13話 変身
俺はカエデから夢の話を聞いて抱き合っている最中、急に脳内でアナウンスが鳴り響いた。
「「えっ!?」」
同時に声を出して驚いた拍子にカエデと目が合ってしまった、抱き合っていた為に顔が近い。
「あっ、えっと……ご主人様? 何かあった……?」
「い、いや……先にカエデからでいいよ」
「えっと……加護を手に入れた、みたい?」
「え、加護?」
「うん、託された想いっていう加護みたい。ステータス見せるから鑑定してくれないかな?」
「分かった」
カエデが俺にステータスを見られるようにしてくれたので鑑定してみる。
託された想い【魂の共鳴と強い想いが産んだユニーク加護、全ステータス常時小UP】
「託された想い……か。さっきの夢の話といい、前世でよく遊んでいたかえでと今一緒にいるカエデとは、何かしらの魂の繋がりみたいなものがあるのかもしれないな」
「そうかもしれないね。あの子の想いはいっぱい受け取った……あの子の分まで、いっぱい想いを叶えてあげるんだから! もちろん、自分の為にもね」
カエデが自分の胸に手を置き、夢で沢山貰った想いというものを感じ取っている。
頭を優しく撫でてあげると満面の笑みで笑い返してくれて、俺も気持ちが安らぐ気分だった。
「次は俺だな」
「ご主人様は何が起きたの? またスキル増えた?」
「実は、?になっていたスキルが分かるようになったんだ」
「えっ、あのスキルが!?」
カエデが驚いた顔をさせながら俺に詰め寄ってきた、顔が近い。
「取り敢えずスキルを鑑定してみるぞ、カエデも見れるようにしたからみてくれ」
変身【絆を紡いだ相手の種族へと変身する事が出来る(変身した種族の特徴が自分の身体に反映される)】
「「っ!」」
俺とカエデはまた顔を見合わせてしまった、顔が近い。
「ご主人様! 変身だって変身!」
「あ、あぁ変身だな! ということは、俺も狼人族に姿を変えられるって事だよな!?」
お互い興奮して忘れてしまっているが、ずっと抱き合ったままである。
「ねぇ! 変身してみてよ!」
「おう、ならちょっと離れてくれるか?」
カエデが抱き合った状態から離れてしまう。抱き心地良かっただけに少し残念だが、今は変身を試さないとな!
「変身!」
身体が光に包まれて解き放たれると、カエデと同じ狼耳と尻尾が俺についていた。
「「っ!!!」」
カエデが目をキラキラと光らせ、こっちに駆け寄ってくる。
「ご主人様ご主人様! 狼人族になった感想は!?」
「もふもふきたぁぁぁぁぁぁぁぁ! 最っ高だ!!」
まさか自分がもふもふになれるなんて、夢みたいだ! 試しに尻尾を動かしてみる。
ふぁさっ! ふぁさっ!
ふあぁぁぁぁぁぁ……憧れの尻尾だぁ……!
「ねぇご主人様。ギルドに集まるまでまだ少し時間あるし、ご主人様にも毛繕いしてあげたいんだけど……いいかな?」
「いいぞ、やってくれ。される側の気持ち良さも味わってみたい」
「あぁでも、私は別に器用って訳じゃないから期待外れになるかも……」
「それでもいいから、やってみてくれ」
カエデに櫛を手渡し、俺の尻尾を手に取って櫛を入れて梳いていく。
「ふおぉぉ……これは斬新な感覚」
「どう、ご主人様? 気持ちいい?」
「あぁ、このゾクゾクする感じがたまらないな」
スーッ、スーッっとゆっくりと優しく梳いてくれる。カエデ自身も自分で尻尾を梳いていたと思うから、手入れも慣れたものなのだろう。
「ふおぉ……ハマる気持ちがよく分かる……」
「分かってくれて嬉しい! はい、終わり」
「ありがとうカエデ、気持ちよかった。お礼に今日寝る前も梳いてあげよう」
「いいの!?」
「勿論だとも。さぁ、そろそろ朝ご飯食べてギルド行こうか」
「うん、ご主人様!」
ご飯へ向かう前に変身は解いておいた、昨日まで人族だった人がケモミミ生やしてたらおかしいもんな。
朝食を頂いて食べ終わった頃には丁度時間が迫ってきていたので、急いでギルドへと向かった。
ギルド内に入ると11名程の人数が1ヶ所に集まっていたのだが、まだ集まるのだろうか?
「お、時間通り来たな」
ギルドマスターが執務室から出てきた、レイアさんも一緒だ。
「3PTの計11名と報告者1組の2名。これで全員ですね」
「よし、皆! 詳細は依頼書にも書いているから分かっていると思うが、念の為説明しておくぞ」
事細かに状況を説明した中で、今回はギルドマスターも指揮及び戦力として付いてくるとも言っていた。
ギルドマスターがギルドを空けていいものなのかと思ったが、本人が行くと言っているんだし大丈夫だろうと勝手に納得する。
皆はしっかりと話を聞いていたのだが……1人の男が急に声を上げた。
「チッ、めんどくせぇな! 見つけた奴がやりゃ良いものを、最近の奴らは情ねぇなぁ! しかもお守りまでしなきゃならんってのが気に食わねぇ!」
「おい、やめろ。冒険者に成り立ての子達に無茶はさせられないだろう、そこは先輩である俺達が支えるべきだ」
「そうよ! ちょっとは後輩の為にも力になってあげなさいよ! このクズスカル!」
「おい! クズ言うなゴラァ!」
1人の暴言で始まり、3人が言い合いを始めてしまった。
レイアさん曰く、あの3名はPTを組んでいるBランク冒険者チームでクローゼスって名前のPTだそうだ。
リーダーの人族スカルが結構難アリのようなのだが、戦闘は強いらしい。俺達を庇ってくれた男の人が熊人族のジル、女の人が人族のミラリアだと教えてくれた。
ジルさんは熊人族なだけあって身体がごつくて身長も高く力も強そうだ。ミラリアさんは華奢な体型で身長も小さめだが、他の人に比べて何か雰囲気が違うように思えた。
「おいスカル、この依頼を受けたからにはしっかり仕事しろよ?」
「ミラリアが勝手に受けやがっただけだ! チッ、俺は誰にも手ぇ貸さねぇからな!」
椅子にドカッと座り、そっぽを向くスカル。
ギルマスがやれやれと怒りを通り越して呆れていた。腕が立つが故にどう扱うかで困ってるって所か……。
そんな中、ミラリアさんとジルさんがこちらに歩いてきた。
「ごめんね2人共。あんなクズなんてほっといていいから! で、君がコウガくんよね? 隣の彼女は?」
「私はカエデです、庇ってくれてありがとうございます!」
「いいのいいの! 私は魔法使いのミラリア、ミラって呼んで! こっちの熊族がジル、戦士でタンクの役割を担ってくれるわ。もし困った事あれば私かジルに声掛けて! 手助けしてあげるからね!」
「あぁ、もし何かあっても俺達が守ってやる。安心してついて来るといい」
「「ありがとうございます!」」
ミラさんとジルさんは優しそうな人で安心した。
だが、こんな良い人そうな人達が何故スカルって人とPT組んでるんだろうか? あれだけ上から見てくる人と組むのはPTとしてイメージが悪くなるのになぁ。
「顔合わせも済んだし、そろそろ出発するぞ!」
「「「「おー!」」」」
「チッ……」
スカルは舌打ちをつきながらも重い腰を上げるかのように立ち上がって、集団で移動する俺達の最後尾から渋々付いてくるのだった。
ギルドから出て、トライデントの門を通り過ぎる。
スカルも何だかんだ言いながら最後尾で付いて来ているのだが……あんな姿を見る度に思ってしまう、なんでミラさんとジルさんはこんなヤバい人とPTを組んでいるんだろうかと。
「ジルさん、ちょっといいですか?」
「どうした?」
「何故、あのスカルさんって人と共に冒険者を?」
「……やはり気になるか」
「はい。迷惑じゃなければお聞きしても?」
「うん? 何の話ー?」
俺とジルさんの会話が気になったのか、ミラさんも会話に参戦。
ジルさんは少し考えた後、口を開いた。
「ミラ、コウガがスカルと何故一緒にいるか聞いてきているが、どうする?」
「んー、話してもいいんじゃない? 別に隠してる訳でもないし」
「そうだな。うむ、話そうか。アイツは最後尾だから、ここの会話は聞こえんだろう」
俺達は最前列にギルドマスターがいてその後ろを歩いているのだが、スカルはずっと最後尾から少し離れて歩いていた。
「俺達は、実のところ幼馴染なんだ」
「幼馴染、ですか」
「そうよー。悪ガキだったスカルが冒険者になるって言って聞かなくてねぇ。アイツ、あんな性格だから1人には出来ないと思って私とジルが仕方なく付き添ってるのよ」
手を広げてやれやれポーズするミラさん、ジルさんが頭に手を当てて溜息をついている。
「俺達も冒険者になる事自体は反対ではない。だが、あれだけスカルの性格悪いとな……頭が痛くなる」
「そうよねぇ……ほんと、どうにかならないかしら?」
スカルのようなああいう奴は、何か大きな問題でも起こして粛清させない限り止まらない気がする。
かといって、その大きな問題を起こすのは2人にも飛び火がいきそうで怖いんだよなぁ……。
ほんと、どうにかならんもんかね?
そんなこんな考えながらも俺達はテラー大森林へと集団で向かって行き、ようやく入口までやってきたのだった。
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