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16話 旅立ち?

 


 ルドは勢いよく部屋へ入るなり男の下へと急ぎ駆け寄った。

 いつもならこんな非礼はしないが事がことだけに冷静なルドも焦っていた。

 ルドは男の傍まで行き「ルイジーアナ森が無くなっています。」と一言告げた。

 男はルドの言葉が理解できなかったのかもう一度ルドに聞き返してきた。

 ルドはもう一度「ルイジーアナ森が無くなっています。」と告げた。

 男は俄かには信じられない様子でルドを見上げながら「状況を報告しろ。」と冷静に言った。

 ルドは今見た光景を男に伝えた。


「ルイジーアナ森が無くなっています。正確にはわかりませんが森が4分の1程無くなっているように思えます。横に垂直に無くなっている様子です。森が無くなったと思われる部分には大きな穴が開いてるように見えます。」


 男はルドの報告を聴き、ルドに早急に第一騎士団を森へ向かわせるよう指示をだした。




 *****




 司はしばらく呆然としていたが『ピーっ』、『ジュージュー』、『キーキー』などの複数の動物の鳴き声、『バサバサ』、『ガサガサ』と草や木が揺れる音に我にかえった。

 後ろを振り返ってみるとさっきまでの森が残っていた。

 どうやら目の前の部分だけ森が消えたらしい。

 かなりの深い森だったようだ。

 広範囲に穴が空いていた。

 このまま此処に居ても奴が戻ってくる保証も無い。

 私は森の在った先、川の更に先に見えた建物らしきものに向かって進む事にした。

 幸いなことに穴は広範囲に広がっていたが深さは1メートルくらいしかない。

 これならば穴に降りて真っ直ぐ進めばいいだけで済む。

 距離はかなり有りそうだが太陽の日差しからして今を夕方とすれば徒歩で3時間くらい歩けばあそこまで着けるだろう。

 もし、2、3時間ずれ込んだとしても深夜になることは無いはずと思い、私は歩き出した。

 ただ一つの心配事といえば未だ裸足のままの足だけであった。



 1時間程経過し、私は立ち止まった。

 まだまだ建物らしきものには程遠かったがここいらで少し休憩をと腰を下ろした。


 歩いてきた過程で分かったことがあった。

 森が無くなって出来た穴の中は裸足で歩くには最適な地面だった。

 穴の中の土は畑などに使用されている腐葉土にそっくりだった。

 そのため裸足で踏んでも軟らかく、足を傷つけることもない。

 ただ、腐葉土と違う点は有り難い事にあのクサい臭いがしない。

 もし、あのなんとも言えないうん○っぽい臭いだったら私はすでにギブアップしていただろう。

 もう一点は石ころらしきものが一切見当たらないこと。これも私には有り難い。

 そして最後に虫が居ない点だ。

 土が腐葉土らしきものなのにミミズ一匹でて来ないのだ。

 まあ、出なければ出ないに越したことはないが虫が出ても私には問題ない。

 なんてったって私は某女優のポケットにミミズをいっぱいにして入れた女だ。

 その時、ポケットから溢れ出たミミズを手で摘んでポケットに戻したのだ。

 今更、ミミズや蟻などの虫ぐらいどうってこと無いのだ。



 私は、この軟らかい地面のお陰で足の疲労も大分軽減され、まだまだ歩くことが出来そうだった。



「さて、奴から頂いたリンゴでも食べよう。さっき、飲んだ水ももう、元に戻ってる。この水筒本当に便利~♪」


 ザクリと皮のまま、リンゴをかじった。


「癪だけどこのリンゴなかなか美味しい…。」


 私は芯を残し全て食べた。

 だがまだまだお腹が空いている。

 私は常日頃からかなりの量の食事を食べている。

 どれぐらいの量かと言うと成人男性の二倍くらいの量だ。

 そのためなのか赤井さんに外食に誘われることが少ない。ほとんど、私の家か赤井さん家での食事が主だった。

 まあ、赤井さんの場合、女性が同伴している食事は必ず男性が会計をすると言うジェントルマンなポリシーをお持ちだから仕方がないと言えば仕方がない。

 そんなわけで奴に拉致られてから今までリンゴと水しか口に入れていないためにかなりの空腹感が私を襲っていた。


「あ~、お腹が空き過ぎて死にそうだ~。私、お金持って居ないけど、あの建物に着いたら誰かに携帯電話借りよう。そしたら私の事も分かってお金貸してくれるかも知れないし、もしかしたら私の事を知っていて奢ってくれるかも知れないよね♪」



 私は希望を胸に建物を目指した。




 *****




「何故、俺が行かねばならんのだ!!」


「国の一大事だからです。」


「だったら!総長自ら向かえばいい!!何故!!第一騎士の俺なのだ!!納得出来ん!!」


「総長殿は昨日から行方不明であります。」


「………俺は報告を受けていないが?」


「総長殿が『自分はこれから行方不明になる。第一騎士のカイルにはその事を最後に伝えてくれ。無論、王には最初に報告しといてくれ。』と言う伝令が只今、この王の勅令と共に着ました。」


「なんだ!!そのふざけた伝言は!!」


「仕方ありません。あの総長殿ですから。」


「………王はアイツに関しては納得済みなのか?」


「さあ、どうでしょうか。王様にとって総長殿はどうでもよく、ルイジーアナ森の方が一大事だったということでは無いですか。」


 最後に「それに総長殿を探している近衛騎士達の姿も見えませんでしたから。」


 カイルは何ともいえない顔で「………そうか。」と一言呟いた。


 あんなやつでもこの国の騎士の頂点にいる男だ。即ち、この国で一番強い男を王は見捨て、ルイジーアナ森の方を取ったのだと、誰もが思っていても口にしなかったことをコイツははっきり言った。


 この時ばかりはカイルも目の前にいる自分の副長、ジャイル(34歳)の将来が本当に心配になった。

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