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3,冒険者になるために

「…ント!ルーセント!!」

【はっ!】

「お前大丈夫か?全然起きなかったけど…特訓!もちろん今日も行くよな!」

「ベスタ―…うん!もちろん!」



 僕は孤児院を追い出された後あのまま呆然とその場に座り込んでいた。

「ルーセント?おい!ルーセント!」

「…ベスタ―…?」

「こんなところで何やってんだよ!風邪ひくぞ!それに孤児院の門限過ぎてるだろ?早く帰らないと…ベスター?」

「…もう僕は帰れないんだ。あそこは僕の帰るところじゃない。」

「何言ってんだお前!冗談言ってないで早く…」

べスターは言葉を止めて考えた後僕に言った。

「もしかしてあいつらに追い出されたのか?」

僕が静かにうなずくとべスターはその場で孤児院に向かって叫び始めた。

「この人でなし!本当最低な奴らだな!覚えてろよ!絶対にお前たちを許さないからな!ルーセントが良いって言ったって関係ない!俺はお前たちを許さないからな!」

はぁ、はぁ、はぁ

べスターは息を荒くしていた。少し横顔が見えたけどいままで見たことがないような表情をしていた。

べスターはくるっと僕の方を向くとしゃがみこんで言った。

「お前は強い。お前は負けてない、これからだよ。あいつらを見返してやるんだ。」

べスターは立ち上がってから続けた。

「これから2人で冒険者になるんだ。絶対。それであいつらの前に俺たちが倒した中で一番でかくてつえー魔獣をあの孤児院の前にドーンッて置いて、『どうだすごいだろ!』って自慢してやるんだよ!お前らにこれができるのかってな!」

「ふ、ふふふ…あははは!!」

「な、なんだよ!なに笑ってんだよ!冗談で言った訳じゃないからな!」

「うん、わかってるよ!ふふふ」

「おい!ったく、てかお前!急に飛び出してどっか行ってよ!探したんだぞ!」

「ごめんねべスター!あと、本当にありがとう!」

「…おう!」

べスターは頭を掻きながら恥ずかしそうに言った。

「ほら、行くぞ!」

「え?どこに??」

「…俺の、俺たちの家だよ」

「どういうこと?」

 ベスターは強く僕の肩を掴んだ後、ニカッとはにかんでいった。

「俺の家に一緒に住もう!!親父も歓迎するよ!ちょうど寂しかったんだ!俺と親父とルーセント、3人で暮らそう!」

「本当に?僕一緒に住んでもいいの?」

「あぁ!一緒に帰ろう!」

僕はさっきとは違う涙が目からあふれ出した。

「うん!!」

べスターは僕の本を手に取ると服で泥を拭った。そして僕の手を引いて起こしてくれた。

さっきまで降っていた雨は止んで、前を歩くべスターのずっと向こうの雲からは太陽の光が顔を出していた。


「おい!見ろよ虹だぞ!」

べスターが指を指した方向には大きくてきれいな虹が掛かっていた。

「なんか良いことがありそうだな!!」

 ベスターはそう言って僕の手を引いて歩いてくれた。とてもとっても暖かくて、やっぱりベスターは僕の太陽みたいな存在だ。

「おーい!」

後ろから声が聞こえてくる。

「父さんの声だ!父さ~ん!」

「べスター!声かけてから行きなさい!急にいなくなったら困っちゃうだろう!」

「ごめん、父さん!」

「べスターそんな姿じゃ風邪ひくぞ!ルーセント君もじゃないか!…ってあれ孤児院に早く帰らないと…」

「父さん!ルーセントも一緒に暮らしてもいい?」

「え!急に…」

一瞬驚いた様子だったけどすぐににっこり笑って言った。

「もちろんだよ。一緒に暮らそう!」

「オスカーさんありがとうございます!」

「いいんだよ!でもそのびしょ濡れの状態は良くないね…早く帰ってお風呂にしよう!」

「うん!」

『はい!』



 そうして、僕とベスターとベスターのお父さんの3人での暮らしが始まった。

ベスターのお父さんであるオスカーさんは火属性の冒険者だ。ベスターのお母さんはミランダさんというらしい。ミランダさんはベスターが3歳の時に魔獣に襲われて亡くなったらしい。オスカーさんはそれっきり魔獣狩りに毎日出向いているからベスターは毎日寂しかったらしい。そんな時に僕と出会えて本当によかったってこの前特訓中に話してくれた。


「よし!もうお風呂に入れるよ!入っておいで!」

「『は~い!』」


  ≪バシャーッ!≫

「ふ~!!気持ちいいね!!」

「そうだな!!…いきなりなんだけどさ」反響する風呂場でべスターが話し始めた。

「俺、父さんと似てないだろ?」

「…確かにそうかもしれないね。」

ベスタ―の髪も目も黒にすこーしだけ青が混じっているような色だけど、オスカーさんはきれいな真っ黒だ。それに顔は全くと言っていいほど似ていなかった。べスターは大きくてすらっとした目だけどオスカーさんは優しそうな目をしている。

「多分俺母さんに似てるのかもってずっと思って生きてきたけど心の中で、もしかしたら父さんと母さんの本当の子供じゃないのかもって思ってたんだ。」

「え??」

「思ってた!な今日までは、でも鑑定で火属性って知った時、父さんと母さんの子供なんだって安心したんだ。正直ずっと不安だった。」

「そうだったの…?」

「急に変な話してごめんな!ちょっと誰かに話したかったんだ。」

「気にしなくてもいいよ!べスターの不安がなくなったなら良かったよ!」

「…そういってくれてありがとな」

風呂の熱さなのか恥ずかしいのか分からないけどべスターの顔は赤かった。

「よし!どっちが長く風呂中で魔力ボールを維持できるか勝負しようぜ!」

「のった!」

僕たちは手を筒状にしてそこに魔力の幕をつくった。そして、息を吹きかけてボールをつくった。

「なんか僕の方が大きくない?」

「そんなことねーよ!同じくらいだろ!ほら!始めるぞ」

「『せーの!』」

僕たちは湯船に魔力ボールを沈めて数を数え始めた。

  ≪バフッ≫

「あー!割れちゃった!」

「やった!俺の勝ち!!」

「いや!僕の魔力ボールの方大きかったから割れやすかっったんだよ!もう一回!もう一回やろう!」

「しょうがないなー、もう一回だけだからな!」

僕たちはその後10回くらい勝負をした。結果は6:5でべスターの勝ちだった。




「ルーセントの荷物はここに置いて良いからな!」

「ありがとう!」

「でもその本、大切な物なんだったよな…?何か別にしまえる箱とか用意した方がいいか?」

「ううん、このままで大丈夫。ありがとう。」

「その本、さっき結構泥付いてたよな…?なんでそんなにきれいなんだ?ほんとに不思議だなぁ」


 その言葉を聞いた僕ははっとして本を見た。

「ほんとだ!全く汚れてない!いつの間に?」

「気付いてなかったのか!」

「そういえば!話すの忘れてた!!べスターに見て欲しいんだ!」

「なんだ?」

べスターはゆっくり僕の方に来てくれた。僕はべスターの目の前で本を広げて見せた。

「この変な文字見てよ!なんて書いてあるのか全く分からないんだ!どこの書物にもこも文字のことは書いてなかったんだよ!…べスター?」

「えっと…ここに何か書いてあるのか?」

「え?普通にびっしり文字が並んでるでしょ」

「ルーセント、俺にはそれが見えないみたいだ。」

「え?見えない?少しも?」

「うん。俺には真っ白な本のままだぞ?」

ベスターが嘘をついているようには見えなかった。本当に見えてないんだ…!

「もしかしたらルーセントだけにしか見えないのかもしれないな。」

「え?僕だけに?」

「ルーセントの親がルーセントの為だけに書いたならありえるんじゃないかな、、その本は特別な本なんだよ、きっと」

「特別か…どうだろ」

僕は俯いて言った。

「よし!その話はおしまい!!魔力使いすぎてめちゃくちゃ眠い!そろそろ寝るぞ!」

「明日も冒険者になるための特訓だからな!」

「うん!」


 鑑定式の後からは、ベスターはスキルの強化と火属性の強化の特訓を。

 僕は前までの特訓に追加でベスターの属性魔法強化の効率的な方法を提案したり、派生属性の特訓方法を模索する日々が始まった。

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