25話 メイラン
翌朝、日が昇る前に目が覚めた。
リリィとフィルが監視と警戒してくれたお陰で眠れはした。
しかし、あんな事があったからかわからないが神経が過敏になっているようで、数十分毎に起きて寝てを繰り返してしまった。
正直、あまり疲れが取れてない。
もう一度寝ようとしても寝つけなかったので外に出て伸びをしていると、リリィがこちらに気付いたようで俺の肩に乗りに来た。
「あら? 随分早いわね。まだ日は昇ってないから、もう少しくらい寝ててもいいと思うわよ?」
「短時間で何度も起きてしまって……繰り返してたら眠れなくなりました」
「あんな事があった後だからね、仕方ないと思うわ。てか今思ったのだけど、敬語は話しにくいでしょ? 普通でいいわよ」
「……じゃあお言葉に甘えて、敬語みたいな堅苦しいのは苦手なんだ」
「私もよ」
まだ日が昇っていない為、焚火を起こして目の前に座り込む。
昼間は過ごしやすい季節なのだが、日が昇らない内は少しだけ肌寒い。
そういや春夏秋冬はあるんだろうか? あるとすればこれから暑くなるのか寒くなるのか、今度カエデに聞いておかないといけないな。
「ねぇアンタ、カエデとはどう出会ったの?」
「それを話すには、俺の成り行きも話さなきゃならないな」
「ふーん、日の出までまだ少し時間あるし、良ければ教えてくれない?」
「分かった。俺はな……」
カエデをよく知るリリィになら話しても大丈夫だと思い、成り行きや出会い、これまで何をしてきたのかを掻い摘んで話した。
「へぇ、アンタ流れ人なのね。流れ人といえば、こっちに来る時に珍しいスキルとかも貰ったりするって聞いた事あるけど、アンタも?」
「あぁ、空間魔法と固有加護、後は後天的に変身スキルを貰ったよ」
「あぁ、変身スキルって狼人になってたあれね。でも、私の知ってる変身スキルとは違うように見えたわ。変身スキルってただ姿を変えるだけのスキルで、効果時間も数分と短いのよ。アンタの変身を見ても素早さが段違いに違うし効果時間もかなり長い。もしかして、ステータスまで変化してるの?」
「あぁ、まだ狼人族のカエデにしか試してないが、その際はSTRとAGIとVITが上がってる。その代わりにDEXとINTが下がるけどな」
ここで普通に存在してる変身スキルについて教えてもらった、俺の変身スキルはやはり特別なスキルだったみたいだ。
「なるほど。変身先がカエデの狼人族なら、その狼人の特徴に合わせてSTRとAGIのステータスが上がり、魔法使いの特徴が薄くなるからINTとDEXのステータスが下がって、VIT下方補正なくなるから上がるって訳ね」
ここでも初めて、種族や魔法使いのような適性によってステータス補正がある事を知った。
まるでゲームの世界だな……脳内に流れたアナウンスといい、リアルなのに部分的にゲームみたいな感じが見受けられて違和感が半端ない。
「臨機応変に戦えて便利ではあるな。魔法が効きにくいなら狼人族に変身して物理攻撃を、物理が効きにくいなら魔法攻撃と切り替えられるからな」
「そう考えたら、変身先が増えれば増える程戦略の幅が広がるわね! ねぇ、私に変身してみてよ!」
「いや、無理だ。絆を紡いで加護を取得しないと変身出来ないんだよ」
「あら、そうなの? 強い分縛りがあるって事なのね」
それからカエデの小さい頃の話や俺の前世での思い出だったりを話している内に、いつの間にか日が昇ってきた。
カエデはまだ眠っていたが、夜にあった出来事を思うとギリギリまで寝かせてあげたいと思い、テントを片付ける直前まで寝かせる事にした。
テントを畳む以外の支度を済ませて、朝食の準備をしてから盗賊達の様子を見に行く。
パラライズサイズの拘束は長くは持たないが、ガルムさんが盗賊達をロープで木々に縛って奴隷用の首輪で鎮静化させてくれているので、逃げる事は出来なくなっている。
更には舌を噛みちぎるのを防ぐ為に紐を噛ませているという、何とも可哀想な姿だった。
紐を噛んでいて喋るのもままならないので、様子を見るだけで会話もせずその場から離れた。
その後、メイランの件について話すためにガルムさんの元へと向かうと、丁度そこにメイランの姿もあった。
「あぁコウガさん、おはようございます」
「コウガ様、おはようございます」
俺が声を掛けるより早くガルムさんとメイランが俺に気付いて挨拶をしてくれた。
「おはようございます。ガルムさん、少しお話良いですか?」
「はい、どうされました?」
「メイランって買う事出来ますか?」
ガルムさんはびっくりしたのか目を丸くした。
俺がこんな短期間に2人も買うとは思ってなかったみたいだ。
「え、メイランさんをです? もちろんコウガさんにであればお売り出来ますが、本人の意志も確認を……」
「ガルム様、私がコウガ様に頼んだのです。なので私は問題ないですわ」
「ほう、あなたがコウガさんに頼んだと。ずっと買い手を拒否していたあなたが……珍しいものですね」
そうだったのか? 確かにドラゴンと言えば誇り高い的なイメージはあるけど。
「私はもうコウガ様につくと決めたのです。もし金額が足りないとなっても、ずっとコウガ様が買ってくれるのを待ちます。なんならカエデみたいに護衛としてコウガ様につく事も検討して貰えると嬉しいですわ」
「なるほど、もう決意が固いようですね。ふむ……」
ガルムさんが少し考える格好になる、チラッと盗賊達をみて考えが纏まったのか口を開いた。
「分かりました、売りましょう!」
「ありがとうございます! いくらですか? もし金額足りないならサンビークで稼いでくるつもりです」
「いえ、その必要はありません」
「……へ?」
その必要はないと言われ、俺の頭の上に?が浮かんでいるだろう。
「えっ、あの……」
「まぁ聞いてください。あの盗賊から助けていただいただけではなく、捕らえることに成功しています。あの盗賊のボスの名前はヒューゴと言いますが、このヒューゴには金貨10枚の賞金首にされています。更にこの盗賊団、森羅団を全て捕らえたとなると、ヒューゴの賞金首と同じくらいの報酬が貰えるでしょう。そこから金貨15枚を差し引かせてメイランを引き渡すと致しましょう」
俺はこの話を聞いて口を開けて驚いた、こいつら賞金首だったのか。
「って事は………お金は頂かないと!?」
「はい、そういう事になります」
俺とメイランが明るい顔になる、メイランを買えるのはほぼ確実となった。
「コウガ様!」
メイランが抱き締めてきたので抱き締め返す、背中には翼があり手を回せないので腰に手を回す。
「これからよろしくお願いしますわ、コウガ様」
「あぁ、よろしくメイラン」
「では、今日からコウガさんと共に行きなさい。サンビークに着いて本契約する前に親睦を深めると良いでしょう」
「お気遣いありがとうございます」
ガルムさんが俺達を気遣って配慮してくれる、ほんとガルムさんが良い人でよかったと思う。
朝食を食べる為にカエデを起こす事にする、サプライズでメイランと一緒にだ。
「カエデ、そろそろ起きないと出発に間に合わないぞー」
「ううん……」
疲れていたのか少し目覚めが悪いみたいだ、頭を撫でて気分が良く起きられるようにしてあげる。
「コウガ様にこうして起こされたら幸せね」
「昨日の事があったからな、いつもよりも特別だ」
「ううん……ご主人様のお手手が頭に感じる……」
カエデの顔が緩みに緩みまくっていた、ゆっくり目を開けて俺の顔をみて満面の笑みになった。
「おはようご主人さ……えっ!?」
隣にメイランが居たのに今気付いたようだ。
「メメメメイランちゃん!? いつからそこに!?」
「うふふ、さっきからずっと居たわよ? 私、コウガ様の物になる事が確定したから、カエデにも挨拶しなきゃと思ったのよ」
メイランが居る事に目を見開いて驚いていたカエデだったが、すぐに頭の整理がついて理解したのか笑顔になった。
「ほんとに!? やったねメイランちゃん!」
「えぇ、よろしくねカエデ」
俺達3人で抱き合って、これからずっと一緒に行動していくんだと再認識する。
「さて、朝食食べながらメイランについて色々教えてもらおうか。戦えるのかとか、戦えるならどう戦うのかとかな」
「分かったわ、食べながら話しましょう」
俺が朝食の準備を済ませていたのだが3人分とは思わなかった為、すぐに1人前増やして作った。
3人と1匹で食事を囲み、メイランの話になる。
「見てわかるように、私はドラゴン族よ。父も母もドラゴン族なのだけど、母がドラゴン形態になる事が出来るタイプのドラゴン族なのよ」
「ドラゴン族にはドラゴンに成れるタイプと成れないタイプがあるのか?」
「えぇ、私はまだドラゴン族に伝わる『覚醒』には至ってないの。この覚醒に至るとドラゴン形態に成れるか成れないか分かるわ。父は覚醒済みだけど、ドラゴン形態には成れなかったみたいね。勿論、魔物のドラゴンとは違うから安心してもらっていいわよ。戦いは好きで、基本的には素手と魔法で戦うわ。火魔法の初級ファイアーボールと中級バーンストライクが使えて、自分で火を噴くことが出来るわね」
メイランは口から少しだけ火を吹き、火を吐けることを証明した。
拳で戦う辺りカエデと似ているが、魔法も使えて遠距離攻撃も出来るあたりオールラウンダーに動けそうだ。
接近戦にしても、カエデがスピードタイプだとすればメイランはパワータイプってとこか。
「あと、力もあって空も飛べるから、何かを空から運ぶとかも出来るわ! 何でも言ってちょうだい」
「分かった、その時は頼むぞメイラン」
「ええ、分かったわ」
これからの基礎になるであろう戦い方の擦り合わせを行って、ある程度まとまった所で話し合いは終了。食事も同時に終わらせた。
ガルムさん達も準備が出来たようなので、木々に拘束している盗賊達を荷台に積み込み、俺達は歩いて移動する事にした。
リリィとフィルとはここでお別れだ。
「リリィ、フィル、ほんとありがとう……ドラゴンとフードの男に敵討ち出来たら、またここに戻ってくるから。それまで元気でね」
「カエデ、無茶だけはしちゃダメよ? アンタ、しっかり見ておきなさいね!」
「もちろんだ、任せてくれ」
カエデはリリィとフィルを撫でてから再会を約束し、手を振って別れる。
「コウガさん、盗賊達を積み込みました。いつでも行けます」
「それじゃ、行きましょうか」
俺達はサンビークへ向かって歩き出した。
森を出るのは昼頃になり、森を出てからサンビークには30分程で着くという。
俺達の旅にメイランも新たに加わって、いっそう賑やかになった。
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