6話 重い空気到来
「僕自身も人間の敵と思われてるかもしれにけどさ~、僕は君のことが好きだし♪君とは両想いになる予定だし♪全く問題ないよね~♪他に僕に対しての質問が無いようなら君のことを教えてよ♪」
………
「何が知りたいんです?」
「う~ん、まず名前を教えてよ♪」
「月野司といいます」
「もちろん性別は女の子だから~♪年は?」
「16歳です」
「うわぁ~、僕と1000歳も違うんだね~。でも大丈夫だよ♪愛があれば年の差なんて関係ないよ~♪」
………おいっ!
関係あるだろうが!!
1000歳も違ったら立派な犯罪だよ!!ロリコンだよ!!
また、犯罪歴増えてるよ!!もうこれ以上増やさない努力をしなよ!!
それになにが『愛があれば』だ。これっぽっちもないっつーの!!
ましてや『愛があれば』はこっちのセリフでしょうが!!
明らかに私のほうが若いんだから!!
奴は私よりも1000歳も年上なのだ例え見た目が若くても私が好きになる確率は1%を切っている。
なんてたって奴は私から見たら『おじいちゃん』なのだ!!しかも『ちょー』が付くほどに。
「あと~♪やっぱり自己紹介の醍醐味の好きな人は?もちろん僕だよね♪」
………もしかして耄碌してきたのか?…痴呆!?
私は奴に対して失礼極まりないことを考える。今までの奴の行いを省みれば致し方のない事だと言えよう。私にはその権利がある。
「好きな人はいません」
私の周りの温度が下がったような気がした。
「………ふ~ん…。そうなんだ。…もうひとつ質問いいかな。司はもしかして結婚してる?」
奴の周りの空気がどす黒くなったような気がするのは私の気のせいだろうか…
奴から笑みがなくなったような気がするのは私の気のせいだろうか…
奴は今までと同じく顔は笑ってはいたが私には笑っている風には見えない。
目が笑っていないのだ。
奴の冷たく見える目が私を真っ直ぐ見ていた。
私は奴が突然空気を変えたために奴が『司』と呼び捨てにしたことには気づかなかった。
「………結婚した覚えはありませんが?」
「………」
私は無言のまま私を直視している奴から逃げ出したい衝動に駆られた。
蛇ににらまれた蛙状態だ。
なぜ突然奴は怒ったのか?どうかはわからないが奴が空気を重くした理由はわからなかった。
というか解りようがない!?
解るほうがどうかしている。
そしてなぜ『結婚してる』なのか?
突然の質問に寧ろこちらから『何故この質問!?』と奴の空気が重くなければ問いたいところだった。
寧ろ今までの奴のように理解不能だがしゃべってくれたほうがまだこの無言の直視よりはマシだ。
『なにかしゃべってほしい』
それが今現在の私の心の叫びだった。
もちろん、私からは奴の空気が重苦し過ぎて何も言えないからだ。
身動ぎするのも憚れるほどに。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人とも無言のまま5分経過してしまった・・・
奴も私もお互いを直視していた。若干私は引き気味ではあるが・・・。
奴のほうから話しかけてくれなければ私から話しようがない。
すでに私は奴に結婚していないと答えているのだから。
「………」
「………」
「………」
「………司は恋人いるんでしょ。」
奴から話しかけてきてくれたと思ったら今度は恋人ですか
………本当に何故この質問なんだ。
奴はさっき、私が好きな人はいないといったのを聞いていなかったのだろうか?
普通に奴は私と同じで話をスルーしてるんじゃないだろうな。
まぁ、私もなのでお互い様だが奴は私に惚れているんだろう!
だったら私の話は逐一記憶に残しとけ!
私だったらそうするよ!!
好意を持った相手のことならひたすら言動を記憶しようとするんじゃないの!無意識にさっ!!
それともアンタは私に好意を寄せているのは実際は嘘だったのか!
『お気に入り』と言ったのは言葉だけの薄っぺらいものだったのか!
私は奴の今までの言動が私の思った通りの結果かもと思い始めていた。
「好きな人もいないのに恋人もいませんよ」
「………嘘つき。」
………。
「はぁ!?誰が嘘つきなんですか!?誰も嘘なんかついていませんよ!?私、今売り出し真っ只中の女優なんですよ!恋人なんかいるわけないじゃないですか!スキャンダルは御法度ですよ!寧ろこっちから願い下げですよ!」
「やっぱり、司は嘘つきだね。」
………ふざけんなよ。このやろう!
何が『嘘つき』なんだ!
誰も嘘なんかついてないつーの!
あんた、人を信じるつーこともしようよ!悪魔だけどさ!!本当にあんたが私に好意を1ミリも持っていないの、これじゃあ確定だよ!
まあ、私にはその方がいいけどね!
でも、嘘つき呼ばわりは納得出来ないよ!悪魔に誓ってもいいってくらいに嘘はついてないからね!
「どうして、嘘つきなんですか!!私、嘘なんかついていませんよ!」
「………ついているじゃないか。司はやっぱり嘘つきだね。僕知ってるんだからね。司、此処に僕に連れて来られる前どこに居たか覚えてる?」
奴の顔から笑顔すら消え目に見えて怒っていた。声すらも今までと違い地の底から響くような悪魔のような声質になった。というか奴は悪魔だった。
私は何故奴がそんなに怒っているのかが解らなかった。
「赤井さん家ですが?」
「ふ~ん…、抱かれたい男No.1だよね。彼。」
………。
「…そうですね…」
「そんな奴の家に君は行ったんだよね。」
………。
「…いきましたが?」
「しかも、司が料理したものを2人して仲良く食べてたよね。」
………別に仲良くは食べていなかったと思いますが………。
普通ですよ。
それよりもあんた覗いてたのか!?
有り得ないくらいのストーカーぷりっですね。
悪魔の名が泣きますよ!寧ろ悪魔を崇拝してる人はボロ泣きだよ!!
責任取って悪魔を辞めちまえ!!
そして永久に私の前に現れるな!!
私は再び奴に対し有りっ丈の罵詈雑言を心の中で唱えた。