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17話 帰宅

 調査も無事に完了し、トライデント王国へ帰っている最中、俺はジルさんとミラさんの2人と話をしていた。


「スカルさん、どんな処分が下されるんでしょうね?」

「うーん、そうねぇ……ギルマスがどう考えてるか分からないけど、スカル個人に対してはランク降格と暫くの謹慎は間違いないでしょうね。ギルマスの指示に従わず独断行動、その結果全員を危険に晒した。これは立派なギルド規約違反になるからね」


 ランク降格は間違いないと思っていたが、謹慎もあるのか。

 どれくらいの期間謹慎になるか分からないが、冒険者だけで生活してる人からしたら大変だろう。


「そうだな。ただ……PTとして連帯責任もと問われるならば、俺達も何かしらの処分が下される事も覚悟せねばなるまい」


 ジルさんやミラさんはアイツの勝手な行動を何度も止めようとしてるのを俺は見ている。

 これでPTとして責任を問われるというのは……ちょっと酷な気がする。


「もうアイツを独り立ちさせて、自分の行動の責任は全て本人に背負わせたらどうです?」


 もう立派な大人なのだから、それが当たり前だと俺は思った。


「自身の行動の責任はその本人に背負わせる。それはそうなんだけど、PTメンバーとして止められなかったという責任はあるの。どんな事情があれど、ね」

「そんな理不尽な……」

「PTってそういう物なのよ。もう何年も一緒に居るけど、こうして責任を負わされるのは慣れっこよ慣れっこ。アイツにどれだけ言おうとも、改善しようとすらしてなかったからねぇ……もう独り立ちさせる事を考えようかしら?」


 ミラさんは今まで溜まりに溜まった鬱憤を吐き出すかのように深い溜息をついた。

 こうして話してる間にも、定期的にカエデに回復魔法を掛けてくれるミラさん。お陰で身体の外傷は全て綺麗に治っていた。


「ミラさんありがとうございます、助かります」

「いいのいいの、カエデちゃんに助けられたからね! 魔力切れくらいポーションを飲めば何とかなるし、これくらいお易い御用よ」


 ミラさんがOKマークしてくれる。


「スカル1人が処分されるか、PTとして処分されるか……どちらにしてもスカルが謹慎喰らうのは間違いない。暫く俺とミラの2人でPTをやらねばなるまいな。まぁ、準備が整うまでの少しの間は休暇になるだろう」


 少しの間休暇にするのか、なら明日俺達の特訓に付き合って貰えたりしないかな?


「それなら、明日1日だけ時間貰えませんか?」


 急な誘いにきょとんとするジルさんとミラさん。


「む? 何をするつもりだ?」

「明日1日、修行に付き合って欲しいんです」

「ほう、修行か」

「良いじゃない、付き合ってあげましょうよ!」


 ミラさんは乗り気みたいだ。

 俺は魔法使いとしてまだまだ未熟だから、色々教わりたいんだよな。


「あぁ、俺も構わないぞ。どんな修行するのだ?」

「俺は魔法の修行ですね、ミラさんに指導してもらえたらと思うんですが……」

「勿論おっけーよ! なら、ジルはカエデちゃんと接近戦の練習でもしたらどうかしら?」

「あぁ、そうするとしよう」


 明日の約束を2人と取り付けたその時、シェミィの上で寝ていたカエデが目を覚ました。


「ん、んんっ……」


 瞼をゆっくりと開け、キョロキョロと周りを見渡す。

 身体を起こそうとしない辺り、まだ身体が辛いのだろう。


「お、起きたか。気分はどうだ?」

「……」

「カエデ? どうした?」


 カエデの顔を覗き込むと、非常に暗い顔をしていた。


「……ご主人様、見れたよ。シェミィの身に何があったのか」

「っ!」


 まさか、また夢で過去を?


「カエデちゃん、見たって……何を?」

「条件は分からないんですけど、私と関わりがある動物に関する事の夢を見る時があるんです。今回はシェミィがテラー大森林へ来る事になった経緯が、夢に出てきました」


 俺は前にも経験があるので驚かないし疑わないのだが、それを知らないミラさんとジルさんは驚きを隠せないようだった。


「そんな事が有り得るのか……?」

「はい。今までにもご主人様に関する夢を見て、聞かされていない過去を言い当てました。恐らく今回のシェミィの夢も、過去にあった出来事で間違いないと思います」


 ジルとミラが顔を見合わせて信じられないと言いたそうな顔をしていた。

 俺はカエデに続きを聞いた。


「カエデ、シェミィは何故この森に?」

「色々経緯はあるんだけど……結論を言うと、シェミィは……操られてたみたいなの」

「「なんだって!?」」「なんですって!?」


 俺とジルさんとミラさんの口から同じような言葉が同時に出た、全員口が開いたままになった。


「しかもシェミィだけじゃない……私の村を壊滅させた、あの憎いドラゴンまで操られている可能性が高いの」


 危険度が高いと言われるドラゴンまで……!? そんな事が可能なのか!?


「村の壊滅……? まさか……カエデちゃんって、トーラン村の?」

「はい、トーラン村で営んでいた薬屋の娘です」

「カエデちゃん……」


 ミラさんがカエデの境遇を聞き、何とも言えない表情をした。


「ミラさん、私なら大丈夫ですよ。家族は失いましたが……今はご主人様が居ますから」


 カエデが悲しそうな顔を一瞬したような気がしたが、すぐに顔が戻る。


「その操っている本人も夢に出てきたよ。ただ、真っ黒のフード姿だったから、顔までは見られなかった……ごめんなさい」

「いや、気にしなくていい。魔物を操っている黒幕が居た、それが分かれば充分だ」


 俺はカエデの頭を撫でる、カエデは少しだけ顔が緩み気持ちよさそうな顔をした。


「なら、俺達の旅の目標が少し変わったな」

「そうだね。ご主人様の言うもふもふの旅には変わりないけど、ドラゴンやシェミィを操っていた奴を倒す、に変わるね」


 ドラゴンの破壊行動も、操られていただけで本意ではなかった可能性ある。

 実際に操られているのかどうか、確かめる必要があるな。


「ドラゴンを操るとなれば、大きい組織もしくは大きな力を持った奴って事だ……俺やミラですら手に負えない可能性もあるぞ」

「ねぇコウガくんカエデちゃん、流石にこれはギルマスへ報告した方が良いんじゃないかしら……?」


 ミラさんが不安気な顔で提案する。

 確かに、ドラゴンをどうにでも出来るような人間を俺やカエデだけでどうにか出来るようなものではない可能性が高い。ギルマスに協力してもらう必要があるかもしれないな。


「今ギルマスに話すと隊列を止めてまで聞こうとするかもしれないですし、一旦ギルドに戻ってからにします」

「そうね、そうしましょう」


 こうして話してる内にトライデント王国へ到着した。

 門番はストームキャットが現れたと大慌てするが、ギルマスが説明してくれたので通報騒ぎにはならなかった。

 全員ギルドに向かって歩き出す。


「さーて、まずは依頼完了報告とコイツの従魔登録をしねぇとな! 一旦全員でギルドに戻ってから解散になるが、コウガとカエデは執務室に入って待っててくれ、必要な登録をする」

「分かりました。あと、1つお話があるのでミラさんとジルさんも同席させても良いですか?」

「あぁ、スカルの件があるから残ってもらう予定だったから大丈夫だ。ってか、また厄介事じゃねぇだろうなぁ?」

「アハハーチガイマスヨー」


 バレバレの嘘を言うとギルマスが渋い顔をした。


「ったく……仕方ねぇから聞いてやる。でもまずは従魔登録が終わってからだ」


 冒険者ギルドに戻ってきた時には既に日が沈もうとして夕日が綺麗な時間帯だった。


 ギルド内でもストームキャットが現れたと騒然となるが、ギルマスの一声で黙らせた。さすがギルマス。

 それを見つつ、俺達とジルさんとミラさんは執務室に入って待機する。

 数分するとギルマスが執務室に入ってきた。


「ったく、アイツらぎゃーぎゃー騒ぎ過ぎなんだよ……」

「あはは……すみません、ギルマスさん」

「にゃう……」


 シェミィが申し訳なさそうに耳をペタンとさせて部屋の隅に座り込む。

 シェミィには悪いが、その仕草可愛いぞ……! 帰ったらいっぱい撫でてやろう。


「いや、お前達のせいではない。そもそも2人が上手くやってくれたから討伐すること無く、こちらも無事に帰る事が出来たんだ、感謝する」


 ギルマスが頭を下げて感謝を述べる。


「いやいや、そんなお礼言われるような事では……!」

「お前達はそう思うかもしれないが、俺の立場からしたら違うんだ」


 ギルマスが真剣な顔をしてこちらを見る。


「俺の役目はみんなに指示を飛ばし、全員無事に帰還させることだ。もしあのまま戦闘が続いていたら、恐らくは犠牲者も出ていただろう。それを助けてくれたのが、お前達2人だ。全員を助けてくれた、だからギルマスとして感謝をする、当たり前の事だ」


 確かにギルマスの言う通りかもしれないが、俺達はただ必死になってただけなんだけどな……。


「そんなことはないって顔してるな? ま、感謝は素直に受け取っておけ」

「……そうですね」


 ギルマスがそう言うならと、俺とカエデは納得した。


「さぁ、まずはやらなきゃいけねぇ事から済ませようぜ。これが従魔登録に必要な装備品だ」


 ギルマスが取り出したのは、皮で出来た小さいリング的な物だった。


「装備品?」

「あぁ、これを身に着けている魔物は従魔登録されているから安全だと証明するもんだ。首でも腕でもいい、これを分かりやすい場所に巻けば、その場所で丁度いいサイズになって装着されるぞ」

「ありがとうございます」


 装備品を受け取り、カエデに手渡す。


「カエデが付けてあげて、テイム主なんだから」

「わ、わかった!」


 カエデがシェミィに近付き首へ装備品を付けると、丁度いいサイズに変わって装着された。


「シェミィ、苦しくない? 大丈夫?」

「にゃーう」


 シェミィは喜んでいるみたいだ、良かった。


「さて、次にスカルだが……アイツは俺達全員を危険な目にあわせただけではなく、数多くの迷惑行為、ルール無視、集団行動での指示無視に迫害、色々余罪がある。よってスカルは冒険者ランクをBからDへと降格、そして暫くの謹慎だ。更に謹慎期間はトライデント王国の騎士団に身を置き、腐った精神を徹底的に叩き直させることにする」


 騎士団か……かなり厳しいシゴキが待っていそうだな。


「聞いてるだけでエグそうですね……」

「当たり前だ、じゃなきゃ罰にはならんからな。そしてクローゼス残り2人のミラリアとジル、お前達に処分を与えようとは俺は思わない。しかし、同じPTで活動していたってことで、そのままにしておくのも色々とまずいんだ。それで悪いのだが……奴の謹慎期間は遠出しないでもらいたい。謹慎中は俺達の監視下にあると思わせる為だ」


 なるほど、ギルマス自体は罰を与える気はないが、周りが許してくれないか。


「なるほど……ミラ、どうだ?」

「んー、コウガくんやカエデちゃんの件が無ければ良いよって言いたいのだけどねぇ」

「さっきコウガが言っていた件の話か?」

「はい、聞いて貰えますか?」

「仕方ないな、話してみな」


 俺はカエデが夢で見た事をありのままに伝える。

 信憑性を上げるためにも、俺の前世に関する夢も見た事を正直に話した。


「そんな馬鹿な……魔物を操るだと!? そんな事が起きてたのかよ!?」

「はい……」


 ギルマスが両手で頭を抱え込み、あーでもないこーでもないとブツブツ呟き始めた。


「俺達は、そのドラゴンを追って旅に出る予定なんです。各地回って強くなる、そしてドラゴンを追って出会うであろうフードの野郎をぶっ倒す。そう決めたんです」

「……なるほどな」


 ギルマスが険しい顔をしてこちらを見たのだが、緊張感とプレッシャーが凄く感じた。


「それ、かなり険しい道になると思うぜ? 黒幕が何処にいるかも分からない以上、遠い場所だと俺達が動ける保証はない。各地を回って黒幕を見付けた場合、その地域の協力も必要になるだろう。もちろん、お前達もドラゴンと張り合えるほどに強くならなくちゃならん。分かっているな?」

「もちろんです。俺もカエデも、覚悟は決めてます」

「……そうか」


 ギルマスは暫く考え、何か思い付いたのかレイアさんを呼んだ。

 耳打ちをするとレイアさんが驚いた顔をしてこちらを見るが、すぐに視線は戻された。

 ギルマスにギルドカードを渡せと言われたので渡すと、それを受け取ったレイアさんは受付へと走っていった。


「コウガ、カエデ、お前達に追加報酬をやろう」

「追加報酬?」

「あぁ。お前達はBランクの魔物と対峙し、戦い、そしてテイムした。俺達だけでは倒しきるのは難しかったかもしれない、だから勝利報酬だ」


 話しているとレイアさんが戻って来たのだが、何やら袋とギルドカードを持ってきていた。

 ギルドカードにはランクDと書かれているのが見えた。


「ラ、ランクD!? 飛び級ですか!?」

「あぁ、俺はお前達の戦闘をみてDで良いと判断した。Dにもなれば様々な魔物と戦える依頼に出れるからな、色々依頼を受けて強くなるといい。そしてこれは2つ目の報酬、ランクBクラスの魔物と対峙し勝利した分だ。他の奴らにも分けたから取り分は少ねぇが、金貨5枚の50万ノルンを受け取れ」

「き、金貨5枚!?」


 少なくなって50万ノルンて……Bランク魔物と戦えばそんな金額になるのか。


「Bランクの魔物なんてあんまり見ねぇからな。そんな魔物を倒したとなれば、素材だけでも数十万~数百万ノルンにもなるぜ。まぁ今回は参加した冒険者も多かった上にテイムしたからな、素材にはならない分低めって感じだ」

「な、なるほど……」


 冒険者も命懸けな分、報酬も高くなる。

 冒険者は一攫千金も狙える職業だという小説がいっぱいあったが、なるほどこういう事か。


「ほんでクローゼスの2人、すまんがお前たちを旅に送り出すことは俺には出来ん。コウガ、カエデ、お前達への協力は惜しまないが、あんま離れた場所だと助けに行けるかわからねぇからな、覚えとけよ?」

「わかりました、ありがとうございます!」


 話し合いも程々に、必要な事を話し終えた俺達はクローゼスの2人と共にギルドから出た。


「ねぇコウガくん、明日特訓したいって言ってたわよね? 朝10時に門を出た所で集まりましょう! 私達が行けない分、しっかり鍛えてあげるわ」

「え、特訓?」


 カエデが寝ている時に話していた事だったので、何の事? と言わんばかりに首を傾げていた。


「あぁ、ドラゴンと対峙するのは確定だからな。ただ魔物と戦うよりは強い人から手解きして貰う方が良いって思って頼んでおいたんだ」

「なるほど、いいね! やろうご主人様!」

「にゃう!」


 カエデもやる気だ。

 明日はみんなで特訓だし、早めに休まないとな。


 クローゼスの2人と別れ、俺達は宿に帰ってきた。

 まずは晩御飯頂き、後に湯浴みしてお互いの尻尾をお互いが整えて寝る準備をする。

 尻尾の手入れをする度にカエデは快感でふにゃふにゃになるのだが、それがまた可愛いのだ。


「ご主人様ぁ……気持ち良すぎるよ……」

「はははっ! カエデはもっとDEXを鍛えなきゃな!」

「うぅぅ、頑張る!」

「にゃおーん」


 シェミィが俺とカエデにスリスリしてくれる、シェミィも可愛い……!


「シェミィも今日から俺達の仲間だからな、いっぱい撫でてやるぞ」


 シェミィの美しい毛並みを堪能しつつ撫でる、シェミィも気持ち良さそうだ。


「シェミィが擬人化出来たら良いのにね」

「そうだな、きっと可愛いぞ!」

「にい?」

「「あははは!」」


 シェミィが首を傾げる姿に笑いが溢れる。

 ドラゴンの件が片付いたらこうしてのんびりしつつ、更なるもふもふを求めよう!


 俺はカエデと共に眠りにつき、シェミィもベッドの傍で丸くなって眠ったようだ。

ご覧頂きありがとうございます。


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