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7,真相を求めて その3

ルーセントはケドニア行きの1番早い早朝の馬車に乗った。それでも着くのは正午くらいになるだろう。


ルーセントはその間考えを整理することにした。

【ディアーロがベスター個人を恨む可能性は少ない気がする…もしかしたら、ベスターを狙ったのはディアーロを唯一神だと崇めるもの達の仕業なのかもしれない。でも、それにしてはべスターがウラノスの加護をもらったことを知っている人物?いや鑑定式から1年たっているからうわさが広がったなら誰でも可能性が出てくるな…まず、ただの信仰者がディアーロの紋章を魔物に刻印することは可能なのか…?そもそも、ディアーロはここ500年ほど誰にも加護を与えてい…】


「ぃちゃん…お兄…ち……お兄ちゃん!」


【はっ!!】

だれかが僕に話しかけたみたいだった。

「はい!」

僕は慌てて声のする方を向くとそこには少女が僕の顔を覗き込んでいた。

「お兄ちゃん大丈夫?凄い顔してたよ?」

「だ、大丈夫だよ!」

僕はフードをかぶっていたが、近距離で髪と目を見られてしまったことで慌てていた。

「こらっ!急に話しかけたら失礼でしょ!それに、馬車が動いているときは立ち上がらないの!」

「ごめんなさーい」

少女は母親らしき人に注意されるのとぼとぼと席に着いた。しかし、またすぐに元気よく話し始めた。

「お兄ちゃんの髪の毛と目、赤色だね!」

  ≪ビクッ≫

やっぱり少女にははっきり見えていたんだ、、この親子も僕のことを呪われた人間だと思うのかな…僕は返事をしなかった。

「とってもきれいだね!」

「え??」

「とってもきれいな色!」

「き、れい?」

「うん!私が昨日お庭に植えたお花にそっくり!なんて名前だっけ?えっと…確か…」

少女は眉間に皺をよせ、首を傾げながら考え込んでいた。

「い、じゃなくって…し、でもなくって…なんっけ?」

「『い』であってるわよ。」

見かねた母親が少女に耳打ちしていた。

「やっぱり!い、だよね!う~んと、そうだ!」

少女は手をぱんと叩くと自信満々に言った。

「『イルンセーラン』だ!」

「『イールンセラン』ね。」

少女は間違えていたようで素早く母親に突っ込まれていた。

「あ、そうだった!…お兄ちゃんの髪、イールンセランの赤色と同じでとってもきれい!」

「イールンセラン」

「娘がいきなり話しかけてしまってすみません。」

「あ、全然大丈夫です!むしろ褒めていただいてありがとうございます。」

「全然いいんだよ!」

少女が元気よく答えた。

僕のこの髪と目の色を悪く言わなかったのはべスターとオスカーさん以外で初めてだった。

「ねぇねぇ!どうしてケドニアに行こうとしてるの?」

また少女は食い気味に話しかけてきた。

「あ、実は…」

「あ!!」

少女は僕の言葉を遮ってまた話し始めた。

「お話しする前にお名前言わないといけないんだった!私アリサっていうの!お兄ちゃんは?」

「ぼ、僕はルーセント。え~と、聖地イルフェスタに行くためにケドニアに行くんだよ。」

「そっか~!!」

「え?イルフェスタ…?」

僕とアリサの会話を静かに聞いていた母親の顔色が急に悪くなっていった。僕は心配になり母親に声をかけた。

「あの、大丈夫ですか?」

「え、えぇ。ただ、ちょっと心配で…」

「心配ですか?」

「はい…あ、私はケニーと申します。その、今のイルフェスタにはあまり近づかない方がいいと思います。」

「え?なぜですか?」


ケニーはここ数年のイルフェスタの状況を事細かく教えてくれた。

「イルフェスタは聖地のためディアーロを崇拝する人が昔から大勢集まりました。今もそれは変わらないのですが、問題なのが5年ほど前から過激な活動を行う崇拝者達が集まるようになって来たことです。」

「過激な崇拝者…」

「風の噂ですが、どうやら10年ほど前に神の刻印をもつウェアウルフが出たようで…」

「刻印ですか?!」

「はい、ご存じだとは思いますがディアーロ神様の紋章の刻印を持つウェアウルフです。」

【なんてことだ!あのゴーレムと同じだ!】

「それがきっかけで彼らは魔物は神が生み出したものであるから討伐すべきではないと言い始めたのです。それから過激な崇拝者と魔物の刻印に不審感を抱く人とで対立するようになりました。」

「あの、その刻印を持つ魔物はどうなったんですか?」

僕は気になってついつい前のめりになって質問した。ケニーは驚きながらも答えてくれた。

「過激派が一時的に保護したらしいのですが、その後自然に消滅したと私は聞いていますね。」


【消滅?ゴーレムは消滅なんてしていなかった…】


「そうなんですね…」

「ケドニアは比較的安全な国ですが、今のイルフェスタに近づくことはあまりオススメできません。」

「そうなんでずね…教えて頂きありがとうございます。あの、もうひとつだけ質問良いですか?」

「いいよ!私が答えてあげる!」

さっきまでの話が退屈だったのか、アリスが元気よく答えた。

「ありがとう。じゃあ、ケドニアで1番大きな図書館ってどこにあるか分かる?」

「うん!それなら分かるよ!ケノクっていう大きな町にあるんだよ!」

【ケノク…】

「そうなんだね、ありがとう。」


【情報がもう少し欲しいな…やっぱり図書館にはいくべきだよな…】

「そろそろケドニアに着きますよ〜」

その声につられて先を真っ直ぐ見ると、ずっと横に広がる城壁と大きな門が見えた。


「もう着くね!ルーセントお兄ちゃん気をつけて冒険するだよ!」

【冒険、か】

「うん!アリスありがとう!ケニーさんもたくさん質問に答えて頂きありがとうございました。」

「いえいえ、こちらこそありがとうございました。気をつけてくださいね。」

「はい!」


      

《着きましたよ〜!》

長い時間馬車に揺られ、ついにケドニアに着いたようだ。



僕はウルハートに貰った何枚かつながった馬車乗車券から6枚を切り放し、手渡すと馬車を降りた。

「ついに着いたか、ケドニア国!」

僕は深呼吸をするとケドニアの検問に向かって歩いて行った。行く途中で大きな看板を目にした。それはどうやらケドニア国の地図みたいだ。

「『ケドニア国へようこそ…現在地はイルベーナ』か。」

地図には現在地に大きな星マークがついていて『イルベーナは国一番の商店街』と書いてあった。そしてすぐ横に本のマークがついた街を見つけた。そのにはケノクと書いてあった。

「あった、ケノクは隣の街なんだ。すぐに行けそうだね。」

僕は看板を隅々まで見渡すと、検問に向かって再び歩き出した。


検問近くになった時少し遠いところから、

「ケドニア国に入国する方はここで身分証と入国料を徴収するので並んでください。」

【身分証と入国料…ウルハートさんの言ってた通りだ。】

僕は孤児院にいたため身分証がちゃんと作られていない。ウルハートさんはそのことを知るとすぐに身分証の発行をしてくれた。そんなにすぐに発行できるなんてどんなものかと思ったけど、どうやら出身地と名前、生年月日の証明だけらしい。



段々と、僕の番が近づいてきた。

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