Prolog
その出会いは、あまりにも鮮烈で目の前の光景は一つの絵画のようだった。
「あ……あ」
「ん?なんじゃお主ここは、
人が来るとこでは無かろうに」
「あ…あの貴方様は、
人間ではないのですか?」
「人間?ハッ我が
人間負勢に間違われるとはのう……」
「小娘!!」
「ひゃい!?」
「この血だまりを見て尚我を
人間と申すか?」
そう笑う男は、妖艶で夜の月の光に照らされた人間……もとい狐男は、
バケモノと言うには、表現が適切過ぎる。
「あのぅ……」
「なんだ?命乞いか?」
「違います」
「あたしを家に帰してくれますか?」
「妖怪に助けを求めるか?」
うぅむ確かにそうですけど事実妖怪だろうと言葉は、通じる訳ですし。
そうあたしは、唸り頭を抱えるただ散歩してただけなのに……殺人現場を目の前で見てしかも命乞いを問われるとは、
「まぁ良かろう」
「出口は、そこの茂みだ」
「あら対応してくださいますか?」
「フンっ神の気まぐれよの」
「我の気が変わらぬうちに去る事だ」
「はい!!それではまた!!」
「……は?」
あたしは、狐男が差し示した茂みに
飛び込み。
また来たいなと思った。恐らく一目惚れというやつだ。
(また会えたらいいですねぇ)
(人外って初めて見たかも……)
それからあたしと真白の逢瀬が始まった。
最初の頃真白は、『人間如きが我に会いに来るなど無礼千番……』とわなわなしてたけど3回目には、慣れていたようで
「またお主か……」
「はいあたしよ」
「毎日毎日お主は、暇なのか?」
「真白以外に話す人なんてあたしにいないもの」
「家族は、どうした?」
「死んだわよ」
「……」
「あら心配してくれるの?」
「黙れ人間我は、心配などしてない」
『図に乗るな』と
デコピンを喰らわされた。痛い
「もう慣れているもの
可哀想に見られるのは」
「……」
「死因は?」
「気になる?」
「……妖怪に食べられたの」
「…………」
「それもあたしが寺子屋
から帰った……時10歳ね」
「お前は、気が狂っているのか?」
あ……
妖怪の癖に人間みたいな表情するんだ。
ん〜〜と態とらしく伸びをして
背中を預ける。
「これ見て」
「?」
真白の肩越しに右顳顬近くの髪束を触らせる真白みたいな白い脱色している髪。
「気味悪いでしょ……」
「別にフツーだ」
「ウソ」
「我の尻尾と一緒だな」
「くすぐったい……」
手櫛で髪を梳く。
理由は、聞かない彼は、村のみんなと違いこの生まれつきの脱色した色素のない髪を見て気味が悪い。気持ち悪い血縁である叔母ですら奇異の対象として見られ召使いの様に扱われてきた。
瞬間髪を掴まれぐんと身体が仰け反る。
「馬鹿な奴よの」
「容易に妖に近付くとどうなるか……」
『それが身に沁みて分かるのは、お主が一番人生でよく分かってる筈よの……』
瘴気の中薄れゆく意識の中あたしは、最期の瞬間に呟いた。
「馬鹿な人……命の大切さを説くなんて」
「世捨て人には、……救いでしかないわ」
貴方が妖怪じゃなかったら、あたしが
あたしじゃ無かったら
貴方は、好きになってくれた?




