22話 テラー大森林で夜営
ガルムさんの依頼を受けて、俺達の旅は護衛任務から始まった。
王国から出るまでは馬車の横を歩いていたが、索敵は御者席の方がしやすいと思い、端の方で座らせてもらった。
カエデはいつでも動けるように荷台の後ろ側で座って、何も無い間は足をブラブラさせながらメイランと世間話をしている。
シェミィは馬車の後ろより付いてきてくれている。
何故後ろ側なのかというと、馬車を引く馬がビビってしまうからだそうだ。
王国からテラー大森林に入る迄の街道に魔物は殆ど現れないらしく、王国に居る冒険者達が毎日駆逐しているかららしい。
なので魔物退治は森に入ってからがスタートになる。
しかし、魔物ってなんであんなに現れるんだろうな?
何処かで繁殖していたり、自然と湧いて出てきたり? ダンジョンがあって、そこから出てきているとか?
「ガルムさん、この世界にもやはりダンジョンがあったりするんですか?」
「えぇ、ありますよ。このテラー大森林にはありませんが、この森の北側に見える山脈にはダンジョンがありますね。サンビークから北に向かい、山脈を少し登った所に洞窟型の物があります。攻略するだけではなく、山脈の反対側へ抜ける道もあるのだとか。ダンジョンに居る魔物は強い場合が多いので、私達商人にはリスクが大きく使う事はありませんね」
なるほど、反対側へ抜ける事が出来るのか。
カエデの見た夢では、あのドラゴンは山脈から北東へ飛び去ったらしい。
山脈は東へ真っ直ぐ伸びている、要するに山脈の反対側の更に東側へ向かったって事だ。
もし俺達の強さでダンジョンを抜けられるなら、そこを通るのはありかもしれない。
通れないとしてもサンビークより更に東へ行けば山脈の端で回っていけるようなので、サンビークに着いたら調べてみようと思う。
「なら、そのダンジョンから魔物が出てきたり溢れてきたりは?」
「数十年に数回程スタンピードが起こることがありまして、その時の要因としてダンジョンから魔物が溢れ出る、とかはありますね。普段からも多くはないですが魔物が出入りする事はあります」
スタンピード、確か魔物の大軍が溢れかえって押し寄せてくる現象だったよな。
可能ならスタンピードに出会うこと無く暮らしたいものだ。
ガルムさんと会話しながらも周囲を警戒していると、前方よりウルフが3匹こちらに向かって来ているのが見えた。
「カエデ! ウルフが3匹、正面から!」
「了解! シェミィ、行くよ!」
「にゃう!」
機動力のあるカエデとシェミィに迎撃へ出てもらい、俺は周囲の監視と馬車の護衛に残って、2人が大変そうなら魔法で援助する布陣だ。
ウルフも、見た感じはもふもふそうなんだよなぁ。
カエデのテイムがあれば、魔物であってももふもふを堪能出来るのでは?
いかん、欲望が溢れてきた。
そんな事を考えている間に、カエデとシェミィが一瞬でウルフを仕留めて帰ってきた。
シェミィは爪で引っ掻いたり、爪に風を纏わせて攻撃したりと、俺の風魔法と似たような使い方をしていた。
「ただいま、ご主人様」
「にゃーう」
「お、おぅ、おかえり」
「ん? ご主人様どうかした?」
「あぁいや、カエデのテイムでウルフをテイムしたら、もふもふを堪能出来るんじゃないかと思ってさ」
「可能だとは思うけど……あーでも、忠順じゃなくて普通のテイムのやり方聞いてなかったや」
そういえばそうだったな。
教えてもらったのは忠順のやり方で、普通の方はまた別のやり方の可能性が高い。
となればスキルを持っていても、スキルの理解が無いと発動しなかったりすると思われる。
ほら、トリマースキルを初めて使った時も初回が不発だったしな。
「次の街に着いたら調べてみるか」
「そうだね」
こうして馬車に揺られ、昼食や休憩を挟みながら進む。
魔物が出てきたら倒してを繰り返しながらも順調に森の中を進んでいき、日が沈む前に夜営の準備に取り掛かった。
森を抜けるのに2日掛かるらしいので、今日と明日は夜営して、森から抜ける予定だ。
ガルムさんや奴隷達は馬車の荷台で寝るらしいので、自分達はテントを張って目の前で火を焚いた。
この火を使い、簡単な夕飯を作って食べる。串に肉を付けて焚火で焼くだけだが美味い。
シェミィもこの肉を食べている、元が魔物なだけあって肉食だ。
夕食を食べ終わったらもう寝るだけ。
森に住む魔物達は火を恐れるとガルムさんから教わっているが、念の為俺とカエデの2人で交代の見張りをする事にした。
「カエデ、3時間交代で交互に寝るから、寝る時間はなるべくしっかり寝るんだぞ」
「分かった!」
「まずは先にどっちが寝るかだが……」
「ねぇ、ちょっと良いかしら?」
交代について話し合っているとメイランがこっちにやって来た。
「あっ、メイランちゃん! どうしたの?」
「眠れないから少し話せたらと思ったのよ、大丈夫かしら?」
「そうか、それなら先に俺が寝るから見張り交代の間に話してるといい」
「いいの? ありがとうご主人様!」
「あぁ、ゆっくり話すといいさ。3時間を知らせてくれる魔道具もガルムさんから借りてあるから、それが鳴るまで寝るよ。もし魔物が寄ってきたりしたら起こしてくれても良いからな」
「分かった。おやすみなさい、ご主人様!」
「あぁ、おやすみ」
俺はテントに入り寝袋に包まれて眠りについた。
シェミィはテントの外で寝るようだ。
ーーーカエデsideーーー
私とメイランちゃんは、テントをバックに焚火の前に座ってガールズトークする事にした。
「カエデの主人は優しいわね」
「うん! 強くて優しくて、私を奴隷ではなく1人の人として見てくれる。そして、ずっと一緒に居ることも誓ってくれた、大事なご主人様なんだー!」
「あら、もうそこまで進んだの?」
「まだ忠誠を誓っただけで、それらしい事はしてないけどね」
ご主人様は私を大事にしてくれるから、それに旅をするのだから妊娠なんて御法度だ。
「良い主人に恵まれて羨ましいわね。私も良い人に巡り会いたいんだけど……王子様とか来たりしないかしら?」
王子様とか言っちゃうタイプなんだ、憧れるのは分かるけどね。
「きっと会えるよ! なんなら、私のご主人様はどう? 奴隷として扱わずに対等に接してくれるよ!」
「そうねぇ、確かに容姿も良くて奴隷と扱ってこない人が理想ではあるけれど、カエデの主人だから少し遠慮しちゃうわね……彼が欲しがれば別だけど、自分からは行かないわ」
「私は気にしないけどなぁ」
メイランちゃんも私のように良い人に貰われて欲しい……そう願ってる。
その為なら、相手がたとえご主人様であっても私は構わない。
まぁ、あのガルムさんだから変な奴に売り渡す人ではないと思うけどね。
こうして、いつしか会話はご主人様との数日間に何があったのかとか、メイランちゃんの理想はどんな人なのかとかのガールズトークに暫く花を開かせた。
そして、だいぶと時間が過ぎていき、メイランちゃんがうつらうつらとし始めた。
「カエデ、ごめんない。眠気が来たみたいだわ……」
「気にしなくていいよ。交代の時間まではまだもう少しあるけど、楽しかったよ! ありがとう!」
「こちらこそ、楽しかったわ。おやすみなさい、カエデ」
「おやすみ、メイランちゃん!」
メイランちゃんが馬車の荷台に帰っていき、私も見張りしながらゆっくりとした時間を過ごす。
暫くするとテントの中でピピピッと音が鳴った。あれが魔道具の音かな?と思っていると、ご主人様がテントの中から出てきた。
もう3時間経ったみたいだね。
ーーーコウガsideーーー
「カエデ、見張りありがとう。どうだった?」
「敵も来てないし問題ないよ。メイランちゃんと暫く話してたけどちゃんと寝たし、退屈しなかったから大丈夫!」
「そうか、良かった。カエデも3時間ゆっくり休んでてくれ」
「ありがとう、ご主人様。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
カエデがテントの中に入っていくのを確認して焚火の前に座る。
シェミィもしっかり寝ているし、明日も問題なく動ける体調でいけるだろう。
周囲を警戒しつつものんびり過ごして、退屈になれば変身してナイフを振って軽く身体を動かす。
1番やばいのは眠くて見張り中に寝てしまう事だからな、眠くなったり退屈なら少しだけ身体を動かす事にしたのだ。
のんびりする時間と鍛錬の時間を繰り返している内に交代となり、それを朝まで繰り返した。
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