11話 勝手に長寿!?
納得出来ないが仕方無い。
「………わかりました。あなたが結婚式を挙げたいと言うのならどうぞ好きにして下さい。どっちみち私はあなたの花嫁なんですから。」
私は可愛くないなと思ったがどうしようもない。
仕方が無いだろう。
別に奴と結婚をするのはもう諦めたが気持ちが追いついていかないのだ。
当たり前だ。好きでも無い奴と結婚するのだから。
私がこんな態度を奴に対してしてしまうのは当たり前の事なんだし、奴にも諦めて頂くしかない。
「………やっぱり、僕の事を好きになってから結婚式の方がいいみたいだね。」
「………一生結婚式、出来ないと思いますよ。」
「そんなことは絶対にありえないよ♪司は僕の事、好きになるよ。何てたって僕が本気なんだから♪」
………どっからの自信ですか?
それは。
………!!まさか!!
また、脅すつもりなのか!!
私はこれから起こるかもしれない未来を思い冷や汗をかいた。
*****
私は私の未来を思い頭を抱えて暗く沈んでいた。
「という訳で、司には僕の事を知って好きになってもらうためにもこれからは此処で生きてね♪」
「!?」
「この森に住むんですか!?私達!!」
「違うよ~。司だけ♪」
「…はぁ!!」
何故に!!
「だから♪司だけ此処で生きていって欲しいの♪で、ある程度、此処で過ごせば僕の住んでる所でも生きていけるからね~。」
「だから森で過ごせと!?」
「別に森じゃなくてもいいよ。人里でもいいし、どこだっていいよ。司がこの世界で生きていれば♪」
「………それでは元の生活に戻っても良いということですか?」
私は一縷の望みにすがった。
奴の嫁になることは決定しているが、勿論、仕事も続けて行くつもりだった。
まあ、奴が許せばだが…。
それなのにこの森で生きていくのでは仕事どころの話じゃないだろう。
寧ろ衣食住をどうしろと?
私に何がしたいんだお前は!?
と奴が『どこでもいい』と言わなければ思っていたことだろう。
勿論、思うだけだ。奴の報復が恐いから。
「………。」
………よくよく考えればこれはチャンスなのか?
奴は私と一緒に居ないと言った事だし私は今まで通りでも良いのか?
仕事もOKということなのか?
奴と一緒に住んだりとかも今すぐという訳ではない様子。
これは悲惨な私への誰かからの贈り物なのか?
(もちろん、神以外の誰かである。)
私は奴に出会ってから初めて?得た今一時の自由になれるかもしれないこれからの生活を夢見た。
「別に司が元の生活に戻りたいというなら司自信が決めれば良いんじゃない?僕は別に止めたりはしないよ?寧ろ出来ないから♪」
「………仕事はしても良いですか?」
「僕に断らなくても良いよ♪司がしたいようにすれば良いからさ~。」
………。
どうしたんだ。いったい!?
今までになく好条件で話が進んでいるじゃないか!!
まじめに誰かが悲惨な私を見かねて願いを叶えてくれたのか?
私には『そう』としかいいようが無いほどの良い話だった。(結婚は別にして。)
「それじゃあ、私は元の生活に戻るとして確認しておきたい事が1つあるんですが。」
「何?」
「私は何時くらいにアナタが住んでる処へ行く予定なんですか?」
これは1番に確認しておかなければいけない。
なぜなら仕事の都合があるからだ。
ただ、一緒に奴の住む処へ行ってからも仕事が出来れば辞める予定はないがスキャンダルはなるべく避けたい。
せっかく女優として成功しても奴と一緒に居ることによって潰されたらかなわないからである。
そして、奴と暮らす事への私の心構えの時間も知りたい。
勿論、遅ければ遅いほうが良いのだ。
私が死ぬまでぐらいとかがベスト!!
まあ。そんな都合よくいくとは自分でも思ってはいないが。
思うことは自由なのだ。
………きっと。多分。
「う~ん?そうだね~、司がこの世界に馴染んで僕の事をわかってくれたら多分僕と一緒に住めるかな?時間は掛かると思うけど僕は司の事を信じて待つよ♪勿論、僕は浮気なんかしないからね~♪何回も言うけど君一筋!!君が好きだよ♪だから、司も浮気しないで僕の事を一杯考えてね。………もし、浮気なんかしたらどうなるか分かっているよね?」
奴は笑顔だった。
だが私には奴の笑顔の上にどす黒い物が見えた気がした。
「………勿論、浮気なんてしませんよ。してる暇も有りません。けど、あなたと暮らせるには何年も先になると思いますよ。だって私この世界に自分は馴染んでると思っていました。だから今まで何も考えずにただ生きていましたから、今さら馴染んでいないと言われましてもどこをどうしていいやらで検討も尽きませんよ。それに私にも仕事が有りますし、今のところ、アナタを好きな気持ちすら持ち合わせていませんから。」
反対の気持ちなら持ち合わせていますけど。
「大丈夫。何年でも待っているよ。」
「私、おばさんになっているかもしれませんよ。」
「それなら大丈夫!さっきの司の足を治療したとき君の寿命を僕と同じ永さにしといたから。」
そう言った奴の顔は晴れやかな笑顔。
遣り切った感が漂っていた。