がある。普通に行ったんじゃ、話もできないぞ」

 縁を切った元家族を、警護の兵はルディに近づけることはしないだろう。もとよりその気はなかったリュシュワールにも、学校から念入りに注意されたくらいだ。

 「それじゃ黙ってろって言うの」

 「何とかして一人で来いって呼び出すしかないな。ルナだって、文句を言うだけじゃ気が済まないだろう」

 「そりゃあそうだけど、アイツがおとなしく呼び出しに応じるわけないじゃない」

 「俺たちじゃ無理だが、そこはなんとか考えるさ。それで詫びにって魔石を幾つか出させるんだ」

 リュシュワールの言うことが、直ぐにはアリアルーナは理解できなかった。

 「魔石?」

 「ルディが作れるっていう空魔法の魔石だ。できれば魔法鞄もな」

 「それ、空魔法が本当ならでしょ」

 王宮が動いていると聞いてもなお疑わしいと、アリアルーナは思っていた。

 どうしても魔力のなかった、味噌っかすのルディしか彼女には覚えがないし、そもそも頭から認める気がない、認めたくなかったのだ。

 「その通りだ。出せないなら、嘘ってことになる」

 妹を扱うのは難しいことではない。欲しがっている言葉を与えれば良いのだ。

 「そっか、さすがリュー兄さん。本当なら空魔法の魔石が手に入るし、嘘ならルディはお終いね」

 嘘だった方が良いと、アリアルーナは思った。それでルディが酷い目に会えば、いい気味だとスッとするだろう。




 休日にクアーラは、サリアリーナと学生街に買い出しに出掛けた。ルナリア行きに備え、色々買い足しておく必要があったのだ。

 「女の荷物が多いって言われてもねぇ」

 男にはわからない必需品があるのだ。文句を言われても困ると、クアーラはサリアリーナに愚痴った。

 「そうよね。でも、ちょっと買いすぎじゃない、それ」

 両手一杯の荷物に、サリアリーナは横を歩きながら流石に呆れた顔をしていた。

 「ストレス溜まってんのよ」

 おかげで買い物に走ってしまったと、クアーラは言う。

 「将来有望な男に囲まれていてねぇ?」

 魔石屋の跡取り息子だけでなく、初級だろうが食いっぱぐれのない治癒士のクロマも狙い目だ。ツェリズナルドは一番抜け目なく稼げそうな腕をしているし、彼の父親は魔法ギルド本部の職員である。若いうちに迷宮で荒稼ぎしておいて、父親の伝手で魔法ギルドに潜り込むのもありだろう。

 「だから、一緒しようって誘ってあげたじゃない」

 そうはいっても、庶民のクアーラと違って、サリアリーナの実家は領主の男爵家とも血縁関係のある地方の、それなりの名家である。彼女は家に従い大人しく言いなりになって嫁に行くだけの人生を嫌い、魔法の才があったのを幸いとし、魔法学校に進学した。

しかしそんなサリアリーナであっても、いざとなれば実家を頼ることで、将来的に食べていくのには困らない。何より現在進行形で、つきあっている彼がいる。

 「ふふん。大方リュシュワール君の機嫌が悪くて、あたしらを緩衝にしようって思ったんじゃないの」

 お見通しだとサリアリーナが、鼻を鳴らしたのに、図星をつかれたクアーラが、カラ笑を浮かべた。

 「やーね、サリーったら」

 「ここんとこ、空魔法の騒ぎで彼の評判、ダダ下がりだからね。彼、プライド高いし、大変でしょ」

 「そうなの。リュー君、弟君のこと嫌ってたから、余計にねぇ」

 「ちょっと王都を離れるのは、いいかもね。ルナリア行ってる間に、ほとぼりも冷めるだろうし、帰ってきたら直ぐ卒業試験で忙しくなれば、それどこじゃなくなるでしょ」

 「そうよね。卒業したらどうするかも考えないと。サリーはアテある?」

 「春にマリーバ迷宮でしょ。例年、卒業試験はそこだし、魔術師狙いのパーティも、スカウトに集まるっていうから」

 「やっぱマリーバか。魔石の質もあそこが一番だしね」

 「マリーバって言えば、知ってる?単独(ソロ)でものすごく稼いでる若い男がいるって噂」

 「ああ、アレ?滅茶苦茶美形の風使いの話よね。一気に深層まで降りて狩りまくるって。魔石以外は要らないっていうから、素材狙いの連中が後をついて回ってるって噂の」

 「まさに無双っていうじゃない。噂聞いて、あたし狙ってみようかって思ったんだけど、組合の人が、去年は来なかったし、今年も顔見てないってさ。がっかりよ」

 もちろんそれはサリアリーナが今の彼と付き合う前の話だが、実は同じようなことを考える女性探索者や、パーティのスカウトも後を絶たないという。

 しかし、口止めされているのか、マリーバの迷宮組合の者も、彼の素性を教えてくれないし、やんわりと無駄だから諦めろと、サリアリーナ達も言われたらしい。

 「あーあ、ちょっと買いすぎたかな。重たい」

 学校の門を入ったところで、手提げ袋を下ろして、ちょっと休憩とばかりに腕を屈伸させるクアーラに、通りかかった派手な金髪の騎士が声をかけた。

 「よければ手伝い(持ち)ましょうか?」

 「ホントですか?助かります」

 声の主が若い男の騎士とあって、クアーラは顔を輝かせる。

 空魔法の少年の警護として、王宮から騎士や兵士が派遣されてきているが、男女問わず独身者は生徒に歓迎されていた。理由は、言わずもがなである。

 何しろ身元は王宮が保障しているようなもので、これ以上ないほど確かだ。

 彼等、特に若い男性などは、将来を嘱望される魔術師の彼女は歓迎すべきものであるし、双方にとって悪いことではない。

 当初は、任務中にアプローチをかけて断られる生徒も見受けられたが、一週間も経てばその辺りのルールもきちんとしてくるため、非番の時に、積極的に交流を深める者は多かった。

 「リステイル様は王都守備連隊からいらっしゃったのですか」

 上手くやんなさいよと、ウインクして外れてくれたサリアリーナに感謝しつつ、クアーラは坊ちゃん然とした金髪の騎士に対し、せいぜい愛想良く振る舞った。

 「子供のお守りなんてと思ったけど‥‥‥って、これは内緒だよ。もちろんあの子は、この国にとって非常に重要な人材だから、大事な任務だと理解しているからね」

 「ええ、もちろんです」

 冗談と流せる軽口は、相手の気を解すのにとても有効的だ。クアーラも大人の会話だと理解している。

 「でも王都魔法学校での任務は、予想以上に幸運だったよ。なにせ、優秀で綺麗な女性が多い。堅物の先輩はいい顔しないけど」

 まあ、あの人はカッチコチとまではいかないが、任務中に女性関係を絡ませるのは許せないタイプだから、それでいいのだろうと思う。それに、意外に世話焼きなところがあるが、余程でなければ他人のプライベートに、口を突っ込むようなうるさ方でもない。

 リステイルはクアーラの荷物を持ちながら、ニコニコと笑顔を向け寮へ向かう。

 「あたし達も、騎士様方とお知り合いになれますし。そう思うと残念ですわ。これから実習で遠出しなくちゃならないんですもの」

 「そうか。残念だなぁ。美人に思い切って声をかけたのに」

 実際クアーラは蠱惑的な美女だ。自分でもそれを承知しているから、有効に利用して立ち回っているつもりだった。

 「あら、リステイル様はおつきあいしている女の子とか」

 「今はいないんだ。貧乏士爵家の次男との結婚は考えてないって振られちゃって。クアーラさんこそ、彼氏とかいるでしょう?」

 もったいないと、クアーラは思った。

 第三師団に所属する魔導騎士であるという時点で、間違いのないエリートだ。

 実家が貧乏騎士爵家だろうと、彼自身も魔導騎士として叙任されているから、一代限りとはいえ貴族の端に引っかかっている。むしろ庶民であるクアーラにとっては、敷居が高すぎない格好の位だ。

 しかも次男なら、実家(本家)の家督を継がずに済み、慣れない身分社会で、家の切り盛りに苦労する心配も少ない。この辺りクアーラは自分を良く知っている。

 彼を振った女は余程身分があるか、もっと良い相手を見つけたのかもしれないと思った。

 舌舐めずりする内心を隠し、クアーラは曖昧に笑う。

 「パーティの男性とかと、噂にはされてますけど、ホントはそこまでの付き合いじゃないんです。その人も今は大変だから、そんなことあまり言えないし、ちょっと困ってる感じ。ウチのパーティのリーダーなんですけど、実はその人、空魔法の子のお兄さんなんですよ」

 「ああ、そうなんだ」

 納得したようにリステイルは頷いた。

 「話は聞いているよ。あの子も悪い子じゃないんだけど、いろいろ行き違いがあってね。もとは兄弟でも、立場が複雑だから、誤解を解こうにも話せる機会もないし、心配しているんだ」

 「金の魔術師様の養子に迎えられたって聞きましたけど」

 控えめに、クアーラはその名を口にした。

 クアーラは彼女が故意に流した噂に踊らされた一人である。自業自得とは言え、恨み言の一つも言いたい。

 もっとも、それは初対面の騎士に言うことではないと心得ている。

 「ここだけの話、かなり強引なやり方をされたみたいだね。でも、おかげで我が国は、空魔法の使い手をなくさずに済んだとも言える」

 「でも」

 「言いたいことはわかるよ。ただ、結局は本人達の問題だからね。僕としてはちゃんと話し合えばって思うけど、金の魔術師様の意向があるから」

 「あたしなんか兄弟なのにって思いますけど?」

 「うん。血のつながりは消えるもんじゃないからね。そこのところも心配してるんだ。でも、君のような女性(ひと)がついているなんて、むしろ僕はその人が羨ましいな」

 「だって、同じパーティですもの。力になるのは当たり前ですわ」

 暗に、それ以上ではないと聞こえる言い方をクアーラはした。

 「何かあったら、僕も相談にのるから」

 「ええ。あの、ありがとうございました」

 寮の入り口で、持ってもらった荷物を受け取り、クアーラは名残惜しそうに礼を言う。

 「こちらこそ。話ができて嬉しかったよ」

 笑顔で歩み去るリステイルに、クアーラは好感触を覚え、上出来だったと自賛する。

 一方で、リステイルは機嫌の良さそうな顔で呟いた。

 「血のつながりは消えるもんじゃない。さて、彼女はどう受け取ったかな」

 誰にも聞こえない呟きは、人好きのする笑顔に紛れて霧散する。

 「‥‥‥ま、先輩には向いてないしね」

 堅物で、人の良い竜騎士には知られない方がいいだろうなと、リステイルはうんうんと頷いてみた。




 騎士様に荷物を持ってもらったと、クアーラは弾んだ顔でリュシュワールに会いに行った。

 サリアリーナに合同でルナリアへ行く内諾をもらったことを話すのが建前だ。そのついでに、彼の弟の話題を出す。

 「相談にのってくれるって言質をもらったわ」

 話を聞くにつれ、不機嫌の極みだったリュシュワールの態度が、目に見えて軟化してきたのに、クアーラはここぞとばかりに畳みかける。

 「騎士様達も仕事だから、表立って動けないって感じよね」

 これはクアーラの考えだが、金の魔術師様のやり方が強引だと言っていたのを聞いたリュシュワールは成る程と思った。

 「本音じゃそんなとこか」

 「子供のお守りなんかって言うのも、案外本当かもしれないわね」

 「当たり前だ。命令だから仕方なくってとこだろう」

 校内という、もともと安全な場所でもある。そう考えれば、やりようもあるとリュシュワールは考えた。

 「ルディには直接言ってやらないとな」

 なんだかんだ言って、ルディはリュシュワールの言いつけに逆らったことがない。

 その過去が、自分の言うことを聞かせられるという確信を、リュシュワールに抱かせていた。

 だから金の魔術師は、ルディに接触させないようにしているのだと、彼は思い込んだのだ。

 「俺が言って聞かせれば、アイツも言うことを聞くはずだ。変な噂も、アイツの口から否定させれば良い」

 「そのとおりよ。いっくら縁切ったっていっても、血の繋がった兄弟なんだから、ここはそれを利用すれば良いのよ」

 迷惑をかけられているんだから当然だと、リュシュワールは考えているようで、クアーラはそれを後押しした。

 あの様子なら、あの子の護衛の騎士達も上手くやれば見て見ぬ振りをしてくれるに違いないと、クアーラは思い、リュシュワールにもそう言う。

 「話し合いたいと言えば、クロマにも協力させられるかな」

 「クロマ君、前から気にしてたもの。明日、それとなく話してみましょうよ」

 あの人の良い友人なら、うまく協力を持ちかければ否とはいわないだろうと、二人は考えた。

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