9話 脅迫という名の脅し!?
自分では自覚はなかったが現実逃避していたようだ。
目の前にいる奴が急に真剣な顔つきになっていた。
………美形ってどの顔でも美形なんだ。得ですね。
「司、君はもうすでに僕の花嫁だけど、君には僕を心からげ好きになってもらいたい。そのためには僕は司のために何だってするよ。けど、僕の事を嫌いにはならないで。じゃないと僕は君以外のものをすべて消してしまうかもしれない。僕って意外と独占欲が強かったみたい。だから、司を此処まで連れて来たんだけど。」
………。
奴の頭の中ではやっぱり花嫁のままなのか…。
そして『独占欲』って………やっぱり嫉妬ですか……。
……………………………………………………………………知りたくなかった。
というか決定してるんですね『花嫁』………でも!
「私、あなたの嫁になることを承諾した覚えがありません。」
「うん、同意はもらってないからね。悪魔って相手の同意がなくても気に入った相手を見つけたら力の強さで伴侶になるんだ。まさしく弱肉強食の世界だよね。まあ、これは悪魔同士だけど。実際人間を気に入った悪魔っていなかったからね。僕が初めてだよ。そして僕はたとえどの悪魔だろうが気に入れば伴侶に出来るんだよ。だって、僕より強い悪魔はいないからさ。でも、僕が選んだのは君なんだ。例え君が人間でもそれは変わらない。」
「………」
「だけど、僕も無理やり司を花嫁にするのはしたくない。そんなことをすれば君は一生僕の事をゆるさないでしょ。まあ、それもある意味僕の存在は司の中で大きく残るわけだから魅力的ではあるけれど。でも、そんなことをするよりはどうせなら好きになってもらいたい。司には悲しい思いもさせたくないしね。だから僕の事を好きになるよう司も努力をしてね♪そのために此処に司を連れて来たんだから、僕の事をより知って好きになってもらうためにさ♪」
………何勝手な事を言ってやがる?
人の意思を無視して勝手に『花嫁』になったとかぬかしてる奴の言うことなんて誰がきくと思うのか!?
きくわけないですから!
だから私が奴を好きになるなんてありえない。
寧ろもうすでに私の中の『一生関わりになりたくない人BEST3』を№1で独走中ですからアナタ!!
というか№1、№2、№3すべて奴で埋まっていますから!!
こんだけ想っているんだから『一生もう関わりにならない』という願いを誰か聞き届けてくれ!!
さっきから現実になることを祈っていますから!!
私は再び心の中で願いが現実になることを祈った。
例え、目の前の奴に10円ハゲがある可能性が0に等しいくらい儚い願いだったとしても私は祈った。
「………連れて来たんじゃなくてアナタが拉致して来たんじゃないですか!!」
『しまった』と思った時にはすでに時遅く私の周りの気温が下がった気がした。
次からは発言する前に考えよう…。
………再び空気が重くなった。
そして奴の周りには黒いものがゆらゆら。
………見えてしまった…。見たくなかった…。寧ろ見えるな!!
「しょうがないじゃないか、司がアイツん家に泊まったりするからいけないんだよ。」
「………。」
この人認めましたよ。私を『拉致』したこと。
奴の怒りのオーラっぽいのに当てられ私は責めることも出来ず、奴を無言で見ていた。
「僕にだって我慢の限界がある。僕が司を男と同じ屋根の下で寝かせるわけないでしょ。」
………ヤツガイツガマンシマシタカ?
寧ろ我慢しているのは明らかに私でしょう!?
アンタ勘違いも甚だしいよ!!
私じゃなくアンタが自分をもっと知る努力をしなよ!!
「………じゃあ、もし、私と赤井さんが恋人同士だったらどうするんですか?同じ屋根の下で寝ていてあたりまえですよ。」
「そんなこと僕が許すと思ってるの?でも、たとえ司とアイツが恋人同士だとしても、もう関係ないけどね。」
「あなたに許されなくても恋人同士には変わらないと思うんですが。」
「うん。変らないかもね。でも、もしも司とアイツが恋人同士だったとして、考えるのも嫌だけど。でも、もしもそうだったら司がアイツの事想うと地球が消えたらどうする?」
………。
「………別れます……。」
「そういう事だよ♪」
さっきまでの重い空気は再びどこかへ行ってしまったようだ…。
やつの機嫌が目に見えて良い。
逆に私は………重く哀しい。
生まれてから此の方16年、彼氏が出来たことがない。
今はまだ女優の高みを目指している最中だから善いとして『いつかは』という思いもある。
それなのにこんな悪魔に好かれた………捕りつかれた所為で『いつかは』という思いすら真っ黒く塗りつぶされた。
………脅迫という名の脅しで。