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ほのぼのしてるといいな、と思います
でも残酷表現有り(?)です
※嘔吐有り
すべてあおかった。
全て紺かった。
私の紺の中には、
何かがずっと棲んでいた。
それはいつの間にか、
何かよりもずっと大きくて、
すべてあおかった。
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まさか私が、女から惹かれやすいとは思ってもみなかった。
初めて女に告白されたのは恐らく六歳のとき。幼馴染のみっちゃん・・・中尾美空に、告白された。今でも覚えている。自分の家でで一緒に擬似家庭遊戯に投じていたとき、急に美空が立ち上がり、言った。「みくね、りょうこちゃんのことがすきなの。りょうこちゃんは、みきのことすき?」その言葉は、私の中の何かと、恐ろしいくらい共鳴しなかった。それは恐ろしいエコーとなった。「り゛ょうごぢゃんのごどがずぎな゛のぉ。ずぎぃな゛のぁおぉぉお。り゛ょうごぢゃんのぉごどがぁ、ずぎな゛のぉおぉぉぁおあおぉおぉぉぁあおぉお――――――
自分はそのとき、酷く吐き気を覚えて、その場に嘔吐した、らしい。後で母親に聞いたことだから細部はとても曖昧だ。そのとき台所にいた母親によると、急に私の声がしなくなったことに気づき部屋をのぞいたら、私が吐瀉物に塗れているのを見、助けに入ったらしい。そして母は美空に罵声を浴びせ、家から追い出した。美空が引越しで、その次の日から逢えなくなるとも知らずに。だがしかし、美空について感傷に浸る必要もない。美空の話はこれで止めにしよう。
その次の告白は国民学校高等科二年のとき、中等学校の先輩からだった。私は彼女にも、吐き気を覚えた。だがさすがに自我を保ち、告白を断ってから便所で吐いた。多分そのときから、私は軽い嘔吐恐怖症なのだ。他人の嘔吐は大丈夫だが、自分自身の嘔吐は決して許せない。何故だろう?きっと、私の中の何かの所為だろう。だがしかし、そんなことはどうでもいい。この男が極端に少なくなった世界で、同性愛が増えるのは致し方ないことで、仕方のないことなのだから。
だが問題は、今私が女に告白されたということだ。
そしてそのことに嘔吐感を覚えていないということだ。
「・・・え?」
その結果、私の返答は何とも頼りないものになった。
どうしたらいいのだろう。嘔吐感がないということは、私はこの告白を厭に思っていないということだろう。否、むしろ少し嬉しいかもしれない。なら何と答えたらいいのだろう。そうしていたら、告白主から話しかけてきてくれた。
「あ~、だいじょぶ?つか、そうだよね~。いきなり女に告られたら反応にも困るよね~。ゴメンね~」
告白主である稲本佑菜は、全く申し訳なさそうではない言い方で謝った。私はむしろそのことが、私の何かと共鳴し始めているのに気づき、驚いた。何故だろう。何故、佑菜と共鳴するのだろう。それは全くわからないけれど、佑菜に訊ねてみたくなった。
「佑菜は、私の、どこに惹かれたんですか?」
「?」
「私、はただの女学生ですのに・・・」
「あぁ、ん。どこに、っていうか、全部に?」
佑菜がいうには、中等学校の入学式のときに、首席で話をした私に興味を持ち、ずっと見ていたらしい。そしていつの間にか好きになっていたらしい。そんな莫迦な。
「なんか、同級生が亮子の話をしてると、嫉妬してるってことに気づいてさ。うん。勿論断ってくれていいんだ。言っときたかっただけだからさ。じゃぁね」
「・・・何で返事も聞かずに帰ろうとしてるんですか!?」
そんな、私だって、佑菜のことが、
「好きなんですよ!!」
思いは、言の葉となって口から飛び出した。佑菜は振り返り加減で驚いている。私は恥ずかしくなって眼を逸らした。
そう、私もずっと佑菜のことが好きだった。いつも学級の中心にいて、幸せを満喫しているような佑菜に。惹かれていた。ずっと。自分とは違う佑菜に。
「本気?」
「・・・本気ですよっ」
半ば投げやりにそう言うと、佑菜はこっちまできて、私に小さな接吻を落とした。そしてこう言った。
「やっと、言ってくれたね」