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14話 森の調査と新たなる敵

 森の入口にやってきた調査隊と俺達。

 ギルマスは調査部隊と俺達新人の護衛の役割を素早く振り分けた。


 俺達の護衛はジルさんやミラさんが所属するクローゼスPTとなった。ここに着くまで話し込んでいたのをギルマスが見ていたようで、気軽に話せる間柄の人が護衛の方がいいだろうとの判断だった。

 俺達は調査隊の後ろから付いて行き調査のやり方を学び、クローゼスは護衛しながらも後方を警戒してもらう形を取った。

 相変わらずスカルは離れた位置から付いてくるだけなのだが……まぁ、邪魔にはなっていないので居ない者として扱うことにしたようだ。


 暫く森の中を進んでいると、オオカミのような見た目の魔物がこちらに迫っているのを発見した。


「ジルさんミラさん! 右手より魔物が5体、近付いて来てます」

「了解! ジル! カエデちゃん! 前衛よろしく!」

「はい!」


 カエデは身体強化で迎え撃つ準備をし、ジルさんは俺達の前に立って盾を構える。


「あれは……ウルフだな。コウガ、魔法で牽制いけるか?」

「やってみます!」


 俺は杖を前に突き出し、ウルフ目掛けて魔法を放つ。


「ブリザード!」


 吹雪がウルフを襲う。倒れはしなかったが、ウルフの動きが少し鈍ったように感じた。


「アクセルブースト」


 ブリザードの吹雪が消えた瞬間、カエデが一気にウルフへ向かって駆け出した。


「……無詠唱、か」

「え? 何か言いましたか?」

「いえ、何でもないわ。ここはコウガくんとカエデちゃんに任せちゃお! 危なくなったら手を貸すからね。まぁ、ジルが居たら大丈夫だろうけど」


 ミラさんが最初何を言ったのか分からなかったが、こうしてる間にもカエデはウルフ達の元に辿り着いていた。


「はぁ!」


 カエデがウルフにパンチを入れようとするが躱される。


「躱された……くっ」


 別のウルフが噛み付こうと飛び掛って来るが篭手でしっかり受け止め、振り払って逆手からパンチを繰り出す。


「ギャウンッ!」


 1体が倒れたが、他のウルフ達が次々にカエデへと襲い掛かっている。躱したり篭手で防いでいるものの、援護が必要だと感じ取った。


「アイスショット!」


 1体のウルフにアイスショットを放ち、こちらにも来いと言わんばかりに挑発した。

 アイスショット自体は簡単に避けられたのだが、2体のダケは取れたようでこちらに意識を向けさせて呼び込むことに成功させた。


「コウガ、近付かれた際に有効な魔法はあるのか?」

「えぇ、1つあります。逃したら頼みます」


 俺は近付いて来る2体を充分に引き寄せてから魔法を放つ。


「アイスウォール!」


 ジルさんの目の前に氷の壁を出現させ、突進してきたウルフ達を弾き返す。

 それを逃ずまいと、氷の壁を消失させた後にアイスショットを2発放って仕留めることに成功させた。


「ほぅ、見事だな」

「ありがとうございます」


 カエデの方を見ると、丁度ウルフを全て討伐し終えたところだった。

 索敵でも魔物は居なくなったのが確認出来たので、ふぅっと息を吐いて気を緩めた。


「コウガ、ウルフの解体方法は分かるか? 皮と肉、牙が素材として使えたり売れたりするんだ。魔法袋を持っているのならそのまま解体せずにギルドで買い取ってもらう方法もあるが」


 解体方法は教わっていないので俺は分からないが、カエデなら分かるんだろうか?

 カエデの方を見ると、渡しておいた魔法袋に魔物をそのまま入れているようなので、一旦何もせずに持ち帰る考えのようだ。


「俺は解体出来ないんですが、魔法袋代わりの魔法があるので問題ないです」

「……ほう、もしやストレージか?」

「はい」

「良い魔法を持っているな。ならば仕留めた分はお前達が持ち帰るといい」

「ありがとうございます」


 ストレージへウルフを2体入れているとカエデが帰ってきた。


「ふぅー動いた動いた! ただいま、ご主人様!」

「あぁ、お疲れ。怪我はないか?」

「うん! 無傷だよ!」


 元気にVサインで答えてくれるカエデが凄く可愛くて撫でてやりたい衝動に駆られるが、今は人前なので我慢だ。

 カエデに渡している魔法袋は小であまり大きくないので、一旦中身のウルフを俺のストレージの中へ移動させることにした。


「ふん、糞ガキがそんな魔法使えるとはな」


 中身を移動させている最中、いつの間にか俺達の前にスカルがやってきていた。


「……何ですか?」

「別に。糞は糞なりに役に立つ事があるんだなと思ってな。まぁ、糞には変わりないけどなぁ!」


 クッソ胸糞悪い言い方をしてくるなぁ、殴り飛ばしてやりたい。


「おいやめろ! スカル!」

「なんて事を言うのよ!」

「ハッ、うるせぇなぁ! はぁー糞と一緒に居たら臭くなっちまう、先に行くぜ」

「おい! スカル!」


 奴は調査隊達を追い越して先頭に立った。


「お前達に任せてたらいつ終わるかわかったもんじゃねぇ! 俺1人でやってやらぁ! 黙って見とけ!」


 そう言って、森の奥地へと走り去ってしまった。


「アイツ……勝手な真似を」


 ギルマスが怒りに震えていたが、追い掛けはしなかった。


「勝手な行動すればいつかは痛い目にあう、お前達はアイツみたいになるんじゃないぞ」


 ギルマスの声に全員が頷く、全員スカルの事は気に入らないようだ。


「ごめんなさい、ウチの仲間が……」

「気にすんな。奴だけが問題児なのは全員分かってるさ」


 ミラさんが頭を下げて謝るが、ギルマス含め誰も咎めようとする者はいなかった。


 順調に調査は進んで行き、原因不明で増えたスライムを主に、ウルフやベアードという熊の魔物等とも対峙しては討伐を繰り返していた。


「そろそろ奥地だ、気ぃ引き締めろよ!」


 ギルマスの掛け声と共に全員が気を引き締め直し、慎重に先へと進んでいく。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

「!?」


 急に人の叫び声が聞こえ、全員武器を構えて警戒を強めた。

 今の叫び声に聞き覚えがある……勝手に先へ行ってしまった奴の声だ。


「っ、来るぞ!」


 叫び声が聞こえた先を見ると、何かが木をなぎ倒しながら近付いて来ていた。


「ス、ストームキャットだ!」


 1番前にいた冒険者が魔物の名を叫ぶ。

 その姿は白色で猫の姿をしていたのだが……全身で3mはあるのでは? って程に大きい体格をしていた。

 そして、その身体の周りに風が渦巻くように発生させていた。


 ギルマスは素早く全員へ指示を出す。


「全員、防御体制! 脅威度Bランクの魔物だ!」


 Bランクの脅威度と言えば、カエデの村を襲ったドラゴンが最低でもB以上の魔物だ。

 このテラー大森林にはDランク以上の魔物は居ないはずだが……なぜここに?

 見た目はかなりでかい猫なのだが、威圧感が凄い。ゴブリンやスライム程度では緊張しなかったが、今回ばかりは緊張している。撫でてみたいとか言っている場合じゃないと身体が警告を発している。

 ストームキャットの身体に纏っていた風が活性化しているように見えた瞬間、ジルさんが叫んだ。


「コウガ! カエデ! 俺の後ろに隠れろ! でかいのが来るぞ!」


 その声を聞いて、すかさずジルさんの後ろへと身を隠した。


「ロックマウンテン!」


 拳を地面に叩きつけるとでかい山のような壁が出来上がる。


「魔力を吸い取る盾となれ……マジックシールド」


 ミラさんも防御魔法を唱えて身を護る。

 その瞬間、ストームキャットより風の刃が多数発せられ、周りの木々をズタズタに切り刻んでいく。

 ロックマウンテンが風の刃により切り刻まれるが、壊れることなく持ち堪えた。

 ほとんどの冒険者は何かしらで身を護ったが、何人かは防御方法を持っていなかったようで負傷者が出た。


「怪我人は下がって回復を! 無事な者はタンクを筆頭に前へ!」


 的確な指示で冒険者を動かすギルマス。


「こんなのまともに食らったらただじゃすまないぞ……Fランクの俺達じゃ尚更だ」


 周りの木々はボロボロに引き裂かれており、威力はこれを見ただけて想像出来る。まともに当たったりすれば重傷間違いないだろう。


「奴は一度魔法を使えば少しの間は魔法を使わない。消耗した体力に比例して魔力が貯まっていき、溜まれば再度魔法を放つんだ。それにしても、前に戦ったストームキャットより凶暴な気がするのだが……ミラ、どう思う?」

「うーん、もしかして寝起きを襲われて暴れているんじゃない? もしかしたら、あのバカが起こしたんでしょうねぇ……」


 身体が傷だらけで気絶しているスカルをミラさんが指さしていた。

 アイツ……とんでもない事をしやがるな。


「コウガ、カエデ。ストームキャットは自身が発生させる風によって近付く敵を切り刻む性質がある。むやみに近付くなよ」

「「はい!」」


 近接攻撃が難しいとなると、カエデは攻撃に参加するのは難しい。

 仕方ないので、俺達はジルさんの後ろからストームキャットに対峙する。


 そんな中、俺達の後ろから大きな魔法が放たれた。


「……暴風よ、吹き荒れろ。そして切り刻め! トルネード!」


 ミラさんが発動した魔法により発生した竜巻がストームキャットを襲う。


「にっ!」


 ダメージは入っているようだが、周りに発生したトルネードをストームキャットは自前の爪で切り裂いて脱出した。


「そう簡単にはいかないわねぇ……次! 雷よ……来たれ! ライトニング……ストライク!」


 手のひらより雷が発生し、投げつけると稲妻のような軌道を描き敵にヒットした。


「にぃぃっ! にゃっ!」


 ダメージを喰らいながらも木々の地形を生かし飛び跳ねながら移動し、最前線に居た冒険者へ長い爪で引き裂こうとするが、素早く移動していたジルによって盾で防がれる。

 タンクだと思えないような素早さを披露するジルさんにびっくりしつつも、俺はストームキャットの動向に警戒を続けた。ジルさんが離れた際は俺のアイスウォールが防御の要になるんでな。


 周りのPTも魔法を放ちダメージを与えていくが、周りに発生させている風で威力を軽減させているようで有効打になっていなさそうだった。

 ストームキャットは前に居る冒険者にダケが向いているので、隙あらば俺も攻撃に参加する事に。


「ブリザード!」


 吹雪がストームキャットを襲う。吹雪による影響か、ストームキャットの動きが少し鈍る。

 そして発生させていた風も一時的に弱まった事にギルマスが気付く。


「風が鈍ったぞ! 前衛! 一斉に叩け!」


 ギルマスの一声により、一斉に近接系冒険者達がストームキャットへと斬り掛かる。

 前衛達の活躍でダメージを蓄積させていくが、ストームキャットもタダではやられんと反撃を強め、怪我人もどんどんと増えていく。

 まだ風の発生は殆どないが、アレが復活したらまた魔法で弱らせる必要がある。中々に厄介だ。


「ご主人様、私も行きたい……」

「駄目だ、接近戦は危険すぎる」

「でも! みんなが傷付いていくのを黙って見てるだけなんて、出来ないよ……」


 ペタンと耳が倒れ、何も出来ていない自分に悔しさを覚えているようだった。


「……敵の攻撃は見切れそうか?」

「うん、しっかり目で追えるし避けられる」


 確かにカエデは良い動体視力をしている。

 今まで相手にしてきたのは弱い魔物だとはいえ、普段の戦いでダメージを食らう様子は見た事ない。

 ならば、信じてみようか。


「……分かった。ただ、無理は絶対にしないこと! いいな?」

「わかった、ご主人様!」

「カエデちゃん、もし傷付いても私が回復魔法で治してあげる。コウガくんを守るのよ」

「はい!」


 カエデがストームキャットに向かって駆けて行く。


「お、おい!」


 グラマスが声を掛けるが聞こえなかったようだ。


「仕方ないか……今は戦力がほしい。ミラリアが許したのならいいだろう」


 ミラさんはグラマスからの評価が高いみたいだ、気を失っている奴とは大違いだな。

 カエデは走ってる間に拳へ力を込めつつ、ストームキャットに飛び掛かるようにジャンプする。

 その時、後方から援護魔法の援護も入る。


「力よ……かの者に! シャープネス!」


 カエデのSTRが短時間UPする。バフを貰ったカエデは更に力を拳に込めて殴りつける。


「ぎゃんっ!」


 ストームキャットがよろめくが倒れない。ストームキャットの反撃で爪をカエデに向かって振り落とすが、ギリギリバックステップで回避した。


「あっぶない……っと」


 ストームキャットより連続で爪引っ掻きが繰り出され、たまにスレスレになる時もあるがひらりと躱していく。


「ずっと避け続けるのは厳しいね……なら!」


 カエデが振り落とされた爪を避けた瞬間にストームキャットの顎にアッパーを喰らわせる。


「ぐにっ!」


 ストームキャットが仰け反って少し後方に下がる。シャープネスのおかげでダメージがそこそこ入っているようだ。

 他の冒険者達もカエデに続いてダメージを入れていき、戦闘はこちら側が優勢で進められている。


「シャープネスが切れるギリギリまで、叩き続ける!」


 更なる追撃をしようとした瞬間、負傷を負い体力を消耗したストームキャットがまたしても風の刃が身体を包み込む。


「カエデ! 下がれ!」

「っ!」


 俺の声を聞いたカエデは思いっきりバックステップするが、俺達の位置までまだ少し距離があった。

 カエデは間に合わないと思ったのか、篭手を前にして腕をクロスにして防御の形を取る。

 俺もすかさずカエデの前にアイスウォールを張ろうとしたものの、ストームキャットの攻撃の方が速かった。

 風の刃を周辺へ解き放ち、刃がカエデや近くに居た冒険者達を襲った。


「きゃぁぁぁぁぁぁ!」


 カエデの身体が風の刃により切り刻まれながら吹き飛ばされ、木に叩きつけられた。


「ガァッ……」


 木に身体を叩きつけられた際、口から血が吐き出される。


「か、カエデぇぇぇぇぇぇぇっ!」


 吐血しながら倒れたカエデに、俺は顔面蒼白で駆け寄るのだった。

ご覧頂きありがとうございます。


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