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19話 屋台のオヤジと私②

 


 屋台のオヤジは困惑しきった顔で「此処はヴィルシュ国南端の町。カナン町だ。」と教えてくれたが私には聞き覚えもなく「日本では?」と聞き返した。

 やはり屋台のオヤジは困惑しきった顔で「聞いた事のない国の名だな。でも、島国なんだろ?」と聞き返してきたので「そうです。島国です。」と応えた。

「それじゃあ、知らないのも無理ないな。お譲ちゃん、この国ヴィルシュ国と隣の国ガザイ国、更に海よりの国イヴィン国がこの世界の三大国として成り立ってんだ。周辺の小さな国や島々にも国はあるらしいがやっぱり三大国が主だからな。まあ、渡り商人とかに聞けば分かるだろうが、一番いいのはお譲ちゃん、両親に聞いてみろや。きっと、お嬢ちゃんが旅してきた過程でこの国に入ってきたんだろうからな。」

 屋台のオヤジは笑顔のまま、よしよしと私の頭を撫でた。


 私は屋台のオヤジが言った『ヴィルシュ』『イヴィン』『ガザイ』と言う国の名前を聞いたことがなく、再び「アメリカ大陸は知っていますか?」と聞いた。


「アメリカ大陸?どこの大陸だそりゃ?」


「地球上で最大に大きな国です。」


「そうか、そうか。お譲ちゃんの夢の国か何かか。お嬢ちゃんは将来本を書ける職業に就けるといいな。」


 再び屋台のオヤジは笑顔で私の頭をわしわしと撫でた。


 屋台のオヤジはジョーダンを言っている風にも見えず、『私はどこへ来てしまったのだろうか?』と屋台のオヤジに髪の毛をぐちゃぐちゃにされながら放心していた。


 屋台のオヤジは私の反応が無くなった事に気付いたのか「どうしたんだ?」と心配そうな顔で聞いてくれた。

 私は今後どうすればいいのかも分からず屋台のオヤジに「帰る家が無くなりました。」と呟いた。

 屋台の親父に「やっぱり迷子か?」と言われたが迷子のほうがどれだけ良かったことか。

 この私が居る世界は私が今まで居た地球では無いことが判明してしまった。

 私は日本には帰れないという事。

 つまり、仕事にも行けない。家にも帰れない。友人にも会えない。学校も卒業できない。という事が今判明した。

 そして、きっと、絶対に奴が私をこの世界に連れてきたのだ!!

 拉致して!!

 私は奴に対して再び怒りが込み上げてきた。


 そういえば奴は「そんなこと僕が許すと思ってるの?でも、たとえ司とアイツが恋人同士だとしても、もう関係ないけどね。」と言っていた。

 もしかして『もう関係ないけどね』とはもう会えないからと言う意味だったんじゃ………!

 更に奴との会話で「別に司が元の生活に戻りたいというなら司自信が決めれば良いんじゃない?僕は別に止めたりはしないよ?寧ろ出来ないから♪」の『寧ろ出来ないから♪』とは仕事出来ないから止められないという意味だったんじゃ!!

 私は次に奴に会ったときには3発、奴の鳩尾に拳を練りこむ事を固く決意した。


 決意を新たにしていた私に屋台のオヤジは再び心配顔で「お譲ちゃん、帰り道分かるか?」と聞いてきた。

 私に分かるはずもなく素直に「わかりません。」と答えた。

 屋台のオヤジは困ったという顔になったため、私は親切にしてくれた屋台のオヤジに迷惑を掛けていることに気がつき「大丈夫です。帰れます。」と嘘を吐きながら笑顔で席を立ち『どこへ帰ればいいんだか』と思いつつも屋台を出ようとしたところで屋台のオヤジに腕を掴まれた。


「お嬢ちゃん、小さいのに嘘は駄目だぞ。帰り方わかんねんだろ。待ってろ。今、店番を交代してくるから。そしたら一緒にお嬢ちゃんの両親を探しにいこうな。」


 屋台のオヤジの優しさと笑顔に私は目が潤んだ。

 屋台のオヤジは屋台の裏へ引っ込みすぐに屋台のオヤジと似た顔立ちの屋台のオヤジより年嵩の増した男と一緒に出てきた。

 兄弟だろうか?


「ちょくら店番よろしくな。このお嬢ちゃん迷子らしくてな。一緒に両親を探してくる。」


 屋台のオヤジは年嵩の男に言うといきなり私を抱き上げ肩に座らせた。

 私は巨人兵とシー○か。


「お!!お嬢ちゃん、裸足じゃねーか、靴はどうしたんだ?」


「始めっから履いてません。」


 屋台のオヤジは眉を下げ「悪いことを聞いちまったな。」とすまなそうに言ってきた。

 私は意味が分からず「???」と思っていると屋台のオヤジは歩き出した。


 後で分かったことだがヴィルシュ国には難民や孤児が多いらしく、難民の中には島国の中で貴族だった没落貴族もいるらしい。

 孤児はもちろんのこと没落貴族の難民もヴィルシュにいる難民と然程かわることがないほど貧困だ。

 靴を買う余裕も無い程の貧困。

 そのため靴を履いてない子供も多く存在するとの事。

 そういう子供達は初めから靴を履くことも出来ず裸足で1日を過ごしているそうだ。

 屋台のオヤジは私を没落貴族難民の子供と勘違いしたそうだ。


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