14話 魔法の林檎
「足りない物なら沢山あります。」
有りすぎるくらい足りなさすぎますから。
「まずは私は女優をやっていますがそんなことは関係なく、至って普通の女子高生なんです。」
「うん♪」
「普通の女子高生の殆どは森の中に住んだ経験はないと思います。私は有りません。」
「うん♪僕も千年以上生きていて森に住んだ経験はないな~。」
「………そうですか。それでは知らないかも知れませんが、まず、食事が有りません。私は水だけでは生きられませんから。」
私は嫌みを含めた。
暗に奴に『お前は無知だ』と言っているつもりだ。
普通の人は知っていて当然。
まず、知らないことは有り得ないのだ。
「あ~と、そうだよね~。食べ物だよ。」
奴はそう言うと再び鞄をゴソゴソし、リンゴを取り出した。
「司にあげるね♪」
もりかしてコレにも魔法が!?
『魔法のリンゴ!?』
私は全然、全く、納得は出来ないがリンゴは受け取った。
ちょっぴり、期待と嬉しいことは秘密だ。
「コレも魔法が!?」
「掛かってないよ♪至って美味しいリンゴだよ~♪ただ…。」
「はい!」
普通のリンゴにはガックリ来たが、何か秘密が有るらしい。
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
「ただ…、このリンゴ太陽の光をたくさん浴びて瑞々しい甘さと酸味なんだよ~♪品種はジョナゴールドてゆーの♪僕の一番好きなリンゴなんだよ♪」
ん??んん????どういうこと????????
「………特徴とかは?」
「う~ん。特徴ね~………。あ!?このリンゴ青森産なんだよ♪」
「………」
「………そういう特徴ではなく、例えばこのリンゴを植えると木が出て来てすぐに育っていっぱいまたリンゴが出来るとか?そういう特徴とかは?」
「う~ん?僕はリンゴ育てたこと無いけどリンゴってそのまま植えても育つのかな?」
私だってリンゴを育てたことなんてない。
小学校のアサガオですら芽すら出て来なかった程だ。
それ以来植物を育てるのを止めた。
はっきり言って才能が一ミクロンもないのだ。
そんな植物オンチの私にリンゴがどういう育ち方をしているのか聞かれても分かるはずがない。
それに育ち方などどうでも良い。
「………このリンゴは食べても増えたりはするんですか?」
「?しないとおもうけど。普通は食べたら無くなるんじゃないの?増えるリンゴってあるの?」
奴はそう言うと『そんなリンゴが有ったら欲しいなぁ~♪好きなだけ、好きな時にたべられて幸せだ~♪リンゴパラダイスなんて夢のようだね~♪ぜひ、欲しいなぁ~。』
私が前に居ることも忘れ、熱に浮かされた顔をしている。
恋する乙女ですか?
どんだけリンゴが好きなんですか?
リンゴパラダイスなんて現実、私には悪夢でしかない。
奴の夢が一生叶わないことを願った。
ちょっぴり、奴への報復が入っていることは秘密だ。
*****
「このリンゴは普通のリンゴなんですね。」
「?そうだよ。」
「………」
奴にはやっぱり一発食らって貰おう。
私は私が自分でもっとも綺麗な笑顔と思われる顔を奴へと向けた。
奴もニッコリと私に返してくれた。
傍から観たら恋人同士に見えただろう。
ただ、私の右腕は脇にありましたが。
『ドスッ』
コンマ2秒後に私の右腕は奴の鳩尾に埋まっていた。
奴はよろよろと鳩尾を両手で押さえながら4,5歩後ろへ下がっていった。
今回は地面との対面は間逃れたようだ。
「アナタは馬鹿なんですか?どこの世界に水とリンゴ一つで森の中で暮らせる女子高校生がいるんですか?私に狩でもしろと?出来るわけにでしょう!!そんなスーパーウーマンみたいな女子高校生が存在するわけ無いじゃないですか!?そんな人はマンガの世界か、実際にいたとしても地球上で2人か3人くらいです。私はその中には入っていないし、入ろうとも思いませんから!!」
私は怒っていた。
さっきから怒っていたが更にムカついた。
自分でも顔に熱があるのが分かる。
たぶん、顔が真っ赤になっている。
なんだか自分でも分からないが怒り過ぎて泣きそうだった。