5,真相を求めて その1
朝からずっと雨が降ってる。そんな中でもベスターの葬式は始まった。ベスターの葬式にはたくさんの人が参加した。ベスターは僕とは違って町の人気者だった。冒険者として期待もされていた。
僕はよく一緒に修行した空き地に生えている綺麗な小さい花を腕いっぱいに集めてベスターに添えた。
【ベスター、僕が必ず君の仇をとるよ。あのゴーレムの真相を解き明かす。…明らかにして復讐する。僕が必ず。】
ルーセントは意識が無くなる前に見たゴーレムについていた紋章をしっかり覚えていた。
心臓に矢が刺さりそれを覆うように広げられた手のひらの紋章。あれはディアーロ神の紋章だった。
ルーセントはあの紋章が鑑定式の時に司祭が来ていた司祭服の紋章と一緒であることに気付いていた。そして、様々な書物の表紙や挿絵にも出てきていた。
【ディアーロがどうしてベスターを殺す必要があるんだ…】
誰かがディアーロを偽ってベスターを殺したのか…それともディアーロ本人がベスターを殺すように仕向けたのか…そもそも神が魔獣に加護を与えることは可能なのか?
「…くそ!情報が足りなさすぎる!!」
≪コツん≫
「やっぱりお前は呪われてるんだ!お前がべスターの代わりに死ねば良かったんだ!」
「お前がべスターを殺したんだ。」
「あいつもお前なんかを助けたから罰が当たったんだよ!自業自得だ!」
「あ?」
ルーセントはべスターを貶した男を殴った。
「うるせーよ…お前にベスタ―の何が分かるんだ!!」
「もし本当に人を呪える力があるならお前たちを呪い殺してやる。絶対に許さない。」
近くにいた人たちはルーセントを恐れた。赤い髪と目にはいつものような光はなく、虚ろだった。
ルーセントは方向を変えると歩き出した。
ベスターの死の真相を知るために、そして復讐するためにまずは唯一神ディアーロについてもっと詳しく調べることにした。
僕が今まで見た書籍で知り得た知識はディアーロが1500年以上も前に人々からの信仰が大きすぎるあまり、他の世界の神から恐れられ4つに分けた石像に封印されたということ。これが本当ならこの4つは各地の聖地とされるイルフェスタ、サーライト、ハルフィス、アンテールの4てにその石像があり封印されているということだろう。
そして、ディアーロの紋章が刻まれたことでゴーレムにベスターを殺すように動いた可能性があるということだ。あの紋章の詳しい情報は図書館では全く見つけることができなかった。
【おかしい…唯一神であるディアーロの情報が少なすぎる。そして、ベスターに加護を与えられた神についてもだ!ウラノスとは誰なんだ!聞いたことがない…】
僕はひたすら調べたがやはり町の図書館で集められる情報はもうなかった。
「このままでは埒が明かない…ここから1番近い聖地イルフェスタに行こう。そうしたら何か分かるかもしれない」
そうして僕はイルフェスタに行くことにした。
僕はあの不思議な本と持てるだけの物資を持ってイルフェスタのある隣の国ケドニアへと旅立った。
オスカーには置き手紙を書いた。
今までのお礼とベスターの死の謎を解明することを手紙に書いた。そして、ベスターがオスカーを尊敬していると僕に語っていた話も書いておいた。
ルーセントはケドニアの行き方は分からなかった。
ただ、図書館で見た世界地図を頼りにケドニア方角向かって歩いて行った。
しばらく歩いたルーセントはピタッと足を止めた。
「あれ…?この辺りは…」
周りを見渡し自分の位置を地図上で確認するとひらめいた。
「ここは山岳地帯の端だ!」
ルーセントが今いる山岳地帯はゴーレムが生息しているとされているところだ。
「ここでゴーレムを探さないと…!」
僕は確かめたかった、あのゴーレムがここから来たのか…それとも他のどこかから来たのか。
しばらく歩き、木がまばらになってきた時、少し先に岩山が見えた。
ルーセントは勇気を振り絞り岩山に向かって歩いた。
しばらく岩山を歩くと、
《ゴロゴロッ ドスンッ》
岩が擦れ合うような音と足音が聞こえる。この足音は覚えている、ゴーレムの足音だ。
「きっとこの先のあの洞窟だ」
ルーセントは洞窟の方へと走った。
ゴーレムは基本温厚な性格をしていて、危害を加えなければ襲ってこない。
【ここにいるゴーレムにあの紋章があるか近くに行って確認しないと。】
ルーセントはすぐにゴーレムを見つけた。洞窟に入ってすぐのところで奥に向かって歩いて行くゴーレムがいた。ゆっくり近づき、向こうに歩いていくゴーレムの背中を見た。
【あの紋章がない…こいつじゃないのか…】
目の前にいるゴーレムには紋章がなかった、ここから来たわけじゃなさそうだ。
【ここのゴーレムじゃないのか…】
ルーセントはまたケドニアへと向かった。