93話 とんでもない事実が発覚
騎士団に連れられ、ノイシュの冒険者ギルドにやって来た。
ノシュタールは受付嬢に一室借りても良いかい?と問い掛けて許可を貰ってきた。
「よし、行こうか」
大きめの応接室らしい部屋へ移動。
椅子の量が足りなかったが、ティナとレインとツバキ、そしてセシルとミツキは立ったままで良いと言ってくれた。
そしてシェミィもカエデの膝上に座ってくれたのもあって、その他全員は座る事が出来た。
「さて、始めようか」
全員が騒ぐこと無く、静かにノシュタールの言葉を待つ。
「昨日、こちらに届いた情報と共にこれが送られてきた」
ノシュタールが机に置いた物、それは縦長い結晶的な物だった。
「……これは?」
「コウガさん、これは記憶結晶と呼ばれる物ですよ。コウガさんが分かるように言うならば、ビデオカメラだと思ってください」
「なるほど、これを使えば撮影や録音が出来るって事か」
「そうです」
ミツキがどんな物なのか説明してくれた、この世界にはこういう物があったんだな。
お店に置いてる所を見た事がないし、貴重な物なのかもしれない。
「どんな物か分かって貰えた所で、まずはこちらに届いた情報から話そう。情報によると、トカラミア山脈の麓にある村……カナリア村が、ドラゴンの集団に襲われ壊滅したとの報告があった」
「う、嘘……? カナリア村が……?」
「……っ」
メイランとエリスタが各々違う反応を示した。
「カナリア村に覚えは?」
「……ええ、良く知っているわ。レッドドラゴンとも深い交流があった人族の村ね……」
「グリーンドラゴンも同じくね。各種ドラゴンとも交流して、人族の物を流通してくれた村の1つだったわ。ドラゴン同士でも、あの村は不可侵だと取り決めて、あの村を私達ドラゴンが護るとしていた所なの」
メイランとエリスタがカナリア村の説明をしてくれた。
トカラミア山脈の奥地で暮らす彼女達は、人族の国へ行くのに時間が掛かってしまうし、多くの荷物を持ち帰る事も出来ない。ドラゴンの姿になれば、魔物と間違えられて攻撃を受けてしまう。
そこでカナリア村に人族の物資を取り寄せ、カナリア村から物を購入して持ち帰る……その代わりにカナリア村はドラゴン族が護る、と取り決めていたらしい。
「なるほど、こちらの聞いていた通りの話だ。間違いはないようだね。ならこれを見てもらおう」
ノシュタールは情報が合っていた事を確認し、記憶結晶を起動させる。
すると、起動した記憶結晶の上に、記録されていた動画が映し出される。
そこには……カナリア村を破壊する、赤いドラゴンの集団が映し出された。
「……っ!」
映し出された動画を見たカエデは、とあるドラゴンを見て激しく身体を震わせた。
そのドラゴンの背にはフードを被った男も映っていた。
その男を見たシェミィも、険しい顔をしている。
そして……メイランも、顔を真っ青にさせていた。
「ご、ご主人様……このドラゴンとフードだよ……私の村を破壊したのも……お父さんとお母さんの命を……奪ったのも!」
カエデが声を震わせつつも、力強く指をさす。
そのカエデの声に過剰反応を示したのは……メイランだった。
「あっ……あ……」
目から大量の涙が溢れ出す。近くに居たエリスタは事情を知っているのか、膝に置いていた手を握り締めて俯いていた。
メイランは涙をボロボロと流しながら、どうにか振り絞って小さく声を出した。
「おかあ……さん……」
「お母さん!?」
「「「「っ!?」」」」
メイランのどうにか振り絞って出した言葉に、その場に居たエリスタ以外のみんなは驚いた。
「め、メイランちゃんの……お母さん……?」
カエデも、このドラゴンは操られているのでは?とシェミィの過去を覗いて思っていたのだが、まさかメイランのお母さんだとは思っていなかったようだ。
ドラゴンの見た目は殆ど同じように見えるが、メイランには個人の見分けがついているらしい。
「どう……して……」
メイランは現実を受け入れる事が出来ていないように見える。
「この記憶結晶は村の村長が持っていたらしく、襲撃にあった際に起動させて記録を残してくれていた。残念ながら生き残りは居なかったみたいだけどね……。これにより、このドラゴンは何処から来たのか、種類はなんなのか、既存であるドラゴン族の人達と繋がりがあるのか、そしてドラゴンに乗っている人物は誰なのか、それを調べる事になったんだ」
「……」
メイランの手が細かく震えているのを感じた俺は、メイランの手を握りながら落ち着かせる。
「それについて……良いですか」
小さく手を挙げたのはエリスタだった。
「エリスタ君だったね? いいよ、話して」
「はい。私達グリーンドラゴンは、この件に関して独自の調査を行っていたので、ある程度お話できると思います」
「ふむ、聞かせてもらえるかな?」
「わかりました。まずは……ブルードラゴンとレッドドラゴンが衝突をしていた時に遡ります」
エリスタが語り始めたのは、メイランが奴隷に落とされる時の小競り合いの話だった。
エリスタが言うには、ブルードラゴンとレッドドラゴンはとても仲が悪く、いつも小競り合いをしていたのだそう。
ある日、いつものように2種族は喧嘩のようなことをしていたのだが、ブルードラゴン達が急に苦しみだし、全員がドラゴン形態に変化して襲い始めたのだそうだ。
「ふむ……そのブルードラゴンが急に強くなって、レッドドラゴンを制圧した、と」
「はい、そしてその後……私達グリーンドラゴンの索敵部隊である1人が、レッドドラゴンが幽閉されたという牢や、そのフードが居るであろう研究室に忍び込み情報を集めていたのですが……あのフードの男が、人や魔物を操る研究をしていたのを目撃したそうです」
「「「っ!」」」
俺とカエデ、シェミィが揃って反応する。
シェミィの件とトレントの件……これで繋がった。
「やっぱり……あのトレントもアイツが操ってたんだな」
「だね、シェミィも操られてたんだよね」
「……ん」
「……何やらあの男には余罪がありそうだね、話してくれるかい?」
「分かりました」
カエデの村が滅ぼされた事、シェミィの元はストームキャットで、フードの男に魔法で操られていた事、そして異常行動を起こすようになったトレントを討伐した事、メイランが酷い扱いをされて苦しんだ事をノシュタールに話した。
「これは……思った以上に大変な事になっているね」
ノシュタールはその話を聞いて思う所があるのか、険しい顔をしている。
「なぁシェミィ、あの時のシェミィはどんな感覚だったんだ?」
「ん……あの時は、苦しかったよ。私の『人』としての自我は最近覚醒した。でも……操られた時の感覚は、今でも覚えてる。心臓が握られるような感覚……そして、脳が書き換えられるような感覚……あんなの、2度と経験したくない」
シェミィはカエデの膝の上でクルンと半周回転し、ママであるカエデにぎゅっとする。
シェミィにとって良い記憶ではないからな……仕方ない。
カエデはシェミィの頭を撫でて安心させる。
「なるほどね、情報提供ありがとう。エリスタ君、1つ聞きたいのだが、君たちの一族は大丈夫だったのかい?」
「いえ、私達も襲撃を受けました。しかしながら、事前に情報は仕入れていたので、散り散りにはなりましたが私と同じように各自逃げ切れたと思います」
「なるほどね」
ノシュタールは今まで聞いた話を整理しているのか、少し黙り込む。
その間に、エリスタはまだ話しきれていない内容を語り始めた。
「メイランちゃんが奴隷として売られる前後なんですけど、ドラゴンとして覚醒を果たしてる人は、操る魔法の実験台にされ……恐らくその頃に魔法が完成したのでしょう。あのレッドドラゴンの大群は……全てメイランの一族で間違いないです。あの記録を見る限り……フードの男が直接操るドラゴンがメイランのお母さんです、レッドドラゴンの中で村長に次ぐ2番手の強さでしたから」
「……」
メイランはまだ震えたままで、涙もまだ止まらないようだ。




