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1,最初の人生

 あぁ、僕は何のために生まれたのか…


 これは世界を救う僕たちの話だ。

   

 《君は自分が何者なのか、何のために生まれたのか知ってる?》


     僕はずっと知らなかった。

         そして、

あの日の出来事が全てを知るきっかけになった…






 僕はバサラという町に住んでいる孤児だ。

院長が言うには籠に入った僕が孤児院の前に置かれていて、籠には僕の名前であろう「ルーセント」と書いた紙と1冊の本が置いてあったらしい。


 そんな僕には友達が1人だけいる。


 孤児院の隣に住んでいるベスターという男の子だ。僕と同い年で僕が他の孤児院の子達にいじめられているところを助けてくれたのが始まりだった。

 それから僕のたった1人の大切な友達で、ベクターは勇敢で優しい僕の勇者みたいな人なんだ。


「ルーセント!お前のその真っ赤な目と髪が気持ち悪いんだよ!きっとお前の親もお前が気持ち悪くて捨てたんだ!」

「そうだよ!ほんとに気味が悪い!きっと呪われてるんだ!」

「これは呪いの色だ!」

僕をいじめてくる他の孤児院の子供3人だ

僕の髪をつかんで3人は言った。

「やめてよ!痛いよ!」

「うるさい!お前は呪われてるんだからしゃべるな!お前が吐いた息は毒なんだよ!」

「違うもん!痛っ!」

そのうちの一人が僕に殴りかかってきた。

【僕だって何も分からない…どうして僕は他の人たちと違うんだ…もしかして本当に僕の髪と目の色が両親が僕を捨てた理由なのかな…】

「…おい!!何やって…だ…!」

遠くから誰かの声が聞こえた。そして徐々にその声が近づいてきた。


「お前らやめろよ!ルーセントをいじめるな!」

そう言ってベスターは駆け寄って、僕の前に立ちはだかった。

「なっ…なんだよベスター!お前には関係ないだろ!!」

「関係あるわ!ルーセントは俺の友達だ!ルーセントをいじめる奴は許さないからな!」

そういってベスタ―は孤児たちに襲い掛かった

「痛っ!!なにすんだよ!もういい、行くぞお前ら!」

「う、うんっ!」

 孤児達は走り去って行った。

「ったく…あいつら何なんだよ」

「ベスターごめんね、ありがとう助けてくれて。」

ベスターは僕の方へと素早く振り向くと僕の肩をガシッと掴んだ。

「おい!大丈夫か?」

「うん、僕は大丈夫。助けてくれてありがとう!」

「大丈夫じゃないだろ!」

ベスタ―は僕を睨みつけて続けた。

「ルーセント、なんでやられてばっかなんだよ!たまにはやり返せ!」

「いや、僕にはできないよ…」

「俺は知ってるぞ!お前はほんとは強いってこと!それに特別なチカラがあるじゃないか!」


 そう言っていつもベスタ―は僕のことを慰めてくれた。

 出会った時からずっと。


 僕には少しだけ特別にな力があるみたいだ。見たり聞いたりしたことをすぐに覚えられる。そして、覚えた内容はずっと覚えている。でも、生まれてすぐのことは少しも覚えていない。覚えているのは医院長が僕を抱きしめて名前を呼んでくれているところからだ。大切なことも覚えてられないこんな力なんて最初はどうでも良かった。

 でもベスタ―が褒めてくれるのが嬉しくて僕はこの力が誇らしく思い始めていた。


 僕は孤児院での仕事を慣れた手つきですぐに終わらせるとすぐにベスタ―の家に向かった。孤児院では順番に掃除と洗濯を回していて週にそれぞれ2,3回担当が来る。


「ベスタ―!いるー?」

「ルーセント!」

 ベスターは勢いよく家から飛び出してくると、キラキラした目で僕に言った。

「ルーセント遅いぞ!話があるんだ!」

「そんなに慌ててどうしたの?」

「冒険者!一緒に冒険者になろう!」

「冒険者?!」

「そうだよ!15歳で俺は絶対に冒険者になるんだ!ルーセントも一緒に冒険者にならないか?」

「僕には無理だよ!でもベスタ―なら冒険者になれるよ!だって君のお父さんは冒険者じゃないか!僕はきっと平凡なスキルだから適当に働ければいいよ、なるべく早く孤児院から出るんだ。」

ベスタ―は下を俯く僕をのぞき込んで言った。

「そんな卑屈なこと言うなよ、ルーセントは頭がいいだろ?俺は馬鹿だけど運動だけはできるだろ?つまり、2人で冒険者になったら最強だ!」

僕は少しの間ぽかんと口を開けた、そして吹き出してしまった。

「どうゆうことだよ!そっか、最強か…うん、、うんうん、うん!2人で冒険者になろう!」

そういってベスタ―はまた僕の肩をがしっと掴んだ。

「やった!決定だぞ!絶対だからな!」

「うんってば!」


【ベスターと2人で冒険者…!本当に実現出来たらきっと楽しい冒険になる!】


「2人で冒険って…すごく素敵な話だね!僕頑張って冒険の書物を読み漁るよ!そしたら力の弱い僕でもベクターの助けになるかもしれない!」

「そうだぞ!鑑定式の結果次第になっちゃうけどさ…俺きっと強いスキル手に入れて見せるからさ!」

「うん!!」


 僕たちの世界では12歳の子供たちが年末に洗礼と共に鑑定式を行う。そこで初めて自分の属性と保有するスキルを知ることになる。ここからは僕が図書館で知った情報と唯一僕に優しくしてくれているシスターが教えてくれた情報。


 まず、僕たちの世界の人達はみんな魔力は保有していて魔力量にはあまり差がない。稀に魔力量が多い人がいるらしい。貴族か冒険者ばかりだけどね。僕たちの町はとても小さいから鑑定式に使う鑑定石では魔力量は分からないらしい。

 魔力の用途はふたつで、属性魔術と錬金魔術。これも基本的に貴族や冒険者は一つの属性を持つけど一般人には属性がない。属性魔法に使用する魔力はただトリガーとして一定量消費するだけだ。つまり、魔力を鍛えることは属性魔法の発動数を増やすだけで力をあげることはできない。属性魔術を強化するには属性魔術を何度も発動し、限界値ギリギリまで消費させること。

 錬金魔術は魔力があれば誰でもできるが、行う錬金によって消費する魔力に差がある。錬金魔術には多くの知識とそれに必要な素材が必要になる。普段使える錬金魔術が少ないためあまり利用されない。

 

 こんな感じかな?


 僕は冒険者になる方法も調べるために図書館に訪れた。

「冒険者、冒険者…あった!『冒険者になるために』これだ!」

僕は近くの椅子に腰かけると読み始めた。

「冒険者になるには属性魔術を扱える、モンスターに対抗できる技をを身に着けているのどちらかを満たす必要がある…か。う~ん、ベスタ―は父親が冒険者だからきっと属性を持ってるよな…なかったとしても剣んお特訓を始めてるみたいだし冒険者になるのはたぶん問題ないよな…問題は僕だよ!僕は属性は多分、いや絶対ないし!武術か…どうしよう…」

 パサッ

「ん?」ふと僕の目に留まった文があった。それは他の文字よりも一回り小さな字で書かれていた。

「『なお、冒険補助専門試験合格者は同行者である冒険者がいる場合のみ特別に冒険者資格を与えられる』?」

「これだー!!」

 僕はすぐに来た道を走っていきベスタ―の家のドアをたたいた。そして、出てきたベスタ―に冒険補助専門試験について説明し、僕はそれを目指すことを伝えた。

「そうか!そんな方法もあるのか!いいじゃん!」

ベスタ―は大きく頷きながら言った。そんなベスタ―に目一杯の笑顔で僕は答えた。

「僕頑張るよ!」


 それから僕は年末の鑑定式まで色んな知識を得るために図書館にたくさん通い詰めた。薬草や魔獣、属性の優劣、ついでに冒険先になりそうな他の国の情勢とかとにかく情報をたくさん詰め込んだ。全部ベクターと2人で冒険するために!

 ある日のいつも通り図書館で本を選んでいる時

「これも…これも、これも読んだな…あとは冒険に関係なさそうだけど…一応読んでみるか。あれ?そういえばあの本まだ開いたことないや」

 ふと僕が捨てられた時に一緒に置いてあったという本が気になった。


 院長が初めて本を手に取った時本を開いて見たけどどこも真っ白なページだったと言っていた。『君の親が君のために送った大切なものだと思うから』と僕にその本を渡してくれたけど僕は一度も開くことはしなかった。


【一応親の形見として持っていたけど一度も中を見なかったな…】


 孤児院に帰った僕は夕食のあと木箱に閉まっておいたあの本を手に取った。その本は真っ黒で本の題名は何も書いていない。とりあえず本を開いて1ページ目を開いた時急に文字が浮かび上がってきた。


《これは僕たちの人生の記録である》 


 【…声?どこから??】


 次の瞬間真っ白なページに文字が次々と浮かび上がってきた。

「なんだこれは!何が起こってるんだ?!」


《パラパラパラパラ》

勝手にページがめくられ続け最後のページに文字が浮かび終わった後、《パタン》と本は閉じた。


【と、止まった…??】

恐る恐る表紙をめくるとそこにはルーセントが見たこと無いような文字が並んでいた。

【なんて書いてあるんだ??】

一通り全てのページを見たがどこも読むことができなかった。


 次の日僕は図書館で色んな国の文字を見たがどこにも無かった。

【ここの世界にはない文字?でも…そんなはずないよね…】

ルーセントは真っ黒な本を見つめた。

【このままじゃ何も読めないよ…】

結局この不気味な本がなんなのか何も知ることはできなかった。



  僕は、いや…僕たちは知らなかった。

 この本が誰かが残した僕への、世界の希望をかけた大切なメッセージだったことを…

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