5話 不法侵入
「昨日は確か、雑誌を見ていたんだよね。その雑誌に抱かれたい男ランキングと恋人にしたい人ランキングなどのページがあってさ、暇つぶしで抱かれたい男No.1に会いに行こうと思いついたんだよ~。だってさ、会ってみたら写真と違うじゃんなんてよくある話だからね~、これは確認しないと~と思いついて、そいつがいる所に行ったんだよ♪現場についたら君がドラマの収録をしていてさ、本当に何気なく収録をみたら君がヒロイン役の子を裏から陰険に虐めていたでしょ♪役だと分かっていてもその時の君の悪魔っぷりに僕は唖然としたんだ♪もう表情がこの憎々しい雌豚、蛆虫、存在皆無!って言っていたね!憎悪そのものって感じだったよ~、その後の恍惚とした表情には僕も『ヤバい』って思ったよ♪次の友達に魅せた色気フェロモン顔に僕は『終わった』と想ったときには君に惚れてたんだよ~♪もう、初めの目的を忘れてね!寧ろ君しか見れなくなっちゃったよ♪」
奴のノロケ話などはどうでも良かった。
寧ろ何故あの場面で惚れる!?惚れてくれるな!!といいたい。
それよりも「………どうやって、テレビ局に入ったんですか?」
凄い疑問だった…。
仮にも女優、俳優、アイドル、歌手などが出入りしている場所なのだ。
私達ですら入るのに監査を何度も行うほど警備は万全なのだ。ましては追っかけなどが入り込めるわけがない。
何故奴は収録現場に入れたのだろうか?
仕事をしてなさそうだったが実はテレビ局の関係のスタッフなのだろうか?
「テレビ局のスタッフ、関係者でしょうか?」
「全然違うよ~♪僕がテレビ局に入れたのは僕が行きたいと思ったからだよ~♪」
………お偉いさんか?
「もしかして社長さん関係の方でしょうか?」
「全然、違うよう♪関係でいったら無関係だよ~♪」
…怪しい…。
有り得ない、あってはならない事だけど、やっぱり奴は不法侵入したのか!?
警備の人ちゃんとしっかり仕事しなさいよ!!
私たちにも厳重に検査するくせになにやってんのよ!!
おかげで私はこんな目にあってるじゃない!!
帰ったら覚えていなさいよ!!
私はこんな目にあっているのを今度は警備員せいにした。
もちろん八つ当たりだ。
奴は不法侵入及びストーカー犯罪者だ…。罪の積み重ねだ…。どこまで重ねるつもりだよ!!
すでにもういいやという気持ちもあったが・・・一応確認しておく
「…もしかして勝手にテレビ局に入って来たんですか?警備はどうしました?」
「もちろん、勝手に入って来たよ~♪誰の許可がいるのかな~?別に要らないよ~ね~♪警備には特に止められなかったけどね~♪だって会ってないもん♪僕は自分家から直接此処に来たからね~。人間的に言うと瞬間移動だよ~♪」
(………警備の人に会ってなかったんかい!!・・・ごめん、警備員・・・。)
「………あなたは何者ですか…。」
私は森で奴に出会った時にこの質問をしてれば良かったと後になって後悔する事になる。そうすれば奴から逃げれていたかも知れないからだ。
*****
「僕?あ~そうだったね~僕達自己紹介がまだだったね♪迂闊だった。君のこと気になってからは君自身を見ていたから基本的な事に気づかなかったよ~♪ではまずは僕の名前からね♪僕はルシファ・デ・クラウンドといいます♪君はルーファって呼んでね~♪これは絶対だよ!!あと、性別は男だよ~♪年は~ー……1000歳くらい?永く生きているから途中から年を数えて無いんだよね~♪面倒くさいしね♪僕の自己紹介はこれでいいかな?あっ!?忘れてた!僕の好きな人は君だよ~♪今、興味があるのも君!一番これが大事な事だったね♪やっぱり自己紹介の要でしょ。好きな人のいる、いないは~♪」
………最後のはあえてスルーする。というか、1000歳て何!!
やっぱり人間じゃ無いのかよ!!
最後のどうでもいいものよりまずは人間かどうかを教えてよ!!
そこが一番重要でしょうが!!
「あなたは人間ですか?」
直接的すぎるとは思ったがまた、色々話されて本人にそんなつもりはなくてもはぐらかされても困る。
「人間じゃないよ~♪だって人間は瞬間移動なんかできないし、唾液で治療も出来ないでしょ♪実は僕は悪魔なんだ♪でも安心してね~僕は一番強いから。」
………悪魔って…そんなものに私惚れられたんですか!
悪魔っていったら負の感情しかなくダークで人間の天敵ですよね!
人を地獄に突き落とすのも世の中の悪意はすべて悪魔の仕業ですよね!
むしろ私の悪魔のイメージはそんな悪意の塊みたいな存在ですよ!
間違っても私は自分から呼んだおぼえもないですよ!
寧ろ悪魔崇拝者の所へ行けっていうんですよ!かなり居ると思いますよ悪魔崇拝者!
なのに何故テレビ局なんですか!しかもラブストーリーのドラマ収録ですよ!
悪魔にラブは必要無いでしょ!!
寧ろ嫌悪や悪意の対象じゃないのかよ!
私は悪魔について色々考えていたがあることに気がついた。
それは私のイメージと違っていたからかもしれないがたぶん他の人でも思うと思う。
「なんであなたは黒くないんですか?」
そう!これが悪魔についてのおかしいところ!
悪魔って言ったら色は黒!
これは全世界の人が悪魔に対してのイメージだと思う。
なのに奴は目は碧色・・・・悪魔なんだから赤か黒じゃないのかよ!しかも私のイメージしている色は赤は赤でも血の赤ね。其処は重要でしょ!黒だったら濁っている黒ね。歪んだ感じが悪魔って連想するし。
極めつけは何で悪魔なのに髪が銀色なんですか!?
其処はおかしいでしょ!
悪魔なんだったら黒でしょ!
絶対黒しか駄目でしょ!
寧ろ今から髪を変えて来い!…いや、切って来い!そして私はその切った髪でヴィッグを作ってやる。
これも今流行のエコだよ!私って地球にやさしいよ!
私はある意味現実逃避していた。
私の頭の中はすでにどんなヴィッグにするのか検討中だった。
奴が悪魔だってこともすっかり忘れていた。
もちろん私が奴に質問していたことも忘れている。
女優というのは自分の欲望に忠実なのだ。
例え私が新人女優であってもそこそこ売れてきたからにはそれなりの苦行はあった。
*****
ある番組の司会として出演したときその番組の司会はすでに決まっていたところ急遽ディレクターが私がいいと言い出して決まった時(私にはラッキーだった)降ろされた女優に楽屋に置いてあった服のポケットにミミズを3匹入れらた。もちろん私はミミズをポケットいっぱいにしてやり返してやった。その女優の悲鳴は廊下の隅々まで響き渡ったそうな。自業自得だ。
(ミミズは捕まえるのが大変そうだったから私はペットショップで買った)
やることは稚拙だったが他の嫌がらせが多くあれば塵も積もるというものだ。
まあ、その女優には倍にしてやり返してやったが。CMをとったり、レギュラー番組を横取りしたりとか。もちろん私が出たいと思った番組はやり返しじゃなくとも横取りをした。
女優を目指すと決めたときから人を踏み台にすることも決めていた。それに心苦しくなるようなら芸能界ではやっていけない。芸能界とはそういうところだった。
*****
ヴィッグをポニーテール型にしようかと爛々と思案していた私に奴が話しかけてきた。
「なんで黒なの?それって人間の僕たちに対するイメージなわけ?なんか暗いな~」
「………私たちの悪魔のイメージはやっぱり黒が基本なんです。生きてるものの敵なんです。悪魔って」
「ふ~ん。そうなんだ~。知らなかったな~♪僕たちにそんな概念は無いよ~♪皆色々なカラーかな♪其処は人間と変わらないんじゃない?人間も色々でしょ♪あっ!でも敵っていうのはあってるかもね~♪時々色々壊しちゃうしね~♪」
………。
何を壊すんですか?
………怖くて聞けなかった。