勇気を持って告白し合う2人
「僕と付き合って頂けませんでしょうか?」
「やっと言ってくれたわね。もちろんオッケーよ。」
そうして、勇気を出して告白した僕と彼女は付き合う事になった。
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僕の名前は『鈴木伸夫』、中学2年生。
趣味は読書、ゲーム等のインドア派で一般ではいわゆる陰キャと分類されている。
成績は中間と言った所だ。
いつもと同じく登校して来たとある日のHRにて、担任から今日は転校生がいると発表された。
「「「「「おお~!」」」」」
「どの様な人なのかしら?」
「先生、男子か女子か教えてもらえませんか?」
クラス内が転校生についてでざわめいた。
すると先生が、
「それは来てからの楽しみに取っておきなさい。では、入って来てください。」
「はい。」
廊下から可愛らしい声が聴こえてきた。それにどことなく聴いた事が有る気がする。
転校生が教室内に入って来て、教壇の真ん中に立った。
「「「「「おお~!」」」」」
「まさかの本物?」
「俺、ファンだぜ。」
「あら、私もファンよ。」
「俺も、俺も。」
「私も、私も。」
教室内が再度ざわめいた。
「皆静かに。」
先生が注意する。
「では、黒板に名前を書いて自己紹介してくれるかね。」
「はい。」
そうして転校生の子は黒板に名前を書いた。
「皆さん、初めまして。『鈴木伸子』と言います。
よろしくお願い致しますね。」
転校生はぺこりとお辞儀をした後、教室内を見まわして生徒達の顔を見た。
ふと僕と視線が合った時に一瞬だが微笑んだ様に感じた。
「今、俺に向かって微笑んでくれたぜ。これは脈有りと言う事だな。」
そう優越感に浸っているのはクラスの中でも人気者でいわゆる陽キャと言われる部類だ。
「鈴木さん、俺との運命的な出会いで戸惑う事も有るだろうけど、ここは冷静になって欲しい。」
その間、鈴木さんは微笑みを崩さなかった。
「所で、伸子ちゃんはもしかしたら芸能人ではないかい?テレビで何度も観た様な気がするぜ。」
陽キャの彼からの質問に、鈴木さんはためらいの表情を浮かべた。
そこへ担任が助け船を出した。
「ほらほら、鈴木さんが困っているだろう?」
「いえ、いいのです。そう、私の芸名は『星野菫』と言います。
出来れば、芸能人としてでは無く、1人の女子生徒として接して頂きたいと思います。」
鈴木さん改め、星野さんがその様に頼み込んだ。
「すげ~!星野菫と言うと子役から活動している超有名人じゃん!」
「そうよね~!憧れのアイドルとお近づきに成れるなんて光栄だわ~!」
クラス中がまたもやざわめいた。
「では、星野さん。ごほんっ!鈴木さん、鈴木君の隣が空いてるからそこの机といすを使って下さい。」
「はい。皆さん、よろしくお願い致しますね。」
ぺこりとお辞儀をして僕の所へと向かってくる。
「いいな~鈴木のやつ。うらやましいぜ。でも最終的には俺の物になるのは目に見えてるからな。一瞬だけの幸せを感じると良いぜ。」
陽キャの人気者の彼は言った。
「鈴木君、初めまして。鈴木伸子と言います。これからもよろしくお願い致しますね。」
星野さんはどうやらかたくなに芸名ではなく、本名を名乗ってきた。
「鈴木さん、初めまして。鈴木伸夫と言います。今後ともよろしくお願いします。」
「お互い苗字が『鈴木』だからこんがらかるわね。私の事は伸子ちゃんでいいわよ。のぶお君。
あら、名前の響きまでそっくりね。のぶお君の漢字教えて頂けるかしら?」
「うん、この様に書くんだ。」
「あら、本当に私達の名前ほとんど一致してるわね。何か運命的な物を感じるわね。」
「そうだね。」
僕と伸子ちゃんとのやり取りを聞いていた陽キャの彼はいらだちをつのらせて言い放った。
「おい鈴木、あまり調子に乗るなよな。菫ちゃんはいずれ俺の物になるんだから、お前の出る幕は無いぜ。せいぜい今、この一瞬の幸せを満喫するんだな。」
僕と伸子ちゃんは黙っていた。それが気に食わないのか再度注意してきた。
「おい、鈴木聞いてるのか?菫ちゃんもそんな男放っておいて、俺の物になれよ。」
「伸子ちゃんを物扱いするのはやめて欲しいな。」
「お~?一丁前に俺の命令に従わずに文句を言ったりして反抗する気か?」
陽キャの彼が僕を脅してきた。
「菫ちゃん、もう一度言うぜ。そんな男より俺の物になれよ~。な~皆?鈴木よりも俺様の方がふさわしいよな?そうだろう~皆~。」
そこへ担任が慌てて仲裁に入った。
「まあまあ陽キャ君。落ち着いて、落ち着いて。鈴木さんも困っているだろう?」
「なに~?俺様が一番じゃないといけないのが分からないのか?よって菫は俺の物だからな。皆分かったな?おい、鈴木分かったなら『分かりました。』と言えよ。菫、そんな男よりも俺様がたくさん幸せにしてやるぜ?いいか、早くお前も俺の物になると認めろよ。」
陽キャ君の攻勢は止まらない。溜まりかねて僕は、
「陽キャ君、それはあまりにも言い過ぎだよ。まずは伸子ちゃんに行き過ぎた言動を謝ってよ。」
「おお~?鈴木。お前、俺様に対しその様な態度を示すのか?少々どころか大変調子に乗っていないのか?おい!身の程をわきまえよな!」
「陽キャ君、落ち着いて、落ち着いて。」
担任が今にも殴りかかろうとしてくる陽キャ君を制止させた。
「おい、鈴木。今後どうなるか分かっているんだろうな?お前の居場所を無くさせる事もたやすいんだぞ。
菫、もう一度言う、俺様の物になれ。お前が居たら俺様は鼻高々になれるからな。
早く返事をしてさっさと俺様の物になれよな。
いいな、菫分かったなら分かったと返事をしろよ。
俺様も寛大な心を持っているから、少しばかりの猶予を与えてやる。
3日間待ってやる。それまでに俺様の物になると宣言しろよな。」
陽キャ君がわめいている間黙って聞いていた伸子ちゃんはおもむろに答えた。
「それは私に拒否権が無いと言う事でしょうか?」
「おう!当たり前だろう?菫は俺様の物、すなわち所有物になると定められているからな。」
「そこまで言いますか?」
「おうさ、当たり前だろう?俺様の物になれば将来安泰してるぜ。特に俺様がな。がはははは。早く色よい返事をして俺の所有物になれよな。いいな?わかったな?」
「・・・ふう・・・。では返事はのちほどと言う事で・・・。」
「ああ、菫が俺様の物になる。今からその瞬間がたまらないぜ。」
陽キャくんは完全に有頂天になっていた。己の明るい未来を信じて・・・。
『鈴木伸子』改め『星野菫』が自分の物になると信じて。
キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪
丁度チャイムが鳴りホームルームが終わった。
そして休み時間、予想していた通り菫ちゃんもとい伸子ちゃんの周りにはクラスメイトの人だかりが出来た。
僕は伸子ちゃんと離れるのが心苦しいけど、人だかりから離れお手洗いに向かった。
伸子ちゃんはクラスメイト達から質問責めにあっていたが僕が離席してその場を離れていくのを目で追っていたのを目ざといクラスメイトは気が付いた。
「伸子ちゃん、そんなに鈴木君の事気になるの?」
「苗字も同じで、名前も一文字違いで何となく親近感が湧いたのかもね。」
「「「「「きゃ~」」」」」
「でも陽キャ君、伸子ちゃんの事狙ってるんでしょ?大丈夫なの?」
「どうかしらね・・・。」
「ふ~ん。でもこの話題は止めた方が良いわね。」
「え?どうしてでしょうか?」
「それは・・・だってね・・・。」
「何かは分かりませんが、触らぬ神になんとかだと思いますね。」
「で、さっき鈴木君の事、目で追っていた様に見えたけど?」
「え?本当?伸子ちゃん、鈴木君にひかれてるの?」
「まあ、気になると言えば嘘ではありませんけどね。」
「シー!この事は陽キャ君に知られない方が良いわよ。」
「そうそう、陽キャ君伸子ちゃんを既に自分の物の様な言いぶりだったからね。」
「彼はいつもああいう言動するのでしょうか?」
シーン・・・。
「ごめんなさい。言いたくなければ答えなくても良いです。それが回答と言う事なのですね。」
「お?伸子ちゃんの気になる彼が戻って来たわよ。」
「その様で・・・。」
「伸夫さん、次の授業時間では教科書を一緒に見させては頂けませんか?あいにくと転校してきたばかりなので教科書が支給されていないのです。」
「うん、もちろん良いよ。」
「ありがとうございます。」
僕が教室に戻ってくると、伸子ちゃんの取り巻きが生暖かい目を向けてきた。
「ひゅ~。お熱い事で・・・。」
「???」
取り巻きの女子生徒の発した言葉に僕は何の事だろうかと思った。
授業が始まり、僕と伸子ちゃんは机をくっ付けて教科書を机と机の間に置いて教科の先生の話を聞いていた。
1限、2限、3限と授業が終わり、給食の時間になった。
伸子ちゃんとは向かい合わせになり給食時間を楽しんだ。
そして清掃時間、4限、5限、6限と今日1日の授業時間が過ぎて行った。
楽しい1日だったな・・・。僕は今日の出来事を思い出していた。
『好事魔多し』とはよく言った物で帰りのHRが終わった後、陽キャ君が僕に言ってきた。
「おい鈴木、今日1日菫ちゃんと楽しんだか?良い思い出が出来たか?良いか?菫は俺の物だからな。今はお前に貸してやっているだけだからな。調子に乗るなよな。わかったなら返事しろよ。」
僕が返事しようとすると、伸子ちゃんが言った。
「私は別に陽キャ君さんの所有物になった覚えはありませんよ。」
「えええい。うるさい~。うるさい~。菫は俺が見た瞬間から俺様の物なんだ。誰が何と言おうと俺様の物なんだ。」
「ふ~。そこまでまだ言いますか・・・。」
「良いか菫、俺様の物になれば俺の鼻が高くなるんだ。皆がうらやむ芸能人が俺様の所有物なんだからな。」
「ですから私は貴方の所有物ではありませんよ。」
「うるさい、うるさい~。俺様が決めたからには菫は俺様の物なんだ~~~~~~~~~!」
「良いか、俺様の虜にしてやるからな。覚えていれよ。」
そう言いつつ、陽キャ君は帰宅していった。
僕は伸子ちゃんに一言、
「伸子ちゃん、大丈夫?突然あの様な事言われて困惑しているよね。」
「ありがとうございます。伸夫さん。別に平気です。」
「本当に大丈夫?」
「私の事よりも伸夫さんこそ大丈夫でしょうか?」
「え?どうして?」
「今日一日の私達の行動でやっかみ等受けてませんでしょうか?」
「それは・・・、どうだろうね。」
「もしよろしければ一緒に帰宅しませんか?迎えが来ていますので送りますよ。」
「大丈夫かい?」
「ええ。同じ方角の様なのと、家が近いそうですから。伸夫さんは嫌でしょうか?」
「とんでも無い。もちろんオッケイと言いたい所だけど、目立たないかな?」
「私と一緒に帰宅するのはそんなに迷惑でしょうか?」
「いや、とんでもない。有難い申し出だよ。ぜひお願いします。」
そうして、僕は伸子ちゃんの送迎の車に乗り込んで送ってもらった。
伸子ちゃんと同じ空間に居れると言う楽しい時間はあっという間に過ぎ、僕の自宅付近に近づいて来た。
「伸夫さん、もっと自分に自信を持って下さいね。」
「ありがとう。伸子ちゃん。」
「もしよろしければ、明日から迎えに来ては駄目でしょうか?」
「え?と言うと?」
「ですから私は貴方と共にする時間を増やしたいと言う事です。」
「でも陽キャ君に恨まれるのは嫌だな・・・。」
「陽キャ君の心と私の心、どちらが大切だとお思いでしょうか?」
「それは勿論伸子ちゃんだよ。」
「わあ、嬉しい。」
「では僕の家はもうそろそろなので止めてもらえますか?」
「伸夫さん、先ほども言いましたが、自分にもっと自信を持って下さいね。」
「ありがとう、伸子ちゃん。」
「こちらこそありがとうございます、伸夫さん。貴方だけです。私を芸能人の『星野菫』ではなく、一般の少女、『鈴木伸子』として接してくれたのは。」
「どういたしまして。素の伸子ちゃんに少しでも戻れたかい?」
「学校ではクラスメイト達の視線も有り素には戻れませんでしたが、今この場では素の自分になれていたと思います。」
「そうなんだ。それは良かったよ。」
「はい。ありがとうございます。これも伸夫さんのおかげです。」
「本当に大した事していないんだけどね・・・。ではまた明日お願いします。」
「あの・・・連絡先交換していただけませんか?」
「僕は別にかまわないけど、伸子ちゃんいいのかい?おいそれと一般人とは連絡先交換しない方が良いのではないの?」
「私と連絡先交換、嫌でしょうか?」
「嫌だなんてとんでもない。むしろこちらからお願いしたい所だよ。もちろん2人だけの秘密と言う事にするからさ。」
「信じていますからね。」
「ああ、もちろん。」
おもむろに伸子ちゃんが小指を突き出し、手を僕の顔の前に持ってきた。
ああ、懐かしい・・・。
僕も小指を突き出し伸子ちゃんの手の前に持って指を絡めて2人で言った。
「「指切りげんまん、嘘ついたら針千本の~ます。指切った!」」
「ふふふ。」
「あはは。」
「懐かしいな・・・。幼稚園以来かもしれないな・・・。」
「ええ、私も懐かしいわ。私も幼稚園以来かもしれませんね・・・。」
「僕達、名前が似ているだけではなく、こういう他愛のない事も共通しているんだね。」
「ええ、そうね。私達は出会うべくして出会ったのかもしれないわね。」
「運命的な出会いだったのかもしれないね。」
「まさにそうよね。これは運命の出会いなのよね。」
「お嬢様、そろそろ鈴木様邸にご到着です。」
「では伸子ちゃん、また明日。」
「はい、伸夫さん、また明日。」
そうして僕は車から降りて自宅へと入った。
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『じいや、では手筈通りに。』
『了解であります。お嬢様。』
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伸子ちゃん可愛いかったな。流石芸能人だけあるな。僕がお近づきになれるなんてなんて幸福なんだろう。
でも陽キャ君の態度はあんまりだな・・・。何事も無ければ良いんだけど・・・。
翌日、迎えの車が来た。
でも前もって約束した時間よりも早いな・・・。
「お義父様、お義母様、初めまして。鈴木伸子と言います。
心ばかりの品ですがお口に合うかわかりませんがお受け取り下さい。」
そう言いながら伸子ちゃんは僕の両親に手土産を渡していた。
「ありがとうございます。」
「では父さん、母さん、行ってくる。」
「これ、伸夫。ちょっと来て。」
「何だい?父さん。」
「鈴木伸子と自己紹介したけど、彼女は今を時めく星野菫じゃないのか?」
「うん、そうだけど?」
「本当か?」
「本当だよ。でも彼女は普段通りで一般人として接して欲しいってさ。」
「でかしたぞ、伸夫。」
「ええ、本当に伸夫ちゃん・・・。」
???
「では伸子ちゃんにいつまでも待たせるのは悪いから僕はもう行くよ。」
「「いってらっしゃい。」」
「ごめん、伸子ちゃん。待たせてしまって。」
「別に良いわよ。時間はまだまだたっぷりある事だし。大方私の事でかしら?」
「・・・。」
「黙っていると言う事は大方私の事ね。私が芸能人だかどうかって確かめられたんでしょう?」
「うん、そうなんだ・・・。伸子ちゃんの事を話すと両親は喜んじゃってさ。」
「ありがとう。お義父様、お義母様に喜んで貰えてとても嬉しいわ。」
しばらく無言が続いていた。だがお互いにお互いの存在を確かめ合う様に手は繋がれていて、お互いのぬくもりを感じていた。
学校に近づくと僕はおもむろに陽キャ君対策と思い、伸子ちゃんに言葉をかけた。
「伸子ちゃん、陽キャ君の横暴許されないよね。でも僕には歯向かうだけの力が無いんだ。
クラスメイトも口には出さないけど彼に対し良い印象を持っていないんだと思う。」
「ありがとうございます、伸夫さん。でも解決しましたので安心なさって下さい。」
「え?どういう事?」
「それはひ・み・つ」
「わけがわからないよ。」
「行ってみれば分かります。」
「そうかい、それなら良いんだけど・・・。伸子ちゃんの身に何か有ったらと思うと、僕はとても心配だよ。」
「ありがとう。伸夫さん。」
「お嬢様、伸夫様、学校に到着致しました。」
「ありがとう、爺や。」
「ありがとうございます爺やさん。」
「どういたしまして。」
そうこうして下車して2人揃って玄関に入り上履きに履き替えて教室へと向かった。
『ふ~・・・、陽キャ君・・・。嫌だな・・・。』
教室に入るとクラス内が慌ただしかった。
「鈴木君、聞いた?陽キャ君補導されたんだって。」
「え?それは本当かい?」
「風の噂での話だけどね。」
そうしてHRが始まり、担任が一言、
「陽キャ君が昨夜補導を受けて、自主中退を申し出てきたそうだ。」
「ええ?本当の事だったんだ~。」
「では、出席を取るぞ。」
そうして、陽キャ君の伸子ちゃんへのアタックが無くなり平和になりました。
めでたし。めでたし。
・・・とはならず、頭を押さえられていた男子生徒が休み時間にひっきり無しに伸子ちゃんに告白してきた。
僕は伸子ちゃんの事が心配になったが、断られたとおぼしき男子生徒は決まって僕の事をにらみつけてきた。
そして数週間が過ぎ、伸子ちゃんに僕自身も勇気を出して告白した。
「鈴木さん、いいや伸子さん、良ければ今後とも僕と付き合って下さい。お願いします。」
「その言葉、今か今かと待っていたのよ。もちろんオッケイよ。」
僕がお辞儀をして右手を差し出している手を伸子ちゃんは両手で包み込む様につかんできた。
「ありがとう、伸子ちゃん。」
「いいえ、私こそありがとう。伸夫さんだけよ。私の事を一般の少女として見てくれたのは。
他の方は芸能人の彼女欲しさがありありと感じられたわ。
でも私にとっても伸夫さんはとても大事な方なの。私も勇気を出して言う事が有るの。
やはりこの場では言えない事なのよ。帰りの車内で話すわね。出来れば幻滅しないで欲しいわ。」
「分かったよ。伸子ちゃんの話を聞いてから判断するよ。」
そうして帰宅した僕は伸子ちゃんから衝撃な事実を聞かされた事を思い出した。
『実は私は鈴木伸夫貴方本人だったの。寿命後、TS逆行転生してきたのよ。
芸能人の星野菫は私が一生懸命に努力して芸能界入りして活動したの。
そして昔通っていた中学校に鈴木伸子として転校してきたの。
私にとって何もかも懐かしかったわ・・・。
これ以上貴方をだませないから勇気を出して告白するのよ。
幻滅したでしょう?もしも幻滅していないなら連絡してくれるととても嬉しいわ。』
僕の返事は・・・。
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「伸夫君待った?」
「いいや僕も今着た所さ。伸子ちゃん。」
僕達の関係は中学卒業後も続いている。
今や伸子ちゃんは世界に通じる大スターとして活躍している。
それに対し僕は内助の功を旨に伸子ちゃんと接して、ストレス緩和や栄養面等でサポートしている。
そうして月日が流れ、『星野菫、一般男性と結婚!!』と言う喜ばしい行事をして子宝に恵まれ、皆から祝福されて幸せな時を2人で築いて行った。
「私達、また逢えるよね?」
「そうだね。立場は違えどまた逢えるさ。」
「伸夫さん、愛してるわ。」
「僕もだよ、伸子。」
果たして、僕と伸子ちゃんは逆行転生して再び邂逅する事が出来るだろうか・・・?
もしくは僕がTS逆行転生して伸子ちゃんとして、僕自身に出会う事になるだろうか・・・?
そうして僕は寿命が尽きた。
果たして・・・。
完