1/7
素晴らしい運をお持ちですね
うだるような暑さの中を1人の男が歩いている。
男の名は高山といい、近くの大学の1年生だ。
前期末のテストを終え、大学生活初めての夏休みを前に足取りは軽やかだ。
(確り勉強したし、単位はバッチリのはず!
昨日は遅くまで勉強したし、早く帰ってゆっくりしよう)
休みをどう過ごそうか考えながら、一人暮らしのアパートの前まで来たとき高山は足を止めた。
高山の部屋の前に見知らぬ人が立っている。
真夏にも関わらずきっちりと黒いスーツを着込んだその男は、直立不動で扉を見つめていた。
(何だ、、?早く家に帰りたいのに!)
少し恐怖心もあったが、家に帰りたい気持ちが勝り、高山は男に声をかけた。
「うちに何かご用ですか?」
男はこちらを振り向き、
「あなた素晴らしい運をお持ちですね」
と言った。