7話 毅然が大事!!
「別に友達なら食事くらいは私が作ったり、一緒に食べたりします。」
「でも、普通は家まで行かないんじゃないのかな。」
………。
「私と赤井さんは先輩と後輩みたいな感じなので食事くらい一緒に食べますよ。たとえそれがどちらかの家でもです。それが私には普通です。」
「でも、僕には普通とは思えないんだよ。それに司その後、そいつん家泊まったよね。これが恋人か嫁と言わずして何と言うんだい?」
『別に何とも言わないとおもいますが…』と心の中で思った。
奴には冗談でも今は言えない。
「しかも司そいつのパジャマを着ているしね。」
………。
「別に私も赤井さんもお互いに好意がないから私も赤井さん家に泊まってるんです。それにこのパジャマも赤井さんが私の服が皺になることを気にして親切に貸してくれたんです。私たちにやましいことなんかこれっぽっちもありませんから。だから恋人なんてありえません。」
手で親指と人差し指で1センチくらいの間を作って奴の前に出した。
「なんか、余計にむかつくね。」
「司はアイツの事よく分かっているように言うんだね。ムカつくほど。でも例え、司に好意がなくてもアイツは分からないじゃないか。それとも司はアイツからはっきりと聞いたわけ?好意はないって。」
………。
「はっきりとは聞いたわけじゃないですけど、でも恋人になるとかは有り得ないとおもうんです。そんな雰囲気にもなりませんから。それに考えてみてください、赤井さんは抱かれたい男No.1なんですよ、そんな人が私なんか相手にしませんよ。」
「そんなことは分からないじゃないか。司は無防備過ぎる。普通は好意がなくても泊まったりはしないよ。男と女なんだから間違いが起こってからじゃ遅いじゃないか。」
………。
「間違いって………お互い意識していないのに間違いなんか起こるわけないじゃないですか。馬鹿馬鹿しい。」
私は奴に呆れた視線を送る。
奴の妄想をこちらにぶつけないでほしい。
そんな私が気にしていないことで奴の妄想の餌食にされ、わけもわからず責められるのはごめんだ。
というか………なぜ私が奴に責められなければならないのか!!
寧ろ私が責めるべきか?
奴に………?………今んとこ無理ですね。
というかさっきより空気がどんどん重い感じなんですけど????
酸欠になったらどうしてくれるんだ!!
(まあ、奴にはそんなとこ死んでも見せませんけどね!!絶対に!!この状況でも人工呼吸と称して唇を奪われそうだ………ストーカーなだけに。)
奴の周りも………………真っ黒ですね。
というかこの距離もそろそろ離れてほしいよ!!
なんかあの真っ黒にあたると即死しそうなんですけど!!!酸欠云々前に!!
治療後から私と奴の距離は人一人半しか開いてないのだった。
近く過ぎるでしょ!
「本当、司は分かってないね。男なんて別に意識した女じゃなくても抱けるんだよ。それに僕がむかついてるのは司がアイツん家に行ったこと自体だから。」
「なんであなたにそんなこと言われなきゃならないんですか!私たち別に付き合ってるとかじゃないんですよ!しかも私があなたの事を知ったの今日なんですよ!数時間前ですよ!殆ど他人ですよ!」
私はむかついた。
何で奴にそこまで言われなきゃならないのか!?
別に私の貞操云々は奴には関係ないことだ。
寧ろ奴は殆ど他人どころか全くの他人である。
そんな他人にどうこう言われたくない。
「だから何?」
「はっ?」
「だからなんなのって言ってるんだよ。たとえ僕と司が他人同士でも僕が君、司の事を気に入ったから司はすでに僕のものなんだよ。司の意思は関係なくね。だから僕には司を責める権利がある。」
私は呆然としてしまった。
全くもって奴のいっていることが理解が出来ない。
なぜ急に私が奴のものになっているのか?
なった覚えは一切ない。
………とうとう妄想が極地まで達してしまったのだろうか?
「………私はあなたのものになった覚えもありませんし、これからなる予定も一切ありませんから。あなたが妄想の中で私を恋人や嫁だとか想っていたとしてもそれは現実ではありませんのでそれを私にぶつけられても困ります。」
私は冷静に奴に言ってやった。
もちろん私の顔も真顔である。
女優を目指してよかったと思えた瞬間だった。
私が奴に対して毅然と言ったのが良かったのか私の周りの空気が少し改善されたような気がする。
奴の周りの空気も清浄を取り戻しつつあった。