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18話 屋台のオヤジと私①

 


 さてどうしようか。


『①在るかもしれない橋を探す』だと更に時間が掛かるし無かった時のことを考えると更にやる気が出てこない。


『②人が来るのを待つ』を選択するとやっぱり森にいたときと一緒で誰にも合わずに何日間を過ごす羽目になりそうだ。水のみで。


 そうなると①を選んだほうが無難に見えるがでもここは『③泳ぐ』が正解のような気がする。

『③泳ぐ』を選択し、向こう側へ渡らなければの何も始まらないような気がするのだ。

 私は湖に近づいて中を覗き込んだが暗かったため深さまでは確認できなかった。


「う゛~ん。どうしよう~。冷たいかな?」


 湖に手を浸けると生暖かい。


「これなら行ける?」


 私はどちらかというと泳ぎは得意なほうだったが、この暗い中で湖を泳ぎたくないという思いもあり10分程悩んだ末、結局泳ぐことにした。


 さてと私はパジャマや下着を脱ぎ、水筒についていた紐で頭の上に括り付け、忍者スタイル?で手に水筒を持ち湖へ足を入れた。


 完全な裸体だったが年頃なのに私は気にしない。

 なんてたって、朝から会ったのは奴のみだったからである。人間にすらまだ会えていないのだ。

 今更湖の側で誰かに会える気すらしなかった。

 気にしたほうが馬鹿みたいじゃないか。

 という理由で私は裸で湖へ入っていった。


 湖の半分まで来たが私は泳ぐことなく進み、最後まで泳ぐことは無かった………。


 岸に上がり一言


「浅いのなら浅いって言っといて欲しかった!!」


 誰が言えるんだよと言うツッコミは横に置いといて、私はなんだかやりきれない感いっぱいでパジャマに袖を通した。



 カミ湖:最大深さ1メートル




 *****




 私はため息を多々に吐きながら(ため息の数だけ幸せが逃げていくと言う言葉は私には通用しない。すでに幸せな未来を私は持っていないからである。私はため息を吐きたいだけ吐けるのだ。)やっとの思いで辿り着いた建物、目の前に聳える防壁を見上げた。

 壁の中からは楽しそうな笑い声などが聞こえてくる。

 人がいることだけはわかった。

 だが、中に入ることすら叶わない今の私には酷ではないのだろうか?

 こんなに近くに人が居るにも関わらず会えないなんて。

 日本は何時から閉鎖国になったのか?

 それとも田舎だとこういう防壁は当たり前のところもあるのだろうか?

 それとも此処は実は人の家の敷地を囲う壁で中は人様の家なのだろうか?

 それだったら凄い金持ちだ。と思いながらも私は壁の周辺を歩いた。

 どこかにドアや穴が無いかを探して。




 *****




 30分ほど壁沿いに歩いた私の数歩先に子供が入れるくらいの穴を発見した。

 私は「おじゃまします」と壁穴の中へ入った。


 壁の内側には色々な屋台が引切り無しにでていた。


「お祭り!!」


 私は近くの美味しそうな肉の焼ける良い匂いのする屋台の暖簾をお金も持たずに潜った。


 中では頭にターバンらしき物を巻いた、青目、青い髭の『若い頃はさぞかしモテていただろう』と思わせる二枚目男前な屋台のオヤジが焼き鳥より3倍はありそうな肉の塊を串で炭焼きしていた。

 屋台に入ってきた私に気付き男は顔を上げ私を見ると驚いた顔をした。


「お譲ちゃん、見かけない顔だな。それに珍しい髪と目の色をしているな。ヴィルシュの出身ではないだろう。どこから来たんだ?イヴィン辺りか?」


 私は肉に釘付けのまま「東京」と応えた。


「トゥキョウ?そんな国聞いたことないな?かなり遠いところか?島国の名前か?」


 私には『島国』と言う単語しか耳に入らず肯いた。

 屋台のオヤジは「そうか、大変だったな。小さいのに偉いな。」と私が釘付けになっていた肉の塊を私に差し出してきた。

 これは食べてもいいのだろうか?と首を傾ける私に屋台のオヤジは「小さいのに遠慮をするな。今日は奢りだ。」と更に私に塊を差し出してきた。

 私は遠慮なく、「ありがとう。」と一言伝え、パクリと肉にかぶりついた。

「美味しい。」と私が呟くと屋台のオヤジは「そうだろ。そうだろ。」と笑顔で肯いていた。

 私が肉の塊をものの2分で平らげると屋台のオヤジは「お譲ちゃん、どんだけ腹がへってたんだ?そいやぁ親の姿が見えないが迷子か?」

 オヤジは心配そうに私を見つめる。

 ある意味私は迷子だったが(奴に拉致られた所為で)でも、それでも年頃の16歳の女性に向かって迷子はないだろう。

 これでも一応自立はしてるんだ。

 それに私は女優ですよ。

 と此処がどこか分かれば言いたかったが今の状態の私は迷子にしかならず、顔に熱が行き、赤くなりながら「此処がどこだか分からないんです。」と応えていた。




 16歳で迷子になるなんて思いもしませんでした。

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