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29話 屋台のオヤジと探検②

まだまだ探検までが程遠いようです?・・

 



「それでお嬢ちゃんはどこを探検しようと思ったんだ?目的はあるのか?」


 屋台のオヤジは人好きのする笑顔で昨日と同じように話し掛けて来た。

 昨日も思ったが笑うと少しだけ若く見える。

 年齢を聞かなかったが私が思っているより若いのだろうか?

 そこまで考えて私はあることに気付いた。

 私達2人ともうっかりしていてお互いの自己紹介をしていなかった。おかげで色々と助けてくれている恩人の屋台のオヤジの名前すら知らなかった。

 私が一人でうんうん考えて屋台のオヤジに名前を聞くより早く、屋台のオヤジの方が先だった。


「そいやぁ、まだ名前も言ってなかったな。俺の名前はブラック・ホールだ。お嬢ちゃんの名前はなんて言うんだ?」


「………ブラック・ホール………?」


「………聞いたことあるか?」


「………一応。あります。」


 その時の私はなんとも言えない顔をしていたと思う。

 だって、名前が『ブラック・ホール』って………あり得んです。

 普通、自分の子供にブラック・ホールなんて名前をつけるか!?


 何でも吸収する黒い固まり。


 入ったら出られない危ない穴。


 宇宙にあるゴミ箱。


 それが私の中のブラック・ホール。


 そんな名前を付けた親の顔が見てみたいわっ!

 私は心の中でひとりツッコミつつ、屋台のオヤジもとい、ブラック・ホールさんに気になることを質問した。勿論、名前についてだ。


「ブラック・ホールさん。聞きたいことがあるのですが……ブラック・ホールというと空に在る、宇宙のブラック・ホールから名前を取ったんですか?ちなみに良ければ由来とかを教えて戴けると(面白そう)為になるのですが………」


「空に在る?宇宙?そんな物の名前は聞いたことはねえなぁ。お嬢ちゃん、空に在るのは星と太陽と月だけだ。お嬢ちゃんは素晴らしいくらいの想像力の持ち主だな。」


 エラいぞとまた、頭を撫でられた。私には何がエラいのかわかりません。


「俺の名前は祖父から取ったらしい。俺の祖父の名がブラックレン・ホールと言って、結構有名でな。このヴィルシュ国の騎士だったんだ。それにあやかるように俺のオヤジが付けたんだとよ。」


 ああ、だから『聞いたことあるか?』なんだ。

 おじいちゃんが有名人てわけだ。

 名前には納得した。


 ……が技術的に地球よりかなり遅れている世界だと昨日の町の様子から想像はしていた。

 だが私が思ってはいたより、技術の発展が遅いらしい。

 地球で云えば中世ヨーロッパ時代を想わせる服装と町並みの家々。

 ……哀しいかな。こちらの世界では空には月と星と太陽のみなわけだ。

 宇宙空間すら知らない世界じゃブラック・ホールは存在していない。

 ましては某猫型アニメに出てくるタイムマシーンなんてのは在るわけがない。

 未来系のそんな技術の欠片すら存在しているか怪しいこの世界では私を地球に帰せるなんて夢のまた夢だろう。

 あと、技術が発展へ向かうまでには千年は掛かるかも知れない。


 ………千年………奴は生きているだろうか?


 そして私も生きているのだろうか。



 だが……はっきり言って実際、そんなに待つつもりはさらさらない。

 奴が次に私の前に現れた時が奴の最後の灯火。

 もちろん、捕まえて、縛って、ボコボコの泣きを見せてやる。

 その過程で奴が例え死んでも特に問題ない。

 奴が死んだ暁には自動的に私は英雄だ。

 何てったって奴は悪魔だ。

 人間の天敵だ。

 それをボコボコにして殺しても喜ばれるこそすれ罵られる事は皆無だろう。


 ………なぜ、今まで考えつかなかった、私!!

 このなんて素晴らしい考えに!!

 奴が死ぬ事こそ世界のため、人のため、私のため!!

 一石二鳥どころか一石三鳥、四鳥ではないか!!

 ああ、神以外の誰かはまだ私を見捨てていなかったのか!!

 ありがとう!

 今なら世界の平和の為、平和賛美歌を世界へ向けて発信しようじゃないか!!

 勿論、私が歌ったっていい!!

 多少音痴だろうとそれは許して欲しい!!

 要は気持ちの問題だ!

 私は世界に言える!今この瞬間、この地上の誰よりも世界に沢山の感謝を表しているのはこの私だと!

 そんな私が歌うのだ。気持ちが入っていない筈はない!!

 むしろ溢れ出ているくらいだろう!



 私は一人で目指せ現実への妄想、願望、希望を夢見ていたらしい。

 目の前にいる屋台のオヤジの顔が今にも笑い出しそうになるのをこらえているのか、口元と目元が不自然なほど歪んでいた。

 肩まで震えている。

 明らかに笑いをこらえていた。

 少し顔が熱くなった。

 昨日から屋台のオヤジには変な所ばかり見られている気がする。

 私、これでも花の16歳なのに……。

 例え年が離れていようと異性は異性だ。

 なにが悲しくて異性の目の前で醜態を演じなければならない!!

 もっと、こう、何というか……16歳並みに青春やラブは無いんですか?

 むしろ、皆無に等しいですか!?


 再びの妄想の住人(引きこもり)となりつつあるまえに私にはやることがあった。



 それは------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------「我慢しなくていいですよ。どうぞお好きに笑ってやって下さい。」


 笑いを我慢している屋台のオヤジの我慢を取り除いてやることだった。


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